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議会報告

2019年度決算特別委員会

2019年度決算についての反対討論

2020年10月9日 倉元達朗議員

私は、日本共産党市議団を代表して、2019年度一般会計及び特別会計並びに企業会計決算諸議案のうち、議案第148号ないし151号、153号ないし158号、160号、162号ないし171号に反対し討論を行います。


2019年度は、消費税が8%から10%に増税された年度であります。内閣府は2012年12月、すなわち安倍政権になって「アベノミクス」がスタートしてから始まったとされる「景気拡大局面」が18年10月で終了し、「後退」に転じたと認定しました。その1年後に消費税が10%に引き上げられ、日本経済を大不況に陥れました。つまり1年前から景気が下降していた中で、国民に重い負担を強いる大増税を行うという政策判断が根本的に間違っていたことが浮き彫りになったのであります。

そして、2019年12月に中国で発生が報告された新型コロナウイルスは瞬く間に全世界に拡大して、本市の市民生活と経済にも未曾有の影響を与え始めました。感染の拡大によって多くの犠牲者が生じ、医療は崩壊間際となりました。市民生活や中小業者の経営は「自粛」に追い込まれ、消費税増税によって弱体化していた経済はさらに大きく落ち込みました。また、国は非科学的な学校の一斉休校を押し付け、現在に至るまで、子どもたちはストレスや不安に長く苛(さいな)まれ続けることになりました。

このような緊急事態においては、まず何よりも新型コロナウイルスと未曾有の経済危機から、市民の命と暮らしを守る緊急の手立てを取ることが地方自治体の役割のはずです。ところが、髙島市長は、2019年度の最終の補正予算においても、また、当該決算年度中に編成した次年度の当初予算においても、有事にふさわしい市民生活防衛の手立てをほとんどまともに取らないままでした。

さらに、消費税増税と「アベノミクス」の悪影響から市民の暮らしを守る防波堤となることが自治体に求められましたが、髙島市長が行ったのは、安倍政権と一体になって市民の暮らしを痛めつけることばかりで、「アベノミクス」とたたかうどころか、全く逆に「アベノミクス」を礼賛し、それを福岡市で推し進めてきました。


これらの問題点について、分野ごとに詳しくみていきます。


第一に、大型開発と規制緩和の問題です。


市長が「私の夢」と言ってしがみついたロープウエー構想は市民の強い反対の前に断念を余儀なくされましたが、その大もとの開発計画であるウォーターフロント地区の再整備は見直されず、2019年度も約7億円が投入されました。同様に、寄港数が減少し始め、日本一から陥落したクルーズ船の受入関連整備にこれまで55億円が投じられ、決算年度も約7億円が使われています。そして、こうした無謀な港湾開発を大掛かりに進めるテコとなる箱崎埠頭の埋立には技術的検討費として1023万円が費やされました。

規制緩和によって大量のビルを建て替え、渋滞、避難スペース不足、地価上昇による住民・中小業者追い出しなどの弊害をもたらす「天神ビッグバン」「博多コネクティッド」には、2019年度あわせて約14億円が使われました。コロナを契機にリモートワークが世界的に広がり、オフィスビル需要の急減が起きていますが、市長は立ち止まって見直すこともなく、車を呼び込むだけで約60億円もかかる天神通線の延伸や、大企業の描いた絵をそっくり実現させてやるツインビル周辺の再開発を進めて税金を湯水のように注ぎ込むとともに、市役所北別館の民間への貸与・売却によって公有財産を大企業に明け渡す路線を突き進んでいます。

人工島事業は土地が売れないために、立地交付金というプレゼントをつけた上に、原価割れで叩き売りをして最大437億円の大赤字を残す見込みになっていますが、そんな破綻した事業に2019年度も約150億円が投じられています。さらに、審議では、人口を現在の1.6倍に増やして鉄道を引き込む案まで検討されていることが暴露されたのであります。

福岡空港への都市高速道路の延伸については、今も渋滞など存在せず、これからも存在しないことが審議で明らかになりましたが、にもかかわらず、総事業費470億円の計画がそのまま推進されており、2019年度は2648万円が検討経費として使われています。同じく時間短縮効果の乏しい人工島への延伸についても、89億円が使われています。

市長は、この年度に国家戦略特区に電動キックボードの規制緩和を提案しましたが、財界の利潤追求におもねって、安全性の確認や社会合意がない技術を拙速に本市で試そうとするものであり、許されません。


第二に、医療・介護など社会保障についてです。


髙島市長は国の消費税増税に反対するどころか、「社会保障の充実強化の観点から実施されるものと認識している」などと議会で答弁して引上げを当然視し、さらに、地下鉄や上下水道などの市民生活にかかわる各種料金に平然と転嫁しました。市営渡船運賃・駐車場使用料・上下水道料金・地下鉄乗車料金を合わせると、市民負担に転嫁された増税分は約7億円にものぼります。さらに、この年度に宿泊税を市内の中小旅館業者や利用客に押しつけることを決めました。

国民健康保険料は高止まりしたままでした。それどころか、増税が市民生活を直撃しているこの年度において、保険料引下げを求める3万2000筆の請願や158団体が署名した公費1兆円投入による引下げ請願が提出されたにもかかわらず、市長は次の年度の大幅値上げを提案したのであります。こうした中で資格証明書の交付、つまり保険証の取り上げは9471件になりました。保健福祉局が作成した資料によれば、本市は政令市で3番めに保険証取り上げの比率が多い自治体になっています。また、国民健康保険法44条に定められた窓口負担の減免は本市では1件も適用がないという異常な運用がされています。

介護保険については、一定の軽減措置が取られたものの、その財源は低所得者ほど負担が重い消費税でした。保険料は制度発足から1.5〜3倍にもなっており、消費税の増税でさらに年2〜3万円もの負担増になっております。ところがこの軽減策では年間1824〜9116円しか引下げにしかなりません。特別養護老人ホームの整備はもともと4〜5施設という低レベルの水準でしたが、2018年度は3、2019年度は2、そして今年度はとうとう1施設に落ち込んでしまいました。利用申込みが2割も増えているのに、怠慢としか言いようがありません。また、これまで各区役所で行なっていた介護認定の作業を民間に委託したため、法で30日と定められているのに平均で45日、長いもので70日以上も認定にかかる事態が引き起こされました。これほど大きな問題を起こしたにも関わらず、市は直営に戻さず、現在でもこの企業との契約を継続しております。

国の生活保護基準の連続切下げによって、保護世帯、とりわけ子育て世帯が大打撃を受け、食事は1日2食、子どもの服が買えないなど、生存権さえ否定される事態となっています。ところが髙島市長は「国において適切に定められたもの」などとして、切下げを受け入れ、市独自の夏季・年末一時金支給の要求に対しても「生活保護は国の責任だから」などと冷たく拒否しています。さらに市は市内福祉事務所の生活保護相談個室に監視カメラをつけ、保護利用者・申請者を「二級市民」、犯罪者扱いし始めたのであります。

高齢化が進展し、加齢性難聴の補聴器購入について補助を求める声が高まっていますが、市長は決断しませんでした。

障害者の福祉乗車証について、市長は廃止を決定していましたが、世論の強い反対を前に廃止撤回を表明しました。しかしながら、市長は対象範囲・金額などを「狭めない」とは言明しておらず、予断を許さない状況です。また、「市立障がい者スポーツセンター」など障害者の社会福祉施設の管理を社会福祉事業団から、公募に切り替え、公的な責任を後退させました。

新型コロナウイルス対策の関連事業費は、一般的な感染対策のためのわずかな事業費を除けば、2019年度決算においては1円も含まれておりません。


第三に、子育て・教育についてです。


認可保育園に入れない子どもは1272人と依然として多かったにも関わらず、保育所整備数は前年度比で2割近くも落ち込んでおります。南区の保育園が保育士不足でこの年度から休園に追い込まれるという衝撃的な事件が起きるなど、保育士の処遇改善も進みませんでした。

髙島市長が進めている企業主導型保育については、補助金詐取事件を起こしたコンサルティング会社社長が関与していた保育園が存続の危機に追い込まれ、保育士の給与が出ておらず、調理室で給食が一度も作られていないなど、市の調査が有名無実なものになっている実態が明らかになりました。

この年度から保育無償化が始まりましたが、3歳未満については対象にならず、副食費も実費徴収が続けられました。また、幼稚園類似施設は無償化が受けられない事態となり、市独自の補助もないままです。

市立幼稚園の跡地をめぐり、地元住民から児童館の設置を求める請願が出されましたが、市は中央児童会館があるという理由で、増設をしようとしません。1館だけの体制では国の児童館ガイドラインが定める児童館としての拠点性や地域性は発揮できません。

少人数学級を求める声についても、無視され続けました。その結果、新型コロナウイルスのパンデミックがおきてから、教室において1メートルのソーシャル・ディスタンスが取れない子どもが市内で1万人も生じてしまいました。

他市では行わなかった、保護基準に連動させた就学援助切下げも元に戻さず、市独自の奨学金も拒否しました。

市立中学校で行われている下着検査など、人権侵害となるいわゆる「ブラック校則」について、教育長は「校則は教育の目的を達成するため社会通念上必要かつ合理的な範囲で校長の権限で決めているもので人権侵害にはあたらない」と述べ、それらを一掃するどころか、当然視する姿勢を示しました。

市長の無謀な開発推進によって人口が急増し、市内各地で学校がパンク状態になっています。1000人を超える小学校が市内に8つもでき、西区の九大学研都市地域では分離新設が間に合わない悪循環に陥っています。教育委員会が開発抑制に関与するしくみをつくるように市長と協議を行うことや、過大規模校を生み出すような開発を抑制する条例をつくることが求められますが、市長も教育長も何の手立てもとっておりません。

施設が老朽化し、危険な箇所がそのままにされている学校が少なくありませんが、学校の修理などに使う「校舎校地等維持補修費」は、前年度比で1億円も減らされています。


第四に、中小企業施策、経済・雇用対策についてです。


消費税増税が中小業者を襲ったにも関わらず、中小企業振興のための経費は、国の消費税増税対策であるプレミアム付き商品券事業を除けば、約1億3000万円と決算全体の0.015%にしかなりませんでした。中小企業振興条例で配慮が定められている小規模企業への市の発注額については調査さえ行っていません。また、中小業者が切望している住宅リフォーム助成や商店リフォーム助成の創設、自治体発注の建設工事や委託業務などに従事する労働者の賃金を確保する公契約条例や、若者を使い捨てにする、いわゆる「ブラック企業」を根絶する条例の制定についても、市長は応じませんでした。呼び込み、インバウンド頼みの髙島市政のゆがみが、結局コロナ禍における市内中小業者や労働者の苦境につがっているのであります。


第五に、住まいや環境・防災についてです。


市営住宅への応募倍率は一般枠で14.3倍、高齢者・身障者の単身枠で25.5倍ですが、新築は1戸もありません。市は民間アパートの供給とあわせて対応するから問題ないとしていますが、新しい住宅・土地統計調査をもとに、支援しなければならない世帯や民間アパートがどれだけ増減したのか、市はまったく把握しておりませんでした。把握もせずに問題がないかどうか、わかるわけがありません。また、市の計画に定められた、低所得世帯への家賃低廉化への補助の検討も進んでおりません。

髙島市長が煽る開発一辺倒の政治の結果、市内の各地でマンション建築紛争が頻発していますが、建築紛争予防条例を実効あるものに改正する手立ても取られませんでした。

この年度は、地域防災計画における備蓄品の管理状況及び物資の調達・供給の仕組みについて行政監査が行われ、報告書には避難所等の備蓄について「災害時応援協定を20の企業等と結んでいるが、災害時応援協定に基づく調達物資(流通備蓄)の必要数量について、検討されておらず、また、8協定は10年以上前に結ばれたものとなっている」と非常に手厳しい指摘がなされたにもかかわらず、全く改善されていませんでした。

地球温暖化対策については、温室効果ガスを減らすために、原発頼みをやめ、本市の再生可能エネルギーの普及計画を抜本的に引き上げるよう求めましたが、市長は応じませんでした。市庁舎の調達電力先についても再生可能エネルギーを多く導入している会社を選ぶのではなく、価格本位で原発頼みの九州電力を選んでいます。


第六に、市政運営の姿勢、平和・民主主義に関わる問題についてです。


福岡空港の滑走路増設工事に伴い、同空港内にある米軍板付基地の施設が移転され、福岡市はそのための支出をしていたことが決算年度に判明しましたが、市は市と地元住民団体などでつくる「板付基地返還促進協議会」や市議会にも報告してきませんでした。市民と議会をあざむくものであり、港湾空港局長は、「結果として説明が十分ではなかった」と答弁し、事実上謝罪したのであります。

本来市が責任を持って行うべき市民への給付の業務を、この間、人材派遣大手パソナなどに丸投げしており、同グループとはこの5年間に委託契約で14億円、同様に麻生グループとも5年間で17億円の契約を結んでおり、多額の税金を「お友達企業」の儲けづくりに投入している実態が明らかになりました。決算年度の公共工事における総合評価方式の一般競争入札において、事実上競争のない1社入札が年々増え続け、実に3割にまで上昇したこととあわせ、特定企業と髙島市政との癒着は目に余るものがあります。

市債残高は減ったとしていますが、普通会計ベースで市民一人当たりの残高は、依然として政令市の中では4番目に多い水準であり、しかもやはり借金である債務負担行為は、髙島市長になってから490億円も増えております。

市長は政策推進プラン、行政運営プラン、財政運営プランなど、大型開発は聖域にしながら、高齢者や障害者など福祉分野を切り捨て、さらに公共施設の建設、運営管理にPFIやコンセッション方式などを導入して、民間事業者のもうけの道具にする計画をこの年度も推進しました。

当時の安倍首相が憲法9条に自衛隊を明記する理由として、自治体の自衛官募集への「非協力」を挙げたことに対し、髙島市長が直ちに呼応して、市民の強い反対を押し切り、本市の若者の名簿を差し出す意向を表明したのもこの年度でした。

また、「税金による買収」の疑惑として国会で大問題になった「桜を見る会」についても、髙島市長は自らの招待理由は不明のまま「公務」として参加し、招待もされていない「前夜祭」に参加するため福岡市を2日も空けたのであります。

国の悪政に対峙して市民の声を代弁するどころか、政権べったりの忠勤ぶりを見せた髙島市長の異常な姿勢が如実に現れた決算年度となりました。


以上、2019年度決算の問題点を見てきましたが、到底認定できる中身ではありません。大型開発・規制緩和中心の政策をやめ、市民の暮らし支援を拡充して、地域でお金が回る循環型の経済に転換することこそ求められております。


以上を述べて、わが党の反対討論を終わります。


以上


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