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2002年12月議会
議案第212号
人に優しく安全で快適なまち福岡をつくる条例案
(モラル・マナー条例案)
上記の議案を次のとおり地方自治法第112条及び会議規則第14条の規定により提出します。
平成14年12月11日
福岡市議会
議長 稲員 大三郎 様
提出者 福岡市議会議員
南原 茂 光安 力 川口 浩
妹尾俊見 川上義之 川上晋平
友納博美 笠 康雄 鬼塚敏満
渡辺健生 市木 潔 小宮文子
手島敏文 久保 浩 江藤博美
三原 修 栃木義博 高田保男
高山博光
理由
この条例案を提出したのは、人に優しく安全で快適なまちづくりについて、基本理念並びに市民等、事業者及び市それぞれの責務を明らかにするとともに、その実現のための施策の基本となる事項を定めることにより、市民等及び事業者による主体的な取組みを促進し、もって市民の生活環境の向上を図る必要があるによる。
目次
前文
福岡市は、二千年にわたる悠久の歴史と伝統の中で築かれてきたまちである。そこには、歴史と伝統に育まれた自治と進取の精神があり、先人によって守られてきた豊かな自然と市民の生活環境がある。
この自治と進取の精神を尊び、福岡市をより人に優しく安全で快適なまちにし、それを次の世代に引き継いでいくことは、先人からこのまちを受け継いだ福岡市に住み、働き、集うすべての人々の責務である。また、時代を担う子どもたちが、社会生活上のルールを守る責任感、社会性及び公共心を身につけるためには、他人を思いやる心と郷土福岡を誇りに思う心を育むことが重要である。
そのため、福岡市は、市民とともに、人に優しく安全で快適な生活環境を守るため、自転車の放置防止、ピンクちらしなどの屋外広告物対策、空き缶やたばこなどの散乱防止等の諸施策を実施してきた。しかしながら、公共の場を利用する人々のモラルの低下やマナーの欠如などにより、生活環境の改善の効果はあまり上がっていない。
今こそ、私たち福岡市民は、自分たちのまちは自分たちでつくるという住民自治の精神に立ち返り、その力を結集して、人がいきいきと暮らし活躍する「自治都市福岡」をめざし、主体的に行動を起こすときであり、ここに、人に優しく安全で快適なまち福岡をつくることを宣言し、その実現のため、総力を挙げて取り組んでいくことを誓うものである。
福岡市は、このような決意のもとにこの条例を定める。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、人に優しく安全で快適なまちづくりについて、基本理念並びに市民等、事業者及び市それぞれの責務を明らかにするとともに、その実現のための施策の基本となる事項を定めることにより、市民等及び事業者による主体的な取組みを促進し、もって市民の生活環境の向上に資することを目的とする。
(定義)
第2条 人に優しく安全で快適なまちづくりは、次に掲げる基本理念に基づき行うものとする。
(1)すべての市民が他人を思いやり、互いに譲り合う精神を持つこと。
(2)すべての市民が自治意識を持って主体的かつ具体的にまちづくりに取り組むこと。
(3)すべての市民が誇りを持てる魅力あるまちづくりを推進すること。
(4)すべての市民が限りある資源を有効に活用する循環型社会の形成に努めること。
(5)すべての市民が犯罪や事故の防止に努め、安心して暮らすことができる安全なまちづくりを推進すること。
(6)すべての市民が青少年の健全育成のための環境形成に努めること。
(関係条例の定め)
第3条 この条例は、人に優しく安全で快適なまちづくりについて、施策の基本となる事項を定めるものであり、その推進については、この条例の定めるもののほか、福岡市迷惑駐車の防止に関する条例(平成6年福岡市条例第12号)、福岡市畜犬等取締り条例(昭和35年福岡市条例第23号)、福岡市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例(平成5年福岡市条例第26号)、福岡市空き缶等の散乱防止及びその再資源化の促進に関する条例(平成5年福岡市条例第27号)、福岡市屋外広告物条例(昭和47年福岡市条例第60号)、福岡市ピンクちらし等の根絶に関する条例(平成14年福岡市条例 号)(以下「関係条例」という。)の定めるところによる。
(定義)
第4条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1)市民等 市内に居住し、若しくは滞在し、または市内を通過する者をいう。
(2)ヤミ金融広告 ヤミ金融業者(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和29年法律第195号)又は貸金業の規制等に関する法律(昭和58年法律第32号)の規定に違反して貸金業を営む者をいう。)の広告又は宣伝を記載した看板又はちらしをいう。
(3)自動車等 福岡市迷惑駐車の防止に関する条例第2条に規定する自動車及び原動機付自転車をいう。
(4)落書き 公共の場所又は他人が所有し、若しくは管理する塀、建物その他の工作物に、みだりに文字、図形、模様等を書くこと又はかかれた文字、図形、模様等をいう。
2 前項に定めるもののほか、この条例において使用する用語は、関係条例において使用する用語の例による。
(市民等の責務)
第5条 市民等は、人に優しく安全で快適なまちづくりに寄与する活動を自主的に行うとともに、この条例の目的を達成するため市民等、事業者及び市が実施する事業に主体的に参加する等その施策に協力するよう努めなければならない。
(事業者の責務)
第6条 事業者は、地域社会を構成する一員として、その果たすべき役割を認識し、積極的に人に優しく安全で快適なまちづくりの推進に努めなければならない。
2 事業者は、前項の責務について、従業員その他事業活動に従事する者に周知し、その徹底を図らなければならない。
(市の責務)
第7条 市は、この条例の目的を達成するため、関係条例を体系的に整備し、及び効果的に運用するとともに、人に優しく安全で快適なまちづくりに関する施策を総合的かつ効果的に推進する責務を有する。
2 市は、市民等及び事業者並びに関係行政機関と連携し、人に優しく安全で快適なまちづくりを推進する体制を整備するとともに、市民等及び事業者が行う生活環境の向上のための活動を積極的に支援するものとする。
(総合的推進)
第8条 市民等、事業者及び市は、それぞれの責務を自覚するとともに、相互に協力し、一体となって人に優しく安全で快適なまちづくりの推進を図るものとする。
第2章 人に優しく安全で快適なまちづくり
(迷惑駐車の防止)
第9条 何人も、迷惑駐車の防止に努めなければならない。
(愛玩動物の飼主等の遵守事項)
第10条 犬、猫その他の愛玩動物の飼主又は管理者は、当該動物が、公共の場所又は他人の土地若しくは物件をふん等により不潔にし、傷つけ、その他これらのものを荒らすことのないようにしなければならない。
(ごみ等の焼却禁止)
第11条 何人も、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)その他の法令に定める場合を除き、ごみその他の廃棄物を消却してはならない。
(清潔の保持)
第12条 市民は、自宅の周辺を清潔にするよう努めなければならない。
2 事業者は、その所有し、または占有する施設の周辺を清潔にするよう努めなければならない。
(空き缶等の散乱防止)
第13条 何人も、空き缶、空き瓶、ペットボトル、たばこ、チューインガム、ちらし等をゴミ箱その他これらの回収容器以外の場所に投げ捨て、又は放置してはならない。
(ピンクちらし等の表示の禁止等)
第14条 何人も、ピンクちらし及びヤミ金融広告を表示し、または掲出する物件を設置してはならない。
2 何人も、福岡市屋外広告物条例に定める場合を除き、許可なく、屋外広告物を表示し、または屋外広告物を掲出する物件を設置してはならない。
3 何人も、屋外広告物により宣伝を行うに当たっては、市の美観及び風致の確保、青少年への影響、交通の安全等に注意を払い、市民の良好な生活環境を悪化させることのないようにしなければならない。
(道路不法占用の禁止)
第15条 何人も、許可なく、道路に工作物、物件又は施設を設け、継続して道路を使用してはならない。
(自転車の放置の禁止等)
第16条 自転車の利用者等は、放置禁止区域内に自転車を放置してはならない。
2 自転車の利用者等は、公共の場所(放置禁止区域を除く。)に自転車を放置し、市民の良好な生活環境を阻害しないよう努めなければならない。
3 市は、福岡市自転車の放置防止に関する条例の規定により移動した自転車の保管場所の確保に努めるものとする。
(安全運転の励行)
第17条 自動車等の運転者は、常に道路交通法(昭和35年法律第105号)その他の法令を遵守し、他の自動車等、自転車、歩行者等の通行に十分注意を払い、譲り合いの精神を持って安全運転に努めなければならない。
2 自転車の運転者は、他の自転車、歩行者等との接触により他人に重大なけがをさせ、又は損害を与えることがあることを十分認識し、安全運転に努めなければならない。
(落書きの禁止)
第18条 何人も、落書きをしてはならない。
(喫煙者の責務)
第19条 何人も、歩行中又は自転車に乗車中に喫煙をしないよう努めなければならない。
2 何人も、屋外で喫煙するときは、吸い殻入れを携帯するよう努めなければならない。
(路上禁煙地区)
第20条 市長は、特に必要があると認める地区を路上禁煙地区として指定することができる。
2 前項の規定による指定は、終日または時間帯を限って行うことができる。
3 路上禁煙地区においては、何人も道路上で、歩行中又は自転車に乗車中に喫煙してはならない。
4 市長は、路上禁煙地区を指定し、変更し、または解除しようとするときは、当該地区の市民等及び事業者の意見を聴くとともに、関係行政機関と協議するものとする。
5 市長は、路上禁煙地区を指定し、変更し、または解除したときは、規則で定めるところにより、その旨を告示するものとする。
第3章 啓発及び市民運動の促進
(市の啓発活動)
第21条 市は、人に優しく安全で快適なまちづくりの推進に関する啓発を積極的に行うとともに、市民等及び事業者によりモラル・マナーの向上に関する自発的な活動を促進するため必要な措置を講じるものとする。
(子どもたちの取組みの支援)
第22条 市は、学校及び地域と連携し、子どもたちが社会参加及び社会貢献をとおして行うモラル・マナーを向上させるための取組みを支援するものとする。
(市民運動の推進)
第23条 市民等、事業者及び市は、モラル・マナーの向上を図るため、一体となって、日常的な実践活動としてモラル・マナー向上市民運動(以下「市民運動」という。)を推進するものとする。
2 市民運動においては、ピンクちらし、ヤミ金融広告等の違反広告物の除却、散乱した空き缶、たばこその他のごみの回収、落書きの消去等を行い、人に優しく安全で快適なまちづくりを推進するものとする。
3 全市的に市民運動を推進し、市民等及び事業者に広く市民運動についての関心と理解を深めるため、規則で定めるところにより、市民運動の日を設ける。
(環境美化推進モデル地区)
第24条 市長は、観光等により訪れる人が多い地域で、ピンクちらし、ヤミ金融広告等の違反広告物、空き缶、たばこその他のごみの散乱が著しく、都市としての美観と品位が損なわれているため、特に環境の美化を図る必要があると認める地区を、環境美化推進モデル地区として指定することができる。
2 市長は、環境美化推進モデル地区において、環境の美化の推進に関し、モラル・マナー意識の啓発、市民等及び事業者の主体的な活動への支援を重点的に実施するものとする。
3 市長は、必要があると認めるときは、環境美化推進モデル地区を変更し、又は環境美化推進モデル地区の指定を存続する必要がないと認めるときは、環境美化推進モデル地区の指定を解除することができる。
4 市長は、環境美化推進モデル地区を指定し、変更し、または解除しようとするときは、当該地区の市民等及び事業者の意見を聴くとともに、関係行政機関と協議するものとする。
5 市長は、環境美化推進モデル地区を指定し、変更し、又は解除したときは、規則で定めるところにより、その旨を告示するものとする。
(思いやりの心推進モデル地区)
第25条 市長は、次代を担う子どもたちが、他人を思いやる心と郷土福岡を誇りに思う心を育むため、地域が一体となって、子どもたちの社会参加及び社会貢献を推進している地区を思いやりの心推進モデル地区として指定することができる。
2 市長は、思いやりの心推進モデル地区において、家庭、学校及び地域が連携して、子どもたちが地域の環境美化活動、リサイクル活動、ボランティア活動、地域の行事等への参加をとおして、社会生活上のルールを守る責任感、社会性及び公共心を身につけるとともに、他人を思いやり、郷土を愛する心を育むため、当該地区における取組みを支援するものとする。
3 前条第3項から第5項までの規定は、思いやりの心推進モデル地区の指定、変更及び解除について準用する。
(表彰)
第26条 市長は、市民運動その他の活動において、人に優しく安全で快適なまちづくりに寄与したと認める市民等、事業者、団体等を表彰することができる。
第4章 補則
(勧告及び公表)
第27条 市長は、第18条の規定に違反すると認める者があるときは、当該者に対し、期限を定めて必要な措置を講じるよう勧告することができる。
2 市長は、前項の規定による勧告を受けた者が、正当な理由なく当該勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。
3 市長は、前項の規定による公表をしようとする場合には、あらかじめ、当該公表をされるベき者に対しその理由を通知し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(委任)
第28条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。
第5章 罰則
第29条 第20条第3項の規定に違反して路上禁煙地区内で喫煙したものは、2万円以下の過料に処する。