議会報告
2025年予算議会
2月議会 反対討論
2025年2月20日 中山郁美議員
私は日本共産党市議団を代表して本議会に提案されております議案第1号ないし4号、7号ないし10号、12号ないし15号、17号、18号に反対し、討論を行います。
まず、議案第1号および12号ないし14号の福岡市企業等成長支援事業についてです。本議案は九州大学が全額出資する子会社「株式会社九大OIP」などが設立した「九大イノベーションチャレンジファンド」に本市が出資するために、特別会計と支援基金を新たにつくるものであります。
本市は「新たな産業や雇用の創出につなげる」といってこの「九大ファンド」に5億円もの市民の税金を投入しようとしていますが、そもそも大学への支援のあり方として間違っています。学校教育法第83条では「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする」とされています。市が、九大だけ、しかも九大から求められるままに特定の「成長性の高い」とされる分野に限った支援を行うことは、教育を変質させ、九大の学内でも市内大学間でも新たな格差と分断をもたらすものであります。また、今回の事業は九大から福岡市に出資の要請があったものだといいますが、わが党の委員会質疑で、九大からの要請文も九大との協議記録もないという、議会が本事業を検証さえできない実態であることが明らかになりました。さらには、市が出資することによって民間資金を呼び込み、成長性の高い研究開発型のスタートアップを持続的に創出するといいますが、そもそもスタートアップ事業は雇用や税収の成果が不明瞭であり、地域経済への影響もわからないものです。市民の暮らしが困窮するなかで、そのような不確かなものに莫大な税金を投入することは問題であり、許されません。わが党は、このような問題だらけの「九大ファンド」の関連議案について、すべて反対いたします。
次に、議案第15号「福岡市乳児等通園支援事業の設備及び運営の基準を定める条例案」についてです。
本議案は、2026年度の本格実施に向けて今年度より試行的事業として既に実施されている「こども誰でも通園制度」について、設備や運営の基準を条例で定めるものであります。この制度は就労条件を問わずに保育施設を利用できるものですが、本市で行われた昨年度のモデル事業、今年度の試行的事業を通じて、保育関係者に不安の声が広がっています。
そもそも保育所では、児童福祉法と保育指針に基づき、子どもたちの健康状態に気をつけながら朝から受け入れて、一日を通して年齢や発達に合わせた遊びや活動、生活などの体験を通して総合的に関わる中で、子どもの成長の援助を日々行っています。しかし、この「こども誰でも通園制度」によって、毎日通園している在園児の集団の中に日替わりで新しい子が入ることで、保育士と子どもたちとの関係が日々大きく変わることになり、預けられる子どもにとっても、在園児にとっても、保育士にとっても、大きなストレスとなります。わが党の質疑に対し、局長は試行実施では何も問題がなかったかのような答弁をされましたが、保育関係者からは、「こども誰でも通園制度」には、3歳未満の子どもに必要な周囲の大人による丁寧な支えと関わりという視点が全くなく、問題であるとの声が上がっています。このままでは保育とは似て非なる託児事業に変質させられる危険性があります。さらには本条例案第23条の2では、国家資格を持つ保育士は職員の半分以上でよいとなっており、子どもの命を預かり発達を保障する体制になっていません。安心できる保育の場を不安定にしてしまうこのような制度を現状のままで進めることは認められず、本条例案に賛成することはできません。
次に、議案第17号「福岡市介護保険条例等の一部を改正する条例案」についてです。
本議案は、地域包括支援センターに置く専門職員の数を緩和するために条例を改定するものです。
この条例改定により、保健師、社会福祉士及び主任介護支援専門員の3職種の専門職員について、これまで地域包括支援センター1カ所につき、それぞれ最低1人以上置く必要があったものを、運営協議会が認めれば、複数のセンターの担当地域を一つにまとめて、その地域ごとに3職種の専門職員がそれぞれ最低1人で可能となるよう規制を緩和するというものです。これによって地域包括支援センターの専門職員が減ることになれば、例えば介護認定が遅れるなど、相談者や利用者の利便性の低下を招く恐れがあります。私がこの問題について委員会で質したところ、市は地域包括支援センターに置くべき専門職員の確保が難しくなっているため仕方がないかのような答弁を行いました。しかし、そうであるならば、介護労働者の処遇改善のために市の独自支援を行うこと等を通じて人員の確保に努めるなど、抜本的な対策こそが必要であり、サービス低下につながる規制緩和は認めるわけにはいきません。
したがって、わが党は本議案に賛成することはできません。
次に、議案第18号「福岡市公園条例の一部を改正する条例案」についてです。
本議案は、市民ホールと一体的に再整備が進められている須崎公園の駐車場について利用料金制度を導入するためのものです。
この駐車場は、公園利用者も市民ホール利用者も使用することが想定されますが、具体的な利用料金については現時点でまだ何も決まっていません。最大1日2千円とし、30分200円となっている市民ホールの料金を参考にしてPFI事業者と市が協議して決めることになっています。しかも、市民ホールの駐車場と同様に一般利用における減免制度などはなく、市民が利用しづらいものになっています。私は委員会でこの問題について尋ねましたが、市は受益者負担を主張し、徒歩での利用を想定しているので問題ないなどという言い訳に終始しました。そもそも公園は市民が誰でも使えるはずのものであり、受益者負担はなじみません。また、市民ホールの利用者が想定されるにも関わらず、減免制度を作らないのも問題です。このような料金設定の仕方は同意できるものではなく、わが党は本議案に賛成しかねるものであります。
次に、議案第1号「令和6年度福岡市一般会計補正予算案(第5号)」のうち、わが党が賛成するものについて意見を述べておきます。
物価高騰対策重点支援地方交付金活用事業についてです。
長引く物価高騰のなか、「物価高倒産」が過去最多を大きく更新しており、全国で中小企業者や福祉施設等の運営者が塗炭の苦しみに直面しています。
中小企業等への光熱費支援については、わが党が質疑で示した通り、物価高騰の大きな影響を受けている資材や食材については支援の対象とはなっておらず、また、影響額の2分の1という金額ではいまの物価高騰による負担増にはまったく見合っていません。今回の支援は現場が求めるものとかけ離れているのは明らかであり、支援対象の範囲をひろげ、支援金額を引き上げるべきです。
また、介護・障害者施設や保育所への支援については、どちらの施設も公定価格で運営されているため、経費・材料費の高騰を価格に転嫁できず、物価高騰分はすべて事業所の負担となっており、各施設の努力だけではどうしようもありません。今回の補正では、介護・障害者施設は電気代と食費について、保育所は電気代について価格高騰相当分を支援するとしていますが、物価高騰にまったく追いつくものにはなっていません。わが党の質疑に対し、これらの施設への支援額の算定根拠は県に準じていると局長は答弁しましたが、そもそも県の算定の起点は既に大きく物価が上昇していた昨年3月と昨年の夏との差で算定しており、少なく見積もった支援額だったことが明らかとなりました。さらには、わが党が調べたところ、保育園の算定根拠については、福岡市や北九州市、久留米市といった県内の政令市や中核市以外の保育所を調査し算定したものであることも判明しています。いずれも市内施設の実態に合ったものではなく、支援を抜本的に拡充することが求められます。
これらの物価高騰対策支援を大幅に拡充するためにも、国に対して大幅な追加支援を求めるとともに、庁舎建設等資金積立金への80億円もの不要不急の補正をやめることなども含めて市独自の財源をつくることが必要です。何よりいま緊急に行うべきことは、物価高騰から市民の暮らしと営業を守ることです。このことを、強く求めておきます。
以上でわが党の反対討論を終わります。