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政策と活動

2024年2月5日

2024年能登半島地震を受けた、福岡市の防災対策強化への提言

日本共産党福岡市議団

今年1月1日に発生した能登半島地震について、わが党は被災者支援に全力をあげています。同時に、この災害は防災上の多くの新たな問題を明らかにしつつあり、福岡市民からも「福岡市では大丈夫か」という不安の声が多く寄せられています。

わが党市議団の市の防災対策に対する基本的な要求は、昨年12月6日に髙島市長に提出した「2024年度予算編成に関する申し入れ」のうち、「3、ムダな大型開発をあらため、市民の生活・安全優先のまちづくり」の(14)防災の項で26点にわたって示しています。その一部だけを紹介すると、次のとおりです。


  • 「自助・共助」の押しつけでない、市の責任を中心にした「地域防災計画」への見直し。
  • 津波避難ビルの確保、ハザードマップへの記載など、津波避難対策の強化。
  • 市の責任による、避難経路・場所を記した校区ごとのハザードマップの作成・配布。
  • 土石流災害の特別警戒区域・警戒区域の安全確保の対策の強化。
  • 市指定の避難所数の抜本的増設。
  • ジェンダーに配慮した避難所への改善。
  • 福祉避難所の抜本増。福祉避難所への直接避難の検討。
  • 計画がなかった河川の整備計画の作成。雨水や貯水量を管理する流域治水の強化。
  • ハザードマップ作成や行政管理への転換など、ため池の災害対策の充実。

これらを含む26項目の要望を前提とした上で、わが党は能登半島地震の教訓と課題を汲みつくし、急いで本市の防災対策に反映させていく立場から、本市の新年度予算編成を前にして、以下の点を強調し、補強して提案します。


地震の想定を見直す

石川県は「地域防災計画」を昨年修正しましたが、地震想定は27年前から変えておらず、今回の能登半島地震は、地震の規模、人的被害、建物の全壊棟数、火災の発生件数などがいずれも事前の想定を大きく上回りました。福岡市・県も12年間想定を変えていません。こうした中、2017年に国の地震調査研究推進本部は、警固断層帯だけでなく、福岡市に甚大な影響を及ぼす宇美断層、日向峠—小笠木峠断層を「主要活断層」に追加し、いずれもマグニチュード7規模の地震が起きる可能性を指摘しています。詳細な調査を早急に行い、防災計画の想定を根本から見直すべきです。


避難者の想定を見直す

石川県で被災した7市町の総人口は15万人ですが、避難人口は発生1週間後でも2万6000人に及んでいます。本市の総人口はその10倍にもかかわらず、避難者数は能登半島と同程度の2万5000人としか想定していません。現在の地震規模を前提にするとしても避難者数を適切に見直すことが必要です。


公的な備蓄を抜本的に増やす

水や食料など災害のための備蓄について、福岡市は想定避難者(2万5000人)に自宅避難者等(5000人)を加えた3万人分が必要になると想定し、その3日分(1日当たり3食で27万食)を備蓄しているに過ぎません。能登半島地震では3日をはるかにこえて必要な物資が届きませんでした。前項の通り想定人数が少なすぎる上に、想定日数自体も過少であると言わねばなりません。

能登半島地震では厳冬の中、避難所の冷たい床に直に布団を敷き、体調を崩すケースが少なからず生じ、エコノミークラス症候群や感染症を防ぐ上でも段ボールベッドが注目されました。しかし、現在福岡市は、段ボールベッドについて「現在備蓄しておりません」と平然と答弁し(20年9月9日本会議)、今も公的備蓄はゼロのままです。

市はこうした備蓄の少なさについて“国や他自治体から届く”、“民間企業との協定があるから大丈夫”などとしていますが、「可能な範囲で協力していただくこととなっておりますので、調達可能な数量は定めておりません」(前掲答弁)と述べている通り、数量の把握や確保にすら関心を寄せていない無責任ぶりです。

民間企業や国頼みの姿勢をあらため、市として公的な備蓄を抜本的に増やすべきです。


トイレ対策を強化する

能登半島地震ではトイレを流す水が不足し、道路の寸断で仮設トイレの設置が大幅に遅れたために、「ごみ袋の中に用を足し、1か所に捨てている」(輪島市長)などの悲惨な状況が続きました。トイレを我慢するために必要な食事や水分が取れずに体調を崩す例も続出し、感染症も拡大しました。

福岡市では携帯トイレ(便袋)は47万回分しか備蓄されておらず、1人1日7回使用する場合(日本人の1日平均トイレ回数は5〜7回)、仮に3日間3万人という市の想定を前提としても63万回分が必要であり、圧倒的に不足します。簡易トイレ(箱型トイレ)は52個しか備蓄がなく、大人用のオムツや尿取りパッドなどはまったく備蓄がありません。

また、避難所となる市内の小・中学校208校中、マンホールトイレが整備されているのは5校(2.4%)に過ぎず、しかも下水道施設が被災すれば利用できません。2022年6月に総務省が示した指針では、マンホールトイレについて合併浄化槽を利用した「貯留型」を「有効」としています。

携帯・簡易トイレおよび大人用オムツ等の備蓄の抜本増、「貯留型」を含めたマンホールトイレの早急な整備を行うべきです。


学校体育館への冷暖房設置、断熱化を急ぐ

能登半島地震では厳冬期での避難となり、低体温症が大きな問題となりました。災害時の避難所として活用される福岡市の学校体育館にもエアコンが設置されておらず、断熱化も施されていません。ところが福岡市と教育委員会は「大量のエネルギー消費が必要となることや整備に多額の費用を要することなどから、今後の検討課題であると考えております」(22年10月7日教育長答弁)として消極的な姿勢です。

しかし、今回のような冬場や夏場に災害が発生した場合を想定すれば、避難者の命と健康を守る観点から学校体育館へのエアコン設置と断熱化は最優先の課題です。


住宅の耐震化を促進する

能登半島地震では「(珠洲)市内の6000世帯のうち9割が全壊またはほぼ全壊だ」(同市長)とされ、金沢大学の調査によると同市の木造家屋100棟のうち約40棟が全壊状態で、その半数が1981年の「新耐震基準」導入後に新改築されたものだったとされます。耐震化されていない住宅はもちろんのこと、耐震基準を満たしている住宅も大きな被害を受けていることが判明しています。

福岡市内の住宅については約10万戸が耐震基準を満たしているか不明(2021年3月改訂の「福岡市耐震改修促進計画」より)とされています。それに加えて、新耐震基準を満たしているとされる住宅67万戸についても、震度6強を超えるような大地震に対して必ずしも安全とはいえないことはもはや明らかです。東京都では昨年、2000年以前に建築された新耐震基準の木造住宅についての診断や改修について補助事業を開始しています。

よって、市内建築物の耐震化を早急に促進するために、本市として無料の簡易診断を行うとともに、改修補助額を抜本的に引き上げるべきです。あわせて対象外とされている1981年以後に建築された新耐震基準の住宅にも対象を拡充することを求めます。

家屋全体の耐震化は費用がかかるために踏み切れない世帯も少なくありません。そこで、寝室だけを耐震化する「耐震シェルター」や寝床の上をフレームで覆う「防災ベッド」などが注目されています。これについての補助制度はありますが、周知が不十分なこともあり、あまり使われていません。「耐震シェルター」「防災ベッド」についての啓発とあわせ、補助制度を充実させ、普及を進めることが必要です。


住宅再建支援を充実させる

能登半島地震の住宅被害は6万4691棟に及びます(1月31日現在)。

被災者生活再建支援法にもとづく被災者生活再建支援金は最大でも300万円と少なく、加えて、支援金が法改正時の2007年に比べ、建設資材は151%も値上がりしており、支援金額の現状維持では大幅な目減りとなります。さらに「全壊」もしくは「大規模半壊」に限られ、「半壊」「一部損壊」は対象外とされています。災害救助法にもとづく「応急修理」については「半壊」「一部損壊(準半壊)」についても一定の支援が受けられますが、支援額の上限が小さい上に、「準半壊」扱いされない「一部損壊」には支援がありません。

また、県にも「福岡県被災者生活再建支援金」があり全壊世帯には最大200万円が支給されますが、金額が不十分な上、損害割合が30%未満のような一部損壊は、やはり対象外になっています。

2019年12月の福岡市議会では、「被災者生活再建支援法の見直しを求める意見書」が採択され、「被災者生活再建支援法を抜本的に見直し、適用対象を拡大し、支給金額を増額」することを国に求めています。

国は能登半島の地震の生活再建支援として、300万円を新たに上乗せすることを表明しましたが、今回の地震に限って、しかも高齢世帯に限定されるなど、まだまだ不十分なものです。今回の措置の法制化を含め、国の支援額を600万円に引き上げるなど、国・県に対して住宅再建支援をさらに充実するよう求めるべきです。

福岡市独自の制度は貸付関連以外には、「福岡市災害見舞金」があるだけで、全・半壊世帯に最大6万円を支給するだけです。この制度を抜本的に充実させることが必要です。


「3、ムダな大型開発をあらため、市民の生活・安全優先のまちづくり」(14)防災



以上



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