追及リード党福岡市議団
元市議の関連会社介在。転売益1億8000万円。
10億円の売買 7億に関与
博多湾の人工島事業(福岡市、総事業費4600億円)をすすめてきた第3セクター・博多港開発株式会社(志岐真一社長)が、ケヤキ600本と庭石1万トンを10億円で購入していた問題は、元市議の関係する複数の会社が取引に介在し、判明しているだけでも1億8千万円の転売益を得ていたことが明るみに出ました。1月27日の臨時議会では、ケヤキ・庭石問題を集中審議する調査特別委員会への付託が決議されました。
事件は、博多港開発が、使うあてもないのにケヤキを95年200本、99年300本、01年100本の計600本(約6億2千万円)と、庭石1万トン(約3億6千万円)を合計約10億円で購入していたもの。昨年10月の決算特別委員会で日本共産党の原田祥一市議がとりあげて以来、市民の大きな批判を呼び、11月の市長選でも争点になりました。
《数十倍の値段で買われていた》
潮風に弱いケヤキを大量に購入し、実際に54本試験植栽した人工島で3本が枯死していること、ケヤキも庭石も数十倍の値段で買われたこと、市が博多港開発にたいしてケヤキを買い戻す覚書を出していたことなど、疑惑がいくつもうまれています。その裏にある中心問題が政治家の関与でした。こんな不可解な事態は、政治家の「利権あさり」を抜きに考えられないからです。
12日付「読売」が「庭石転がし“億の利ざや”」とスクープしたのを皮切りに、元市議が筆頭株主をつとめる造園会社「海浜公園振興」の営業報告書にもとづいて、ケヤキ(99年購入分)と庭石それぞれの売買に同社が介在したことが明らかになりました。元市議に関係のある文具販売会社と学習塾経営会社が、ケヤキや庭石を売買するという奇妙な実態まで明るみに。その結果得ていた転売益は、合計1億8千万円以上にのぼることが分かりました。
党市議団が入手した営業報告書からは、95年、01年のケヤキ購入にも関与した疑いも読み取ることができます。10億円のケヤキ・庭石売買のうち7億円が疑惑まみれといえます。(図↓)
《局長働きかけ 一度は断ったが》
元市議が現職だった93年に博多港開発にケヤキ購入の話をもちかけたことも、当時の役員らの証言で明らかになりました。しかも同じ時期に、当時の港湾局長・志岐真一氏も購入を働きかけていますが、志岐氏はのちに助役をへて博多港開発社長に天下りました。働きかけを一度は断った博多港開発ですが、再度要請する形で登場したのが桑原敬一・前市長です。1回目のケヤキ購入の契約をしたのは、その2カ月後です。
元市議らが働きかけた時期、人工島はまだ埋め立て工事が着工(94年7月)すらしていません。まさに「利権あさり」は、工事着工前から始まっていたわけです。
《埋め立て土砂利権の指摘も》
人工島をめぐっては、埋め立て土砂の利権も指摘されています。人工島(博多港開発工区)の「新事業計画」を4200万円の高値で受けたコンサルタント会社「ガナス」の社長は、山崎市長自身が親しく付き合ってきたことを認めている人物です。
ケヤキ・庭石の売買時期は、元市議が2回にわたって衆院選に出馬する直前であり、カネの流れとその行く先など疑惑はさらにふくらんでいます。まさに人工島は丸ごと「疑惑の島」です。
5人から7人になった力発揮
購入ルート現地調査が決定打に
《党市議団に告発文書が》
日本共産党の福岡市議団が人工島事業のケヤキ・庭石疑惑を取り上げるきっかけになったのは、一通の告発文書でした。ほかならぬ日本共産党に告発が寄せられたのは、党市議団への期待と信頼のあらわれです。
ムダな大型公共事業優先の福岡市では、この4年間だけでも、総務企画局長の河本建設贈収賄事件、市発注の下水道工事をめぐる副議長のあっせん収賄事件など汚職・腐敗事件が相次ぎました。これにたいして党市議団は、調査特別委員会の設置を要求するなど政・官・業の癒着をきびしく追及し、論戦をリードしてきました。
企業・団体献金を受け取らない清潔な政党としての徹底した活動は、4年前の選挙で5人から7人に躍進した力とあいまって大きな力を発揮し、汚職・腐敗事件を追及する「公共事業不正再発防止等調査特別委員会」の設置につながったといえます。今回、ケヤキ・庭石疑惑の集中審議の場となり、名称も「公共工事不正再発防止及びケヤキ・庭石購入等調査特別委員会」と変更されました。
《現地と連携 マスコミ注目》
ケヤキ・庭石疑惑での調査は、日本共産党の衆院九州・沖縄ブロック事務所や現地の地方議員とも連携しておこないました。マスコミからも「さすが共産党ですね。しっかりした調査網をもっていますね」と注目されました。
現地調査はケヤキ・庭石の購入ルートにそって4回おこない、林野弘済会熊本支部(熊本市)、宮崎北部森林管理署(日向市)、ケヤキの販売元(宮崎市)、庭石の販売元(古賀市、熊本県球磨郡)、ケヤキの保管場所(鹿児島県鹿屋市、串良町)など九州一円にわたりました。
そのなかで、ケヤキを山から掘り出した時点で価格は1本4、5万円であること、保管されたケヤキが幹の上部をバッサリ切り落とされた「切りぶかし」で二束三文の価値にしかならないことなどが次々わかり、最初の質問のときは調査することすら拒否していた市当局も、自ら調査せざるをえなくなりました。
追い詰められた市は、博多港開発の調査報告をそのまま引きうつし、ケヤキ・庭石の購入は「妥当だった」と開き直りましたが、これは人工島推進の会派からも、「経緯が不明確」「管理・契約がずさん」ときびしく批判されました。
救済に2千億円投入なんて 市民参加で徹底究明を
《必要性も、実現性もない》
ケヤキ・庭石を購入した時期、当の博多港開発への融資を銀行がストップするなど、人工島事業は破たんが浮き彫りになっていました。
その救済にのりだしたのが山崎市長でした。30億円の増資と2百億円の緊急低利融資を決め、さらに「新事業計画」として、住宅建設や鉄軌道の設置など、ありとあらゆる手立てを講じて、博多港開発の工事区域に2千億円以上の税金・公的資金を投入しようとしています。
党市議団が一貫して主張してきたように、総事業費4千600億円を投じる人工島事業は、その必要性も実現性もないことがいよいよ明らかになっています。
1月16日、党市議団は山崎市長にたいして、政治家の関与について市長の責任でただちに究明すること、ケヤキ・庭石疑惑については弁護士や公認会計士など学識経験者をふくむ市民参加の第三者機関を設置して徹底究明し、市民への情報公開をおこなうこと、博多港開発の役員を特別背任罪で告発することなどを市長に申し入れました。
《社長解任では幕引けない》
博多港開発は、志岐社長が辞任することになりましたが、マスコミも「第三セクターのトップを引責辞任させることで、問題をうやむやにさせてはならない」(「西日本」1月15日付社説)と指摘するように、これで幕引きにすることは許されません。
ケヤキ・庭石疑惑究明のための特別委員会は、2月13日の集中審議に、西田藤二・元市議、志岐社長ら4氏を参考人招致しています。日本共産党市議団は、関係者が出席しない場合は、特別委員会に罰則のある地方自治法100条権限の付与を求めていくことにしています。
博多港開発への増資のうち約25億円については、今度の2月補正議会で審議されます。政治家の利権あさりの疑いがあるのに、税金を投入などとんでもありません。増資に賛成だった会派からも反対論が出され、「人工島増資に慎重論。事業継続、黄信号」(「毎日」1月21日付)と報じられています。
《党躍進こそ確かな力》
2カ月後にせまったいっせい地方選挙、日本共産党は、福岡市からの県議議席の獲得と、8人の市議団の実現をめざしています。汚職・腐敗、利権あさりを一掃し、ムダな大型開発をやめ、市民のくらし・福祉・教育を優先する市政をきずうえで、日本共産党の躍進こそ確かな力です。
ケヤキ・庭石事件チラシ(JPEG)