議会報告
2020年6月議会
6月議会反対討論
2020年6月23日 綿貫英彦議員
私は日本共産党市議団を代表して本議会に提案されております諸議案のうち、議案第129号、130号、132号ないし140号、144号に反対し、討論を行います。
まず、議案第130号「福岡市 拠点文化施設 条例案」、議案第133号「福岡市 公園条例の一部を改正する条例案」、議案第135号「福岡市 拠点文化施設等に係る 指定管理者の指定について」、議案第136号「福岡市 拠点文化施設 整備及び 須崎公園 再整備事業に係る契約の締結について」、議案第144号「都市公園区域の一部廃止について」です。
これらの議案は、市民会館の建替え、隣接する須崎公園の再整備にさいして、拠点文化施設の設置を条例で定め、この施設の指定管理者として日本管財の関連会社、株式会社カルチャーベースの指定などを行うものです。
一連の議案には、3つの問題があります。
第一の問題は、提案されている企業が拠点文化施設の指定管理者としてふさわしくないことです。
総合評価一般競争入札であったにもかかわらず、競争性の乏しい1社入札だった上に、性能審査において評価点は高くなく、特に「植栽計画」や「広報・情報発信」は、最低レベルの評価でした。本市の「文化芸術振興計画」では拠点文化施設について「みどり溢れる…空間」の創出をわざわざ求めているのに、「植栽計画」の評価点が100点満点で言えば37点、また、同計画において集客のために「発信力を高めて」いくことが目標とされているのに、「広報・情報発信」の評価点も同じく37点しかありません。市が重視すべきはずのポイントでさえこれほど低評価の業者をなぜあえて選ぶのか、極めて不可解です。
また、日本管財は、本市の市民プールの指定管理を担った際に、市には事前には“自社の社員を配置する”としていたのに受付業務を別会社に丸投げし、やってもいない清掃業務を「終えた」と日誌に記入し、修繕費を水増しして請求するなど、信じられないずさんなやり方をしていました。そして、プールなのに、国が示した衛生基準である毎月1回の水質検査を4ヶ月も実施せず放置してきたのです。まことに悪質と言わねばなりません。
「選んではいけない条件が揃っている」と言っても過言ではない案件ですが、審議の中で市側から具体的で説得力のある反論はありませんでした。
第二の問題は、真に文化芸術を創造し発信していく場とは、なりがたい条例案だということです。
全国トップレベルの15の劇場・音楽堂に選ばれている北九州市の拠点文化施設は、条例の目的で「新たな芸術文化の創造及び市民文化の向上」をうたっているのに対して、本市の条例案は目的に「芸術文化の創造」という文言・観点がなく、「場を提供する」ことに限定され、めざすところは「交流の促進」「都市の魅力の向上」、すなわちインバウンドの道具に貶(おとし)められてしまっております。
第三の問題は、市民の要求にこたえる整備事業にしようという市の姿勢が、およそ感じられないことです。
委員会審議の中で、大ホールの場合、一般利用の利用料が現在1日12万8000円なのに22万円に大幅値上げされ、駐車場も無料だったものが有料になることが明らかとなりました。利用に二の足を踏むほどの負担増であります。また、市民のスポーツ要求や子どもが思い切り遊びたいという要求などにどう応えるものになっているか、わが党や他会派の議員から質問がありましたが、ボルダリングやスケボーの施設もなし、遊具も申し訳程度にしか配置されず、すべて業者任せとなっており、市としてまともに検討した様子がありませんでした。
県立美術館の建物が須崎公園に残り続けるなど、市と県の思惑が違ったまま計画が進められているのも、市民の要求をまじめに公園整備に反映させる気がないことの現れだと言わざるを得ません。市民の願いではなく、「内外来訪者」や「賑わいの創出」など、ここでも市長はインバウンドの道具としてしか見ていないのであります。
以上の理由から、わが党は関連諸議案に賛成できません。
次に、議案第128号「令和2年度福岡市一般会計補正予算案(第4号)」については、新型コロナウイルス感染症対策のためのものであり、一刻も早く市民に給付金などを届け、対策を少しでも前進させる立場から賛成するものですが、そのうち、いくつかの事業については意見を申し上げておきます。
第一に、「学校の全面再開にあたっての取組み」についてです。
小学6年生の授業への加配教員の追加措置によって、少人数編成による授業が行われますが、国の専門家会議は「新しい生活様式」として、「身体的距離の確保」を呼びかけ、「人との間隔はできるだけ2メートル(最低1メートル)空けること」を基本としており、本市の小学校ではこの基準を満たせない子どもが1万人以上も生じることが審議の中で明らかになりました。「身体的距離の確保」を「新しい生活様式」の重要な一つとして社会全体で取り組んでいる時に、教室を例外とすることは重大な問題です。最低1メートルが確保できる、全学年の35人以下学級への早急な移行を強く求めておきます。
学校施設の消毒等のための補助員が各校1人配置されますが、審議を通じて、教員は消毒業務や給食の配膳業務からも解放されないことが明らかになりました。与党議員からも「教えながら消毒や給食配膳をするのは負担が重すぎる。ぜひ環境を考えてほしい」という要望が本会議の質問で出たほどであり、もともと異常な長時間労働で働いている教員にこうした負担を押しつけたままにすれば、教育活動への注力ができなくなり、その解決こそ今切実に求められています。
学校の全面再開に関連して申し上げておきますが、市教育委員会は、「基礎学力につながる教科を優先する」として来年1月までに何がなんでも国語・算数・理科・社会・英語の5教科の時数を消化させることを学校現場に押し付けており、理解もままならないほどに短縮され、詰め込まれた、猛スピードの授業が子どもたちを追い詰めています。このようなやり方を見直し、長い学校休業明けで不安とストレスを抱え、学力格差に苦しんでいる目の前の子どもを丸ごと受け止める教育に転換することを強く要求しておきます。
また、同じく学校の全面再開に関連してですが、第3給食センターの工事が遅れ、10月半ばまで給食が食べられない子どもたちが大量に生まれる事態になっています。新型コロナウイルスの影響で工期がずれ込むこと自体はありえることです。だからこそ、給食を保障された子どもと、切り捨てられた子どもが同じ市内に混在するという格差を放置したままにして、学校の全面再開を続けることはできません。なぜなら、給食は学校給食法でその意義を定められた教育の重要な一環だからであります。とりわけ、給食なしに夏休みを削って授業を強行することは全く説明がつきません。委員会審議で明らかになったように、教育委員会は給食の継続のために調理人員の確保や既存施設の活用に力を尽くしたとは到底言えず、今からでも継続のためにあらゆる手立てを取るよう強く求めておきます。
第二に、「事業者を支援する取組み」についてです。
「障がい福祉サービスの機能強化」として、新型コロナウイルス感染症の影響で生産活動収入が減少した就労継続支援事業所に対して最大50万円の助成を行います。しかし、この助成は生産を再び始めるための費用にあてるもので事業所の減収を補填したり、働いている障害者の工賃を直接支えたりするものではありません。本市として上乗せ・横出しをする独自の手立てを取るよう、重ねて求めておきます。
「オンライン採用・就職活動支援」については、多くの学生が来年の新卒市場の縮小に不安を抱く中で、単に学生と企業を橋渡しするだけでは不十分です。莫大な内部留保を抱える大企業に対しては雇用を増やして社会的責任を果たすよう求めるとともに、地元中小企業に対しては雇用を増やした場合に奨励金を出すなどの手立てを取ることが必要です。市が現時点では雇用の縮小が起きていないという認識を示したことは、あまりに危機感に乏しい認識であると言わざるを得ません。
あわせて、就職だけなく学生生活への支援が必要です。高学費のもとで奨学金という名の借金に苦しんでいる学生は日々アルバイトに追われていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大によってアルバイト収入が断たれる苦境にさらされています。国の「学生支援緊急給付金」の対象は学生全体の1割程度でしかなく、多くの学生は救われません。学生割合が大都市の中で第3位の「学生の街」である本市こそ、市独自の支援策を直ちに実施すべきであります。
第三に、「市民の安全・安心につながる取組み」についてです。
児童扶養手当を受給するひとり親世帯に対して1世帯5万円の臨時特別給付金を支給しますが、厚生労働省の調査にもとづく貧困ラインが3人世帯で年収250万円未満とされる現下において、福岡市では母子世帯の場合、45%が年収200万円以下であり、今回の給付金だけではとうてい母子世帯は貧困から抜け出すことはできません。さらに、支給は8月以降ということが答弁で明らかとなっており、遅すぎます。他の自治体にならって、市独自の緊急の支援を行うべきであります。
住宅を失う恐れのある人に支給される住居確保給付金について、今回申請件数の増加にともなう増額をいたしますが、5月の申請が前月比で6倍に激増した上、手続きが煩雑で給付が進まず、パンク状態になっています。この相談支援事業も、パソナに業務委託され、5月1日に6687万円を増額して分室を設けて追加対応する措置が取られています。
現実に大きな遅れが発生しており、この委託が妥当であったか厳しく検証される必要があります。10万円の特別定額給付金の場合、事業の完了時期も仕様書に明記しない、パソナとのずさんな契約が今議会で明らかになっております。
髙島市長は「政令市の中ではトップクラス」「最も早い」と述べた市民局長の答弁に触れながら、「人口100万人を超える政令市と比較しましても早いペースで進んでおります」などと述べ、あたかも事務処理が早く進んでいるかのように自慢する答弁をしたのですが、そもそも現金が届かなければ生活が成り立たないと苦しんでいる人にとって、お金が自分の手元に届いているかどうかが肝心なことであって、政令市で一番であるかどうかなど、心底どうでもいい話です。暮らしの痛みというものが何も分かっておられません。
それに加えて、「政令市で最も早い」という市長の答弁は、市民と議会をあざむく全くのデタラメだったことがわかりました。
わが党は質問後、担当局を呼んで「最も早い」とはどういう意味かただし資料を提出させたところ、一つは「一番早くオンライン申請を受け付け、給付を始めた」という意味であり、もう一つは「一番早く郵送を始め、振込を始めた」という意味であることが判明しました。「市民のもとに届いている率が一番高い」とか「一番早く給付が終わった」という意味では毛頭なく、単に「始めるのが早かった」という意味に過ぎなかったのであります。「最も早い」という言葉を、誰がそんな意味で受け取るのか――あまりにもひどい市民だましであります。給付金が届かずに苦しんでいる市民の気持ちがわからず、「自分は日本で一番早いんだぞ」と本気で威張る市長の姿に、驚きを通り越して怒りすら覚えます。
先に述べた日本管財の例といい、このパソナの件といい、1社入札で特定企業に儲け口を投げ渡すという髙島市長になってからのやり方は目に余ります。特に、「コロナで緊急だから」ということを、いわば奇貨(きか)として、どさくさに紛れてずさんな契約を押し通す手口は、国でも大きな問題となっており、わが党として市議会でも引き続き厳しく検証してまいります。
以上でわが党の討論を終わります。
以上