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政策と活動|特集

2001年12月 日本共産党福岡市議 比江嶋俊和

介護険料減免制度の大いなる活用を
——集団減免申請と決算議会論戦から

「議会と自治体」2002年1月号掲載

2001年9月28日、「ふくおか健康友の会」に所属するお年寄りたちが博多区役所を訪れ、17人分の生活保護「境界層」介護保険料等減額の集団申請をおこないました。これは、第一号被保険者(65歳以上)の保険料が10月から倍額になるのを期して、「介護保険に怒る福岡県一揆の会」の130人におよぶ県介護保険審査会への不服審査請求につづく行動です。

私も、今回の集団申請に同行し、お年寄りのみなさんや受付対応した保護課の職員たちの生の声を聞くことができました。干代町の71歳になる第二段階保険料のHさんの収入は、夫の年金と合わせて月10万円にもなりません。ところが、申請にさいして貯金通帳などを調べられたあげく、「(減免は)難しいですよ」といわれ、「それじゃ、葬式代に取っていた貯金もはたいて、高い保険料を払えというんですか」と、切実に訴えました。

一方、応対した市職員らも、「こんなに大勢でこられるのは初めて。この制度を周知しない行政のズルイところですよ」とか、「私たちケースワーカーはみんな、こんな資産調査に不満を持っています」などと語り、内実が吐露されました。

まだあまり知られていない保険料等減額制度の周知と活用を、そして、生活保護の申請ではないのに、非課税世帯のお年寄りにたいするきびしい資産調査は必要ない、これが、そのときの私の実感です。

「境界層」減免措置制度とは

この生活保護「境界層」の減額措置制度は、介護保険法の政令で定められた「保険料率の算定に関する基準」などにもとづいて、生活保護と同程度の収入しかないのに生活保護を受けていない低所得者=生活保護「境界層該当者」の保険料や高額介護サービス費等を、申請に応じて引き下げるものです。たとえば、老夫婦が第二段階の保険料を課せられたら生活保護受給対象となる場合、第一段階の保険料適用で生活保誰を受けなくてすむようにすることになります。

福岡市では、「境界層該当者の事務取扱いについて」(通知)により、各福祉事務所で申請を受け付けるようになっていますが、収入・資産(預貯金、生命保険、土地家屋)等の審査がおこなわれます。ところがも市はこの制度を十分市民に知らせず、しかも、きびしい審査のもとで、この一年半で該当者はわずかの53人(2001年9月末現在)にとどまっています。

ちなみに、福岡市における国の特別対策のうち、祉会福祉法人がおこなう利用料減免対象者もたったの91人で、在宅サービスを利用している住民税非課税対象者の推計約1000人の9%に過ぎません。「重介護」の家族介護慰労金(年額10万円)にいたっては、9件という現状です。私は、こうした実態を10月の決算議会(特別委員会)で取り上げ、減免制度を知らせ、内容を改善することを要求しました。

高負担による利用低迷で介誰保険会計は大幅黒字

第一の問題は、介護保険料・利用料負担の問題です。

2001年6月の福岡医療団(民医連)介護実態調査でも、「保険料が負担だ」と答えた人が52・8%の過半数におよんでおり、そのため福岡市の保険料滞納者(普通徴収)は4735人で、滞納総額は3295万円余となっています。そのうち、保険料区分の第一、第二段階の人が2445人の52%にもなっています。滞納者には、期間に応じてきびしい罰則が課せられます。

これらの非課税世帯には、憲法25条(生存権)にもとづいて最低限の生活を保障するため生計費に課税しないという税制上の措置が取られているにもかかわらず、介護保険は「みんなで支え合う制度」という理由で保険料の支払いが優先させられます。これは制度上の大きな矛盾です。

また、福岡市の在宅サービスの利用実績は29・6%と大変に低く、これも福岡医療団調査で「利用料が増えてサービスを減らした」との答えが58・8%におよんでいることからもあきらかなように、利用料負担が重すぎることが最大の原因です。東区の訪問看護ステーションの実例では、第二段階の介護度4の77歳のお年寄りの場合、これまで無料だった利用料が月3万円にもなってサービスを減らさざるをえず、その結果、病気がちの76歳の妻はいっそう介護負担が増えてしまいました。

私は、介護保険のために費用負担も家族の介護負担も増えるという、まさに「保険あって介護なし」の深刻な実情を告発しました。

これだけではありません。第二の問題として、2500人にのぼる特養ホーム待機者の探刻な実態があります。

そして、第三の問題として、高い保険料徴収と重い利用料負担による在宅サービス利用の大幅減などで、初年度の介護保険特別会計は、なんと21億5668万円もの剰余金を出しました(北九州市でも13億6000万円余の剰余金)。福岡市は、このうち約10億円を国・県等に返還するといっていますが、それでも約11億円が余ります。

これらの問題を改善するために、党市議団は、生活保護「境界層」減額制度の周知徹底と拡充、保険料・利用料の低所得者独自減免、待機者解消のための特養ホーム早期増設などを要求しました。

求められる保険料・利用料の独自減免

私たちは、この間、議会内外の介誰保険改善運動で、福岡市社保協などと連携して、保険料・利用料の減免を真っ先に掲げて、謂願署名や対市交渉にとりくんできました。福岡市は、介護保険の導入にともない、前年度比22億円も介護にかかる市の負担を減らしており、余剰金と含わせて33億円の財源があります。党市議団は、第一、第二段階の保険料・利用料の全額免除は約11億円あればできることを独自試算によってあきらかにし、修正議案を提出して追及してきました。

いま、全国の保険料減免自治体は328、利用料減免が674自治体にのぼっています(「しんぶん赤旗」調査、8月25日現在)。福岡県下でも、久留米市、飯塚市、行橋市、大牟田市などが保険料減免をすでに実施し、直方市、八女市、小郡市などでも準備中です。

利用料減免も、筑紫野市、春日市などが実施し、県下72市町村で構成する全国最大の福岡県広域連合も、来年度から保険料減免を計画しており、県介護保険室も市町村に減免をうながしています。厚生労働省は、こうした自治体独自の保険料減免にたいして、全額免除や一律減免、一般会計からの補填は不可とする三原則」を持ち出してけん制していますが、減免自治体はとどまることなく広がっています。

減免の内容は、とくに所得階層の幅が広くて逆進性の強い第二段階保険料を第一段階相当額まで引き下げたり、利用料も3〜7%負担に軽減するなどの措置をとっているところなど、さまざまです。こうしたなか、今回の決算議会などの論戦をとおして、独自減免にはいたらなかったものの、市は、生活保護「境界層」減額制度の市民への周知・徹底を約束し、また特別養護老人ホーム約300床の来年度「前倒し」整備を実施すると表明しました。

医療改悪阻止と一体化した運動課題

以上、福岡市における介護保険制度の現状を概括しましたが、いま次期計画年度(2003年度見直し)に向けて、第二次介護保険事業計画策定委員会が論議をすすめています。

政令市などの減免自治体のうち、京都市の2000年度決算剰余金を使っての保険料減免(適用者約3000人)も、東京都の利用料5%減免(対象者約2万2千人)も、次期計画見直しまでの暫定措置として実施するものです。

したがって、福岡市においても、この間の改善運動が次期改定時の制度の中身を大きく左右するといっても過言ではありません。せっかく勝ちとった制度も、申請活用されなければ意味をなしません。独自減免を勝ちとったところも、いったいどれくらいの人たちに適用されているのか、あらためて調査してみることが大切です。

いま求められていることは、国民に「痛み」を与える自・公・保の「小泉構造改革」に真正面から対決し、健保本人3割負担増や高齢者医療制度の大改悪案の反対運動と結びつけて、国民的なたたかいにしていくことです。

いまだに、「介護保険料の独自減免制度は実施しない」、としている政令市は、札幌、北九州、福岡市などの三市ぐらいになってきていますが、これらの三市は、国民健康保険行政でも多くの国保料滞納者を生み出し、保険証取り上げ=「資格証」大量発行で、市民の医療を受ける権利を奪うことを競っています。とりわけ、本市の国保料滞納世帯は4万件を超え、「資格証」の発行は1万件以上と、全国最悪であり、介護保険独自減免実現のたたかいと一体で運動していくことが必要です。

実際、この間の議会内外の運動で市当局が追い詰められてきていることは隠せません。今回の決算議会でも、私の生活保護「境界層」減額措置制度等の質問追及と前後して、博多区で申請した17人のうち14人の介護保険料減額を認めさせました。

また、政府の医療改悪案によって、70〜74歳までが高齢者医療制度から切り離され、国保加入者とされることが打ち出されています。福岡市は、これによって、市の国保負担が増えるとして、国保中央会や全国市長会をつうじて「反対」していくと表明せざるをえませんでした。

全国のみなさん、日本共産党第三回中央委員会総会が提起した「たたかいの組織者」としての役割を、医療・介護の分野でも大いに発揮していこうではありませんか。


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