2021年予算議会
2021年度予算議会の代表質問
2021年3月5日 倉元達朗議員
私は日本共産党市議団を代表して、髙島市長の市政運営方針と2021年度予算案及びその他の諸議案について、市長並びに教育委員会等に質問いたします。
(1)
初めに、新型コロナウイルス感染症についてです。
緊急事態宣言は解除されたとはいえ、新年度中に集団免疫に達する見込みはなく、引き続きこの感染症から市民の命と暮らしを守ることは最優先の課題であり、いわば市政に対する従来の立場を超えて力を合わせるべき問題です。
新規の感染者数が一定減少している今こそ、市中の無症状感染者を徹底して拾い上げ保護する検査戦略の確立・実行が急務です。感染源そのものを減らすために、感染急増地域の住民全体を網羅した面的検査を抜本的に拡充すべきと思いますが、答弁を求めます。政府の専門家分科会は高齢者施設の職員への定期的な検査への支援を提起しており、本市でも実施されていますが、専門家が共通して指摘しているように、週1回程度の定期的な検査が必要です。また、学校や保育園でもクラスターが発生していることは重大です。医療・介護・障害者施設への無料検査の頻度を拡充するとともに、入院患者や入所者、子ども関連の施設にも広げるべきではありませんか、御所見をお伺いします。また、これらの検査を全額国費で行うよう国に求めるべきと思いますが、答弁を求めます。感染を追跡できる「トレーサー」を確保するなど、保健所の人員・体制を抜本的に強化すべきではありませんか、御所見をお伺いします。
コロナによる医療機関への打撃は、感染者を受け入れている・いないに関係ありません。地域全体を連携しながら支えている医療機関や介護・福祉施設などにいきわたる減収補填を国に求めるとともに、市独自にも行うべきと思いますが、御所見をお伺いします。コロナにより中小業者の経営が深刻な打撃を受けており、地域経済を維持するためにも国に対して持続化給付金や家賃支援の再度の給付を求めることとあわせ、市としても支援策を講ずべきではありませんか、答弁を求めます。また、雇用調整助成金・休業支援金について必要な人全てに支給されるよう遡及も含め収束まで延長・拡大を国に求めるべきと考えますが、御所見をお伺いします。本市は医療・福祉などの労働者に特別給付金を支給しましたが、職種が限定されていました。学童保育支援員や清掃労働者を含め、本市の市民サービスを支えているエッセンシャル・ワーカーに広く特別給付金を支給すべきと思いますが、答弁を求めます。非課税世帯の学生に対して本市は5万円を給付することを決めましたが、対象が極めて狭いものであり、さらに広げるべきではありませんか、お尋ねいたします。 また、困窮している人にまず現金を渡し、後で収入が減った証明があれば、返済不要の給付にかえるという、生活困窮者・低所得者の手元にただちに届く新たな給付金を国に求めるべきではありませんか、答弁を求めます。人間が生きていくうえで必要不可欠な糧である文化・芸術活動を救うため、「文化・芸術復興基金」の設立を国に求めるとともに、本市独自の直接支援を抜本的に充実させるべきではありませんか、答弁を求めます。
ワクチン接種について、安全性などの迅速かつ徹底した情報公開を行うとともに、接種の有無による差別を許さないようにすべきと思いますが、答弁を求めます。また、感染対策の基本的取り組みと、ワクチン接種という2つの大事業を同時並行で進めることを基本にするとともに、医療機関への減収補填、医療従事者の待遇改善などによる人員の確保、迅速で正確な情報伝達など、接種への十分な支援をすべきと思いますが、答弁を求めます。
インバウンドや大型開発の推進予算が引き続き計上されておりますが、これらについてはもともとわが党と市長との間には考えの相違があります。しかし、コロナのもとでその違いを脇に置き、これらの推進をいったん停止して、検査や補償、手厚いケアを最優先するよう予算を抜本的に組み替えるべきと思いますが、御所見をお伺いいたします。
(2)
次に、市政運営の前提となる2つの問題についてです。
第1に、気候変動についてです。
本市は温室効果ガス排出を国よりも10年早く2040年までに実質ゼロにすることを打ち出し、現在新たな「地球温暖化対策実行計画」の策定に取り組んでいますが、国連などにより設立された「気候変動に関する政府間パネル」が作成した「1.5℃特別報告書」では、再生可能エネルギーへの大規模な置き換えや運輸・建物における温室効果ガスの削減など、社会のあらゆる側面において急速かつ広範な、前例のないシステム移行が必要だと強調しています。新たな計画の策定にあたり、本市の再エネ普及率を現行の8%から大幅に引き上げるとともに、温室効果ガスの発生源となる大量の業務床を生み出す「天神ビッグバン」や「フライトシェイム」と呼ばれる航空機燃料の大量消費を前提にしたインバウンドなど、「実質ゼロ」の目標に見合うよう市の関連施策や計画全体を見直すべきではありませんか、答弁を求めます。あわせて、いったん大事故が起きれば取り返しのつかない事態となる危険な原子力発電をやめるよう国に求めるとともに、玄海原発の稼働中止を九州電力に迫り、本市として原発ゼロを宣言すべきではありませんか、お尋ねいたします。
第2に、ジェンダー平等についてです。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の会長だった森喜朗氏が女性差別発言で辞任に追い込まれました。企業や政治の意思決定の場から女性が排除されていることが、ケア労働の地位の低さ、非正規雇用のまん延、労働の長時間化につながっており、国連事務総長は「あらゆる機構で男女同数を実現する時だ」と訴えました。ところが、本市の企業における女性管理職比率は10%、市役所における女性管理職比率は15%、市の審議会等委員への女性の参画率は35%ほどしかありません。新しい男女共同参画基本計画の策定に際して、男女同数をめざすとともに、市政のあらゆる場にその立場を貫くべきではありませんか、答弁を求めます。セクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメントなどを禁じる市独自の条例を制定するとともに、多様な性のあり方を尊重し、差別を禁じる条例を制定すべきと思いますが、御所見をお伺いします。また、暴行脅迫要件の撤廃など刑法改正や、選択的夫婦別姓の導入のための民法改正を国に求めるべきと思いますが、答弁を求めます。
(3)
次に、大型開発と規制緩和について質問いたします。
第1は、ウォーターフロント開発、博多湾大改造についてです。
ウォーターフロントの再整備計画は、もともと莫大な税金を投入し、呼び込み頼みの危険な計画であります。近年、外国クルーズ船の寄港が減少し、さらに新型コロナウイルスの影響により昨年2月以降の寄港はゼロ、その後の見通しもたっておらず、計画の前提が大きく揺らいでいます。同計画は破綻しており、きっぱりと中止すべきと思いますが御所見をお伺いします。
次に博多湾大改造についてです。
コロナ禍で人流が激減し、物流も目標の130万TEUの達成は「厳しい」と当局も認めるなど「博多港港湾計画」の前提も崩れています。箱崎ふ頭地区の水面貯木場及び海面処分場の埋立ては、必要がなく検討をやめるべきと思いますが、答弁を求めます。また、中央ふ頭や須崎ふ頭の新たな埋立てもやめて、同計画を大幅に見直すべきではありませんか、御所見をお伺いします。
第2は、「天神ビッグバン」と「博多コネクティッド」についてです。
「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」は、規制緩和によってビルの床面積を大幅に増やし、「賑わい創出」と称した地下道など関連施設や道路延伸に100億円を超える税金投入が決められており、特定企業への不当な優遇などを行うものです。地価の暴騰、住民や中小業者の追い出し、渋滞・ラッシュ・災害混乱などのインフラのパンクを引き起こし、市民や零細企業には何の恩恵もありません。さらにコロナ禍に伴う業績悪化やテレワークの影響でオフィスを縮小する企業が増えており「天神ビッグバン」と「博多コネクティッド」は中止すべきと思いますが、答弁を求めます。
第3は、破綻した人工島事業に巨額の公金を投入し続けている問題についてです。
人工島事業は土地が売れないために、立地交付金というプレゼントをつけた上に、原価割れで叩き売りをしたとしても最大421億円の大赤字を残す見込みになっていますが、そのような破綻した事業に今後も莫大な公金を投入しようとしています。さらに計画されている鉄軌道の導入、C2岸壁の延伸、15m水深の人工島D岸壁の整備や大型コンテナ船対応のための東航路整備事業などは必要性がなく無駄使いであり、これ以上の人工島への税金投入はやめるべきと思いますが、御所見をお伺いします。
福岡空港は、コロナによる入国拒否や渡航制限を受け旅客数が激減しました。「東アジアトップクラスの国際空港」にすることを謳い文句にして、30年後に旅客数を現在の1.5倍にし、路線数を倍加させるなどといった見込みも破綻しています。こうした無謀な計画を見直すように国に求めるとともに、必要もなく莫大な税金を投入する滑走路増設をやめるよう国・県に要求すべきと思いますが、御所見をお伺いします。
都市高速道路の福岡空港への延伸はわずか1.8kmに532億円を見込んでいますが、これも人工島への延伸同様、当初事業費470億円より膨れ上がりました。空港口交差点は、現状でも、将来でも、渋滞しないことが国交省の資料でも明らかとなり、延伸の根拠はもはやなくなっています。途方もない公費を投入するムダな高速道路延伸計画は直ちに中止すべきと思いますが、答弁を求めます。
第4は、九州大学箱崎キャンパス跡地利用と国家戦略特区などについてです。
市が発注をして作成させた「令和元年度 九州大学キャンパス跡地における都市機能マーケティング調査・検討業務」の報告書は、巨大集客施設やカジノ、F1などの国際的イベントの開催を参考例に挙げるなど、住民が望んでいるものとかけ離れたものであります。西日本新聞は「地場連合名乗り」と地元大企業と大手商社による開発計画を報じております。「グランドデザイン」さえ無視し、財界に利益をもたらす巨大な集客施設の誘致をもくろみ、住民の意向を踏まえない報告書に基づく開発はやめるべきと思いますが、御所見をお伺いします。
まちづくりは、市長が「尊重する」と言ったキャンパス周辺の4校区が長年にわたって、住民の要望をまとめた「4校区提案」の方向性や精神を踏まえることが大切です。地元住民から請願も出されている防災公園をつくるとともに元寇防塁を歴史遺跡として保存、整備すべきと思いますが答弁を求めます。あわせて、貝塚公園は分割することなく現機能を残すべきと思いますが、ご所見をお伺いします。
市長が九大箱崎キャンパス跡地で推進しようとしている「FUKUOKA Smart EAST」は、首相官邸主導の特例的な規制緩和で行うスーパーシティ構想の一環です。AIやビッグデータ等の最先端技術を使って子ども・高齢者の見守りや自動運転バスなどが提案されているようですが、住民は詳細な個人情報を実施主体に提供する必要があります。個人情報は一元的に集められ、国はこれらを使ってデジタル化と一体に、住民の監視、統制国家づくりを目論んでいます。したがって、個人情報を勝手に利用される恐れの高い「FUKUOKA Smart EAST」は監視社会の一環に他ならず、中止すべきと思いますが、御所見をお伺いします。
市長は、市民の反対を押し切って昨年6月に自衛隊に対して、本人の同意もなく、若者の名簿2万9817人分の提供を強行しました。全国の6割の自治体が個人情報やプライバシーを保護する観点から本人の同意なしの情報提供を拒否している中で、本市において本人の同意なしに情報を提供したことは断じて許されません。したがって自衛隊への対象名簿の提供は一切行わず、市民が自分の個人情報を厳格にコントロールできるよう条例を改正すべきと思いますが、明確な答弁を求めます。
次に国家戦略特区についてです。「グローバル創業・雇用創出特区」は、まち壊しにつながるビルの高さ制限の緩和や解雇指南など市民を守るルールを壊す規制緩和であります。本市の特区指定を返上すべきと思いますが、御所見をお伺いします。
海外から金融機関や金融人材を集める「国際金融都市」の実現に向けた取り組みは、経済の金融化・バブル化を進め、実体経済の衰退、富裕層への富の集中、格差拡大を招きます。したがって「国際金融都市」誘致はやめるべきと思いますがご所見をお伺いします。
コロナ収束が見通せないのに来年5月開催にしがみつき、事業費が当初より50億円も膨らんでいる世界水泳選手権福岡大会は中止を提起すべきと思いますが、御所見をお伺いします。
(4)
次に、社会保障についてです。
コロナ危機は、命を守るケアに手厚い社会・市政が必要なことを浮き彫りにしました。そこでまず、国民健康保険及び後期高齢者医療等の改善についてです。
市長は今年度、10年越しの公約破りを強行し、史上最高水準の保険料を被保険者に押し付けております。さらに新年度の保険料について、被保険者がコロナ禍で大きな打撃を受けているにもかかわらず40歳から64歳までに係る「介護分」を約1000円も引き上げようとしており断じて認められません。一般会計から国保会計への法定外繰入れについて、国は県単位化の下でも自治体独自の判断だとしており、機械的な削減をやめ、必要額を確保し保険料の大幅引下げを行うべきだと思いますが、答弁を求めます。子どもの均等割については第一子から全額免除すべきだと思いますが、御所見を伺います。また、滞納者への保険証取上げ、短期証への切替えや問答無用の差押えをやめるべきだと思いますが、御所見を伺います。あわせて、高い保険料の要因となっている均等割と世帯割について公費を1兆円投入して廃止するよう国に求めるべきだと思いますが、答弁を求めます。国保法44条にもとづく窓口負担減免制度を適用しない姿勢を改め、活用を推奨すべきではありませんか、答弁を求めます。
後期高齢者医療については、県の財政安定化基金など各種基金を活用し軽減特例の縮小・廃止等で引き上げられた保険料を大幅に引き下げるよう広域連合に求めるとともに、国に対して、軽減措置を元に戻し、年収200万円以上、370万人の窓口負担を2倍へ引き上げる閣議決定は撤回するよう求めるべきではありませんか、お尋ねいたします。
こども病院並びに市民病院については、正規職員を抜本的に増員し、感染症パンデミックにも対応できる体制へ改善するよう指導すべきと思いますが、御所見を伺います。
第2は、介護保険についてです。
この間強行されてきた要介護2以下の特別養護老人ホーム締め出し、一部利用者への利用料2割、3割への引上げ、「要支援1・2」の「総合支援事業」への移行に加え、来年度からさらに要介護5まで総合事業の対象とする「弾力化」まで行われようとしています。「保険あって介護なし」という「国家的詐欺」は許されず、さらなる改悪の中止を国に求めるとともに、本市においては「弾力化」を実施すべきではないと思いますが、御所見を伺います。また、職員不足による「介護崩壊」をくいとめるために、介護職員の賃金引上げのための独自補助を行うべきではありませんか、答弁を求めます。介護保険料については、さらなる引上げは許されず、一般会計からの繰入れを含め、あらゆる手立てをとり引き下げるべきではありませんか、お尋ねします。また、特別養護老人ホーム整備については、厳しい入所制限をやめ、公共用地を無償貸与し、早急に待機者解消を図るべきだと思いますが、答弁を求めます。
高齢、障害、病気など、介護が必要な家族がいる場合に、大人が担っている介護の責任を引き受け、あるいは代替(だいたい)し、家事や家族の世話、介護、 感情面のサポートなどを行うことにより教育を受ける権利を奪われるなどしている 18 歳未満の子ども、いわゆる「ヤングケアラー」について本市における実態を把握しているのか、把握していなければ早急な実態調査を行い必要な施策を構築すべきだと思いますが、御所見を伺います。
現在策定作業中の「第8期介護保険事業計画」については、以上述べてきた諸点を盛り込んだものへと抜本的に見直すべきだと思いますが、答弁を求めます。
第3は、生活保護並びに貧困対策についてです。
安倍政権が強行してきた生活保護基準の連続引下げにより食事は1日2食、子どもの服が買えないなど、生存権さえ否定される事態が常態化しております。先月22日、大阪地裁で、この基準引下げを違法と断じる画期的な判決が下されました。国に追随して引下げを当然視してきた市長も真摯に反省すべきです。市長は国に対し削減してきた各種扶助費を元に戻すよう求め、市独自の下水道料金減免、夏季・年末見舞金を復活させるべきではありませんか、お尋ねします。また、保護申請をためらわせる要因となっている親族等への扶養照会については撤廃するよう国に求めるとともに、本市においては本人が望まない場合、照会を行わないよう運用を改めるべきではありませんか御所見を伺います。また、病気や年齢等の状況を無視した機械的な就労の強要や財布の中身を調べる等の誤った資産調査等を根絶すべきではありませんか、答弁を求めます。ケースワーカーについては、100件以上を担当する過重負担によって不適切な対応や誤りが後を絶ちません。国の標準を守るように増員し、専門性を高め、きめ細やかな支援を可能にすべきだと思いますが、御所見を伺います。
第4は、障害者福祉についてです。
障害者施設の多くは恒常的な資金難に苦しんでおり、本市独自に運営費補助や利用者への支援体制の充実を図るとともに、労働者の賃金引上げのための助成金をつくるべきではありませんか、お尋ねいたします。手話言語条例の制定を急ぐとともに、精神障害者の運賃割引についてJRに実施を強く求め、各種交通機関の料金割引を療育手帳Bにも広げる手だてを取るべきだと思いますが、御所見を伺います。不足している児童発達支援センターについては、雁ノ巣幼稚園跡地の活用だけにとどめず、さらに増設し、通園施設の指定にあたっては当事者の意向を最優先にするとともに、南部療育センターについては開所を急ぐべきではありませんか、答弁を求めます。
第5は、高齢者施策についてです。
加齢性難聴によって認知症悪化や社会参加の妨げとなることなどが指摘されているものの、補聴器購入費は高額であり、補助を求める声は切実です。他都市に倣い障害認定のない難聴者への補助制度をつくるべきだと思いますが、御所見を伺います。高齢者乗車券については、所得要件を廃止し、交付手続きについては申請方式を改め、対象者に100%郵送交付すべきだと思いますが、御所見を伺います。
第6は、住宅政策についてです。
憲法25条が保障する生存権の土台として、住宅確保に公的責任を果たすことが求められているものの、市営住宅の応募倍率は高止まりしており住宅セーフティネット施策も全く不十分です。「戸数は増やさない」とした「市営住宅ストック総合活用計画」を抜本的に見直し、要配慮者・子育て世代向けの戸数を増やし、若者の単身者世帯枠をつくるべきではありませんか、答弁を求めます。また、URや民間の賃貸住宅を借り上げて市営住宅にするなど、多様な供給方式の具体化を行うとともに、民間賃貸住宅に居住する低所得の若者や高齢者への家賃補助制度を創設・充実させるべきだと思いますが、御所見を伺います。
(5)
次に、子育て支援と教育について質問いたします。
第1は、保育行政です。
コロナ危機の中で、保育現場からも悲鳴が上がっています。保育園では、接触や「3密」を避けることは困難であり、日常の業務に加え、遊具や絵本の消毒など感染対策が保育士の大きな負担となっています。保育士自身も感染リスクを抱えながら、子どもの命と健康を守り、成長を支えるかけがえのない仕事を行っています。保育は、社会の土台を支えるケア労働のひとつであるにもかかわらず、保育士の賃金は、全産業の労働者の給料と比べて10万円も低い状況です。「ただ子どもを預かっているだけではない。せめて月5万円アップしてほしい」という声が強く寄せられています。コロナ禍において、保育士が確保されないと保育自体が成り立ちません。そこで、国に公定価格の抜本増を求めるとともに、市独自に賃上げの手立てをとるべきと思いますが、答弁を求めます。あわせて、家賃の一部を補助する保育士家賃助成事業は継続し、助成額を少なくとも毎月3万円に引き上げ、非正規や給食調理員にも適用すべきと思いますが、ご所見を伺います。
保育士配置基準の低さがコロナ禍で現場の負担をさらに増大させています。昨年の緊急事態宣言期間に、少人数の保育を経験した保育士からは「普段もこんなゆとりある保育がしたい」という声があがっています。独自に基準を引き上げている他都市に倣って、配置基準を改善し、保育士を増やすべきと思いますが、ご所見を伺います。あわせて、1947年以来変わっていない面積基準の改善にも踏み出すよう国に求め、本市独自にも改善を図るべきではありませんか、お尋ねします。
さらに、昨年10月1日時点で、未入所児童数は1665人、待機児童数は60人と依然として希望する保育所に入れない子どもたちがいます。市長は、国に追随し、株式会社などの営利企業が参入する企業主導型保育事業を推進してきましたが、待機児童は解消されず、36協定違反事案が発生するなど問題が絶えません。したがって、待機児童解消のために、企業主導型保育事業をこれ以上推進することはやめて、適正規模の認可保育園を抜本的に増やすべきだと思いますが、答弁を求めます。
第2は、留守家庭子ども会についてです。
コロナ対策として「3密」を避けるためにも、子どもの発達・成長を支えるためにも、子ども40人以下の支援単位ごとに放課後児童支援員を複数配置し、さらに少人数を支援単位とすることを展望して施設整備を行うべきと思いますが、ご所見を伺います。また、支援員の正規化を進め、手厚い人員体制と専門職にふさわしい労働条件への改善を図るべきと思いますが、答弁を求めます。
第3は、児童館についてです。
中央児童会館の利用者数は、近年特に中高生が右肩上がりで増加するなど、中高生のニーズが高まっています。しかし、本市には、中央児童会館1館しかなく、これでは国の児童館ガイドラインが定める拠点性や地域性が発揮できないことは明らかです。公立幼稚園やこども病院跡地等を活用して、すべての行政区に計画的に増やすべきと思いますが、答弁を求めます。
第4は、児童虐待についてです。
児童虐待の相談は2019年度で過去最多となり、コロナの影響でさらに深刻化しています。親身な相談活動ができるように専門職である児童福祉司、児童心理司、弁護士資格をもつ職員を大幅に増員すべきと考えますが、ご所見を伺います。また、児童相談所内に児童心理治療施設を設置したため、一時保護の定員が10名に減らされ、多いときには20名を超えて受け入れた状況もあったといいます。これでは一時的であれ、劣悪な環境となり、子どもの権利が脅かされている状況です。不足する児童相談所の一時保護の定員を増やし、相談所を計画的に増やすべきと思いますが、答弁を求めます。あわせて、市として、児童養護施設職員の処遇の実態を調査し、専門職にふさわしいものに改善すべきと思いますが、答弁を求めます。
第5は、ひとり親家庭への支援についてです。
とりわけ母子世帯の半数近くが貧困状態に置かれ、一般社団法人「ひとり親支援協会」の調査によれば、新型コロナの影響で65.6%が「収入が昨年より減った・減る見込み」と答えています。このような中で、ひとり親家庭に対する家賃補助などの直接支援や、児童扶養手当の抜本的増額を国に求めるとともに、当面市独自の加算を行うべきと思いますが、ご所見を伺います。
第6は、子どもの医療費助成についてです。
市長は、「ふくおか安心ワンコイン」と宣伝し、ひと月あたりの自己負担額500円を正当化しています。コロナの影響で、とりわけ子育て世代の経済的困難が広がる中で、経済的事由に左右されずに医療を受けられるようにすることは政治の責任です。したがって、通院時の自己負担をゼロにし、早急に子どもの医療費は高校卒業まで完全無料とすべきと思いますが、答弁を求めます。
第7は、教育行政についてであります。
1点目は、少人数学級についてです。
コロナ禍のもと、学習の遅れや格差への手立て、心身のケア、感染対策をはかるために、少人数学級は喫緊の課題となっています。教育委員会が新年度実施する「35人以下学級」は、教室は増やすが教員は増やさない上に暫定実施としており問題です。国が35人以下学級に踏み出し、予算措置したことを活かすとともに、権限移譲分を除けば、一般会計の約6.7%と低い水準となっている本市の教育予算を大幅に増額して必要な予算を確保し、教員を抜本的に増やして恒久的にすべての学年、学校で「35人以下学級」を実施すべきだと思いますが、答弁を求めます。
2点目は、「GIGAスクール構想」についてです。
1人1台端末による「GIGAスクール構想」は集団での共同の学びを大切にしてきた学校教育を変質させるものであり、やめるべきではありませんか、答弁を求めます。他方で、学習する権利を保障するためにオンライン授業は重要であり、希望する全ての子どもが受けられるようにすべきだと思いますが、答弁を求めます。
3点目は、本市の教育計画についてです。
「第2次福岡市教育振興基本計画」は、少人数学級の拡大や特別支援教育の教員の加配、教育環境の整備などが抜け落ち、財界要求のグローバル人材育成を強調する歪んだものとなっています。コロナ禍で新たな不安とストレスをため込んだ子どもの実態から出発した柔軟な教育の実現をめざすとともに、憲法と子どもの権利条約の立場に立ち、一人ひとりの子どもの発達と人格の完成を土台に据えたものへと抜本的に見直すべきだと思いますが、ご所見をうかがいます。
4点目は、教職員の働き方の改善についてです。
教員の働き方改革と称して導入がねらわれている「1年単位の変形労働時間制」は8時間労働制を壊し、長時間労働の固定化につながるものであり、本市においては選択すべきではないと思いますが、答弁を求めます。
5点目は、教育のあり方についてです。
市立中学校に下着の色のチェックなど人権侵害にあたるいわゆる「ブラック校則」があり、理不尽な指導が行われていることが、福岡県弁護士会の調査で明らかになりました。教育委員会は、未だにまともな調査も行わず、否定し続ける態度をあらため、子どもからの聞き取りも含めて、ただちに丁寧に実態調査を行い、人権侵害やハラスメントにあたる校則や指導を学校から一掃すべきだと思いますが、答弁を求めます。
6点目は、教育を受ける権利の保障についてです。
菅首相も「5年間ですべての政令市に少なくとも1つは設置を目指す」と述べている公立夜間中学校を市内に早急に開設すべきではありませんか、答弁を求めます。コロナ禍のもと、経済的に困窮する家庭が増えており、お金の心配なく学べるよう市独自の給付制の奨学金を創設するとともに、教育振興会奨学金は希望者全員が借りられるよう改善すべきだと思いますが、答弁を求めます。生活保護基準に連動させて引き下げてきた就学援助基準を元に戻し、さらに拡充すべきではありませんか、所見を求めます。
7点目は、教育環境の改善についてです。
猛暑により教育活動に支障が生じている小中学校の体育館をはじめ、日本語指導教室、PTA会議室などへのエアコンの設置を早急に行うべきだと思いますが、答弁を求めます。今年度コロナの影響で延期された大規模改造と新年度予定されている学校施設の改修については、遅れることなく全て実施すべきではありませんか、答弁を求めます。
8点目は、特別支援教育についてです。
障害を理由に希望する学校に通えない事態を生み出さないため、肢体不自由児等が入学を希望する学校に支援学級の有無にかかわらず、介助員を配置し、エレベーターを設置すべきではありませんか、お尋ねします。不足している知的障害対応など、特別支援学校の増設を計画し、市独自に小中学校の特別支援学級の教員を加配すべきと思いますが、所見を求めます。
9点目は、過大規模校の問題についてです。
市長が進める無秩序な開発によって、過大規模校が生み出され、教育環境が悪化し、教育の機会均等の原則が侵されないよう開発抑制を可能にする条例などのしくみを教育委員会の責任で構築すべきだと思いますが、答弁を求めます。
(6)
次に地域経済の振興と雇用・労働政策について質問いたします。
第1に、中小企業・小規模企業者対策についてです。
中小企業がコロナ危機で苦境に陥っている中、菅首相が経済産業大臣に、中小企業の再編促進などによる生産性の向上を指示し、中小企業基本法の見直しを目論んでいます。政府の成長戦略会議では、生産性の低い中小零細企業をつぶし、成長する企業だけを支援することが論議されています。中小企業を守る立場でこのような方針は撤回するよう政府に申し入れるべきではありませんか、答弁を求めます。あわせて、コロナ禍で中小零細企業の経営が困難に直面しており、消費税の5%への減税を求めるとともに、2019年度と20年度分の消費税納税を免除するよう要請すべきと思いますが、ご所見をお伺いいたします。
コロナ禍で高島市長が推進している企業の呼び込みやインバウンドの推進など、外需頼みの経済政策が成り立たなくなっています。こうしたもと、内需の拡大、とりわけ中小零細事業者の支援に思い切って力を集中した経済政策が必要となっています。ところが、新年度、融資枠については拡充されたものの、それを除いた「中小企業の経営基盤の強化と持続的発展の促進」のための予算は2億円程度にとどまり、わずか650万円の増額しかありません。市内中小企業の6割を占める小規模企業者の多くはお金を借りて返す体力さえなく、これでは直接支援が全く足りません。従って、本市の経済と雇用を支えている中小企業・小規模企業者の振興予算を抜本的に増やすべきと思いますが、答弁を求めます。
第2は、市の発注についてです。
中小企業振興条例では第14条「小規模企業者の事情に配慮するよう努めること」と謳っているにもかかわらず、本市は、小規模企業者及び地元中小企業との契約実績を把握していません。調査を行い把握するとともに、地元中小企業、特に小規模企業者へ優先して発注すべきと思いますが、答弁を求めます。
あわせて、市発注の公共事業の下請け、孫請けの賃金について、従業員への聞き取りをおこない設計労務単価が守られているかを調査し、文書通知だけでなく実効ある対策を講じるとともに、本市が発注する建設工事や業務委託等に従事するすべての労働者に適正な賃金を保証する公契約条例を制定すべきと思いますが、答弁を求めます。
第3は、住宅リフォーム、商店リフォーム制度についてです。
コロナ禍で苦しむ、地場中小企業・小規模企業者の仕事づくりは、喫緊の課題となっています。コロナ禍での住宅のリフォーム需要も増加しており、経済効果が投入予算の10倍から25倍もある、用途の制限がない住宅リフォーム助成制度を頑なに拒否する態度を改め、商店リフォーム支援制度とともに創設すべきと思いますが、答弁を求めます。
第4は、農業の振興についてです。
コロナ禍で外食需要が激減する中、政府は2021年の主食米の需要量の設定を大きく引き下げました。減反の押し付けをやめ、充分な価格での政府備蓄米の買い上げを増やすなどの抜本的な対策を国に要請すべきと思いますが、ご所見をお伺いいたします。また、日本の経済主権・食料主権を守るために日米貿易協定やTPP、EPA、FFRはやめるよう国に求めるべきではありませんか、答弁を求めます。コロナ禍での減収対策として、野菜、花卉の価格安定制度の改善・拡充は大切であり、国に要望するとともに、市の「野菜花き生産安定事業」は品目を拡充すべきと思いますが、ご所見をお伺いいたします。
第5は、雇用・労働政策についてです。
新型コロナの感染拡大で、本市でも雇用の4割をしめる非正規雇用労働者の解雇・雇止めが広がり続けています。地元企業に対して雇用を守るよう申し入れるべきではありませんか、答弁を求めます。あわせて、最低賃金を抜本的に引き上げるよう国に求めるべきと思いますが、答弁を求めます。また、今年度卒業予定の高校生、大学生の就職難が深刻な問題になっており、市の正規職員として大幅に雇用すべきと思いますが、ご所見をお伺いいたします。さらに、労働問題を県や国に任せるだけでなく、専門職員を配置した労働相談窓口を各区につくるとともに、違法・脱法的な働き方をなくすための、調査・相談・啓発を網羅した条例を作るべきではありませんか、ご所見をお伺いします。
(7)
次に、まちづくりについて質問いたします。
第1は、防災対策についてです。
新型コロナ感染拡大防止へ避難所での「3密」対策が求められており、避難者のソーシャルディスタンス確保のためにも避難所の抜本的増設や、マスク・消毒液、間仕切りや段ボールベッドなどの備蓄の充実などを「地域防災計画」に盛り込むべきだと思いますが、答弁を求めます。
第2は、コミュニティ・町内会についてです。
本市が自治会・町内会などに依頼している業務は、2019年度で年間553件と過重になっており、担い手不足の大きな要因となっています。市の下請けにするやり方を抜本的に見直し、「公助」を明確に打ち出して依頼協力件数を大幅に減らすとともに、自治会・町内会への住民の参加を強制する条例は作るべきではないと思いますが、答弁を求めます。
第3は、地域交通についてです。
西鉄が市内各地でバスの減便を強行しているため、住民の通院や買い物等の日常生活に大きな支障をきたしています。早急に増便を図るよう西鉄に強く求めるとともに、市が責任を持って公共交通不便地にコミュニティバス等を運行すべきだと思いますが、答弁を求めます。また、市営地下鉄とJR筑肥線の乗継割引については、住民の請願が採択されたことを受け、JR九州に強く申し入れ早急に実施するべきだと思いますが、ご所見をお伺いいたします。
第4は、アスベスト対策についてです。
アスベスト被害者らが国と建材メーカーを訴えた最高裁判決で、国の責任が確定したことを受け、石綿の飛散防止対策の強化が求められています。アスベスト使用建築物の解体に対する市独自の補助を行うべきだと思いますが、答弁を求めます。また、アスベスト使用建築物のハザードマップを公開し積極的に市民に周知するべきだと思いますが、答弁を求めます。
第5は、ごみ行政についてです。
ごみの処理量は、「新循環のまち・ふくおか基本計画」当初年度と2019年度を比べると、減るどころか増えています。次期計画で、生産から廃棄までメーカーが責任を負う「拡大生産者責任」の徹底をおこない、ごみを減らす方向に大きく転換する目標を持ち、手立てをとるべきだと思いますが、答弁を求めます。あわせて、プラスチックごみの削減に向けた明確な目標を持つべきだと思いますが、ご所見をお伺いいたします。
(8)
次に、行財政運営・平和・民主主義について質問いたします。
第1は、行財政改革についてです。
市長は「市政運営方針」において、「施策、事業の徹底した選択と集中による重点化」をかかげました。「持続可能な市政運営」や「デジタル化」を振りかざして、市民の福祉・教育を切り捨てることは絶対に許されず、ムダな大型開発を「聖域」にせず市民参加で見直す、真の行財政改革こそ断行すべきと思いますが、答弁を求めます。
第2は、市の業務委託のあり方についてです。
本市は10万円の特別定額給付金の給付事業をパソナに委託しましたが、作業が追いつかない分について、地方公務員法に違反するにもかかわらず、市職員を動員して尻拭いさせました。これは「民にできることは民へ」と言って公的責任を放棄してきた市長の民間万能論が破綻したものに他なりません。市が本来行うべき業務を営利企業に丸投げするやり方をやめ、直接雇用により市が責任を持って行うべきと思いますが、御所見をお伺いします。
第3は、外国人の人権についてです。
本市では日本以外の出身者への差別をあおる宣伝活動やデモを、ヘイトスピーチと認定しておらず、許されません。市長が根絶のための宣言を行い条例制定をするとともに、公共施設でヘイトスピーチがあった場合に使用を制限すべきと思いますが、ご所見をお伺いします。また、外国人居住者の人権や生活を守るために、気軽に相談できる市独自の相談窓口をつくるとともに、市として総合的な多文化共生推進計画をつくるべきと思いますが、答弁を求めます。
第4は、名義後援についてです。
「平和のための戦争展」などの名義後援について本市が拒否・取消しをしていることは、表現の自由を脅かし、文化芸術基本法に背くものであり、許されません。「名義後援の承諾に関する取り扱い要領」を抜本的に見直すべきと思いますが、答弁を求めます。
第5は、平和の課題についてです。
核兵器禁止条約が1月22日に発効しましたが、世界の圧倒的多数の政府と市民社会が共同した同条約の批准を市長が直接、日本政府に求めるべきと思いますが、答弁を求めます。また、核兵器廃絶に背を向ける姿勢を改め、本市として非核自治体宣言を行うべきではありませんか、ご所見をお伺いいたします。本市に公立の平和資料館の設置を求める運動が、かつてない広がりを見せており、戦争の悲惨さ、被爆の実相を伝えていくために常設の平和資料館を建設すべきと思いますが、答弁を求めます。
本市は福岡空港の滑走路増設に伴う米軍板付基地の施設移転費の一部負担をした上に、米軍による土壌汚染の調査・対策に要した費用まで負担しています。直ちに税金の投入をやめ返金を求めるとともに、板付基地の即時全面返還と福岡空港の軍事利用中止を国と米軍に対して強く要求すべきと思いますが、答弁を求めます。あわせて、博多港への米軍艦等の入港を拒否すべきではありませんか、ご所見をお伺いします。
自民党が進める憲法9条の改定に反対し、憲法の理念が生かされる市政を目指すべきと思いますが、答弁を求めます。
以上、市長及び教育長等の誠意あるかつ明確な答弁を求め、長時間のご静聴に感謝し、日本共産党市議団の代表質問を終わります。