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議会報告

2024年5月臨時議会

老人福祉センター入浴事業存続請願への賛成討論

2024年5月17日 中山郁美議員

私は日本共産党市議団を代表して、ただいま議題となっております5年請願第8号「老人福祉センターの入浴事業の存続について」に賛成し討論を行います。


昨年9月、高島市長は約50年続いてきた本市の各区にある老人福祉センターにおける入浴事業の廃止を突然打ち出し、12月議会には関連議案を提案、わが党以外の政党が全てこれに賛成するという異常な事態となりました。そのことを知った入浴事業の利用者や市民が「何も聞かされていない」「決め方がおかしい」など市長に対する撤回申し入れを行い、その後、本議会に対して今回の唐突かつ拙速な進め方に対して見直しを求め、約3300人の署名とともに本請願が提出されたのであります。


この入浴事業は老人福祉法で示された事業の一つであり、まさに老人福祉の一環です。知り合いやセンターで出会った高齢者同士が、ゆっくりと足を伸ばして入浴しながら語り合うことで健康を増進させる重要な事業です。だからこそ、かつて厚生省が老人福祉センターに設置が必要な施設として浴場を挙げて各自治体に通達を出しており、それは今日も効力を持っています。市当局は家庭の浴室設置率が95%になっていることを廃止の理由の1つに挙げていますが、全く理由にならないのであります。単身の高齢者が家庭において1人で入浴することにはリスクがあり、センターで見守られながら入浴できること自体が重要です。昨今の異常な物価高騰の折、高齢者に対し憲法25条が掲げる「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するという点でもその重要性は増しております。


また、当局は2020年度から新型コロナで本事業を4年間休止させ、昨年5月に5類に移行してからも再開しないまま、昨年9月の福祉都市委員会への報告の際、事業再開には多額の費用がかかると説明しました。先日5月8日の請願審査の際に費用はいくらかかるのかとの私の質問に対して「正式に試算はしていない」との驚くべき答弁を行いました。

多額の費用と言いながら、その裏付けは何もない。まさに廃止ありきの恣意的な進め方だと言わなければなりません。本来、新型コロナの感染拡大防止を理由に休止したのであれば5類に移行した昨年5月には直ちに再開すべきものでした。実際に入浴事業利用者からは「お風呂はいつから再開されるのか」という問い合わせが頻繁に行われていたにもかかわらず、5月以降も理由もなく再開しないまま推移したこと自体が重大な行政の怠慢です。コロナのどさくさに紛れ入浴事業の経費を縮減することを先行させたと言わなければなりません。そしてその延長線上で重要な福祉事業をなし崩し的に廃止するなど許されることではありません。


入浴事業の廃止について当局は「時代に合わせて機能強化を図る」と強調していますが、その内容はコーディネーターを配置して、高齢者の社会参加に関わる様々な支援を実施するなどとされています。しかし、これらの事は現在の施設でも充分可能であり、風呂場をつぶす理由にはなりません。風呂場をつぶして各施設毎日平均100人もの人が利用できなくなれば、センターの利用者数は半分程度に激減し、将来的には必要性がなくなったとして、老人福祉センターそのものを廃止する意図が透けて見えます。行革の矛先を高齢者福祉に向ける暴挙であり、これを許せば、その他の高齢者福祉施策の削減にもつながりかねません。


そもそも今回の進め方には大きな問題があります。この間の質疑で明らかになったのは、入浴事業の利用者や福祉の専門家からは何も意見を求めていないということです。このことを委員会で追及すると昨年福祉局が行った高齢者実態調査の結果を持ち出し、入浴事業のニーズは低かったと苦し紛れの説明をしましたが、そもそもこの調査は60歳以上44万人のうち無作為に3000人だけを抽出し、老人福祉センターに求める機能を書いてもらったというものです。

そのうち、有効な回答はわずか約1800であり、老人福祉センターの利用対象年齢44万人のわずか0.4%に過ぎません。そのうち老人福祉センターで入浴事業を実施していることを知っている人がどれほどいたのかと請願審査で尋ねたところ「わからない」とこれも驚くべき答弁がされました。せっかくの優れた事業でも、市当局の広報不足により多くの市民に本事業が認知されているとは言い難く、回答者が老人福祉センターや入浴事業そのものを知らなければ、アンケート調査の回答に出てくるはずがありません。このことを指摘された福祉局長は「むしろ知らない人の意見を聞きたかった」とまさに廃止ありきと言うべき本音を吐露したのであります。

本来、ニーズを調べるというのなら市内約1万人にのぼる老人福祉センターの登録者や、その約4割に上る入浴事業利用当事者にこそ、この事業についての意見を聞くべきではありませんか。当事者を蚊帳の外に置き、一方的に廃止を決めるなどおよそまともな行政手続きとは言えず、非民主的との誹りを免れません。

以上の点から、今回の請願は住民の意見を踏まえた行政を求める至極真っ当かつ重要なものであり、共産党市議団は全面的に賛同するものであります。


老人福祉センターにおける入浴事業は老人福祉法に定められているものです。この中で、高齢者の位置づけについて基本的理念の中で次のように述べています。第2条 「老人は、多年にわたり、社会の進展に寄与してきた者として、かつ、豊富な知識と経験を有する者として敬愛されるとともに、生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるものとする。」この精神からすれば、高齢者は敬愛されるべきもの、そして社会参加のあり方は高齢者本人が判断すべきであります。皆で集い入浴すること自体も重要な社会参加の1つであり、社会参加を就労やボランティア参加など狭い枠に押し込め、誘導しようとする市長及び当局の姿勢は法の精神をも捻じ曲げるものであり、高齢者への敬愛の念が欠けた冷たい態度だと言わなければなりません。


以上のように、今回の入浴事業廃止計画はいくつもの重大な問題をはらんでいることが浮き彫りとなっており、議会には行政のチェック役としての適切な判断が求められております。5月8日の請願審査においては、「既に議会で議決した」などとして、切実な請願を「不採択」とすることが数の力で強行されましたが、自らの判断に問題はなかったのかを真摯に振り返ることも議会人として必要な姿勢ではないでしょうか。一旦議決をしたけれども、その後に住民からその内容について見直すことを求められた場合、自らの判断に誤りはなかったか、振り返り検証する姿勢こそ求められているのであります。議員各位におかれましては、本請願の取り扱いについて、冷静かつ適切な判断を呼びかけ、本請願に対する賛成討論といたします。


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