議会報告
2025年予算議会
教育長人事案件についての反対討論
2025年3月26日 中山郁美議員
私は日本共産党市議団を代表し、本議会に提案されている人事案件のうち議案第95号 教育長の任命について同意できないことを表明し、意見を述べるものであります。
今回の教育長任命は、現職の石橋正信氏の任期満了に伴い、地方教育行政法第4条に基づいて行われるもので、同条項では「人格が高潔で、教育行政に関し識見を有するもののうちから、地方公共団体の長が議会の同意を得て、任命する」と定められております。この点に照らして、今回同意を求められている下川祥ニ氏については、大きな問題があると考えます。
まず、第一に教育長の要件とされている教育行政に関する識見を有するとは到底言えないことであります。下川氏の経歴を見ても、教育行政との関わりについては1998年から2年間、当時教育委員会が所管をしていた油山青年の家に勤務をしたものだけであります。代表者会議で、私はこの点について市長及び人事当局に質しましたが、「市政の幅広い分野に卓越した識見を有している。これからの教育行政は、既存のものにとらわれない発想が求められる」などと全くお門違いの説明しかできませんでした。また、下川氏は自らの「所信」の中で学校教育の課題について「様々な変化に向き合い、自ら考え、行動し、周囲の人々と協働しながら、新しいことに挑戦し、未来を創ることのできる人材の育成が求められている」と述べています。しかし、教育の本来の目的は教育基本法で述べられているように「人格の完成を目指し、平和で民主的な国家や社会を形成する資質を備えた心身ともに健康な国民を育成すること」であり、「協働」「挑戦」など行政の求める特定の価値観に子どもたちを誘導し「人材育成」を図ることではありません。教育の目的さえ理解していない下川氏に教育長を担う資格はありません。
第二に下川氏は教育行政をないがしろにする高島市政の中枢を担ってきたということです。高島市政は、無駄な大型開発とともにインバウンドに偏重し、教育予算を抑制し続け、2023年には、市民の反対の声を無視して、107億円もの無駄遣いにつながった世界水泳福岡大会を強行しました。その過程において下川氏は担当である市民局長として先頭に立ち、世界水泳の責任者を担ったのであります。この時期、学校現場では猛暑の中、夏季には体育館が利用できずエアコン設置が切望されており、市民局が所管する災害避難所の観点からも体育館へのエアコン設置は急務でした。しかし下川市民局長は市民からの要望や我が党の要求を一顧だにせず、子どもや住民の安全安心よりも不要不急の世界水泳を優先し、市民の税金を107億円も無駄に投じる先頭に立ったのであります。
第三に、下川氏が市民局長時代に行った市民の権利侵害についてです。2019年、当時の安倍首相の発言を受け、自衛隊に対し若者の名簿提供を検討せよと高島市長が指示を出し、これを強引に進めたのも当時の下川市民局長でした。福岡市在住の18歳と22歳の若者の名簿を本人の同意も得ないまま、勝手に自衛隊に提供する行為については個人情報保護を旨とする行政としてあるまじき行為であり、明白な人権侵害です。下川市民局長のもとで進められたこの問題は2020年、広範な市民の反対の声で包囲されたにも関わらず、結局強行され今日まで続けられているのであります。当事者である本市在住の若者の声を聞かず、平然と人権侵害を進める人物が、教育行政において子どもたちの人権を尊重することができるのか、甚だ疑問です。
これらを踏まえると「人格が高潔」でなければならないという法の趣旨に照らしてみた場合、下川氏には重大な疑義があると言わざるを得ません。
10年前、市長が教育長を任命する制度に改悪されたとは言え、教育委員会は首長からの独立性が求められる制度であることに変わりありません。これは政治や行政によって教育が歪められ、子どもたちが戦場に送られたという歴史の教訓に基づいたものであります。今、教育現場は国の悪政の下で数々の困難に直面しています。貧困・格差が広がり、子どもたちの間のいじめや不登校は増え続けています。深刻な教員不足は学校現場を疲弊させ、教員志願者の減少を引き起こし、悪循環に陥っています。だからこそ、子どもを中心に据え、不当な圧力に屈せず、政治から独立した教育行政の確立が求められており、人格が高潔で、教育行政に関し識見を有する教育長の選任が求められるのであります。福岡市のように市長の開発・インバウンド優先の政治によって子ども施策さえ歪められている自治体の場合はなおさらであります。この点についていえば、見てきたように、高島市政のもとで市長の思惑に唯唯諾々と従ってきた下川氏の下では、教育委員会としての独立性を確保することが困難だと断ぜざるを得ません。よって、我が党は、下川氏の教育長任命には、到底同意できないことを表明し、反対討論を終わります。