2022年6月議会
6月議会反対討論
2022年6月22日 山口湧人議員
私は日本共産党市議団を代表して本議会に提案されております議案第90号、92号、93号、96号、106号に反対し、討論を行います。
議案第90号「令和4年度福岡市一般会計補正予算案(第2号)」についてです。
本議案は、本市に交付された地方創生臨時交付金約38億円を原油価格・物価高騰等を踏まえた経済対策等として具体化するものであり、市民生活への支援および事業者等への支援についての予算補正を盛り込んでいます。
今回の物価高騰は、コロナ禍による生活困難の延長と考えるわけにはいかず、それ自体が生活や営業への深刻な打撃を与えるものです。
例えば、総務省の家計調査をもとに物価高騰の生活への影響をみると、所得が低い層ほど家計の負担率が大きく、年収200万円以下の層では物価高騰の影響が4.3%増と、消費税5%増税と同等の家計負担増になっています。また、企業物価指数は、過去41年で最高の前年比10%も上昇し、中小企業、個人事業主の経営を脅かしています。このコスト増が価格に転嫁されれば、一層の値上げが家計を直撃します。
政府の物価高騰対策に対して、共同通信社の世論調査では8割の人、日経新聞の調査では7割の人が「不十分」「評価せず」と回答するなど、多くの国民は「小手先」のものに過ぎないと感じ、強い不満を抱いています。
こうした点を踏まえれば、今こそ更なる支援を国に求めるとともに、市が財政調整基金を取り崩すなど独自の財源をつくり、しっかりと市民と市内中小業者を支える対策を取るべきですが、今回の補正の規模は、政府の対策の範囲内でお茶を濁す程度のものであり、全体としてきわめて不十分なものだと言わなければなりません。
ここでは、いくつかのその不十分な点について述べます。
第一は、下水道使用料の減免についてです。
これは、一般家庭の下水道使用料の2か月分を全額減免するものであり、市内ほぼ全ての家庭約88万世帯が対象となります。一方で、同じく物価高騰の影響を受けている約5万4千世帯の事業所は対象になっておりません。また、ひと家庭あたりの平均でわずか2626円の減免であり、しかも10月~11月分の1回きりで終わりです。あまりに額が少なく、時期も遅いと言わざるをえません。
わが党が審議のなかで求めたように、下水道事業の当初計画を上回る純利益分を活用して、減免対象を事業所にも広げつつ、継続的に下水道使用料の減免を実現すべきです。さらには、生活保護世帯に対する下水道使用料減免制度の復活についても検討すべきです。
第二は、学校や保育所等の給食の物価高騰対策についてです。
これは、市内の小中学校及び特別支援学校の給食にかかる食材費の価格高騰相当分を市が負担し、現在の給食費の値上げを抑制するというものです。しかし、保護者負担の給食費自体は据え置きであり、子育て世帯への直接の負担軽減にはなっておりません。この点を質疑の中で指摘しましたが、教育長は「実質負担軽減になる」と、詭弁を弄するありさまでした。また、今後も食材費の値上がりが見込まれる中で、牛肉が豚肉に変更されたり、単価が高い野菜が減らされたりなど、給食の質の低下や給食費の値上げなどが懸念されています。この点も質疑の中でわが党が質しましたが、教育長は具体的な対応を答弁できませんでした。
わが党は審議の中で、今回の臨時交付金は給食費の引き下げや無償にする取り組みに活用できることについて、国会審議において政府が明確に答弁していると紹介し、実施を迫りましたが、教育長は従来の施策を繰り返し、挙句に「納付が困難な場合は分割して納めればよい」などと言い出すなど、新たに起きた物価高騰による生活困難の実態を全く顧みない対応に終始しました。
また、既に、保育所等では保護者負担の副食費が今年から27園で値上げされ、そのうち5園が物価高騰を理由にしていることが、委員会審議の中で明らかになりました。市は、この値上げ分の補填については、制度設計を理由に7月に保育所から申請を受け付けて年度末に清算するとしていますが、あまりにも実態に見合っていません。実際に値上げしている園には物価高騰分を直ちに補填することを求めます。また、この際、保育所の副食費についても市独自に無償化または一部補助を拡充して子育て世帯の負担軽減を行うべきです。
第三は、生活困窮者支援体制構築プラットフォーム整備事業についてです。
この事業は、新型コロナウイルス感染症や物価高の影響により、新たに発生した生活困窮者支援の実態について調査を行い、官民連携による生活困窮者への支援方法や就労先の開拓などを検討するためのプラットフォームを設置するものです。今回の補正では予算の約半分が生活困窮者支援についてのニーズ調査等を行うための委託費に充てられています。
しかしながら厚労省の資料によると、今回の事業はプラットフォームの設置のみならず、子ども食堂等の生活困窮者向け物品支援等を行う支援団体に対して、1団体あたり上限50万円の助成をおこなう事業も含まれております。今回、市はこの支援団体への助成についてはまったく補正に組み込んでおらず、使い道がおかしいと言わなければなりません。また、生活困窮者支援のニーズ調査についても、市がつながっている支援団体等と連携して情報を集めれば良いだけの話であり、わざわざ委託して調査する必要はありません。「市民への生活支援」を看板にして行うのであれば、予算の大半を支援団体への助成に回すべきであり、そのことをわが党は審議の中で求めましたが、市は見直しませんでした。
第四は、事業者等への支援についてです。
今回の補正では事業者への支援として全体で約7億5千万円余が計上されており、全市版プレミアム付商品券事業など計上されています。しかし、これらは現在の急激な物価高騰に直面する中小事業者の生活や営業を直接支援するものには程遠いと言わざるをえません。
わが党は審議のなかで、政府が臨時交付金の事業例としてあげている、中小事業者への直接の経営支援、燃料費高騰に対する負担軽減の支援、福岡市から広がった家賃支援金の復活と拡充を求めましたが、経済観光文化局長は、福岡型ワーケーション推進事業など、現下の物価高騰による中小業者の苦しみとは関係のない事業を口にし、全く心を寄せない答弁を平然と行いました。
物価高騰のもとで、苦しむ市民を救済する支援策を最大限実施するのは行政の当然の責任です。それにも関わらず、本議案で示された対策だけでは、市民を救済するものになっておりません。よって、わが党は本議案に賛成しかねるものであります。
以上でわが党の反対討論を終わります。