2022年予算議会
2022年予算諸議案に対する意見開陳
2022年3月24日 堀内徹夫議員
私は、日本共産党市議団を代表して、本条例予算特別委員会に付託されております諸議案のうち、議案第26号ないし29号、33号、35号、36号、38号ないし42号、44号ないし46号、48号、51号、53号、56号ないし68号および74号ないし77号について反対し、議案第26号については、予算組替え動議に賛成し、意見開陳を行います。我が党の意見については、代表質疑及び補足質疑、分科会審査並びに総会における質疑で述べているので、ここではその基本点についてだけ述べます。
気候危機打開、ジェンダー平等、コロナ対応という3つの問題については、いずれも社会や政治のありようを根本から見直すことを迫っている課題です。
まず、気候危機の問題であります。
政府は、2050年に温室効果ガス排出ゼロを目指していますが、本市はそれよりも10年早く達成しなければなりません。わが党の補足質疑で明らかにしましたが、本市の温室効果ガス排出の8割は、購入電力と輸送燃料です。電力会社がつくって売りさばいている電力をただ漫然と買うのに任せているだけでは、仮に2050年に温室効果ガスを排出しない電力や電気自動車へと全て切り替わったとしても、本市は10年早くゼロにすることを掲げているわけですから、その目標を達成することはできないのであります。
市長は、わが党の質疑に対して「地球温暖化の取り組みは環境の分野にとどまらず、施策事業を計画実施するにあたって、市政全般において検討が必要」と答えました。これは重要な答弁ですが、目標達成できるどんな施策を行うのか、どの計画をどのように見直すのかという肝心な点は具体的に全く示されませんでした。
断熱効果の高い住宅リフォームへの助成についても、市は “県や国の助成があるから問題ない” という態度に終始したのですが、県や国より10年早く目標を達成するためにどうするのかをただしているわけであって、全くその点がわかっておられません。
また、業務ビルは温室効果ガス排出の大きな温床になっていますが、それを大量に作り出す「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」が一体どれだけの温室効果ガスを排出するのか、最新鋭のビルで排出が多少は減るというのならどれだけ削減されるのか、そうした試算すら明らかにされませんでした。
さらに、市は「2040カーボンゼロチャレンジ」を2年前に打ち出しながら、未だ具体化しておらず、「福岡市地球温暖化対策実行計画」の見直しの素案として出されているものは省エネの中間目標もなければ、8%という低すぎる再生可能エネルギー普及率の中間目標の見直しもありません。
「市政全般において検討が必要」と言いながら、まさにこれでは「やってるポーズだけ」と言われても仕方がありません。
ジェンダー平等についても同じです。
1990年代以降、世界は「ジェンダー主流化」を合言葉に、根強く残る男女格差の解消を進めてきました。「ジェンダー主流化」とは、あらゆる分野で、計画、法律、政策などをジェンダーの視点でとらえ直し、すべての人の人権を支える仕組みを根底からつくり直していくことです。
わが党はこの立場から、本市の課長級以上全体に占める女性の割合を大幅に増やすこと、市内事業所が男女別の賃金を調査・公表し、その是正計画策定を義務づける条例の制定などを求めましたが、市長は全く応じませんでした。そもそも市長の市政運営方針には、ジェンダーの「ジェ」の字さえもなかったのであります。
また、「性教育の手引き」については、15年前に教育委員会が作成してそのままになっており、LGBTQ+についての記述もなく、人権や科学的視点から性をとらえる包括的性教育の視点もありません。わが党はジェンダー平等の立場から見直すよう求めましたが、教育長は一言一句変更を認めませんでした。なぜそこまでかたくなに拒むのか、あまりにも不自然と言わねばなりません。
深刻な性暴力である痴漢被害についてわが党はジェンダー平等を求める立場から、この根絶を市政の課題とするよう提起しましたが、驚くべきことに、市民局長は性犯罪の総数を示すだけで、痴漢被害が一体市内でどれほど起きているのか、その数すらつかんでいないことが、審議を通じて浮き彫りになりました。福岡市は、SDGs関連事業における「ジェンダー平等」の課題の一つとして、「性犯罪被害防止啓発の強化」を位置づけていますが、市のホームページでも依然として性暴力について偏ったイメージにもとづいた、自己防衛中心のキャンペーンが展開されていることが本委員会におけるわが党の質疑で明らかになりました。市の防犯条例についても、性暴力や痴漢をふくむ犯罪について「自らの安全は自らで守る」という自己責任の原則を掲げたままになっております。
コロナ対応についてはどうでしょうか。
まん延防止等重点措置は解除されましたが、いわゆる第6波の感染者数は昨年の第5波を大きく上回って過去最多にのぼり、高齢者に感染が広がる中で死者数も8000人以上とこれまでで最悪となりました。この傾向は福岡県でも顕著に現れました。
21日付の西日本新聞では、福岡市民病院の医師のコメントを紹介し、「症状が悪化し搬送されてきた高齢患者のほとんどが3回目のワクチンが未接種だったことから『とにかく早く打つことが悪化を防ぐ一番の手だてになる』と助言」したことが明らかにされています。しかし、福岡市では高齢者の3回目の接種率は2月末の段階で5割台にとどまっていました。
さらに、同じ記事で、福岡市の有料老人ホームで入居者が次々発熱しPCR検査の検体を採取したものの、検査機関がパンクして結果が出るのに4日かかり、その間に基礎疾患のあった90代男性が肺炎で亡くなったとされています。わが党はこの第1回定例会の質疑の中で、検査数についても目標を持って抜本的に増やすよう求めましたが、市長は応じなかったのであります。ここでもワクチン接種や検査の体制を見直すことを市長は拒みました。
以上見てきたように、気候危機打開、ジェンダー平等、コロナ対応という政治的立場を超えてわが党が見直しを求めた3つの課題について、市長はいずれも否定的な態度を取っております。
これに加えて、2点指摘いたします。
一つは、10万円の特別給付金の業務委託をめぐって住民監査請求が起き、監査委員から報告が出されて、その中で市長に対して意見が付されたことについてです。
パソナができない仕事を、市長が市職員1000人を動員して“尻拭い”させたために、その業務の範囲について市は委託業者との間で協議録を残すように、監査委員は厳しい意見をつけました。
監査委員の監査結果はわが党や市民の皆さんとは異なる結論でしたが、ここに付された意見については、やはり立場の違いを超えて市も真摯に受け止めるべきことでありました。そのことは本委員会の審議で市も認めたはずでした。
ところが、今行われている非課税世帯への給付金の給付業務について市民からの苦情が殺到するもとで、電話回線増設の協議を市は業者側と行っており、わが党が監査委員の意見にもとづいて協議録をちゃんと作ったのかを本委員会でただしました。
最初保健福祉局長は「作成した」と答えました。ではいつ作成したのかと再度問うと「協議にあたって作成した」と答え、あたかも2月の協議の頃から作成していたかのように装いました。しかし、さらにわが党が「市は『作成していない』と3月16日まで言っていたではないか。『作成した』という日付は一体いつか」と重ねて追及すると「3月16日」と答え、わが党が質疑を行う前々日だったことが明るみに出ました。実際には協議録は作成されておらず、わが党の質疑通告を受けて、市があわてて直前に「作成」したことが浮き彫りになりました。結局、市は監査委員の意見など、はなから全く聞く耳を持たず、議会の追及さえ逃れられればいいと徹底的にごまかそうとし、言い逃れができなくなってしぶしぶ認めたのであります。あまりにも悪質ではありませんか。まじめに反省しようという態度ではありません。
もう一つは、植木剪定等の業務委託をめぐる不正問題です。この問題もわが党が本委員会でただしましたが、福岡市造園建設業協会の会員企業がほとんど関わる事件でありながら、まだ調査が終わらず、全貌も明らかになっていないのに、申し訳程度の「指名停止」や「警告」を行い、しかも処分公表前に副市長と協会の会長が会って早々に幕引きをしていることが質疑で判明しました。市長も、自身のパーティー券を買ってもらった人の中に、今回不正に関与した企業がいるのかどうかさえ、政治倫理条例に基づいて明らかにすることを、やっておりません。
そればかりか、支払伝票のコピーにより意図的に公金を詐取したことが疑われるにもかかわらず、市は民事上の違反に過ぎないかのようにかばい続けています。財政局長は「業者が不正をした経緯については承知していない」というばかりで、そこを頑なに調べようともせず、また刑事告発もしようとしておりません。
わが党と高島市長との間には、大型開発、規制緩和など大企業奉仕の政治や、暮らし・福祉の施策の転換をめぐって根本的な対立点があります。しかし、はじめに述べた気候危機打開、ジェンダー平等、コロナ対応の3つの問題に加え、この監査委員の意見や植木剪定不正問題という2点についても、やはり立場の違いを超えて対応ができるはずのものであり、根本的な対立点を脇において、これらの問題での真摯な対応を求めるものであります。
我が党は市長予算案の組替え動議を提案しておりますが、その中身を学校給食費負担軽減にしぼって提起しているのも、このような立場からであり、議員各位に賛同を求めるものであります。
この動議を可決していただいたのち、市長から3つの問題と2つの点についても真摯な対応があることを期待いたします。
なお、市長提案の当初予算案などについては本会議の討論において述べます。
以上で、わが党の意見開陳を終わります。