福岡市議会議員 熊谷敦子
高すぎる国民健康保険料の引き下げを
2007年9月30日「福岡民報」寄稿
はじめに
「福岡市はなぜ、こんなに国保料が高いのだ」「私は国保料が高くて払えず、資格証を持っている。もし、差し押さえに来ても、とっていくものがないよ。私の身を切ってもっていってくれ」「うちの夫は厚生年金で25万ほどなのに、5万6千円も払っている。家族3人は医療費が3割負担なのです。ひどいですよ」。街頭の署名活動で、訪問先で口ぐちに返ってくる市民の怒りの声です。
そのような中、今福岡市では、高すぎる国民健康保険料をなんとか引きさげようと、民商や社保協などの民主団体と日本共産党で「国保をよくする会」を結成し、14万筆の署名を集めて提出しようと運動が展開されています。今回の運動は以前の「人工島住民投票条例直接請求運動」「オリンピック招致反対運動」に引き続く住民運動で、以前と同様に各区にも「よくする会」つくられています。現在それぞれの会はさまざまな運動をしています。老人会訪問、街頭や商店街での連日街頭宣伝、共産党では後援会ニュースを届けながらの訪問などをしています。どこでも歓迎され、反響の大きさに驚いています。私は地域支部と2時間で50軒訪問し、「署名が出来ましたら、団地のIさんのポストに入れてください」と頼んでまわると、多くの皆さんから返って来ます。また私の町内ではどこでも対話が弾み、一軒で65筆集めてくださる方も生まれています。周船寺支部のMさんはJA農協や商工会議所にも訪問するなど、広がりはじめています。
どうして福岡市の国保料は高いのか
もともと国民健康保険は国民皆保険の土台をなす医療保険です。その国保法第1条では「この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする」として、単なる「助け合いの制度」ではなく社会保障であることがうたわれています。
ところが福岡市ではどうなっているでしょうか。福岡市の国保加入世帯は22万8,800世帯、被保険者数26万4,900世帯、45万4,700人です。高すぎて払えない世帯は56,210件、率にして21.86%、実に5件に1件は払えない状況です。
また保険証の取り上げ件数も政令市ではトップの14,510件になります。資格証を持った方が病院にも行けずておくれになった事例、病気になっても行けずに友人から薬をもらって飲んでいるという事例が昨年のNHKスペシャルでも、最近ではKBCの報道ステーションでもとりあげられました。現在は被保険者の多くが高齢者、無職者、非正規雇用で雇われている若者などで、年所得 200万円以下の人たち80%で支えられている保険となっています。ところが福岡市は、「相互扶助の制度だ」といって「負担軽減は財政上困難」などといっています。
さて、ではどうして福岡市の保険料はこんなに高いのでしょうか。私は初当選後の6月議会で国保問題をとりあげました。
福岡市が高いことの理由にしているのは①総医療費が高いこと②収納率が低いこと③激変緩和措置分を保険料に積算していることです。そこで私は、資料を取り寄せ、他の政令市といろいろな分野で比較をしてみました。第1の総医療費という点では、北九州市は一人当たりの医療費は521,046円、福岡市は433,436円です。ところが保険料を見てみると北九州市では一人あたりの保険料は61,793円、福岡市は72,206円。一人当たりの医療費は北九州市のほうが高いのに、保険料は北九州市のほうが低いのです。「医療費が高いから保険料が高い」という福岡市の論法はくずれました。
第2の理由にあげた収納率の低下は、福岡市自身の責任です。福岡市の収納率はこの間9割を切っています。収納率が悪ければ国からの財政調整交付金がカットされてきます。いわゆる「ペナルティ」です。約9億円が福岡市には入ってきません。福岡市ではこの間収納率を上げるために、国に先駆けて資格証を発行してきました。(国は1997年に小泉厚生大臣当時、自民、公明、民主党の賛成で資格証の発行を義務化する)しかし、収納率は上がらず、逆に低下の一途をたどるばかりです。
一方、福岡市の保険料の算定の仕方はどうなっているのでしょうか。賦課すべき保険料は9割しか払わないことを前提にして100/90をかけています。それに法定減免額、市の独自減免額などを加算したうえで保険料の算出をしているのです。市の独自減免については、他の政令市をみますと、大阪市では約62億円、京都市では約28億円、名古屋市では約19億円を一般会計から補てんしています。ところが、福岡市では、一般会計からは1億5千万程度で、国保料に上乗せしている額は約14億円になります。こうした市独自減免は福祉の施策の一つですから、他都市同様に一般会計から補てんするのが当然のことではないでしょうか。
国保料の引き下げは可能
一般会計からの国保会計への繰入は札幌市では3.37%、名古屋市では2.9%、福岡市では2.62%です。ちなみに福岡市でも札幌市なみに一般会計から繰り入れをすれば、約52億円増えることになります。そうすれば、一人あたり一万円以上の保険料の引き下げができるのです。
今年は人工島予算が226億円、国保の補助金は法定繰入金を除けば 70億円です。福岡市にないのはお金ではなく「福祉のこころ」。人工島などのムダな開発や議員の海外視察につぎ込む税金があるなら、市民の命と健康を守るためにこそ、税金をいかすことが、当然ではないでしょうか。
当面の熱い焦点のこの国保料引き下げ運動を、国保料の引き下げを成功させた茨木市のように展開して、国保を引き下げると同時に、この運動の中で、党を語り、党建設をしていくことが重要です。