しんぶん赤旗2001年8月17日
需要ないまま進む人工島計画
来年から土地分譲が予定されている博多湾東部の人工島建設は、福岡市と第三セクターの博多港開発が中心となって進められているもので、総事業費4600億円、上物までいれれば1兆円以上かかると指摘されています。無駄な公共事業の削減が叫ばれる今日、市民から計画の縮小、見直しを求める声が高まっています。(福岡・三牧琢磨記者)
漂流する目的
市は、埋立総面積約400ヘクタールのうち90ヘクタールをサイエンスパーク用地、72ヘクタールを住宅用地としています。
人工島計画は、もともと九州大学の移転を前提にした福岡研究学園都市構想により計画されたものです。しかし、大学の移転先が変更になったため、同市は急きょサイエンスパーク計画なるものをもちだし、埋め立てを強引に進めてきました。
市はサイエンスパークに、IT関連などの研究開発支援センター、国レベルの高度医療機関、総合研修センターを建設するとしています。しかし、市民から強い要望があるのは「身近なところにある医療・福祉サービス」です。
IT関連企業も、ほとんどがソフトウエア開発が中心であり、サイエンスパーク計画のような広大な土地や高い家賃のビルを必要としていません。
住宅用地については、第一期分24.6ヘクタールの埋め立てが終わり、来年から分譲される予定でしたが、売れる見込みが立たずシーサイドももち同様、業務用地に変更する計画が検討されています。これは住宅用地を含む28ヘクタールに運河を囲む高層住宅、オフィス、医療施設、米国映画テーマパークを作るというもので、もともと地元デベロッパーが言い出したものです。
渡り鳥減る
環境への影響も深刻です。博多湾東部に広がる和白干潟は日本海側に残された数少ない干潟で、渡り鳥の飛来地として国際的に注目されてきました。しかし、人工島工事を着工してから一部の渡り鳥の飛来数が減少傾向にあることが、福岡市によるモニタリング結果から明らかになっています。
市のアイランドシティ整備事業環境影響評価レビュー(再評価)に対し環境庁から「工事着工時に比べると博多湾の環境改善が見られるが、引き続き、水質、底質、鳥類生息環境の保全等の措置を講じる必要がある」との見解が出されました(2001年5月)。ところが、市側は「正当な評価をもらった」と評価をすりかえ、工事を続けました。
工事により潮の流れが変わり、「アオサの発生頻度が増えているようだ」「かつては見かけなかったような海藻をここ数年和白干潟で見かけることが多い」との声もでています。
誘致に血道
日本共産党の綿貫英彦市議はこうした必要性も緊急性もない埋め立て事業のゆき詰まりを六月の議会で厳しく指摘し、「工事を強引に進め、需要がまったく見込めないのに『どこでもいいから』と企業の誘致に血道を上げている。これは不動産会社そのものであり、自治体のすることではない。今こそ計画の縮小・見直しを」と、追及しました。
しかし、市は「新たな都市型産業の集積を図る」などと何年も前からの抽象的な答弁を繰り返すばかりで、何の展望も示していません。
福岡市の第三セクターの多くは赤字で、毎年多大な税金が投入されています。市の貯金である財政調整基金も底をついており、市の抱える負債は、2兆5千億円にのぼります。さらに工事を続行するという市の姿勢は、市民に多大な負担を押しつけるばかりです。破たんした人工島計画の中止、見直しこそ急務となっています。