2010年2月5日
記者会見資料
住宅リフォーム助成条例を議員提案します
日本共産党福岡市議団
私たち日本共産党福岡市議団は、この間、地元中小零細建設業の仕事確保など経済対策を目的とした「住宅リフォーム助成制度」の実現を求めてきましたが、議員提案権を行使して、きたる2010年予算議会に「住宅リフォーム助成条例案」を提出します。
切実な中小業者の願い——議会としてどうこたえるか
昨年来の深刻な経済危機のもとで、失業や倒産は底なしの悪化が続いています。日本共産党は、これまでの政治が進めてきた大企業奉仕型・外需依存型の経済対策から抜本的に切り換え、内需拡大の経済対策を市政でも国政でも要求しています。今回の「住宅リフォーム助成条例案」はその具体的提案の一つです。とくに建設不況と言われる事態が続き、中小零細建設業者の廃業・失業が相次いでおり、少なくない職人さんが住居を失って生活保護を受けざるを得なくなったり、自ら命を絶つ人が増えたりする状況です。
こうした中、住宅リフォーム助成制度の創設で中小業者の仕事を確保してほしいという切実な声があがっています。中小業者のみなさんが結集する福岡県建設労働組合や民主商工会は昨年、「住宅リフォーム助成制度実現する会」を立ち上げ、市に対する要望活動を始めました。この声に市議会としてどう応えるのかが鋭く問われています。私たち日本共産党は、苦境に喘ぐ中小建設業者のみなさんから深刻な実態や切実な要望をたくさんお聞きしながら、住宅リフォーム助成制度の実現にむけて調査・研究を重ね、他都市の先進例も視察・調査し、市議会ではこの1年間に3回と連続的に質問し、この実現を市に迫ってきました。
「住宅リフォーム助成制度」とは
「住宅リフォーム助成制度」とは、市民が市内の中小建設業者を使って住宅のリフォームを行う際に、工事費の一定割合にあたる助成金を支給する制度です。中小業者の仕事確保や地域経済の活性化策として、全国19都道府県の83自治体で実施されています(全国商工新聞調べ、2009年5月11日現在)。さらに経済危機対策として中小業者の営業を支援する目的で、新たに制度を創設したり拡充したりする事例が広がっており、最近では、筑後市が昨年8月から開始し、秋田県が県段階では初めて今年3月から実施する予定です。また政令市でも、札幌市議会が昨年11月に住宅リフォーム促進条例を全会一致で可決し、制度実施にむけて検討されているようです。
住宅リフォーム助成制度ができて中小業者の仕事が確保されれば、職人さんを含む労働者の雇用を守ることもでき、生きる希望にもなります。さらに、中小建設業者の経営が好転すれば市としても税収が増えることにもなります。今こそ中小業者の切実な願いにこたえて住宅リフォーム助成制度を実現する時です。
条例案のポイント
今回私たちが提案する条例案は、助成対象をエコなどに限定せず、どのようなリフォームでも助成を受けられる制度です。住宅の外側、内装の改修はもちろん、バリアフリー化、太陽光・太陽熱発電設置、耐震・耐熱・防音、防犯のための工事、駐車場の工事も対象とします。マンションでも専有部分であれば対象です。助成金は工事費の1割で、上限30万円。地元の中小建設業者の仕事確保が目的ですから、大手住宅メーカー・建設大企業に発注した場合は助成が受けられません。詳細については、条例と規則で定めます。
「一石四鳥」の制度
「住宅リフォーム助成制度」には4つの目的とメリットがあります。
- 中小業者の仕事確保
住宅リフォーム工事の多くは小規模であり、地域の工務店や大工など中小零細建設業者に発注されることになります。助成制度の創設を機にこれまで控えていたリフォーム工事を発注する市民も増えることは間違いなく、中小業者の仕事が確保される効果は絶大です。業者にとってもリフォーム工事を勧める営業活動の有利な材料となります。 - 大きな経済・雇用効果
工事費の1割を助成する制度ですから、単純計算で、5億円の予算で50億円以上の工事が発注されるということになります。さらに、リフォームを機に家具や家電、カーテンなどを買い替えるなどの波及効果もあります。経済効果は 13.9倍(宮崎県日南市)、20倍というデータもあり、少なくとも70億円の経済効果が生まれることになります。建設労働者や職人さんの雇用維持、創出にもなります。 - 環境・温暖化対策
いまや地球温暖化防止や資源の有効活用は人類的課題となっており、住宅についても「壊して新築」から「より良いものを長く使う」への転換が叫ばれています。住宅リフォームは地球に優しいものとしても大いに促進されるべきです。条例案では断熱工事や太陽エネルギー導入工事を助成対象にしていますが、これらは家庭の電気・ガスの使用量を減らす効果もあります。また、地元産の材木の利用促進にもつながります。 - 安心・安全な住居
安心して住み続けられることは市民みんなの願いです。耐震を強化したり、防犯機能を強化したりする住宅改修を行うことによって、安心・安全なまちづくりにも寄与するものです。
国の住宅版エコポイントと市の新規事業について
報道によると、福岡市は国の住宅版エコポイントが適用される住宅リフォーム工事に、独自の補助金を上乗せする新規事業を予算に盛り込んでいるとのことですが、これは住宅リフォーム助成制度を要求してきた建設業者のみなさんと私たち日本共産党の要求が一定実ったものとして歓迎します。同時に、これまで市当局は「特定業種への支援は不公平だ」「住宅という個人資産へ助成は相応しくない」と言って住宅リフォーム助成を拒否してきましたが、その理由は完全に崩れました。論戦では勝負が付きました。
一方で、この事業は対象が限定されるために中小業者の仕事確保という点でどれだけ効果があるのか分かりません。事業の抜本的な拡充のためにも対象を限定しない「住宅リフォーム助成制度」の創設こそ必要だと言うことを強調しておきたいと思います。
各会派の賛同を呼びかけ成立をめざします
日本共産党市議団が議案提案権を行使して条例案を提案するのは2002年の介護保険料・利用料減免条例案以来の8年ぶりです。この時は条例案は可決されませんでしたが、翌年になって介護保険料の独自減免制度が実現しました。市民の高まる世論と運動にこたえて、議案提案権も活用して、切実な要求を実現させていくことはわが党の重要な役割です。今回提案する「住宅リフォーム助成条例」をぜひとも成立させたいと考えています。すでに市議会各会派には案文を提示し、共同提案と賛同を呼びかけています。市民のみなさんのご理解とご協力をお願いするとともに、ご意見、ご要望もお寄せいただきたいと思います。
福岡市住宅リフォーム助成条例案 骨子
- 目的
この条例は、市民が市内施工業者により、自己の居住する住宅等の改良・改善工事を行った場合に、その経費の一部を助成することにより、市民の生活環境の向上に資するとともに、多岐にわたる業種に経済効果を与え、市内産業全体の活性化を図ることを目的とする。 - 助成対象者
市内に住所を有し、対象住宅の所有者であること - 助成対象住宅等
助成の対象となる住宅等は、市内に存する個人住宅及びこれに付属する施設とする。 - 助成対象工事
(1)屋根のふきかえ、外壁の改修、ベランダの改修、玄関フード設置・補修等
(2)壁紙、天井、ふすまの張り替え、カーペット、フローリング、畳の交換等模様替えのための工事
(3)バリアフリー対応型住宅改修工事
その他 太陽光・太陽熱発電設備、耐震、駐車場、防犯などの工事
- 助成金の額
助成金の額は、対象工事に要した経費の100分の10に相当する額とし、30万円を限度とする。 - 理由
長引く不況で、市民の所得減並びに市内経済の低迷が続いているもとで、市民の住宅リフォームの願いにこたえ、生活環境の質の向上を図り、市内産業全体の活性化を促すため、本案を提出する。