2017年予算議会
副市長人事に対する反対討論
2017年3月28日 中山いくみ議員
私は、日本共産党市議団を代表し、本議会に提案されている人事案件のうち、議案第108号及び109号、副市長の選任について同意できないことを表明し、意見を述べます。
今回の選任は貞刈厚仁(あつひと)、中園政直(まさなお)、両副市長を続投させるもので、福岡市では副市長制度になってから2期続けて副市長を務めた人物はおらず、きわめて異例の人事です。
髙島市長はアベノミクスの実験場として、「天神ビッグバン」や「ウォーターフロントネクスト」などの大型プロジェクトと、「国家戦略特区」に見られる規制緩和の路線を推し進めてきました。そして、「都市の成長と生活の質の向上の好循環を生み出す」などと称して、一部の大企業を応援すれば、あたかも市民の暮らしに「おこぼれ」、すなわち「トリクルダウン」が起きるかのように、あおり続けてきました。
しかし、実際にはどうだったでしょうか。
髙島市長就任前とくらべて、雇われている人が受け取るお金である、市内雇用者報酬は総額も1人当たりの額も、どちらもダウンしました。市民全体のふところ具合を見ても同じです。家計における市民の可処分所得は総額でも1人当たりでも大きく減っています。他方で、法人企業の分配所得はなんと35%も増加しています。
直近の数字で見れば、この傾向はいよいよ拍車がかかっています。給与所得者1人あたりの平均給与収入額は物価上昇を加味した実質でいえば、髙島市長就任前と比べて、なんと2015年度22万円もダウンしています。他方で、市内に本社のある大企業の内部留保は市長就任前と比べて2015年度には1473億円も増えております。
「クルーズ船が来た」「人口が増えた」といくら市長が大騒ぎしてみても、髙島市政のもとで成長の果実を得たのは一部の大企業だけ、市民のくらしは前よりも貧しくなったというのが、あらゆる数字が示す冷厳な事実であります。今の髙島市長の路線が根本的に間違っていることは火を見るよりも明らかではありませんか。
このような間違った路線を、副市長として2013年4月から4年間支えてきたのが、貞刈・中園両副市長であります。副市長は、地方自治法167条でその仕事が定められていますが、それによれば、市長を「補佐」することはもちろん、「政策及び企画をつかさど」ると定められており、政治の中身そのものを統括する重い役割を担っております。貞刈副市長は経済観光文化局、総務企画局、財政局、中園副市長は住宅都市局、道路下水道局、港湾空港局、交通局を担当し、2人とも髙島市政の規制緩和・大型開発路線の中核を担ってきました。
中園副市長について、我が党は4年前の選任に際して、21建設クラブ・福岡が主催するボウリング大会出席など、中園氏の建設業界との癒着についての懸念を表明いたしました。その上で、「髙島市長は、中園氏を都市の成長分野担当の副市長にすると述べておりますが、中園氏に業界とのパイプ役を担わせることで人工島事業や都心部、港湾の開発など、数多くの利権に取り巻かれている巨大プロジェクトを強引に推し進める、これこそが市長の真の狙いだと言わねばなりません」と指摘してきました。この指摘は、残念ながら的中してしまったのであります。
例えば、カジノだのホテルだの、一部の企業が好き勝手な「絵」を描く民間公募のデザインがこの議会でも問題にされてきたウォーターフロント地区の再整備について、中園副市長は「私がプロジェクトリーダーとして関係する各局の方向性を一つに束ねながら、第2期展示場の整備やホテル誘致など魅力あるまちづくりにスピード感を持って取り組んでいきたい」などと、市議会で答弁しております。
また、わずか数分の短縮効果しかないのに292億円もつぎ込むことになった、人工島への高速道路延伸についても、やはり市議会で「事業化が早急に図られますよう取り組み、九州・アジアの交流、物流の拠点としての道づくりをしっかりと進めてまいります」などと答えています。
ここに見られるように、中園副市長は、髙島市長を支え、市長とともにその間違った政治路線の中枢を担ってきたのであります。
貞刈副市長についても同様です。
我が党はやはり4年前の選任に際して貞刈氏が副市長になれば「行革プランで冷酷に市民生活を切り捨てている髙島市長のやり方を一層無謀な形で推し進める危険があり、我が党として到底認められないものであります」と警告してきました。
果たして、貞刈副市長は市民いじめの「行革」を積極的に推し進めてきました。
貞刈副市長は市議会で、「福岡市の財政は、依然として楽観できる状況にはない」と言って、「生活の質の向上と都市の成長を牽引する分野に効率的、効果的に投資していく必要があり、そのためにも政策推進プラン及び行財政改革プランの連動により優先順位の最適化を行います」などと述べ、「義務的経費を含めた経常的経費の徹底した見直し」を行うと宣言しました。
その結果、市営渡船志賀島航路における大岳の廃止、市立幼稚園の全廃、生活保護世帯の下水道料金の減免廃止などが強行されてきました。そして今また、敬老金の廃止、高齢者乗車券の縮小などが狙われているのであります。
また、髙島市長は「生活保護世帯にはカネをかけるな」と言わんばかりの、生活保護適正実施推進委員会を立ち上げましたが、貞刈副市長はその委員長として、生活保護世帯に対し、病院を選ぶ自由を奪い、薬の選び方に干渉するなど、生活保護を受ける人々を「劣等市民」扱いする陣頭指揮をとってきた張本人でした。
加えて、貞刈副市長の無責任ぶりも、厳しく指摘しておかなくてはなりません。
2015年8月に福岡市をも襲った台風15号において、本市史上最大規模となる4万人に対する避難指示が出され、貞刈副市長は災害警戒本部の本部長になったにもかかわらず、警戒本部長を50分間だけ務め、その後、市役所を離れて飲食店へ出かけていってしまいました。議会で追及されて「自分では公務だと思っている」といいながら、どこの誰と飲食したのかは一切明らかにしようとしなかったのであります。
また、この間、髙島市長は議会の意見に耳を傾けず、福岡空港の民間委託を前提に、出資を引き揚げて新しい基金をつくる議案を出し、否決されました。この問題に関連して、貞刈副市長はこうした市長の独断専行のやり方の露払いとして自ら議会会派の部屋に乗り込み、トラブルを撒き散らしてきました。
以上、両副市長の行状について述べてまいりました。
憲法第15条2項では「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」と定められております。これは、戦前、官吏すなわち役人は官吏服務紀律という勅令で、「天皇陛下および天皇陛下の政府に対し忠順(ちゅうじゅん)勤勉を主(しゅ)とし」と定められ、国民に対してではなく、「天皇の官吏」であったことへの反省から生まれたものです。
副市長は、市長の補佐役といえども、市長に奉仕する「召使い」ではありません。あくまでも国民全体、市民全体の利益に奉仕する公務員の一人であります。この点から見て、「住民の福祉の増進を図る」という自治体本来の目的から外れ、ひたすら一部大企業のために規制緩和と大型プロジェクトにばく進する髙島市長に奉仕する貞刈・中園両氏は、副市長にはふさわしくありません。
我が党が代表者会議の場で、両氏の続投は、議会との対立が極限に達したときに髙島市長が市長選挙に訴えるための備えではないか、もしくは市長が国政に転身して市政を投げ出す布石ではないかとただしたところ、髙島市長は「その時々で適切に判断する」とだけ答え、明確に否定されなかったのであります。そのように市長の私的な思惑のからんだ人事であれば、到底許されるものではありません。
よって、我が党は貞刈、中園両氏の副市長選任には同意できないことを表明し、反対討論を終わります。