2018年予算議会
予算諸議案に対する反対討論
2018年3月28日 熊谷敦子市議
私は、日本共産党市議団を代表して、本議会に上程されております諸議案のうち、議案第30号ないし33号および36号、37号、39号、40号、42号、44号ないし48号、50号、52号ないし63号、65号ないし72号、74号、75号、77号ないし82号、86号、90号ないし92号並びに95号に反対し、討論を行います。わが党の意見につきましては、代表質疑および補足質疑、分科会審査ならびに総会における質疑で述べていますので、ここではその基本点について述べます。
安倍政権のもとで森友学園問題での公文書改ざん事件が発覚いたしました。国民の知的共有財産である公文書が改ざんされていたということは、何よりも国民を欺き、また、立法府を欺くものであり、憲法に明記された国民主権と議会制民主主義を壊す歴史的犯罪行為に他なりません。安倍総理は改ざんを「知らなかった」と言っていますが、行政の最高責任者として許される態度ではありません。そのような政権のつくる予算案・法案をそのまま認め、そのもとで本市の施策を行うわけにはまいりません。安倍総理は内閣総辞職をして責任を取るべきであり、また、佐川国税庁前長官はもとより、安倍昭恵夫人、夫人付の職員、当時の理財局長、その他の関係者にすべて国会へ出てきていただき、真相を徹底究明することが大前提です。安倍総理・麻生副総理と昵懇の仲である髙島市長がそのことをまず国に強く求めるべきだと申し上げておきます。
このような公文書改ざん、民主主義破壊の安倍政権によって、社会保障の自然増削減は新年度の政府予算案をふくめ6年間で1兆5900億円にもおよび、今年10月から生活保護費のさらなる削減など貧困と格差の拡大に追い打ちがかけられようとしています。また、軍事費が4年連続で過去最高になる一方で、文教予算は4年連続の減額、中小企業予算・農業予算・地方交付税も削減される予算案になっています。また、撤回された裁量労働制の改悪法案と同様に、改ざんされたデータを根拠にした、「定額働かせ放題」の「高度プロフェッショナル制度」、いわゆる「残業代ゼロ法案」の導入も狙われています。
このような暴走政治から市民を守るのが自治体の役割のはずですが、新年度の高島市長の予算案と施政方針の基調は、市民を守るどころか、この暴走政治に付き従い、本市をその実験場とし、尖兵の役割を買って出ています。
髙島市長の新年度予算案と市政運営方針は、安倍政権による国家戦略特区での規制緩和、大型開発を無謀な形で推し進めるものとなっています。
「天神ビッグバン」、ウォーターフロント再整備、人工島事業が新年度も目白押しですが、特に、博多駅・ウォーターフロント地区・北天神を結ぶロープウェイ構想は100億円かかると言われているのに、市長の「夢」だということで需要の確かな根拠もないまま進めようとし、新年度に2000万円もの関連の調査研究費がつけられていることは重大です。多くの市民から「とんでもない無駄遣いだ」と厳しい批判の声が起きているのは当然だと言わねばなりません。
市長は「借金は減っている」などと自慢していますが、実際には大型開発が市財政を圧迫し、もう一つの借金である債務負担行為は年々増え続けてきました。髙島市政の第1期の最後と現在を比べると、市債と債務負担行為の合計額は逆に30億円も多くなっていたのであります。
このような大型開発・規制緩和の道を進んでも、市内の大企業の内部留保や法人企業所得だけが膨れ上がり、市内雇用者報酬や家計の可処分所得など市民の暮らしはますます貧しくなっています。本市の給与所得者の平均給与収入額は、髙島市政ができる前の2009年度は454万円でしたが、最新の2016年度は448万円に大きく下がっています。市長のいう「都市の成長と生活の質の向上の好循環」など全く起きていないのであります。
他方で、社会保障については安倍政権に追随して「配る福祉から支える福祉へ」と称して、公的な責任を解体し、地域や市民に仕事を押し付けるものとなっています。
市長が年頭の記者会見で「これからのまちづくりは、税金ですべてを解決するというものはもう古い」として、「市民が参加をして…福祉においても…共に創っていくということが大事なキーワードにな」ると述べたように、税金による福祉や社会保障をどんどんなくし、「自分たちで支えろ」というやり方を地域に押し付けようとしています。これは安倍政権が進める「『我が事・丸ごと』地域共生社会実現」のやり方と瓜二つのものであり、その典型が高齢者乗車券の見直しの検討です。高齢者乗車券を縮小し、町内会活動や健康づくりをした人だけに「インセンティブ」という名の「ごほうび」を与えることが検討されており、新年度も今年度に引き続き1000万円の調査費をつけたことは、まことに重大です。
いま「高齢者乗車券は縮小するな」「むしろもっと拡充してほしい」という声が市内各地で沸き起こり、署名運動が広がっています。若い人たちは、この問題が決して高齢者だけの問題ではなく、自分たちの問題であることを感じて、積極的に署名に応じてくれています。安倍政権のお先棒をかついだ市長の社会保障解体攻撃は、市民からの手痛い反撃に遭いつつあることを厳しく警告しておきます。
今なすべきことは、国の悪政から市民を守るために、大型開発・規制緩和の路線を抜本的に見直し、福祉や教育など市民の暮らしを応援する市政に切り替えることです。そうすれば地域でお金がまわり、地元の中小業者の仕事や雇用がふえ、市財政も立て直せます。わが党は、この立場から髙島市政に対して予算の組み替えを代表質疑で提案しましたが、市長は応じようとしませんでした。
したがって、わが党は、安倍政権の暴走に追随し、一部の大企業だけをもうけさせ、市民を貧しくさせるだけの市長の新年度予算案と関係議案に反対します。
反対の理由について、さらに具体的に5点述べておきます。
第一は、国家戦略特区などを使った規制緩和と大型開発を無謀とも思える形で進めていることです。
「天神ビッグバン」に関連して、市は旧大名小跡地再開発の事実上の事業者として西鉄などを優先交渉権者に選んだことを発表いたしました。わが党は西鉄がホテル建設のためにこの土地を欲しがって市に求めているのではないかと6年前から議会でくり返し尋ねてきましたが、市は「具体的にはございません」などとシラを切ってきました。しかし、終わってみれば、わが党の指摘通りの結果となったのであります。しかも、予算議会が終わるこのタイミングで市が発表を行うなど、議会の審議や市民の批判を封じるやり方であり、絶対に許されません。結局、市長が「天神ビッグバン」の「東の玄関口」と位置づけた水上公園も西鉄、「西の玄関口」と位置づけた大名小跡地も西鉄となり、市長の西鉄への奉仕ぶりが浮き彫りになりました。
このほか「天神ビッグバン」関連では、市長が「奥座敷」だと位置づけた西中洲の道路整備などに新年度1700万円が投じられます。
ウォーターフロント再整備には、ロープウェイをはじめとする「新交通システム」の研究・調査、クルーズ船の受け入れ機能の強化・岸壁整備、第2期展示場整備などに22億円がつぎ込まれようとしています。
人工島事業には新年度も同地への立地交付金6億6700万円など110億円つぎ込むものになっています。人工島への高速道路の延伸は、数分の改善効果しかないにもかかわらず、新年度26億円が投じられようとしております。
福岡空港への高速道路の延伸についても、やはり数分の改善効果しかないにもかかわらず、水害の常襲地帯を通すとんでもない計画となっており、そのような道路計画に新年度3700万円の調査費がつけられているのであります。
また、特区を使った空港アクセスバス事業について、わが党は行政処分に相当する法律違反や事業採算の危うさを具体的に指摘しましたが、市は「知らん顔」を決め込みました。審議を通じて、市長の「知り合い」を優遇している疑惑はますます深まりました。
さらに、九州大学箱崎キャンパス跡地の利用についても、建物の容積率緩和などを盛り込んだ「都市再生緊急整備地域」の候補地域とされており、全体を静かな公園にしてほしいという住民の願いに背いて、巨大なビルが林立する「まち壊し」が進められる危惧がぬぐえません。
第二に、市民いじめの「行革」を引き続き推進していることです。
髙島市長は、「行財政改革プラン」によって、市立幼稚園の全廃など113項目、490億円もの切り捨てと負担増を行いましたが、大型開発に切り込まず、もっぱら市民に犠牲を押し付けるニセの「行革」路線は「財政運営プラン」「行政運営プラン」「政策推進プラン」に引き継がれました。「財政運営プラン」では「年齢等を条件に一律に給付していた施策を…再構築します」と書き込まれ、「行政運営プラン」では「多様な主体との共働」「共創の地域づくり」「インセンティブ制度の導入」がうたわれて、高齢者乗車券の縮小・見直しなど、公的な福祉の解体と地域への仕事の押し付けが進められています。
第三に、安倍政権の社会保障切り下げに対して、なんの手立ても取らないばかりか、一体となって市民への負担増や施策切り下げを押し付けていることです。
安倍政権のもとで実質賃金の低下、貧困ラインの引き下げ、大企業の内部留保の拡大など格差と貧困が広がる中、安倍政権は史上最悪の生活保護基準の大改悪を行い、さらなる切り下げを計画しています。ところが高島市長はこのような改悪に対して抗議すらせず、保護世帯の暮らしを支える新たな手立てを何一つ打とうとしておりません。また、本市の子どもの貧困は4人に1人に達する深刻なものとなっています。ところが市長は依然として貧困率の公表、削減目標の設定をせず、貧困世帯へ直接支援する施策の充実も拒んでいます。
国は国民健康保険の「都道府県化」を強引に進め、全国各地で保険料が引き上げられる中で、本市の国保料は市民の世論の前に据え置き、介護分は引き下げとなりましたが、所得233万円の3人世帯で約42万円にものぼる「高すぎる保険料」という実態はほとんど改善されていません。さらに今回条例の改定案の中で、国保加入者が亡くなった時に払われる葬祭費についても5万円から3万円に引き下げられました。
国が公営住宅の新規建設を基本的に認めない政策を取る中、本市でも市営住宅の新築は長い間ゼロが続いています。その結果、市営住宅の応募状況は一般枠で14.3倍、単身の高齢者・身体障害者は32.5倍となり深刻な状況が続いています。
保育所に入れない子どもに対し、国は認可保育所の大幅増や保育士の処遇の抜本的改善にまともな予算もつけず、「多様な手法」と称して企業主導型保育などでごまかそうとしています。髙島市政もこの顰(ひそみ)に倣(なら)い、必要な数の認可保育所を整備せず、新年度も1500人が入れない事態が生じようとしております。さらに、本市は「保育士の必要数は確保されている」との認識を本議会の答弁においても示し、抜本的な処遇改善のための施策の充実には背を向けていることが明らかとなりました。
第四に、安倍政権の「戦争する国」づくりに奉仕する教育政策に追随するとともに、教育行政の基本的な役割である教育条件を整備する責任を投げ捨てていることです。
教員の長時間・過密労働が重大な社会問題になっているのに、本市では「全国一斉学力テスト」や起業家精神を子どもに植えつける「アントレプレナーシップ教育」など不必要な業務については削減の手立てを講じようとしていないことが審議で明らかになりました。それどころか、安倍政権のもとでの学習指導要領の改定を先んじて本市に持ち込み、英語教育の前倒しや道徳の授業化などで授業時間数がますます詰め込まれる事態になっています。わが党は、根本的な対策として教員の大幅な増員、少人数学級の拡大を求めましたが、市長も教育長も背を向けました。
市長は無謀な大型開発で人口を膨張させており、市内各地で学校や学童保育がパンク寸前となっていますが、教育予算は県からの権限委譲分を除けば一般会計の6%台と、史上最低水準のままに抑えられています。
第五に、地域経済や地域の雇用に対して冷たい態度をとっているということです。
中小企業予算は、振興条例を抜本改正した最初の年の予算編成であるのに、新年度の振興予算を2億5217万円と最低水準に抑え込んでいます。地域への経済波及効果の高い住宅リフォーム助成制度の創設や、「官製ワーキングプア」を防ぐための公契約条例の制定も実現されていません。
身近な公共事業を行えば、市民の暮らしや防災に役立つだけでなく、地元の中小企業に仕事が回りますが、水道配水管を見てみると、市民が災害時に一番不安を感じているのが水の供給であるにもかかわらず、いまだ40%が耐震化されずにいます。配水管の耐震化は地元の中小企業が100%受注しており、わが党は耐震化の前倒しを求めたものの、市長は応じようとしませんでした。
安倍政権が月100時間までの残業を合法化する労働基準法の改悪案を出そうとしている中で、市内の大企業の9割では月45時間までと定められた大臣告示を超える残業協定が結ばれ、半分の大企業では過労死ラインである月80時間を超えるものになっています。ところが本市は「残業時間数を善悪で判断するものではない」などと驚くべき答弁でその実態をかばうとともに、大臣告示を平気で超える残業時間の基準にもとづいて「働き方改革」推進企業認定事業を始めたのであります。
さらに、髙島市政は議会で党派を超えて異論が出たにもかかわらず、就労支援課を廃止してしまいました。
以上が、わが党が新年度予算案と関係議案に反対する具体的な理由であります。
次に、提案された条例案のうち、反対するものについてその理由を述べておきます。
第一に、議案第67号、「福岡市介護保険条例の一部を改正する条例案」についてです。この条例案は、介護保険料の基準月額を6077円とし、実に制度開始時の1.8倍にまで引き上げるものです。わが党に寄せられたアンケートには、「介護保険料が高い。年金から引かれ、生活に当てられるお金はごくわずか」「保険料などの負担が重く、働けなくなったらどうして生きていけばいいのか」という切実な声が数多く寄せられています。
この事態の大もとには、国が保険全体の25%しか負担をしていないという問題があり、わが党はこれを直ちに10ポイント引き上げ、将来的に5割にすることを求めており、市長はこの立場で国に改定を求めるべきです。
また、岡山市では基金を取り崩して今回保険料の据え置きをしましたが、本市でも独自の手立てをとって値上げをせず、引き下げをすること、負担軽減策を行うことを求めましたが、市長は実行しませんでした。
「保険あって介護なし」をいっそう深刻にする本条例案に、わが党は反対します。
第二に、議案第61号「福岡市指定障がい福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営の基準等を定める条例案の一部を改正する条例案」についてです。障害者と高齢者への支援を同一事業所で行う「共生型サービス」を創設することになりますが、この導入が介護保険と障害福祉の統合への突破口となるのではないかという危惧を拭うことはできません。よって、わが党は、本条例案には同意し難いものであります。
第三に、議案第68号、「福岡市介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営の基準を定める条例案」についてです。
2006年の「医療改革法」で廃止が決められ、実施が「延期」され続けてきた介護型療養病床が、2017年の「地域包括ケア強化法」で、「介護医療院」に改編されることが決まったことによるものです。
現場からは、人員配置やサービス基準の緩和で、介護・医療の質が低下することや、新たな施設が病床削減の受け皿になりかねないことへの、懸念・不安が出されており、本条例案はその危惧を払拭するものとはなっておりません。よってわが党は、本条例案には反対いたします。
第四に、議案第71号、「福岡市旅館業法施行条例の一部を改正する条例案」についてです。
本条例案は、旅館業法等が変わり、ホテルや旅館などの営業種別が統合され種別ごとに定められていた客室数の下限が全廃されたことにともなう改定です。もともと民泊は旅館業法には定められていませんでしたが、この改定により、旅館業法による旅館・ホテル業としての許可を取得してマンションや戸建住宅でも民泊ができるようになります。
緩和した基準のもとで違法民泊を「ホテル・旅館」と看板を付け替え、マンションなど住宅の中で行うことを認めるものであり、わが党は本条例案を認めることはできません。
以上でわが党の反対討論を終わります。