2013年8月27日
「区役所窓口サービス向上に向けた取り組み」に関する申し入れ
福岡市長 髙島 宗一郎 様
日本共産党福岡市議団
団 長 宮本 秀国
副団長 星野美恵子
幹事長 中山いくみ
熊谷 敦子
綿貫 英彦
福岡市は「行財政改革プランに掲げられた『市民の納得と共感』を得るため」として、①区役所窓口接遇評価ボタン、②区役所窓口サービス実態調査、の2つを今年度293万円の予算を付けて新たに始めています。「評価ボタン」はすでに7月に設置されて評価が始まっています。また、「実態調査」は8月に事業者募集を始め9月上旬に契約締結の予定となっています。
「評価ボタン」については、区役所市民課窓口にタッチパネル式のボタンを置き、窓口の対応について市民が「良かった」と思えばこれを押して、押された数が示されるというものです。南区役所では「よかった」とともに「残念」のボタンも押せるようになっています。
7月の実績を見れば、区役所ごとの来訪者数とボタンを押された数には関係性がまったくなく、とても科学的な評価方法とは言えません。市民局は「職員のモチベーションの向上」などの効果を見込んでいるようですが、それは期待できません。「単純に横並びでの比較は行わない」としていますが、数字を出す以上、競争に駆られるのは必至です。
「実態調査」については、各区課税課、市民課、保険年金課などの窓口25カ所を対象に、民間業者に委託するものです。業務委託の「提案競技実施要領」によると、「個々の部署に調査日を事前に通知の上で、調査員が調査であることを明かさずに、本市が指定する一般的な質問による窓口での個別対応や電話対応の実態調査を行う」、「個別のやりとりの聞こえない待合スペース等から、窓口職員の服装や来客者への対応状況、待合スペース環境や案内表示などについて、実態調査を行う」とされています。
民間の調査員が密かに窓口職員に接触あるいは監視して評価点数を付けるという、まるでスパイのような調査方法に他なりません。また、市民のプライバシーに関わる書類ややり取りを委託業者が見聞きすることになれば人権侵害の疑いも生じます。しかも、委託業者が付けた点数は報告書となって本庁に提出され、表彰式や報告会まで行うというのは、ランキング付け、競争です。これでは窓口職員を委縮させることは必至です。さらに、評価項目も「挨拶や話し方、態度、印象」などとされていますが、区役所窓口の職員に求められるのは、「全体の奉仕者」である公務員として住民奉仕に徹することであり、いわゆる「接客」のスキルではありません。こうした調査は実施すべきではありません。
以上のように、今回の区役所窓口に関わる2つの取り組みは、公共サービスの向上に寄与しないばかりか、悪影響や人権侵害の懸念があるなど重大な問題があります。その根本には高島市長の「公務員観」の歪みがあると言わなければなりません。
言うまでもなく、自治体の役割は住民の福祉の増進であり、これに仕事として専念する公務員は、本来、接客の上手さよりも、困り事を抱えた市民に寄り添い問題を解決するために努力する姿勢こそ評価されるべきです。懇切丁寧な対応の結果、市民から「ありがとう」と感謝されることこそ、職員のモチベーションを上げるものです。その点で困難をもたらしているのが職員の「多忙化」であり、その解消のための増員こそ必要です。さらに、サービス向上のためにどうすればよいか民主的に話し合うことのできる職場環境が保障されるべきです。行政のトップたる市長がしなければならないのは、市民と接する区役所窓口の職員から出される要望や意見をしっかり聞き、それに応えて必要な改善の手立てを打つことではないか――日本共産党市議団はこの基本に立ち返るよう求めるものです。
したがって、わが党市議団は、今回実施の「評価ボタン」は速やかに中止、撤去するとともに、「実態調査」は実施を取りやめ、委託業者選定を中止するよう強く要請致します。
以上