トップ > 議会報告 > 2025年予算議会> 2025年度予算案・関連諸議案についての反対討論

議会報告

2025年予算議会

2025年度予算案・関連諸議案についての反対討論

2025年3月26日 綿貫康代議員

私は、日本共産党市議団を代表して、本議会に上程されております諸議案のうち、議案第32号ないし35号、37号、39号、41号、42号、44号ないし46号、48号、49号、51号ないし55号、58号ないし60号、72号、73号、80号、81号、83号、87号ないし90号、92号、93号について反対し、討論をおこないます。わが党の意見につきましては、代表質疑および補足質疑、分科会審査ならびに総会における質疑で述べておりますので、ここではその基本点についてだけを述べます。


物価高騰が長引き暮らしの先行きが見えないなか、希望の持てる政治がいまこそ求められています。しかし、石破政権が示している2025年度政府予算案は、8.7兆円という過去最大の軍事費を計上し、半導体をはじめとした一部大企業には巨額の支援をおこなう一方、社会保障や暮らしの予算はどれも物価上昇に追いつくものにはなっておらず、実質的にマイナスです。国会では現在、教育費の無償化や所得税の課税最低限引き上げなどが議論されていますが、それだけでは国民の暮らしは良くなりません。アメリカの高官が日本の軍事費の更なる増額を迫っていることに象徴されるように、アメリカいいなりで推し進められている大軍拡と、国民の暮らしを犠牲にしてまで進められている、財界・大企業優先の予算案に切り込まなければ、市民・国民の切実な要求を実現することはできません。そんな中で明らかになった石破首相の商品券配布問題は、政権与党の政治家たちが物価高に苦しむ国民生活といかにかけ離れた金銭感覚で政治をおこなっているかを浮き彫りにし、市民・国民の中にさらに政治不信を広げています。このような政治では、市民・国民が希望を持つことは到底できません。

市民の暮らしを守り、希望を取り戻すためにも、国の悪政から市民を守る「防波堤」の役割を果たし、住民の暮らしと福祉を良くするという自治体本来の仕事をすすめることこそ本市に求められています。ところが、髙島市長の市政運営方針や新年度予算はまったくそうなっておらず、国の悪政に対して何もモノを言うことなく追随するものとなっています。まさに石破自公政権が進める、大企業中心、アメリカいいなりという2つのゆがみを抱えた政治を福岡市で具体化するものだと言わなければなりません。わが党は、物価高騰から市民を守り、暮らしの困難を打開し、暮らしに安心とゆとりをもたらすための緊急物価高騰対策や加齢性難聴者の補聴器購入補助など市民の切実な願い実現を質疑の中で要求しましたが、市長はまったく応じることはありませんでした。また、市民の命と暮らしを守るためにも国が進める大軍拡に反対するよう求めましたが、「国の責任において適切に対応される」と国に何もモノを言わない態度に終始しました。このように、髙島市政の新年度予算案および関連諸議案は、住民の福祉を増進するという自治体本来の役割にてらしても、国の悪政から市民を守る「防波堤」の役割を果たすという点でも、根本的な問題を抱えたままになっています。


次に、わが党が反対する予算案内容および議案のうち、いくつかの問題について、その理由を明らかにしておきます。


第一に、物価高騰対策についてです。


物価高騰から市民を守るために、暮らし応援の緊急対策を実施することがいまこそ求められていますが、新年度の施策にはほとんど何もありません。わが党は代表質疑で、暮らしの困難を打開し、暮らしに安心とゆとりをもたらすための緊急物価高騰対策を提案し、市長に実行を迫りました。

いまの暮らしの困難のおおもとには、繰り返されてきた消費税の増税と長期間にわたる実質賃金の引き下げ、そしてそれを実行してきた財界・大企業の目先の利益を最優先にする自民党政治があります。わが党は、消費税の減税や中小企業支援とあわせた最低賃金の抜本引き上げを国に要求すべきだと求めましたが、市長は「国において適切に検討され」ているなどと国任せの姿勢に終始し、住民の暮らしを良くするという自治体の責務を放棄しました。また、本市がすぐにでもできる賃上げ策として、8割近くが年収300万円未満となっている会計年度任用職員の処遇改善と正規職員としての採用を求めましたが、市長はこれにも背を向けました。

厳しい経済状況の中で子育て世帯への支援は待ったなしです。新年度から開始される学校給食無償化について、わが党は2学期からではなく、4月から実施すべきだと主張しましたが、教育長は「システム改修が必要」という理由で冷たく拒否しました。本気で子育て世帯を応援する気があるのならば、あらゆる手段を使って早急に進めるべきであり、4月実施を検討すらしないのは、暮らしの困難にまったく心を寄せない冷たい態度であると言わなければなりません。

マクロ経済スライドによる12年間でマイナス7.8%もの「年金実質削減」が行われるもとで、高齢者から「暮らしていけない」という悲鳴があがっています。わが党は、高齢者の日常生活の支えとなっている高齢者乗車券制度を拡充し、所得要件と上限額を廃止するよう求めましたが、市長は頑なに拒否しました。また、多くの市民の暮らしや中小事業者の営業を支援するためにも、上下水道料金の減免措置を講じるよう要求しましたが、これについても背を向けました。


第二に、大型開発と規制緩和についてです。


規制緩和によるまち壊しである「天神ビッグバン」には昨年度までに約130億円をこえる税金が投入されており、その結果、全国最悪の地価の上昇が起こっています。市長は「多くの市民や企業から選ばれるまちづくりに取り組」むと言っていますが、家賃の上昇や固定資産税の引き上げで、市民負担が増大し、住宅難民を生み出し、地域でがんばっておられる小規模店舗などの経営を圧迫することで、逆に住民や店舗の追い出しを招いており、言語道断です。

本市が進めようとしている福岡城天守の調査は、福岡城址に「天守閣は存在した」という特定の学説を支持する立場にたっていますが、これは科学的根拠も歴史的根拠もありません。市長は天守閣が「天守閣を最初から作らなかったとは考えにくい」などと復元を前提とした調査に前のめりですが、外観や構造がわかる資料もないなかで、あまりにも拙速な議論です。わが党はこのような調査は浪費であり、やめるべきだと指摘しましたが、市長はまったく聞く耳を持ちませんでした。また、あたかも天守閣があったかのように構造物を建ててアピールする「天守閣ライトアップ」事業は、文化財を愚弄するものであり、市民や専門家からも批判の声があがっていることを直視すべきです。

九州大学箱崎キャンパス跡地の問題では、優先交渉権者が進めようとしているスマートサービスが、企業が個人情報を吸い上げ、自らの利益のために利活用できるものであり、住民が望んだものではありません。また、600人の児童増加が見込まれており、学校用地を確保しなければ新たな過大規模校を生みだすことになります。市は「グランドデザインにもとづき」と繰り返し言いますが、住民・市民が街づくりの計画に参加できる仕組みにはなっておらず、住民が求めている広大な防災公園も計画されないままです。

市は、今回の予算案のコンセプトとして「まちに『みどり』を」と掲げ、「まちに『みどり』を積極的にインストールする」といいます。都市の緑化を推進するといっていますが、この間、街路樹や公園樹木の大量伐採が進み、逆に都市の緑が減っているのが現状です。また、事業の一つである「グリーンビル促進事業」は大手ディベロッパーや建築主ばかりを優遇するものになっており、巨大なビル建設による環境破壊をごまかすためものにすぎません。さらには、新たな巨大集客イベントである「福岡フラワーショー」の開催も、「花や緑」を市の知名度アップの手段にしようとするものです。そのうえ、これらの事業の主要な委託先となる造園業界との不適切な関係が生じる懸念もぬぐえません。市長は「花や緑」を掲げてあたかも環境に配慮した都市づくりを進めるかのように言いますが、ただのイメージ戦略にすぎず、本気で緑化を推進するものにはまったくなっていません。


第三に、社会保障についてです。


市長は新年度の一人あたりの保険料について、史上最高額となっている今年度とほぼ同じ水準の保険料を押し付けようとしております。また、介護保険料についても同じく史上最高額となっているにもかかわらず、何の手立ても打とうとしていません。異常な物価高騰が継続しているなかで、高齢者をはじめ全世代が生活に困窮しており、高い保険料を押し付けることは到底許されることではありません。家計と地域経済に重大な悪影響を及ぼし、社会保障を持続不可能にさせるものであり、今すぐあらゆる手段を講じて引き下げを図るべきであります。

わが党は総会質疑で、加齢性難聴者への補聴器購入助成を求めましたが、市長は国の動向を注視すると述べるにとどめ、助成実施に背を向けました。しかしわが党が紹介したように、山形市では国の「保険者機能強化推進交付金」を活用して、全額国負担で補聴器購入の助成を実現しています。国の動向を注視するというならば、こういった交付金の活用も視野に入れて、今こそ踏み出すべきです。また、市長は市政運営方針で「人生100年時代の到来を見据え、誰もが心身ともに健康で自分らしく活躍できる社会をめざす」と言われています。それにも関わらず、助成をしないということは、本気で高齢者の健康を考えてはおらず、高齢者が活躍できる社会をめざしてはいないと言われても仕方がありません。


第四に、子育て支援・教育についてです。


わが党が長年要求してきた学校給食無償化とあわせて、学校体育館へのエアコン設置が予算に盛り込まれました。市はこれまで「空調を想定した断熱構造になっていない」ことを理由に体育館へのエアコン設置を拒んできましたが、今回、断熱改修を施さずに人の居る体育館の下の方だけを温度調節しようとしており、これまでの答弁と矛盾しています。過去にその場しのぎで設置され、無用の長物となってしまった普通教室の扇風機の二の舞にならないとも限りません。エアコンを設置するすべての学校体育館に断熱を施すべきです。

教員の長時間労働が社会問題となっています。新年度から若干給与が改善されますが、残業代がまったく出ないという「定額働かせ放題」という状況は変わらず、長時間労働を改善するものにはなっていません。わが党は総会質疑で、長時間労働是正のために教員を抜本的に増やし、教員一人あたりの授業のコマ数を減らし、1クラス30人へ、さらには20人へと少人数学級を進めるべきだと求めましたが、教育長は小手先の対応策を並べ立てるばかりでした。また、教員の負担軽減につながるスクールソーシャルワーカーも教育支援員もわずかな人員増にとどまるなど、本気で教員の長時間労働是正を目指そうとしていないことがはっきりしました。

不登校児童生徒数が2023年度は5177人と史上最高になっています。その要因となっている、行き過ぎた管理や競争の教育を是正すること、そして、不登校となった児童生徒への支援を強化することがいま、求められています。しかし市が策定中の「第3次教育振興基本計画(案)」で「目指す人間像」を示し、その理想を子どもたちに押しつけることは、チャレンジしたくても出来ずに苦しんだり、傷ついたりしている子どもたちにストレスを与えることになります。また、全国知事会からも疑問の声が出ている「全国学力テスト」に参加し続けることは、競争教育をあおることにつながりかねません。わが党は不登校となった児童生徒への支援強化として、その受け皿となっているフリースクールの運営と保護者負担の軽減のために補助をおこなうよう要求しましたが、教育長は「県が行っている」と市独自支援を冷たく拒否しました。

国は保育士1人が受け持つ子どもの数を変更しましたが、現場からは「まだ不十分」との声があがっています。わが党は代表質疑のなかで、保育士の配置基準について市独自の改善をはかることや、全産業平均より月5万円低いと言われる保育士の賃金について、市独自に引き上げる手立てをとるよう求めましたが、市長は「国に求める」と述べるにとどまり、市独自施策には踏み出さないありさまです。

また、市民が強く要望している「自閉症・情緒障がい特別支援学級」の全校設置、児童館の増設などは新年度予算には盛り込まれておりません。


第五に、地域経済についてです。


市長が大企業優遇の経済運営を続ける中で、地元の中小業者への施策は極めて貧弱です。

市が行ったアンケートでは、中小企業の売り上げは新型コロナが流行する前と比べて6割しか回復しておらず、さらに物価高騰を価格に「おおむね反映」できた業者は17%にすぎない状況であることが明らかになっています。さらなる直接支援を行うべきですが、市は「国や県の状況を注視」というばかりで積極的に支援を行おうとしません。また、市長は、わが党が提案した人手不足解消の一助となる中小企業向けの賃上げ一時金の創設にも背を向けました。さらには、中小業者が事実上の大増税となっているインボイス制度廃止を国に求めることや、経済波及効果の高い住宅リフォーム助成制度、市発注の工事や契約で労賃の引き上げ・確保を定める公契約条例の制定などにも、市長は全く応じようとしていません。


第六に、環境・まちづくりについてです。


今年は、福岡西方沖地震から20年です。この間、東日本大震災や熊本地震、能登半島地震など、全国で大規模災害が頻発していますが、本市の避難所環境や被害者支援策はその教訓が生きるものになっていません。能登半島地震では発災当初、人口比で24%の人が避難しましたが、本市の地震における避難者想定数は人口比でわずか1.5%となっています。食料や水、トイレやベッド、プライバシー確保のためのパーティションなどの備蓄数は、その想定数を元にしており、あまりにも不十分であると言えます。わが党は総会質疑で、避難者数の想定を抜本的に見直すことを求めましたが、局長は「法により、市町村の計画は県の計画との整合を図る」必要があると答弁し、拒否しました。しかし、県の担当者によれば、市町村が県の計画を超える避難者想定数などを設定したとしても、法に抵触するものではないと回答しています。実際に隣の大野城市では警固活断層による地震の避難者想定数を県の6倍程度に設定し、公的備蓄を大幅に増やしています。現在のような市の姿勢では、地震などの災害から市民の生命や財産を守ることはできません。もう自助・共助を強調し、公助を後回しにする姿勢は改めるべきです。

気候危機打開について、本市は政府よりも10年早い「2040年カーボンニュートラル」を掲げており、これを進めていくためにも、再生可能エネルギーへの転換と省エネルギーの実行が必要です。わが党はこの間、建築物の断熱改修を進めることで省エネをすすめることを求めてきましたが、本市は民間住宅の断熱促進については国や県の制度に任せきりで、学校など公共施設の断熱についても積極的に行おうとしていません。わが党が代表質疑で、他都市にならって市独自に、省エネ基準に適合する住宅を認定し、消費者向けの広報や普及啓発を行い、事業者を育成し、認定住宅建設への助成を行うべきだと求めましたが、市長は「国の支援制度の周知」に取り組むと述べるにとどまりました。いま、「地球沸騰化」が叫ばれるなか、自治体には本気で気候危機打開の取り組みを進めることが問われています。このままでは市長が掲げる目標は到底達成できず、看板倒れに終わりかねません。


第七に、市政運営およびその他の問題についてです。


ジェンダー平等の課題では、本市職員のうち低賃金となっている会計年度任用職員の74%が女性であり、全職員の女性の平均賃金は男性の84%と大きく立ち遅れており、女性の管理職比率がたった19.1%にとどまっているという状況を市長が放置し続けているという問題があります。また、わが党は選択的夫婦別姓制度の導入や同性婚について国に決断を求めるべきだと代表質疑で迫りましたが、市長は「国の動向を注視」するというだけにとどまり、劇的に高まっているジェンダー平等を求める声に応えるものにはなっていません。そもそも、本市の基本計画には「ジェンダー平等」という文言が一切入っておらず、この課題に本気で取り組む姿勢がまったく見えません。

平和行政については、昨年11月に福岡空港に飛来した、墜落事故を繰り返している欠陥機・オスプレイについて、市長はまったく抗議もせず、市民に情報提供すらしませんでした。今回、先制攻撃を専門としている軍用機であるオスプレイが突然飛来したことは、福岡空港を米軍の軍事戦略に位置付けていることのあらわれです。このような本市を戦争に巻き込む危険な動きについて、市民の命と安全を守る責任がある市長として、すぐに市民に知らせ、抗議をし、二度と来ないようにあらゆる手を尽くすべきです。

また、平時の自衛隊訓練拠点とされる博多港の「特定利用港湾」選定も、福岡空港周辺などの重要土地利用規制法の注視区域指定も、国がアメリカいいなりに進めようとしている「戦争国家づくり」の一環です。わが党はこれらの市民を戦争に巻き込む動きに対して、市長として断固拒否することをこの間求めてきましたが、市長は「国の責任において適切に対処」と述べるだけで、何も対応してきませんでした。これでは、事実上、国と協力して「戦争国家づくり」を進めていると言われても仕方がない態度です。

さらには、日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞を受賞し、世界的に核兵器廃絶の運動が大きく高揚しているにも関わらず、被爆者の悲願である非核平和都市宣言を、こともあろうに詭弁を弄して拒否し続けることは許しがたいものがあります。市民を戦争の危険から守るという役割を果たすことがまったくできていないと言わなければなりません。


以上、多くの点にわたって述べてきましたが、市民の立場から見て問題の多い予算案と関連諸議案に、わが党として賛同することはできません。


以上で、わが党の反対討論を終わります。


>>>「2025年予算議会」トップへ戻る

>>>「議会報告」一覧ページへ戻る

政策と活動
議員の紹介
トピックス
議会報告
市議会ニュース
リンク
お問い合せ

↑上へ