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議会報告
2024年度決算特別委員会
2024年度決算についての反対討論
2025年10月8日 倉元達朗議員
私は、日本共産党市議団を代表して、2024年度一般会計及び特別会計並びに企業会計諸議案のうち、議案第145号ないし148号、150号、152号、154号、155号、157号ないし160号、162号ないし165号について反対し、討論を行います。
2024年度は、米不足を原因とした米価の高騰をはじめ長期にわたる物価高騰によって暮らしの困難が増大するなかで、いかに市民の暮らしや市内中小業者の営業を守り、立て直していくかが問われました。それに加えて、2024年1月に発生した能登半島地震を受け、市民の命と財産を守るために、災害への備えを強めることが求められた年でもあります。しかし自民・公明政権は30年という長期にわたる経済の停滞と衰退をもたらした従来の政策を転換しようとせず、国民多数が求めている消費税減税にも背を向けています。また、米農家への支援切り捨てや市場まかせの政策によって米の生産基盤を弱体化させ続けてきたことについてもまったく反省していません。さらには、頻発する自然災害に対する防災・減災、そしてインフラの老朽化対策についてもまったく不十分なものとなっています。他方で「日米同盟強化」の名で敵基地攻撃能力保有と日米の指揮・統制の一体化をすすめ、5年間で43兆円もの軍事費をつぎこむ空前の大軍拡を進めており、暮らしや福祉、教育などの予算を大きく圧迫しています。そして健康保険証の廃止とマイナンバーカードの強制、石炭火力や原発を推進しながら大手電力会社による再生可能エネルギーの出力制御を許すといった気候危機打開に逆行するような動きなど、あらゆる分野で国民の願いとは真逆の方向を向いています。
このような国の政治に対して、福岡市政に求められたことは、憲法の精神を生かし、住民の暮らしと福祉を良くするという自治体本来の仕事を推進し、国が進める悪政から住民を守る「防波堤」の役割を果たし、地方自治と民主主義を守り発展させることでした。
しかし2024年度決算をみると、髙島市長はこれら自公政権が推進してきた政治に追随するばかりか、率先して国の悪政を実行する先導役を担ってきたことが浮き彫りとなりました。さらに市長は「都市の成長」を「生活の質の向上」に結び付けるという名目で、大型開発や規制緩和を推進する一方、わが党がこの間求めてきた高齢者乗車券の拡充や上下水道料金の減免、中小企業支援の拡充や高すぎる国保・介護保険料の引き下げなどにはいっさい手を付けず、物価高騰で苦しめられている市民や市内中小業者を直接応援する施策は極めて不十分であり、大企業の儲け優先で市民の困難を顧みない冷たい市政を続けてきたことも明らかとなりました。
その姿勢は、決算年度に策定された第10次基本計画にも表れています。この計画の中には、国連の「持続可能な開発目標」いわゆるSDGsの目標が示してあるにも関わらず、その一丁目一番地である「貧困をなくす」も「ジェンダー平等」も具体的な文言や数値目標が一切ありません。SDGsの掲げる「持続可能」な社会をめざすという視点を実質無視するような計画となっており、まさに「SDGsウォッシュ」であると言わなければなりません。一方でこの基本計画には破たんした「都市の成長」路線はしっかりと書き込まれ、巨大開発のさらなる推進や新たな大型交通体系づくりにまで踏み出す構えを示しています。このような「基本計画」では、市民生活を向上させることや人権を前進させることはできず、これまで以上に市民の中に貧困と格差を拡大することになりかねません。
これらの問題について、分野ごとに詳しくみていきます。
第一に、大型開発と規制緩和の問題です。
規制緩和によるまち壊しである「天神ビッグバン」には、決算年度では5億円、これまでに130億円を超える巨額の税金が投入され、その結果、全国最悪の地価の上昇が起こっています。都心に大きな土地やビルを持っている一部の大企業や富裕層などは儲かったかもしれませんが、家賃の高騰や固定資産税の引き上げで、市民負担が増大し、住宅難民が生み出され、地域でがんばっておられる小規模店舗などの経営を圧迫しています。同様の問題を生んでいる「博多コネクティッド」を含め、住民や店舗の追い出しを招くこのようなまち壊しは言語道断であると言わなければなりません。
九州大学箱崎キャンパス跡地開発について、決算年度に優先交渉権者が決定されました。今後進められようとしている「スマートサービス」は、企業が個人情報を吸い上げ、自らの利益のために利活用できるものであり、情報流出を防ぐ保証もなく、住民が望んだものでもありません。わが党は住民要求を基本に据えた跡地利用にするために多くの市民が計画に参加できる仕組みを整えるなど、これまでの姿勢を改めるべきだと求めてきましたが、市は、まったく聞く耳を持とうとしていません。
本市は、福岡城跡に「天守閣は存在した」という特定の学説を支持する立場に立って福岡城天守の調査を行っています。市長は復元されたら観光客がやってきて本市にお金を落としてくれるだろうと軽々に考えておられるようですが、資料が残されていない模擬天守閣を建てるのは福岡城跡という遺跡の破壊に他なりません。また、決算年度と今年度の2年間にわたって行われた「福岡城幻の天守閣ライトアップ事業」は、存在も外観も構造もわからないのに、あたかも天守閣があったかのように構造物を建ててアピールするものであり、文化財を愚弄するものであり行うべきではありませんでした。
決算年度は、市に贈与された世界水泳福岡大会の「余り金」約19億円をどうするかも問われました。わが党はコロナ禍での二度にわたる延期と物価高騰で大幅に経費が膨らみ、市民に多大な負担を押し付けたこの世界水泳の「余り金」について、市民の暮らしに還元せよと主張しましたが、新たな基金に積み立てられることになり、大規模スポーツイベントの火種が残ることになりました。
第二に、医療・介護などの社会保障についてです。
決算年度の市の国民健康保険料は史上最高額となり、市民から悲鳴があがっています。髙島市長は「国保料を全国平均並みに引き下げる」と最初は公約して当選したのに、その自らの公約を反故にし、引き下げのための一般会計からの繰り入れをこの13年間で20億円も減らしています。わが党は総会質疑で19億円も黒字となっている国保会計の活用と一般会計からの繰り入れで、子どもの均等割を廃止し、保険料の大幅引き下げを求めましたが、市長は冷たく拒否しました。
決算年度は第9期介護保険事業計画が策定されましたが、介護保険料についても国保と同様、史上最高額を更新しており、市民にあまりにも重い負担を押し付けるものとなっています。また、決算年度に国が訪問介護事業所への基本報酬を引き下げた結果、事業所の経営が大きく圧迫され、倒産や廃業が相次いでおり、介護サービスが受けられない高齢者が増加しています。さらには低すぎる介護報酬とその連続削減のもとで、ケアマネージャーをはじめとする介護の人材不足も深刻です。わが党はこれらの問題について国に求めるだけでなく、市独自に保険料引き下げの手立てをとることや、訪問介護事業所や介護労働者への支援拡充を求めましたが、市は国任せの姿勢に終始しました。
生活保護基準の連続引き下げと異常な物価高騰で、生活保護世帯は食費や光熱費さえ捻出できない困窮状態にあり、憲法で保障されているはずの生存権が脅かされる状況が続いています。国が何も手立てをとらないなかで、本市として下水道料金減免や各種見舞金などの復活をするべきでしたが、決算年度は何も行われませんでした。また、ケースワーカーなど保護課の職員数が国の標準を満たしておらず、国からも指摘を受けているなかで、保護課の体制強化が求められましたが、市はいまだに背を向けています。さらには、物価高騰で苦しむ市民に対して、生活保護制度の周知を強めるべきでしたが、これにもまったく手をつけようとしませんでした。
第三に、教育・子どもについてです。
高島市政のもとで無秩序な住宅開発が野放しにされ、人口が無計画に膨張した結果、各地で過大規模校が続出しています。決算年度も小学校で25校、中学校で6校が過大規模校となり、教室不足やグラウンドの狭隘化(きょうあいか)などの教育環境の悪化により子どもたちに大きな負担を強いることになりました。この間「児童生徒数が減少する」という見込みでつくられた施設一体型の小中連携校でも、周辺が開発地域の場合には過大規模校となる例が相次いでいます。児童数や生徒数が多い地域に対してマンション開発規制をかける条例を制定するなどの有効な手立てをとることが求められていましたが、市長も教育長も自らの責任を放棄し、何の手立てもとりませんでした。
過大規模校の続出に伴う学校の分離・新設は、ただでさえ少ない教育予算を圧迫しています。多くの学校施設が築50年を超えて老朽化し、危険なアスベスト含有建材が放置され、修繕や対応が必要な箇所が多数見受けられる状況があるにも関わらず、予算が少ないために放置されている実態があります。わが党は子どもたちの安全を守るためにも、抜本的な教育予算の増額を求めましたが、市は全く応じませんでした。
保育士の配置基準について、国は決算年度に76年ぶりに見直しを行いましたが、現場では見直し後も「多忙でゆとりがない」「人手が足りない」という声が圧倒的です。わが党は更なる見直しを国に求めるとともに、当面、市独自に更なる配置基準の改善をおこない、保育士への賃金補助などおこなうことを要求しましたが、市長は国任せの姿勢に終始しました。
決算年度はこども誰でも通園制度の本格実施に向けた試行的事業が行われました。この制度は保育の本質を根本的に変質させ、子どもが物のように預けられることになりかねず、預けられる子どもにも、一緒に生活する子どもたちにも、預かる保育士にも大きなストレスを与えるものです。わが党は現状のままでは全く開始できる状況ではなく、保育士の配置基準改善など保育現場の整備をおこなうまでは実施すべきではないと求めましたが、市は全く考慮することなく推進をしています。
わが党が長年求めてきた学校給食無償化と学校体育館へのエアコン設置については、今年度から実施されることになりました。しかし、わが党が求めた少人数学級のさらなる推進や「自閉症・情緒障がい特別支援学級」の全校設置、子ども医療費の完全無料化、児童館の増設などについては、決算年度で取り組まれることは全くありませんでした。
第四に、中小企業施策、経済・雇用対策についてです。
本市が行ったアンケートでは、売り上げがコロナ前水準に回復した中小企業の割合は6割程度にとどまっており、多くの中小企業・小規模事業者が物価高騰のもとで苦しんでいます。市内事業者の99%を占め、市民の雇用や暮らしを支えている中小企業・小規模事業者に対し、市としてしっかり支援することこそ求められていましたが、決算年度における中小企業振興のための事業費はあまりにも少なく貧弱でした。その一方で、他の経済施策と比べると雇用や税収にあまり寄与しているとは言えないスタートアップなどの創業支援については決算年度も7億円以上つぎ込んでいます。わが党は中小企業・小規模事業者の人手不足が深刻になるなかで、賃上げのための直接支援や市の公共事業等を受注する場合に人間らしく働くことのできる労働条件を保障する公契約条例の制定などを求めましたが、市長は国任せの姿勢に終始しました。
第五に、環境とまちづくりについてです。
昨今の地球温暖化によって引き起こされている気候危機は、本市にも深刻な影響を与えていますが、それに伴って引き起こされる様々な問題について、本市は真剣に取り組んでいるとは言い難いものがあります。そもそも本市の気候危機対策では、2030年度に温室効果ガス排出量を50%削減する目標を掲げていますが、その計画の中身は2030年までには実現が困難な新技術を前提としたものです。しかも排出量の多くを占める民間事業所の努力をあてにしているなど、自ら掲げた目標をやりきる具体的な取り組みは全くないと言わなければなりません。また、繰り返される豪雨災害による洪水被害についても抜本的な対策をとらないままであり、市民を危険にさらし続けています。さらには、わが党が市に毎年求めている熱中症対策として市民へのエアコン設置補助や電気代支援についても、決算年度は一切検討すらしませんでした。
災害避難所の環境改善や被災者支援の抜本強化についても、この間、わが党は求めてきましたが、決算年度は全く改善・強化されることはなく、福岡西方沖地震が起こった20年前からほとんど変わっていません。いま、市民のなかで市の災害避難所の充実を求める請願署名運動が起こっていますが、本市のあまりにも不十分な避難所環境の実態を知ると、誰でも驚き、署名に協力する状況が広がっています。
市内各地で西鉄バスの減便や路線廃止が相次ぎ、買い物や病院への通院、通勤など日常生活に大きな影響が出ており、地域住民は困り果てています。わが党は生活交通支援として、市独自のコミュニティバスを走らせることを求めてきましたが、市長は冷たく拒否しつづけています。それどころか決算年度に行われた「都市交通基本計画」の改定に向けた検討の中で博多駅と人工島を結ぶロープウェイのようなものなどを試算していることが明らかとなり、市民のためではなく観光客などの利便性向上と民間大企業の利益を最優先にした都心部の交通整備ばかりを推し進めていることが明白となりました。
第六に、市政運営のあり方についてです。
トラブルが次々と発生し、多くの国民が不安を感じているマイナンバーカードの取得について、本市は国と一体になって強力に推し進めています。決算年度では5億円以上、これまで35億円以上がこの事業に費やされてきましたが、市民への交付率は8割以下に留まっています。わが党は決算審議のなかでマイナ保険証の利用によって医療機関の窓口で様々なトラブルが相次いでおり、混乱が広がっていることを指摘しました。トラブルを回避するためにも本市の国保加入者全員に資格確認書を交付し、国に従来の紙の健康保険証の復活を求めるべきだと要求しましたが、市は国の代弁者のような答弁に終始しました。
昨今、政治家による外国人差別や排斥を扇動するデマが全国的にはびこっております。わが党は決算審議で、本市でも実際に外国人へのヘイトスピーチが行われた実態を示し、市長に「ヘイトスピーチは許さない」と宣言するよう求めましたが、市長は「全ての人の人権が尊重されるまちの実現に向けた取り組みを進める」と述べるにとどめ、明確に「許さない」とは宣言しませんでした。しかし、本市でも外国人への差別やヘイトスピーチが広がる中で、これを放置することは、それを受けた人の尊厳を傷つけるだけでなく、外国人への社会的排除や暴力の正当化につながる危険性があります。いまこそ市長が差別を許さない確固とした姿勢を示し、ヘイトスピーチを規制する条例をつくるなど、踏み込んだ対応を行うべきです。
市役所で働く職員の約3割は非正規の市職員である会計年度任用職員であり、その約8割が女性です。いくら専門知識を持っていても、どんなに住民に信頼されていても、正規職員と比べると低賃金となっています。また、1年ごとの雇用更新で本市での更新上限は4回となっており、決算年度末に本市は1495人の雇い止めを強行しました。わが党は、ジェンダー平等を実現するうえでも、処遇改善をはかり、市職員の男女の賃金格差をなくし、「5年で雇い止め」はやめるべきだと求めてきましたが、市長は決算年度においても本気で取り組む姿勢を全くみせませんでした。
漁港の管理に関わって、決算年度を含め、長年にわたって漁業協同組合がプレジャーボートの無許可係留で不当利得を得ていた疑いが浮上しています。有識者会議に漁業協同組合から提出された資料をそのまま追認するならば、真相究明には程遠いと言わざるを得ません。分科会でもわが党は求めましたが、事実を明らかにするために市の責任で徹底調査をおこない、漁業協同組合に対する不当利得の返還請求についてもすみやかに検討することを求めるものです。
史上初めて核兵器を違法と断じた核兵器禁止条約を署名した国が国連加盟国の過半数に迫るなど、核兵器廃絶が世界の流れとなるなかで、決算年度には日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞を受賞しました。この情勢の変化を真摯に受けとめ、被爆者団体や高校生など幅広い市民から繰り返し議会請願が出されている本市の「非核平和都市宣言」をすみやかにおこなうべきでしたが、髙島市長は頑なに拒否し続けています。しかし、高齢となっている被爆者の願いを無視し続けることはもはや許されるものではありません。
2024年11月14日、米軍のオスプレイが福岡空港に初めて飛来しました。墜落による死亡事故を繰り返し、「空飛ぶ棺おけ」とも呼ばれる欠陥機が市民の頭上を飛び、福岡空港に飛来したこの件について、市長は国にも米軍にも一切抗議せず、市民に情報提供すらしませんでした。また、災害や船舶の不測の事故の際に自衛隊などが港湾を円滑に利用できる体制を整えるという名目で行われた博多港の「特定利用港湾」選定を本市は受け入れ、決算年度の当初に国から指定されました。市は、これは軍事利用ではないと言い張りますが、わが党が分科会のなかで、この「特定利用港湾」に関しての防衛省や国土交通省との間で行われた意見交換会の内容について問いただしたところ、一切明らかにしようとしませんでした。これは、まさに博多港の軍事利用が進められようしている証拠に他なりません。これらの問題に対する市の態度は、福岡空港周辺などの重要土地利用規制法の注視区域指定に対して唯々諾々と従う姿勢を含めて、国がアメリカいいなりに進めている「戦争国家づくり」に本市が積極的に加担していると言われても仕方のないものであります。これでは市民の命と財産を守るという自治体本来の責務を果たすことができていないと言わざるを得ません。
このように2024年度決算は、住民の福祉の増進を図るという自治体の責務を放棄し、大企業の儲けを優先し、市民に犠牲を押し付け、その苦しみに背を向けるものでした。
このような決算諸議案を、わが党は賛成できません。
以上で、わが党の反対討論を終わります。