しんぶん赤旗 2002年8月6日
増える入園待ちの児童/保育園増へ関係者運動
国、自治体の責任は大きい
不況のもとで共働きが増える中、いま都市部を中心に保育園への入園を希望しながら入れない待機児童数(注)が増加しています。既存の保育園も定員増と定員の弾力化で、300人規模のマンモス保育園が存在するなど、保育園の質の低下も心配され、各地で保育園新設への願いがつよまっています。
厚生労働省が昨年10月に発表した「社会福祉施設調査」(2000年10月時点)では、全国の保育所定員に対する在所率が過去最高の98.9%にのぼっています。
九州の都市部では、福岡市110.6%、北九州108.3%、長崎市116.1%、熊本市111.5%、鹿児島市119.0%など、のきなみ定員を超過していることが明らかになっています。(国は、条件を満たせば定員超過を認めている)
こうした中、福岡市では、7月26日に児童福祉審議会が20年ぶりに認可保育園新設へ転換する答申を市長に提出しました。
福岡市では、今年4月時点で、待機児童が781人にのぼり、昨年同期(487人)より62%も増加。答申では、待機児童がふえつづけ、施設の定員増などでの対応が「限界に達している」と指摘。新設のほか認可基準を満たしている無認可保育園の認可などの整備方法をあげています。
同市では、長い間、保育関係者などが粘りづよいとりくみを広げるとともに、日本共産党も市議会でたびたび質問。昨年10月の政府交渉では、小沢和秋衆議院議員の協力をえて、市が国の最低基準すら守らず入所させている実態も明らかにして指導・改善を求めていました。
同市では、すでに新設にむけた検討を開始。九州の中心都市での変化だけに、今後の各地の動向が注目されます。
一方、保育園に入れない子どもたちが通う無認可保育所は、九州・沖縄で1797ヵ所あり、児童数は6万1004人(全国で約24万人)にのぼっています。
国は、無認可保育所に通う子どもは、待機児童数には含めていないばかりか、認可保育園の補完的な役割を果たしているにもかかわらずまったく補助をおこなっていないのが現状です。
「待機児童ゼロ作戦」をすすめている小泉内閣ですが、最近の厚生労働省の調査(今年4月に待機児が多い全国49市区から聞き取り)でも、保育所の入所児童数が増えているのに、待機児童が減っていないことが明らかになっており、責任がきびしく問われます。
しかも、国の規制緩和による民間企業の参入と効率優先の安上がり保育政策をうけ、各地で公立保育所の統廃合、民間委託など、国や自治体の責任を大きく後退させる動きがつよまっていることは重大です。
今後10年で保育所への入所児童が84万人増えるとの予測(昨年6月経済産業省の「男女共同参画に関する研究会」報告)もあります。
いま急がれるのは、国の責任で緊急に保育所の整備計画をすすめるとともに、低すぎる国の保育運営の基準を改善することです。
(注)待機児童数 2001年4月1日時点の全国の待機児童数は2万1千人。九州・沖縄では2374人。