議会報告
2024年予算議会
予算案・関連議案についての反対討論
2024年3月28日 倉元達朗議員
私は日本共産党市議団を代表して、本議会に上程されております諸議案のうち、議案第32号ないし35号、38号、40号、41号、43号ないし45号、47号、48号、51号ないし54号、56号、58号ないし62号、64号ないし76号、78号ないし80号、82号ないし88号および99号について反対し、討論を行います。わが党の意見につきましては、代表質疑および補足質疑、分科会審査ならびに総会における質疑で述べていますので、ここではその基本点について述べます。
いま、「失われた30年」ともいわれる長期にわたる経済停滞のもとに襲いかかった物価高騰に対し、岸田政権は一時しのぎの対策を繰り返すばかりで、消費税の減税や、大企業の内部留保への時限課税を原資とする最低賃金の抜本的引き上げなどといった有効な手立てを何ひとつ打てずにいます。それどころか、政権与党の政治家たちは国民の暮らしそっちのけで政治資金パーティーと裏金づくりにいそしみ、まともに説明すら行わず、国民から大きな憤激を買っています。
国が対策を打たないなら、市民に身近な自治体である本市が市民の生活を防衛するための手立てを緊急にとるべきですが、市長の市政運営方針や新年度予算案には、学校給食費無償化などの市民の切実な願いに応える施策はまったく入っていません。それどころか国民健康保険料を引き上げて市民負担を増大させるなど、市民の暮らしの困難を打開するという観点が極めて乏しいと言わなければなりません。他方で、髙島市長は市民にほとんど恩恵のない、「天神ビッグバン」や人工島事業などの大型開発に熱中しています。
大型開発優先を改め、市民の暮らし・福祉や中小企業・小規模事業者の経営を応援することで市内経済の活性化を図るという地域循環型経済を実現する方向へ市政運営方針を転換し、新年度予算案を抜本的に見直すようわが党は市長に求めましたが、市長は応じませんでした。髙島市政の新年度の予算案および関連議案は、住民の福祉を増進するという自治体本来の役割にてらし、根本的な問題を抱えたままになっています。
次に、わが党が反対する予算案内容および議案のうち、いくつかの問題について、その理由を明らかにしておきます。
第一に、大型開発と規制緩和についてです。
髙島市長がすすめてきた「都市の成長と生活の質の向上の好循環」——すなわち大型開発や巨大イベントによって外からヒト・モノ・カネを呼び込み、大企業を潤わせれば、やがてそれが市民に滴り落ちるという、トリクルダウンのやり方は「世界水泳」の失敗によって劇的に破綻が証明されました。
わが党が条例予算特別委員会などで明らかにしてきたように、世界水泳の市負担は当初の3倍に膨れ上がり、チケット売上が目標額に達せず、協賛金の穴埋めにモーターボート会計をはじめ市財政から約5億円を投入したにもかかわらず電通やテレビ朝日に巨額の成功報酬を支払っていました。
経済波及効果についても、当初の市の見込みから100億円ダウンし、その数字さえ恣意的なモデルや計算を忍ばせてさらに100億円以上水増しさせていた疑いが濃厚となりました。市民局長はわが党の追及に対して、「アンケートをとった数字だ」と答弁しましたが、消費額の半分を占める一般観客にはアンケートなど取っていません。ただの推計です。ごまかしてはいけません。さらに、「選手と同行者には富裕層が多い」から自分たちが採用したモデルでいいんだ、と合理化しましたが、わが党が問題にしたのは来場者の大多数を占める一般観客の消費額です。世界水泳を見に来た人はみんな富裕層だったとでもいうのでしょうか。姑息なごまかしは、いい加減にしていただきたい。
わが党が調査会社に依頼して調査したところ、市民の中で世界水泳が「成功」だったと答えた市民はわずか12%しかおらず、開会式の会場を「競艇場」と正しく答えられた人は4%しかいなかったように、“世界中から観客を呼び込んで福岡市にお金を落とし知名度を上げる”と豪語してきた市長のやり方は、全くの虚構であることが明らかとなりました。
にもかかわらず、市長は大型開発や巨大イベントを軸にした「外からの呼び込み」政策を新年度も続けようとしています。あの手この手で税金を投入して収支を合わせてきた人工島事業にも今後も約284億円の事業費を投じようとしています。大阪・関西万博への本市の参加も予算化しています。
規制緩和による街壊しである「天神ビッグバン」には今年度までに約150億円の巨額の税金が使われ、新年度も約5億円が投じられる見込みです。その結果、全国最悪の地価の上昇が起こり、もうかっているのは都心に大きな土地やビルを持っている大企業や富裕層ばかりです。その一方で、福岡市のアパートの家賃は2015年と比べ2割も高くなり、ファミリー向けマンションは史上最高額の家賃に達するなど、都心部には住民、とりわけ中低所得層が住めなくなりつつあります。このような街壊しを許しておくわけにはいきません。
市長は、歴史的根拠の乏しい福岡城の「幻の天守閣」のライトアップ事業に2年間で1億円もの税金を使おうとしていますが、今議会の審議の中で、市長が集客を最優先させるために、天守閣の存否の議論は「決着をみないままとなっている」というこれまでの市の立場を投げ捨てて、文化庁の基準にも背いて事業を強行しようとしていることが明らかとなりました。
また、九州大学の箱崎キャンパス跡地利用について、大企業グループによる巨大アリーナやIT都市の建設提案が行われており、周辺との調和や100年のまちづくりをうたった「グランドデザイン」に背くものとして住民の間に不安・疑問が広がっていますが、今議会のわが党の質疑で判明したように、市長はその計画を容認し、事実上後押ししようとしています。
第二に、社会保障についてです。
昨年12月議会で強行された保健所の統廃合について市民の間に反対運動が広がっていますが、市長は統廃合を新年度も推進する意向です。今議会の審議の中でも、新年度において地域の現場に配置される職員や保健師の数はむしろ大幅に減らされ、各区にあって地域の専門家の声を反映させ区ごとの保健行政をデザインしてきた保健所運営協議会も大幅に減らされることが明らかとなりました。本市の保健行政の重大な後退と言わなければなりません。
また、老人福祉センターの無料入浴事業も廃止が強行され、廃止反対の署名が数多く届けられましたが、市長は復活の手立てを全く取ろうとしていません。
国民健康保険料について市長は新年度、医療分と後期高齢者医療支援分は据え置くとしているものの、40歳から64歳までが負担する介護分については引き上げ、史上最高額の負担を押しつけようとしております。介護保険料についても、第9期介護保険事業計画において、基準額を年間8894円も引き上げ、やはり8万円を大幅に超える史上最高額にしようとしています。いま市民は激しい物価高騰に苦しんでおりますが、他方で家計の所得に占める税と社会保険料の負担の割合は2023年9月時点で28%と過去最高水準になっており、とりわけ若年層に重くのしかかっております。そのような中で、市長が新年度、歴史上一番高い額へと国保および介護保険料を引き上げるなど、到底許されるものではありません。家計と地域経済に重大な悪影響を及ぼし、社会保障を持続不可能にさせるものではありませんか。今すぐ大幅に値下げすべきであります。
市民の願いが強い加齢性難聴の補聴器購入補助や、市営住宅の抜本的増設にも背を向け続けています。
第三に、地域経済についてです。
市長が大企業優先の経済運営を続ける中で、地元の中小業者への施策はきわめて貧弱です。市長が世界水泳に107億円も市財政を注ぎ込んだ一方で、新年度の、金融対策などを除いた、地元中小業者のための市の予算は約3億8000万円しかありません。
コロナ禍で経営を下支えしてきた時短協力金につづき、「燃料費等高騰の影響を受けた事業者支援」制度も4月いっぱいで廃止するなど、髙島市政は中小業者への直接支援制度を新年度なくそうとしております。大企業と中小企業の賃金格差がいよいよ開く中、物価高騰の影響を6割の中小企業が価格転嫁できていないという調査結果もあり、無策のまま新年度を迎えることは許されません。
また、中小業者が事実上の大増税となるインボイス制度中止の国への要求や、経済波及効果の高い住宅リフォーム助成制度の創設、市発注の工事や契約での労賃の引き上げ・確保を定める公契約条例の制定などを迫りましたが、市長は応じませんでした。
第四に、環境・まちづくりについてです。
能登半島地震を受け、本市の防災対策も抜本的に見直すことが求められています。ところが、能登半島で不足が深刻になった食料・水・トイレ・段ボールベッドなどについても本市は民間との協定や国の支援頼みのままで、公的な備蓄を抜本的に増やし、他の政令市のように一極集中ではなく地域に分散して配置することには、きわめて消極的でした。学校体育館のエアコン設置についても、お金がかかることを理由に動こうとしません。能登半島で大きな問題となった住宅の耐震化を促進するための工事費補助の大幅拡充にも後ろ向きです。
わが党は今議会の代表および補足質疑で、地震規模の想定などを見直すよう提起しました。特に、本市が避難者数の根拠として、全壊・全焼世帯の人口しか想定していないことは、あまりに現実離れしていることを警告しましたが、市長は全く見直す姿勢を示しませんでした。その後、24日付の西日本新聞が1面トップでこの問題を「福岡市 避難者想定に穴」という大見出しで報じ、市長の不見識ぶりが浮き彫りになりました。
このような防災対策の遅れの背景には、髙島市政があくまで自助・共助を強調し、公助を後回しにしようとする姿勢があります。これでは市民の生命や財産は救えません。
気候危機打開について、国連のグテレス事務総長は「地球沸騰化の時代」と述べ、世界に対策の具体的行動を呼びかけています。本市は2030年度に温室効果ガス排出量を2013年比で50%削減する目標を掲げていますが、その計画の中身は現計画では実現が困難な新技術を前提としたものであり、現在の技術をもって可能な計画に見直すことが必要です。また、民間事業所に市の2030年度目標に見合う削減計画を持たせて行政との協定をむすんで、実施状況を市民に知らせる仕組みを作ることを他の自治体では進めています。わが党はこれらの施策を代表質疑で提案しましたが、市長は全くやる気を見せませんでした。このままでは市長が掲げる2040年のカーボンゼロは到底達成できず、看板倒れに終わりかねません。
第五に、教育・子どもについてです。
40歳で過労死した福岡市の教員の裁判が本市を相手取って起こされ、他方で、昨年11月の西日本新聞で「文科省の調査では、福岡市は21年5月時点で、全国の政令市の中で中学校の(教師)不足がワーストだった」と報じられたように、本市の教員不足とそれに起因する教員の長時間労働は深刻です。その結果、クラス担任が年度当初から不足し他の教員が代替で必死にカバーする事態が発生し、また、正規教員で満たすべき教員定数の枠を非正規である講師で埋めるやり方が横行するなど、現場の疲弊は極限に達しています。しかし、今議会でこのことをただしたわが党の質問に対して、教育長は無責任な答弁をくり返しました。新年度予算案においても、教員の抜本増や長時間労働解消の有効な手立ては全くとられておりません。本市の教育行政の怠慢で人命が失われているのに、反省が足りなさすぎます。
髙島市政のもとで開発行政が野放図に進められ、人口が無計画に膨張した結果、各地で過大規模校が続出し、子どもたちの学び成長する権利が侵害されています。新年度も小学校で27校、中学校で6校が該当する見込みですが、市長も教育長もマンション開発規制などの有効な手立てを取ろうとしていません。
児童発達支援センターにおいて、市は、療育が終了する15時から18時までの時間に子どもの一時預かりを今年の夏から実施するとの表明を突然おこないました。現場ではまともな人員拡充もされず、体制も取れないまま、強行されようとしており、職員・保護者に混乱と不安が広がっていることが、今議会のわが党の質疑で明らかになりました。さらに、この問題の調査・審議をめぐり、市の担当者が業務上作成した資料について、こども未来局長が「その資料は公文書ではない」などとして秘匿を合理化しようとしましたが、結局わが党の追及の前に公文書であることを認め、謝罪に追い込まれました。「市がこれほどまでに強引に進めるのは、功名を焦った市長の無理な意向が背景にあるのではないか」という声が上がるのは当然です。
就労などの条件がなくても子どもを保育園などに預けられる「こども誰でも通園制度」について、市は新年度これを大幅に拡充しようとしていますが、わが党の質疑で、週1回預けられる子どもも、受け入れる子どもの集団も、不安定になりやすいこと、保育士を新たに雇うには市からの給付が少なすぎ、今いる保育士の負担が大きくなることなど、問題が山積みになったままであることが明らかとなりました。この制度は政府が自治体の保育の実施義務の解体をねらい、保護者と園との直接契約へと変質させる突破口にしようとしているものであり、抜本的な見直しをせずに、そのまま進めるわけにはいきません。
また、市民の要望の強い学校給食の無償化、少人数学級のさらなる推進、「自閉症・情緒障がい特別支援学級」の全校設置、児童館の増設などは新年度予算案には盛り込まれておりません。
第六に、市政運営およびその他の問題についてです。
ジェンダー平等の問題では、本市職員の女性の平均賃金は男性の84%、女性管理職比率は19.1%と大きく立ち遅れたままになっており、新年度もこれを解消する抜本的な手立てはなされておりません。
また、わが党は代表および補足質疑で生理の貧困問題を取り上げ、本市のごく一部の公共施設や学校では生理用品の無料配布をわずかにしているものの、いちいち保健室や施設の受付に「申請」しなければならない実態になっています。トイレットペーパーと同じように申請しなくても全ての施設において無料でアクセスできるようにすべきだと求めましたが、市長は応じませんでした。
平和行政については、核兵器禁止条約の批准を求める署名を、本市も加盟する平和首長会議が行動計画でうたっていますが、髙島市長はそれすらまともに取り組もうとしないことが、条例予算特別委員会の審議で浮き彫りになりました。また、核兵器禁止条約の批准以前にも、日本政府に条約6条・7条にもとづく被爆者・核被害者の支援・環境修復に日本政府への協力を促すべきだとわが党は提起しましたが、市は「国の動向を注視する」として後ろ向きな姿勢を示しました。
また、自衛隊のPAC3展開訓練に抗議しないなど、本市市民を巻き込みかねない米軍の不法な先制攻撃戦争への加担に、市長が全く問題意識を持っていないことも、審議の中で明らかとなりました。なお、本日の西日本新聞の1面トップで「有事想定 博多港指定へ」と報じられました。わが党が昨年12月議会および今回の条例予算特別委員会の分科会でこの問題をただした際にも「確定したわけではない」「情報収集している」「指定されても従来の利用実態は変わらない」などと答弁しましたが、報道でも「背景には…台湾有事」「軍事的利用が一層拡大」「民間人が巻き込まれる恐れがある」と報じられており、絶対に看過できません。市長として、安保3文書に基づく特定利用港湾への博多港の指定に拒否を表明するよう強く求めておきます。
あわせて、日本政府も共同提案国になった、ガザでの停戦を求める決議が先日、国連安全保障理事会で初めて採択されました。今議会で市長はわが党の求めに応じ、「停戦が速やかに実現することを希望する」と表明されましたが、その決意が本気であれば、決議が示した停戦はラマダン、すなわち4月9日までですから、拱手(きょうしゅ)傍観せず、市長自ら対外的なアピールを直ちに発信するようこの場で求めておきます。
これ以外にも新年度の本市行政には、労働者に払われるべき賃金がピンハネされ、大企業のもうけづくりに利用されている給付金事業等における民間営利企業への大規模業務委託が今後も反省なく続けられること、対価性のない政治資金パーティーを市長が全く見直す手立てを取らないことなど、見過ごせない問題が数多くあります。
そして、一方的な保健所統廃合、意見を聞かない入浴事業の廃止、こども誰でも通園制度の拡充や児童発達支援センターの一時預かりなどにあらわれた拙速かつ強引なやり方に見られるように、市長の現場無視のトップダウンのやり方が、市政のいたるところに目立つようになってきました。このような政治姿勢は、市民が主人公であるべき地方自治の精神とは正反対のものであり、今後市民との矛盾が一層激化することを厳しく警告しておくものです。
多くの点にわたって述べてきましたが、市民の立場から見て問題の多い予算案と関連諸議案に、わが党として賛成することはできません。
以上でわが党の反対討論を終わります。