2016年9月議会
2016年9月議会 意見書について
民生委員の活動費に関する意見書
民生委員は児童委員を兼ねていますが、貧困家庭や高齢者世帯の見守り、生活困窮者自立支援制度との連携、児童虐待防止に向けた育児相談といった多岐にわたる課題に取り組むなど、地域福祉におけるその役割はますます重要になっています。
ところが、民生委員は、地方公務員法が定める非常勤特別職の地方公務員ですが、民生委員法第10条で「給与を支給しない」と定められていることから、無償のボランティアとされています。このため、電話代や交通費など活動に係る費用の一部のみが自治体から支給されているのが現状です。
平成26年4月の厚生労働省による「民生委員・児童委員の活動環境の整備に関する検討会」の報告書では、「民生委員・児童委員の経済的な負担も増えていることから、厚生労働省は、活動費の増額を関係省庁に対して要求していく」べきであるとされております。
このような経済的負担が民生委員の担い手不足の原因の一つと指摘される中、活動費に対して一定の配慮をすることは民生委員制度を持続させる上で重要な課題です。
よって、福岡市議会は、国会及び政府が、民生委員の活動費に係る地方交付税算定基礎を更に引き上げるとともに、民生委員が受け取る活動費を実際に引き上げるための措置を講ぜられるよう強く要請します。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
平成 年 月 日
衆議院議長,参議院議長,内閣総理大臣,総務大臣,財務大臣、厚生労働大臣 宛て
議長名
(全会一致で可決)
「次世代の学校指導体制」の早期構築を求める意見書案への反対討論
2016年9月20日 中山いくみ議員
私は、日本共産党市議団を代表して、ただいま議題となっております、意見書案第10号、「次世代の学校指導体制」の早期構築を求める意見書案に反対し、討論を行います。
教員の部活動に関する負担軽減や環境整備、また、教員が心身の健康を維持するための国の調査や対策の推進については、現場の困難を解決するために必要であることは言うまでもありません。
ところが、本意見書案のタイトルおよび前文には「次世代の学校指導体制」の早期構築が掲げられ、その具体的な中身として、第1項で「チーム学校運営の推進等に関する法律の早期成立」が挙げられています。
国会に提出されている同法案第19条には「国及び地方公共団体は、校長がチーム学校運営並びに学校の教職員等と学校の関係者等との連携及び協働の推進を円滑かつ適切に行うことができるよう、校長に対する必要な権限の付与その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする」とされており、この法案がこのまま成立すれば、学校における校長の権限を強化し、上意下達の学校指導体制を生み出しかねない恐れがあります。
政府はこの間、教師への管理統制を強める法整備を集中的にすすめてきました。職員会議の形骸化、教員評価システム、ピラミッド型の教員組織など、教師を行政や管理職のいいなりになるロボットのような存在におとしめようとしています。
「ILO・ユネスコ 教員の地位に関する勧告」で「教育の仕事は専門職とみなされるべきである」とされ、それを保障するためにさまざまな教員の自由や創意をうたっています。なぜこのような自由や創意が大切にされるのかといえば、教師の仕事とは、決められたマニュアルをこなせば済むような業務ではなく、子ども自身はもとより、それを取り巻く家庭・社会の現実との繊細な相互関係によって生み出される、きわめて創造的な営みだからです。
ある教師は、授業も上の空でケータイ、マンガ、化粧道具を順番に手にとって遊んでいる生徒を前に、ぼう然と立ち尽くしました。しかし、その生徒が小学校以来落ちこぼれ、授業をわかったことがない現実を知り、授業を変え、教材も生徒たちが身近に関わっているコンビニやネットゲームに関するものに切り替えると、生徒の目の色が変わった――こんな教育実践も報告されています。これこそ、子どもとの人格的接触を通じて成立する文化的な創造の営みそのものではないでしょうか。ところが、教師への管理統制が強められる中で、「教材はコレとアレ以外だめ、寛容度ゼロで臨め」などといった、子どもを見ない、マニュアルだけの教育現場が横行しようとしています。
学習指導要領についても、本来あくまで「参考」とされるだけのものでしたが、現在「法的強制力」があるものとされて、現場の教師に押し付けられています。そのため、過密カリキュラムによるスピード授業や、創造性のない画一的な授業を引き起こす、深刻な原因の一つとなっているのであります。
教師に対する管理統制の強化は、教師の自由や創意を抑え込み、その専門性を破壊するものだと言わねばならず、その最大の被害者は子どもたちです。
かつて職員会議は学校の「最高議決機関」として、校長も教師も子どもたちの現実に即して自由に意見交換ができました。ところが、学校教育法が改悪され、「校長の権限強化」の名の下に、職員会議は単なる校長の「補助機関」とされ、挙手や採決が実質禁止されております。教職員との自由な討論を通じて、相互に認識が深まり合う関係があってこそ、校長は本当の意味でのリーダーシップを発揮することができるのであって、法律で校長に「必要な権限」を「付与」し、一方的に指示・命令を出させるような存在にすることは、教育にとって有害なものでしかありません。
わが党は、このような教育への国家統制を強める動きに断固反対いたします。教育の自主性を守り、教師の専門性を高めて、子どもを真ん中に置いた豊かな授業と教育をすすめるとともに、子ども・教職員・保護者・住民などが話し合って、教育を創造していく「参加と共同の学校」こそ目指されるべきものです。
よって、わが党は本意見書案に同意することはできません。
以上でわが党の反対討論を終わります。