日本共産党福岡市議団 ひえじま俊和
公立保育所の民営化強行を許さないたたかい
「福岡民報」2004年9月号
政令市で最も少ない公立保育所をさらに削減
この4月、福岡市は「公立保育所の見直し」として、民営化の方針を突如うち出しました。現在21ヶ所の市立保育所を順次、民間へ移管していき10年間で7ヶ所程度にするというものです。しかしながら、福岡市内の保育所は民間保育所のほうが、137ヶ所と圧倒的に多く、中央区・南区・城南区には市立保育所が1ヶ所もないなど、政令市のなかでも最も公立保育所が少ないことがこれまでも問題にされて来ました。
しかも、他都市と比べて保育所一園あたりの入所児童が極めて多くなっており、増加する待機児の解消を「弾力化」と称して、定員増・分園化・大規模化などをおし進め「詰め込み保育」の現状にあります。
児童福祉法は「国及び地方公共団体は、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」と定めていますが、福岡市の保育行政は公立保育所は少なく、民間保育園は年々補助金が減らされ、2000人余りの子どもをあずかる無認可保育園には決まった財政援助もせず、全く公的責任を忘れた異常な実態にあると言わざるを得ません。
(表1「政令市の保育所比較」市職労)
「次世代育成法」を口実に、ねらいは市財政負担減らし
福岡市は「見直し」の理由として、2003年に成立した国の「次世代育成支援対策推進法」の言う「広くすべての子どもと家庭への支援」を行うためとしておりますが、そのことがどうして公立保育所を民営化しなければいけないのか、はなはだ理解に苦しむところです。同法に対して、我が党国会議員団は、その行動計画策定にあたって国民意見反映や財政措置、当該職場労働者協議義務付けなど積極的修正案を提示しました。ところが、小泉内閣は今年度から公立保育所運営費の国庫補助金を1661億円もカットして一般財源化するなど、次世代育成法とはおよそ相反する暴挙を強行したのであります。
こうした小泉「改革」に追随して福岡山崎市政は「市政経営戦略プラン」なるものをうち出し、財政健全化のため効率的・効果的行政運営の手法として「民間でできることは民間に委ねる」という仕組みをつくり出したのです。そして、その先導役が公立保育所の民営化であることは言うまでもありません。現に、4月6日の市長発表記者会見では、民営化によって「1ヶ所につき5000万円程度の経費削減」になると説明し、新聞報道でも「運営費八億円減」「270人の保育士の3分の2が配置転換」とあるように、今回の民営化の目的が次世代育成法を口実にして地域の様々な子育て支援サービスの充実どころか、保育にかかる市の財政負担を大幅に削減するところにあるのは明らかであります。
党市議団は、こうした民営化がいっそう公的責任を放棄し、保育水準を引き下げるものだと但ちに「撤回」を山崎広太郎市長に申し入れるとともに、6月議会では倉元達朗議員が質問追及しました。
パブリックコメント(市民意見)は「反対」の声が圧倒的多数
こうしたなか、市当局は「公立保育所見直し」(案)について、4月から5月の1ヶ月間、市民意見募集を実施し、この7月その内容を公表しました。1077名の個人・団体から1642件の意見が提出されていますが、圧倒的多数が民営化に対して不安・疑問・反対の声で埋め尽くされております。その主な意見を紹介すると「子育て支援でなぜ民営化なのかわからない」(55件)「公立保育所はベテラン保育士等で適切な助言とゆとりを持った保育ができる」(153件)「民間保育園の労働条件を改善する指標としても公立保育所の存続を」(28件)「民営化で減らすのではなく公立保育所をもっと増やすべき」と「21ヵ所の公立数は最低でも必要」(合わせて168件)、 「民営化で保育水準の低下が心配」(101件)「民間は営利目的のところもあり不安」(110件)「民営化は公的責任の放棄だ」(127件)、「民間になると保護者負担が増えるのでは」(35件)、「保育士の入れ替えや保育方針が変わると子どもたちが精神的に不安定に」(36件)等々であります。
ところが、市はこれらの民営化反対の声に対して、「保護者らの不安を解消すれば、方針を変更する必要はない」と開き直ってあくまでも来年度から民営化を強行する構えです。
民営化反対の全市民的運動を
いま、福岡市職員労働組合や現業職員労働組合などが「公立保育所をこれ以上減らさないで!」と民間私立保育園にも呼びかけて民営化反対の請願署名運動に立ち上がっており、6月議会には2300筆にのぼる署名が出されました。さらに早良区の脇山保育所保護者会をはじめ、各地の市立保育所から「存続」署名もとりくまれています。
党市議団は、これらの運動と呼応して、市立保育所の訪問調査や居住地域支部などで、民営化問題の学習会を組織するなど、全市民的な運動に発展させていくために行動を開始しました。折りしも、福岡市はこの8月「保健福祉総合計画の見直し」作業に着手し、子どもプランから高齢者プランに至るまで、社会経済情勢の変化、世代間などの公平性の確保をうたい文句に諸施策の大幅切り捨て計画を持ち出そうとしています。その突破口である公立保育所の民営化をストップするたたかいはまさに福岡市の社会保障を守る根源的な運動であります。
9月15日、請願署名の審査がおこなわれ、私は中山郁美市議いっしょに「民営化は市民がつよく反対し、議会無視のやり方も許せない。撤回すべき」と主張しました。その結果、継続審査となり、不採択を回避したことで、保護者や市職労関係者は大いにわき、運動をいっそう強めていこうとしています。