2015年9月議会
9月議会の反対討論
2015年9月18日 ひえじま俊和議員
私は、日本共産党市議団を代表して、本議会に提案されております諸議案のうち、議案第192号ないし207号、209号、211号、213号ないし215号に反対し、討論を行います。
まず、議案第198号、いわゆるマイナンバー法に基づく個人番号の利用に関する条例案など、マイナンバー制度実施にかかる諸議案についてです。
マイナンバーは、国が国民一人ひとりに特定の12桁の番号を付けて、税や社会保障などの個人情報を一元管理するものですが、個人のプライバシー情報が容易に照合、集積され、個人情報の漏えいを100%防止できないという根本的な欠陥を持つ制度であります。国民にとっての利便性の向上はほとんどなく、その真の狙いは、政府高官や日本経団連が明言しているように、徴税強化と社会保障給付削減にあります。政府は制度を実施する前から銀行の預貯金情報やメタボ健診への対象拡大を行い、また消費税の軽減税率の還付にマイナンバーカードを使用することも検討していますが、人権侵害にもつながる大問題です。同じ制度を導入したアメリカや韓国では情報漏えいや「なりすまし」犯罪が多発し、見直しを迫られています。また、ヨーロッパ諸国ではプライバシー侵害から国民を守る立場で共通番号制度を導入していません。こうした危険な制度を始めようとするのは世界の流れに逆行するものです。今年5月には日本年金機構による125万件に及ぶ個人情報漏えい事件が発生し、国民に不安が広がっています。何のための制度か、自分のプライバシー情報が守られないのではないか、など国民の疑問や不安は大きく、これを無視して今年10月の「通知カード」発送を強行すれば大混乱が生じることは避けられません。しかも、警察や公安調査庁への情報提供が広く認められ、誰もチェックできないとされていることは、国家権力による国民監視の危険な体制づくりに道を開くものです。マイナンバー対応が義務付けられる中小企業・業者にとっては、セキュリティ対策費用や新たなシステムへの対応などの負担が重く、事実上の「マイナンバー増税」となります。日弁連など各界から反対と廃止を求める声もあがっています。このように様々な問題を抱えたまま実施が強行されようとしています。本市が個人情報保護の有効な手立てを何も取れないことが、質疑を通して明らかになりましたが、それにもかかわらず、高島市長が何一つモノを言わずに追随して実施しようとしていることは許されません。
したがって、わが党は、徴税強化と社会保障給付削減が目的で、個人情報漏えいの危険性を格段に高める、マイナンバー制度の実施にかかる諸議案の撤回を求めます。
次に、議案第209号、中央卸売市場業務条例改正案についてです。
今回議案は、青果3市場を統合し人工島へ移転する「新青果市場」を開設するためのものであります。
青果市場の統合移転については、市場関係者の反対意見を押し切って強引に計画化が進められ、その後、市場までの配送が長距離になることや都市高速道路料金の負担が重いことなど関係者からの様々な要望に対し、市当局は小売業者や生産者の負担増にならないよう配慮する必要があるなどと説明してきました。にもかかわらず、開設直前になってもなお、まともな対策が講じられていないことから、小売業者や生産者の不安と不満の声が渦巻いています。高島市長は、都市高速料金の減免を求める声に背を向け、施設使用料金も6年後には今より引き上げるのであります。また、南部と西部に作る予定の「中継所」についても手数料を取り立てようとしており、関係者から大変な負担増だと悲鳴があがっているのであります。
地産地消と食の安全が重視される今日、市内や近辺の農家・生産者と、その農作物などを市民に提供する街の八百屋、青果店などの小売業者や飲食店の活性化がますます重要であります。しかしながら、高島市長がやろうとしているのは、統合移転によって多くの生産者や小売業者に負担増を押し付け、不景気とアベノミクスによる経営難にさらに追い打ちをかけるものに他なりません。青果市場の統合移転の計画などもともとなかったものが、人工島の売れない土地を税金で買い取るために無理やり巨大な新青果市場建設を決定したこと自体許されず、破たんした人工島事業を推進した勢力が何の責任も取らずに、市民に責任と負担をなすりつけているのであります。
したがって、生産者や小売業者に重い負担を押し付けて強行される青果3市場の人工島への統合移転のための本議案に、わが党は反対するものです。
次に、議案第215号、福岡高速道路整備計画の一部変更に関する同意議案についてです。
今回議案は、人工島への延伸である都市高速道路6号線の整備について道路公社からの申請に同意するものです。
この都市高速延伸については、1日3,000台増えるという何の根拠もない計画に基づいて、人工島までわずか数分程度の時間短縮にしかならない2.5キロメートルの道路に巨費をかけて整備する必要はまったくなく、まさに「無用の長物」であります。人工島事業の破たんを穴埋めするために市民の反対を押し切って強行移転した、こども病院や青果市場への道路アクセスの向上などという言い訳は市民の理解を得られるものではありません。
わが党は事業費を料金収入で回収することにはならず、多額の税金投入になることを追及してきましたが、第5委員会での質疑で、事業費が労務単価上昇や消費税率引き上げ、設計内容精査などを理由に、当初計画の250億円から292億円へと膨らみ、さらにそのうち市費が現在でも最大で107億円にのぼることが判明したのであります。
税金は一円も使わないと言って始めた人工島事業は、土地買い取りや公共施設導入などですでに571億円もの税金が投入されてきましたが、破たん救済のムダづかいをさらに膨らませる都市高速延伸のための本議案に、わが党は同意できません。
次に、議案第192号、一般会計補正予算案中、連節バス導入に関する調査費についてです。
今回補正は、都心循環BRTと称して、西鉄と本市の共同で連節バスを導入するための調査に1500万円をかけるものです。
当局の説明によると、西鉄が120人乗りの連節バスを15台購入し、天神・博多駅・ウォーターフロント地区を循環する路線を走らせるもので、全体事業費は18億円、本市がバス停の上屋や走行環境の改善事業に3億円を負担するとのことです。その効果について、「道路混雑の緩和」などを想定しているとのことですが、主要バス停にしか停車しない連節バスと引き換えに既存路線バスが減らされて、結局市民が不便になります。またパークアンドライドの推進が連節バスでなければならない根拠もありません。逆に、新たな渋滞や交通事故の発生も懸念されます。連節バスの導入でバラ色になるなどあり得ません。
都心部の交通問題については、第4委員会や交通対策特別委員会など本市議会においてこれまで検討を重ねてきましたが、当局から連節バスを導入するという報告はありませんでした。また、今年3月の「福岡市総合交通戦略」でも連節バス導入との内容は一切ありません。結局、高島市長が西鉄と談合して勝手に決定し、来年度から事業を始めようとして、当初予算にもなかった調査予算を無理やり追加補正するものに他なりません。こうした強引なやり方で、都心部の観光客のための連節バスで儲ける西鉄を応援し、本来なら西鉄が負担すべきバス停の整備などに3億円もの市民の税金を充てることは、到底市民の理解が得られません。第4委員会の質疑で「連節バス導入先にありき」の予算計上に異論が出され、当局は「導入を決定したものではない」と答弁せざるを得ませんでした。
高島市長は天神ビッグバンなどと言って、都心部に一極集中させる大型開発と企業奉仕の呼び込み型路線を推進しておりますが、大型クルーズ船観光客むけのバス増大による学校行事や地域住民への影響などに見られるように、この路線を強引に進めれば市民の暮らし、福祉、教育がますます切り捨てられるのは必至であります。
したがって、わが党は、多額の税金を西鉄の儲けのために充てる連節バス導入にかかる調査費の予算補正に反対します。
また、一般会計補正予算案のうち、人工島地区東航路整備費の追加3億4485万円 についてです。これは航路の一部を水深15メートルに掘り下げるものですが、人工島の着岸実績を見れば6万トン以上の大型コンテナ船は昨年一隻もなく、今年も現在までゼロであります。大水深の航路と岸壁の整備の必要性はまったくなく、予算を削除すべきであります。
次に、議案第213号、市立幼稚園条例改正案についてです。
今回議案は、現在8つある市立幼稚園を段階的にすべて廃園にするためのものです。
わが党は、高島市長と教育委員会が全廃計画を打ち出した2年半前から一貫してこれに反対し、保護者、地域住民、幼稚園関係者の願いにこたえ、計画撤回を要求してきました。この間の議会論戦などを通じて全廃計画の道理のなさはいよいよ鮮明であります。
一つめに、本市の市立幼稚園が果たしてきた役割はますます求められており、すべて廃園するなど断じて許されないということであります。市立幼稚園が行っている教育研究は本市の就学前教育の質の向上に大きく貢献しています。また、障害児を受け入れ、経験の蓄積のもとに適切な対応がなされ、人的配置も可能なのは公立だからであって、私立園では限界があります。さらに、市立幼稚園と小学校との連携や教員の人事交流が地域の教育ネットワークの柱となって、これが「小1プロブレム」を防いでいるのは大きな実績です。不安定雇用やひとり親家庭の増加のもとで、経済的理由で市立幼稚園しか選べない家庭も少なくありません。私立園に行けばいい、私立園ですべて受入可能と簡単に言えるものではありません。教育委員会が「公立園の役割は終わった」などと言ってこれまで推進してきた公立での就学前教育を否定する答弁を繰り返し聞かされる保護者や幼稚園関係者のみなさんが、どれだけ落胆し憤慨しているか。教育の機会均等を図らなければならないのが教育委員会ではありませんか。市立幼稚園の必要性はますます高まっており、充実こそ求められているのであります。
二つめに、存続を強く求める声が多数であって、廃園の根拠がないということであります。8月に各地域で開かれた住民説明会では、廃園計画に反対、懸念、不安という意見が多数を占め、賛成という意見は一人もなかったのであります。教育委員会が行ったパブリックコメントとこの間の説明会を合わせて1700件をこえる市民意見が出されましたが、反対が圧倒的多数でした。2年前の請願署名が7万2390人にも達したことは、反対世論の大きさを示すものです。市立幼稚園を全て廃園にする条例案の9月議会上程を知った保護者や関係者のみなさんは、わずか10日間という短期間で必死の思いで15,510筆もの署名を集められたのであります。実際にわが子を通わせ、園長や教員たちと一緒になってよりよい幼稚園づくりにがんばっている保護者。様々な形で支援を行い園を温かく見守っている地域住民のみなさん。こうした方々がこぞって廃園反対、存続を求めているのであります。民主主義を重んじなければならない教育委員会が市民の声を踏みにじるなど言語道断であります。
三つめに、全廃計画は結局のところ、高島市長の行財政改革プランで位置づけられたように、経費削減が狙いなのであります。こんな不当なことはありません。市立幼稚園の運営費は年間2億5000万円であります。一方、破たんした人工島事業の推進には毎年100億円もの巨額の予算がつぎ込まれています。削るべきムダづかいを放置しながら、カネがないなどと脅して、子どもたちから大切な市立幼稚園を奪うなど許しがたいものです。高島市長が推進する大型開発、大企業奉仕、呼び込み型の市政運営は、子どもいじめ、教育切り捨てに他なりません。
さらに、条例案上程をめぐる高島市長と教育委員会による手続きの不当性は重大です。教育委員会が地域で説明会を始めた8月7日その日に、教育長が本条例案を決裁し、高島市長は説明会開催の真っ最中の8月25日、市政運営会議で9月議会への上程を決定しました。しかも、全廃条例案を決定した教育委員会会議は、最後の説明会の翌日9月1日に、当日朝招集し、非公開で行ったのであります。高島市長と教育委員会が、11月の来年度園児募集を中止させるため、9月議会での議決を強引に進めた、まさに異常事態と言わなければなりません。結局、教育委員会は説明会を開いたけれど、保護者や関係者の意見を聞いて反映させる気は毛頭なく、まさに名ばかり説明会、帳面消しだったのであります。こんな保護者、市民を馬鹿にしたやり方は断じて許されません。こうした教育委員会の姿勢に、市立幼稚園全廃の道理のなさが表れているのであります。
以上のように、市立幼稚園の全廃計画はまともな理由がありません。わが党は、市立幼稚園全廃計画を撤回し、その必要性・重要性をふまえて存続・充実させるよう強く要求するとともに、本条例案に断固反対するものであります。
以上でわが党の反対討論を終わります。