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議会報告

2021年12月議会

「福岡市建築紛争の予防と調整に関する条例の一部を改正する条例案」
とその審議の概要

開発優先の髙島市政のもとで、条例の抜け穴をかいくぐって、説明会を開かない、住民との日程調整も行わないまま一方的な説明会を行うなど、悪質な業者の目に余る行為が後を絶ちません。日本共産党福岡市議団は2021年12月議会に、議案提案権を活用し、住民が求めた場合の説明会開催や、参加者全員の確認署名を付した議事録の提出などを義務付ける「福岡市建築紛争の予防と調整に関する条例の一部を改正する条例案」を提出しました。


改正案と本会議での審議の概要を紹介します。

現行条例改正案
第2条

(9) 近隣住民 中高層建築物等又は特定集合住宅の敷地境界線からの水平距離が15メートル以下の範囲内にその全部又は一部がある土地(中高層建築物にあっては,当該敷地の真北方向にある土地で,敷地境界線から当該中高層建築物の高さの概ね1.5倍に相当する水平距離の範囲内にその全部又は一部があるものを含む。)に存する建築物の所有者,管理者及び居住者(その土地に建築物が存しない場合にあっては,その土地の所有者及び管理者)をいう。

(10) 建築紛争 中高層建築物等及び特定集合住宅の建築が居住環境に及ぼす影響に関する中高層建築物等又は特定集合住宅の建築主等及び近隣住民(以下「当事者」という。)の間の紛争をいう。

第2条

(9) 近隣住民 中高層建築物等又は特定集合住宅の敷地境界線からの水平距離が15メートル以下の範囲内にその全部又は一部がある土地(中高層建築物にあっては,当該敷地の真北方向にある土地で,敷地境界線から当該中高層建築物の高さの概ね2倍に相当する水平距離の範囲内にその全部又は一部があるものを含む。)に存する建築物の所有者,管理者及び居住者(その土地に建築物が存しない場合にあっては,その土地の所有者及び管理者)をいう。

(10) 周辺住民 中高層建築物等の敷地境界線からの水平距離が50メートル以下の範囲内にその全部又は一部がある土地に存する建築物の所有者,管理者及び居住者(その土地に建築物が存しない場合にあっては,その土地の所有者及び管理者)をいう。ただし,近隣住民を除く。

(11) 建築紛争 (略)

第11条

4 中高層建築物等の建築主は,当該中高層建築物等の建築計画等について,近隣住民から説明会の開催を求められたときは,これに応じるよう努めなければならない。

第11条

4 中高層建築物等の建築主は,当該中高層建築物等の建築計画等について,近隣住民又は周辺住民から説明会の開催を求められたときは,これに応じなければならない。

第13条

2 前項の規定による報告は,次の各号に掲げる建築物の区分に従い,当該各号に定める日までにしなければならない。

(1) 中高層建築物 確認申請をしようとする日の20日前の日

(2) ワンルーム形式集合建築物(前号に該当するものを除く。) 確認申請をしようとする日の14日前の日

3 中高層建築物等の建築主は,第11条第5項後段又は前条第3項において準用する第11条第5項後段の規定により当該中高層建築物等の建築計画等又は管理の方法を近隣住民に周知させたときは,速やかにその状況を市長に報告しなければならない。

第13条

2 (略)

3 中高層建築物等の建築主は,第11条第4項の規定により当該中高層建築物等に係る説明会を開催したときは,当該説明会における出席者全員(正当な理由なく議事録に署名しない者 その他特別の事情がある者を除く。)の署名により確定した議事録を速やかに作成し,これを市長に提出しなければならない。

4 (略)

第15条

市長は,中高層建築物(次節の規定の適用を受けるものを除く。以下この条において同じ。)の建築主が当該中高層建築物に係る事前説明を十分に行わず,又は近隣住民が事前説明の申出に応じない等の事由により,当事者間において事前説明が十分になされていないと認めるときは,当事者に対し,事前説明の促進について指導することができる。

第15条

市長は,中高層建築物(次節の規定の適用を受けるものを除く。以下この条において同じ。)の建築主が当該中高層建築物に係る事前説明を十分に行わず,又は近隣住民が事前説明の申出に応じない等の事由により,当事者間において事前説明が十分になされていないと認めるときは,当事者に対し,事前説明の促進について指導しなければならない。


12月議会の本会議で議案質疑が行われ、日本共産党の中山郁美市議が答弁を行いました。その要旨を紹介します(正式な会議録ではなく、あくまで文責は日本共産党市議団事務局です)。


中山いくみ議員

◯市民クラブ(田中たかし議員)本改正案を提案に至った理由は。

△共産党(中山郁美議員)本市においては、中高層建築物、ワンルーム形式集合建築物等の建築に係る建築主と周辺住民との紛争を予防し調整を図るための条例が制定されている。しかし、建築主側が条例を遵守しなかったり、条例の抜け道を使い、住民への十分な説明や話し合いを怠ったまま建築を強行したりするケースが後を絶たないなど、条例の形骸化が問題となっているため提案に至った。


提案理由説明にある現行条例の「形骸化」とはどういったことか。

建築主側が条例を遵守しなかったり、条例の抜け道を使い、住民への十分な説明や話し合いを怠ったまま建築を強行したりするケースが後を絶たず、とりわけ条例の中でも事前説明が形骸化され、条例第6条が定める「相互の立場を尊重し、互譲の精神をもって、これを自主的に解決する」という土台が危うくなっている。


改正案で近隣住民にくわえて周辺住民を新たに設けた理由は。

現在の条例は建物から15m以内などで「日照」を想定した影響が中心。しかし、私たちが紛争にかかわった経験、および弁護士・住民・住民団体からの聴取にもとづけば、工事車両の出入り、圧迫感、付属設備など影響を心配する住民はその外にもいることが多いため、説明会開催要求に限り、対象となる住民の範囲を広げることとした。


周辺住民の範囲を建物から50mとした理由は。

私どもが紛争にかかわった際に説明会を求めている住民が実際にどの範囲に住んでいるかから出発し、他の政令市でも「近隣住民」とは区別してより広い「周辺住民」の概念をもうけ、50mとしている例があり、弁護士・住民団体にも意見を聞いて、この線引きを妥当と判断した。


改正案と同様の条例を設けている自治体は他にあるのか。

住民から説明会開催要求があった場合に開催を条例で義務付けている自治体は政令市では仙台市、静岡市、広島市。他の自治体についてはすべてはわからないが、私たちの調査では東京都の荒川区、埼玉県の戸田市など。


改正案では住民から説明会の開催要求があれば、建築主側に開催が義務づけられる。求められれば際限なく応じなければならないか。

現行条例でも説明そのものは義務規定。市の「解説」でもその趣旨を「計画の周知を図り、計画に関する疑問や不安を解消するための話し合いのきっかけとすることを目的」と定め、説明を受けるのはほとんどの住民にとって初体験で専門知識をもっていないとして「そのような相手の立場を考慮して丁寧でわかりやすい説明を心がけてください」とある。住民がいったんひきとって専門家に話をきいてまた説明を求めることもあるだろう。この立場で建築主等は住民に説明する責任を果たすべき。同じ規定をもつ他の自治体にも調査をしたが、基本的にこの立場で運用している。新宿区では区の説明ホームページで「説明会は何回開く必要があるのか」という問いに「条例では回数にきまりはありませんが、建築主には説明責任がありますので住民要望に対応してください」とある。もちろん、妨害する意図など、悪意で際限なく要求するようなやり方は許されない。


改正案では説明会の議事録に参加者全員の署名を添付することが義務づけられる。なぜ全員の署名を求める必要があるのか。

現行条例でも市の「解説」で、説明会での出席者や発言を記録し双方で確認したうえで報告することを建築主側に求めている。「解説」では「双方で確認しておくことで、言った・言わないなどのトラブルが避けられる」としている。

ところが私どものかかわった紛争で、建築主等が一方的にまとめた議事要旨をつけて市に報告していた事例があった。事実上虚偽の報告といえる。こうした立法事実に裏付けられてもうけた規定。説明会参加者が発言したことが記載されているかどうかを双方で確認する意図で参加者全員の署名を求めた。全員であるのは、団体なら代表者がいるが、説明会は必ずしも団体ではなく住民が開催要求をすることになるので、便宜上全員の署名を求める必要があったから。


署名については除外規定を設けているが、署名をしなくていい人というのは、どういう人を想定しているのか。

この署名は契約や合意ではなく、発言の正確な記録の確認だけであり、常識的に考えて署名をしてもらえると考える。「正当な理由なく」とは、着工の意図的遅滞など妨害する意図で署名しない、趣旨を理解せず署名しないなど。「その他特別な事情」とは、何らかの事情でその後連絡がとれない、中途退席・入場したため確認する意思を示せないなど。


全員の署名がとれなかった場合、建築計画はすすめられないのか。

除外規定をふまえればあくまで必ずしも全員の署名がなくても規定には違反しない。また、条例13条2により建築主等が市に対して事前説明の「報告」ができなければ確認申請には進めず、建築計画は止まることになる。しかし、新たにもうける議事録提出は義務ではあるが、前述の「報告」には含まれていないので、仮に議事録がなくても計画をすすめること自体は可能である。この条項を新設することで、建築主側が仮に一方的な議事録を提出した場合には条例に違反していることが社会的に明確になるので、建築主側が虚偽の議事録資料を添付しようとする行為に対しては抑止効果が期待できる。


署名提出を義務づけると個人情報の提供に抵抗を覚える人もいると思うがどうか。

△当然個人情報の取り扱いには法令に則って厳格にしてもらうことは前提。もともと現行条例でも事前説明を行う際には、名前の聞き取りに努めるようにされている。しかしどうしても個人情報の観点から署名を提出したくないという市民がいれば、「正当な理由」とすべきと考える。


◯緑とネット(荒木龍昇議員)条例改正が必要だとするにいたった福岡市の状況はどのようなものか。

△共産党(中山郁美議員)本市においては、中高層建築物、ワンルーム形式集合建築物等の建築に係る建築主と周辺住民との紛争を予防し調整を図るための条例が制定されている。しかし、建築主側が条例を遵守しなかったり、条例の抜け道を使い、住民への十分な説明や話し合いを怠ったまま建築を強行したりするケースが後を絶たないなど、条例の形骸化が問題となっている。


条例改正でどのような効果が期待できるか。

この改正をおこなうことで、権利を有する住民の範囲を広げ、建築主側に説明会の開催や市の指導を義務付けることで、建築主側により明確に説明責任を果たさせ、それにより住民側の納得も高まることから、条例第1条に定める「市民の良好な近隣関係を保持するとともに、安全で快適な居住環境の保全及び形成に資する」ことができると考える。


他政令市の条例においてどのような取り組みがあるか。

住民の範囲については、福岡市は「近隣住民」という、マンションの日影になるエリアを中心にした住民しか条例の対象にしていないが、たとえば横浜市・川崎市・名古屋市では「近隣住民」とは別に「周辺住民」という規定をもうけ、建物から50mまで広げたり、テレビの電波受信障害がおきる範囲まで広げたりしている。住民からの説明会開催要求については、静岡市、広島市、仙台市で開催を義務付けている。横浜市では一定規模以上であるが、住民からの開催要求があった場合は説明会を開催するだけでなく、建築主以外の対策用企業が出てくるのを防ぐために建築主の出席も義務付け、説明会を開かない場合には措置命令を出せるようにし、それでも実施しない場合には社名公表までできるようになっている。


福岡市の住環境について所見を求める。

私たちもマンション建設をめぐる紛争にかかわり業者の横暴に相当心を痛めてきた。非常に多いのは住民への説明を形ばかりのアリバイにして、とにかく条例の字面だけをクリアして計画を強行する業者の多さ。本来なら住民合意をマンション建設の要件にする改正を盛り込みたいところだが、与党のみなさんとも共同してこの横暴を止めるために、そこまではふみこまず、せめて住民の求めにもとづいた、まともな説明会を開催させるという、他の自治体では当たり前にやっていることを実行させ、そこにうそ偽りのない議事録をつけるという、人間として最低限のことを実行させるというきわめて控えめなものを提案させてもらった。しかし、この最小限のことをおこなうだけでも、業者の横暴をおさえ、条例6条にある「相手の立場を尊重し、互譲の精神をもって、これを自主的に解決する」ということが前進し、ひいては条例1条の理念に資すると確信する。


「福岡市建築紛争の予防と調整に関する条例」の改正案提案理由説明(2021年12月16日 松尾りつ子市議)


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