2017年予算議会
2017年予算議会 意見書について
核兵器禁止条約の実現へ向けた取組に関する意見書
1945年8月6日と9日、米軍が投下した2発の原子爆弾は、一瞬に広島・長崎を壊滅させ、数十万もの人々を無差別に殺傷しました。
生き残った被爆者は、「再び被爆者をつくるな。核兵器を地球上からなくそう」と訴え続け、日本の反核平和運動の高まりとともに、その声は世界中に広がっています。
また、2015年10月21日の第70回国連総会において初めて、「核兵器の人道上の結末」についての決議が144か国の賛成で採択されるなど、核兵器が、兵士か一般市民かを区別することなく、大量に人間を殺傷し、放射線の後障害により、長期間にわたって不必要な苦痛を与える非人道的な兵器であることは、今や国際的な共通認識になりつつあります。
こうした中で、2016年12月23日の第71回国連総会において、核兵器を禁止・廃絶する条約の交渉を開始する決議が113か国の賛成で採択され、交渉会議が本年3月から国連で始まることになりました。このことは本市も加盟する平和首長会議が強く求めてきたことであり、核兵器の廃絶へ向け大きな一歩となります。唯一の被爆国の政府として、交渉会議の場での積極的な役割が今ほど求められているときはありません。
よって、福岡市議会は、政府が、核兵器を禁止・廃絶する条約の実現のために、交渉会議に参加し、イニシアチブを発揮されるよう強く要請します。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
平成 年 月 日
内閣総理大臣,外務大臣 宛て
議長名
(全会一致で可決)
「共謀罪」の創設に反対する意見書案
政府及び与党は、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規則等に関する法律」の改正案、いわゆる「共謀罪」法案を今国会に提出しました。
「共謀罪」とは、まだ起きていない犯罪について、2人以上で話し合い合意すること自体が罪に問われるというものです。犯罪を計画・話し合ったと警察などがみなせば、処罰できることになります。これは、実際に起きた犯罪行為を罰するとした日本の刑法の大原則を踏みにじるとともに、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」とした憲法第19条に反する危険な内容です。犯罪に関係のない国民の人権・プライバシーを侵害する監視社会への道を開くことになるのではないかと強く懸念されています。
こうした「共謀罪」法案は、平成15年以来、過去3回国会に提出されましたが、国民の批判の高まりで、3回とも廃案に追い込まれました。
今回、政府は、処罰対象を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」に限ると説明していますが、その定義は曖昧であり、労働組合や市民団体であっても警察などが認定すれば捜査対象になることは明らかです。「テロ対策」については、既に関連する13の国際条約を締結し、また、57の重大犯罪について未遂より前の段階で処罰できる国内法が存在しており、新たな法律を作る必要はありません。
戦前、国民の思想・言論を弾圧した治安維持法と同じ歴史を繰り返してはなりません。多くの研究者、法曹関係者らが法案反対を表明しており、政府はこうした声に耳を傾けるべきです。
よって、福岡市議会は、国会及び政府が、憲法違反の「共謀罪」を創設されないよう強く要請します。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
平成 年 月 日
衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,法務大臣宛て
議長名
(否決。市民ク、共産、緑ネットが賛成。自民、公明、みらい、維新、自民新が反対)
「共謀罪」の創設に反対する意見書案に対する賛成討論
2017年3月28日 綿貫英彦議員
私は、日本共産党市議団を代表して、ただいま議題となっております、意見書案第 号、「共謀罪」の創設に反対する意見書案に賛成し、討論を行います。
共謀罪創設に対する国民の批判が日に日に高まり、金田(かねだ)勝年(かつとし)法務大臣が、法案提出前には国会で議論してはならないかのような、質疑を封じる暴言をするにいたって、国民の怒りは大臣辞任を求めるまでに広がりました。ところが安倍政権は、そうした世論に逆らうかのように、組織犯罪処罰法改正案、いわゆる「共謀罪」を導入する法案を閣議決定したのであります。政府・与党は「対象犯罪を減らした」「テロ等準備罪を盛り込んだ」「組織的犯罪集団だけが対象」などの「手直し」をしたとしていますが、思想及び良心の自由を保障した憲法19条に背く違憲立法だという危険な本質は変わっていません。
この短い期間にも、国会審議などでそのことが次々と浮き彫りになっています。
今回の法案について、政府は「テロ対策」を看板にしているにもかかわらず、そもそも第1条の「目的」のところを見ても「テロ」という文言は一切ありません。
しかも政府・与党がこの法案が必要だという最大の口実にしている国際組織犯罪防止条約をめぐって、条約を起草する過程において日本政府が「テロリズムはこの条約の対象とすべきでない」と主張していたことが、国会審議で明らかになりました。2000年の日本政府交渉団の本国への報告の公電の中にはっきりとそのことが書かれていたのであります。わが党の仁比聡平参院議員が昨日の国会でこのことをただしたところ、安倍首相は認めざるをえませんでした。「テロを防ぐためにこの法案を作った」というのが、政府・与党の言いぶんだったはずですが、その論拠は崩れさり、「テロ対策」というのは国民をだます口実にすぎなかったことが明確になりました。
また、3月15日、最高裁は裁判所の令状を取らない全地球測位システム、いわゆるGPS捜査を違法とする判決を言い渡しました。判決では人工衛星からの電波で容疑者の位置情報を特定し、追跡できるGPS捜査はプライバシー、すなわち「私的領域に侵入されることのない権利」を侵すものだと判断したわけですが、わが党の藤野保史衆院議員が国会で「共謀罪の捜査でも当然プライバシーとの衝突が問題となるのではないか」とただしたところ、法務大臣は答えることができませんでした。たとえこの法案を強行したとしても、最高裁が憲法違反と判断する可能性が高い、重大な欠陥を抱えたものだと言わねばなりません。
同法案の適用対象もまったく限定されていません。
同法案の「テロ」の定義をめぐり、過去の政府答弁とも法律上の定義とも異なる答弁が、国会審議の場で、法務大臣から次々と出てきました。
3月の国会でわが党の藤野衆院議員が「どれが大臣の見解なのか」と追及しても、大臣は定まった「テロ」定義を示すことはできず、時の政権によっていくらでも処罰対象を広げることが可能になる危険性が浮かび上がったのであります。
一般の団体などが「組織的犯罪集団」であるかを判断するのは警察などの捜査機関であり、共謀しているかどうかをつかむためには、多数の一般人を盗聴や監視の対象にすることになります。まさに広範な国民の思想・信条を侵すものではありませんか。
この点に関わって、3月8日に国家賠償請求訴訟の第1回口頭弁論が行われた「大垣警察市民監視事件」について、紹介しないわけにはいきません。
この事件は、風力発電所計画に反対する住民が地元で勉強会を開いたことをきっかけに、岐阜県警・大垣署の警備課長らが、発電所をつくろうとする中部電力の子会社に住民の個人情報を伝え、住民運動つぶしの相談をしていた事件です。警察と会社の密談は4回行われ、運動と無関係だった住民も“メンバー”と見なされ、警察が会社に情報提供していました。会社側が作成した、警察とのやりとりを載せた議事録がマスコミなどで報道され、密談の中身が明るみに出たものです。
住民側の弁護士は、「共謀罪の眼目は、警察権限の拡大によって市民運動つぶしができるようにすること。その先取りが大垣警察市民監視事件だ。風力発電の勉強会が『治安をみだす行為』とされ、原告の住民が『組織犯罪集団』になるだろうとマークされていたものだ」と述べています。政府・与党が「組織的犯罪集団の行為に限って罰するとしたから、一般の人は巻きこまれない」などと宣伝していることが、いかにごまかしか、この事件ひとつを見ても明らかではありませんか。
違憲立法の共謀罪創設に反対するたたかいは日に日に広がっております。
国会前をはじめ全国で共謀罪創設に反対する集会やデモが開かれ、福岡市内でも1月に福岡県弁護士会が「政府批判はいけないことか? 共謀罪で表現の自由が奪われる!」と題するシンポジウムを開きました。今月22日には宮崎県議会で、「共謀罪」法案について、「様々な懸念があると指摘されている」として「慎重な検討」を求める意見書が自民党・公明党の会派を含む全会一致で採択されました。福岡県内でも3月になって中間市・苅田町・小竹町などの議会で反対の意見書が次々可決されています。
共同通信の世論調査では、1月には法案に対して賛成42%、反対40%だったのに、3月には反対45%、賛成33%と逆転するなど、共謀罪の中身が明らかになるにつれて反対の声が多数になりつつあります。
数の力で三権分立も議会制民主主義も破壊する、究極の「モラルハザード」政権だと言われる安倍政権のもとで、このような危険な違憲立法がたくらまれていることこそが、国民の不安をいっそう広げる要因になっているのであります。日本共産党は市民と野党の共闘を大きく発展させ、国会・市議会の内外で共同を広げて必ず阻止する決意を申し上げて、本意見書案への賛成討論を終わります。