2013年予算議会
2013年予算諸議案に対する反対討論
2013年3月26日 綿貫英彦議員
私は、日本共産党市議団を代表して、本議会に上程されている諸議案のうち、議案第31号~34号、37号、38号、40号~42号、44号、46号~50号、52号、63号、66号、69号、70号、73号、75号~77号、82号、85号、91号、94号、95号に反対し、討論を行います。わが党の意見については、代表質疑および補足質疑、分科会審査ならびに総会における質疑で述べておりますので、ここではその基本点といくつかの問題について述べます。
周知の通り、完全失業率が4.2%と高止まりし、有効求人倍率も0.85倍と依然として厳しく、非正規雇用が3人に1人にまで広がり、年収200万円以下のワーキングプアが1000万人を超えています。昨年の勤労者の平均賃金は1990年以降で最低となり、ピーク時から約70万円も減少するなど、賃下げが長期に続いています。電機・情報産業での13万人リストラ計画など退職強要や解雇、雇い止めなど雇用不安も増しています。生活保護世帯が過去最多の214万人に達しました。国民の家計消費の低下による需要の落ち込みが深刻なデフレ不況を長引かせるなど、日本経済と国民生活は低迷が続いています。安倍内閣は「アベノミクス」などと言って無制限の金融緩和、大型公共事業のバラマキ、大企業応援の「成長戦略」のいわゆる「三本の矢」を推進していますが、どれも過去の自民党政権で破たんが証明済みであります。しかも2%の物価上昇目標を掲げ、消費税増税実施と社会保障削減を強行しようとしていますが、賃金は上がらないのに物価と税金などが上がれば、暮らしは一体どうなるのか、火を見るより明らかであります。
また、安倍首相は先日、TPP交渉参加を表明しましたが、農林水産業、医療、雇用、食の安全など、日本経済を土台から壊し、経済主権をアメリカに売り渡す道に踏み出す重大問題であります。
こうした中、いま市政に求められるのは、「住民の福祉の増進を図る」という地方自治法の精神に則って、国の悪政にたちむかい、地域経済と雇用を支え、市民所得の向上を図り、福祉や教育など市民生活を充実させることです。
しかるに、高島市長が策定した基本構想・基本計画は、歴代市長の「アジアの拠点都市」づくりを無反省に継承し、「都市の成長」「人と企業を呼び込む」と称して異常な開発優先・財界奉仕の路線に突き進む一方、市民には自助・自立を求め、福祉・教育の願いに反するものです。これを具体化した今後4年間の中期計画である「政策推進プラン」の初年度として位置付けられたというのが2013年度当初予算案の最大の特徴です。
歳入を見れば、市税収入が増加する一方、実質的な地方交付税は減少し、基金を65億円取崩すなど、依然として借金頼みの傾向です。市長は「観光によって税収が増えた」などと言われますが、その根拠は示されませんでした。個人市民税の増加は税源移譲や増税も含まれています。法改正に従い市県民税の均等割が1000円引き上げられますが、庶民増税であるとともに、防災・減災対策事業の財源と言いながら、臨港道路整備など関係性に乏しい事業にも使われるなど問題があります。
歳出については、人工島事業推進に119億円もの予算をあて、新病院や青果市場、拠点体育館の移転や都市高速道路の延伸など人工島破たん救済の事業が推進されています。また、五ヶ山ダム建設の他、福岡空港第二滑走路、天神通線延伸、第二期展示場など不要不急の大型開発に次々着手するものとなっています。さらに、特定都市再生緊急整備地域指定や博多港長期構想、首都機能バックアップ誘致などを口実に、かつてない大規模プロジェクトに突き進もうとしており、異常な開発偏重予算だということが浮き彫りになりました。
一方、市民生活関連では、高すぎる国民健康保険料の介護分を引き上げ、肺がん検診に自己負担を導入し、障害者小規模作業所の補助金を1億円削減、特別養護老人ホームの整備も不十分など、福祉に冷たい内容です。教育費は前年度から10億円減らされ、一般会計のわずか6.1%と過去最低となりました。学校施設の整備や教職員体制など教育環境の充実は不十分です。少人数学級の拡充に背を向け、私立小中学校・朝鮮学校補助金を廃止しました。市長は「子ども施策を重視した」などと言われますが、それに反する予算だと言わなければなりません。
市当局は、国の経済対策による2012年度補正予算への前倒しの影響などと言われますが、浮いた予算と今後交付される国の「地域の元気臨時交付金」を活用して、住宅リフォーム助成制度の創設や教室エアコンの設置、中学生までの医療費無料化など、地域経済活性化と暮らし応援の願いにこたえる積極的な予算を強く要望するものです。
「行財政改革プラン」を推進する市長は、450億円の財源不足が生じるとして、「民間で担うことができることは民間に」「優先順位の最適化」などと、各種補助金の廃止や公共料金値上げ、公共施設の廃止などを新年度から具体化していますが、市民サービス切り捨ては自治体の役割の否定、責任放棄、市民犠牲に他ならず許されません。しかも、毎年100億円以上を投入する人工島事業などは重点事業と言って聖域にし、指一本触れず、ムダづかいを放置しているのであります。それどころか、行革で生み出した財源を大型開発につぎ込むことが真の狙いであることが質疑で浮き彫りになりました。この道を進めば、年度末3会計合計2兆4,388億円、市民一人あたり167万円にのぼる市債残高は、減るどころか大きく膨れ上がり、3兆円の大台に乗りかねないのであります。不当な行革プランは撤回すべきです。
市長は職員の給与、手当、退職金の引き下げを強行しようとしていますが、職員の生活設計を狂わせ、モチベーションにも悪影響を与えるばかりか、市民サービスの後退を招き、さらに民間にも波及するものです。全国市長会の緊急アピールに反する職員給与の引き下げはやめるべきです。
市民本位の財政再建を図るためにも、地元中小企業・業者を応援し、市民所得と安定雇用を増やし、市内でお金が循環する足元からの景気対策が必要であります。わが党は市長に対し、地元財界への賃上げ要請を行うよう求めましたが、市長は拒否しました。こうした消極的な態度ではデフレ脱却はおろか、賃上げにも貢献できないと言わなければなりません。
また、高島市長の結論先にありきの「第三者委員会」方式や、パフォーマンス優先、議会軽視の政策決定のやり方など、市民を置き去りにした独断的な政治姿勢は問題です。今回わが党は、副市長人事をめぐる問題や、少年科学文化会館の移転整備手法をめぐる市長の説明責任をただしてきましたが、高島市長の市政運営のあり方は承服できません。
以上のように、新年度予算案は、大型開発のムダづかいばかりで、福祉や教育、暮らしの分野を抑制・削減するなど、市民の願いに反する内容が基調となっております。市民犠牲の行革路線ではなく、雇用と中小企業対策、医療、福祉、介護など社会保障、子育て、教育、環境、防災、平和など市民生活を最優先する市政へ切り替えることが求められており、わが党は抜本的予算組替えを要求しましたが、市長は拒否したのであります。
したがって、わが党は高島市長の予算案と関連議案に反対するものであります。
次に、わが党が反対する議案のうち、いくつかの問題について、その理由を明らかにしておきます。
まず、高島市長の行革プランについてです。
市長が打ち出した「行財政改革プラン」で市民サービスが切り捨てられようとしていることに市民の怒りと不安の声が高まっています。切り捨ての対象は昨年10月では81項目でしたが、この議会に報告された「各局区室改革実行計画(原案)」では113項目が挙げられています。福祉、医療、教育、文化などあらゆる分野にわたり、市民に大きな影響を与える、まさに「市民いじめ大計画」であります。
わが党が質疑でただしてきたように、市立幼稚園はこれまでの教育委員会の怠慢を改め充実こそすべきであり、教育の機会均等に反し、保護者など関係者の願いを踏みにじってすべて廃園するなど断じて許されません。九州交響楽団補助金のカットは経営にも演奏活動にも大きな影響を及ぼす死活問題です。特別支援学校スクールバス指導員を民間委託化すれば子どもたちを不安にさせ、危険性や事故も危惧されており、道理がありません。地元住民の反対が強い市営渡船志賀島航路の減便・全廃計画はやめるべきです。65歳以上の市民センター、体育館、プールなど施設利用料免除の廃止は、高齢者の社会参加や生きがいづくりに反します。子育て支援制度や高齢者・障害者施策の見直しも検討されていますが、減免や助成の廃止・削減は許されません。これらを強行するなら市民の怒りは広がり、行政に対する信頼が損なわれるのは必至であります。
また、公共施設の民営化や指定管理者への営利企業参入、行政業務の民間委託化が拡大されていますが、公的責任を放棄するものです。とくに、市職員全員の給与等に関わる業務を民間委託している総務事務センターは、個人情報漏えいが防げず、偽装請負の疑いもあり、改めるべきです。人員不足となっている部署の正規職員を増員配置するよう求めるものです。さらに、貴重な公共用地は安易に売却せず、市民のための活用を検討すべきです。地域住民に活用されている市立集会所などの廃止、売却は中止すべきです。
市長は「厳しい財政運営」などと言われますが、本市の深刻な借金財政を生み出した人工島事業をはじめとする開発優先に何の反省も総括もないことがはっきりしました。さらに、「ビルド・アンド・スクラップ」「成長戦略のための財源確保」と言われているように、行革で生み出す450億円は、都心部の大規模開発や大型ハコモノ建設、観光客や企業を呼び込むことに使うのが真の狙いであります。あたかも市民のための行革のように装いながら、財界の儲けづくりを企んでいるのであります。わが党はこうした本質を暴露してきましたが、切り捨て計画の撤回を求める市民と共同し、いっそう奮闘するものです。
第2に、人工島事業はじめ大型開発の問題についてです。
高島市長の3年で人工島事業推進予算は合計410億円にのぼります。造った土地が売れず、昨年見直した事業計画・資金計画が早くも破たんしています。最終収支の赤字は160億円では済まないとのわが党の追及に港湾局は苦しい答弁を繰り返さざるを得ませんでした。その破たんを救済するための税金投入は、わが党が指摘してきた通り、文字通り天井知らずとなっています。病院や青果市場、道路など税金による土地買い取りとハコモノ整備はすでに631億円以上にのぼり、住宅市街地総合整備事業を名目にした住宅建設への補助にも57億円、さらに今後、120億円の拠点体育館、250億円の都市高速道路が計画され、企業立地交付金は255億円も予定されています。こんなムダづかいを放置して「財政健全化」など、まさに笑止千万であります。推進してきた市長及び議会勢力の責任は重大であり、抜本的に見直すべきです。
その他、五ヶ山ダム建設に28億円、土地区画整理4事業に約88億円もあて、福岡空港の第二滑走路建設、九大学研都市づくり、博多港長期構想を具体化する臨港地区再編、大型クルーズ船のあいまいな需要を前提にした岸壁整備、都心部の大規模再整備と天神通線の延伸、第二期展示場、過大規模となる南部清掃工場建て替えなど、不要不急の大型プロジェクトを具体化、推進する予算は認められません。
第3に、福祉と社会保障についてです。
国民健康保険については、新年度の保険料の介護分が引き上げられ、その結果、引き下げを公約した高島市長の就任前と比べて引き上げとなっています。当局は介護分への一般会計繰入金は国が認めないと言いますが、強制力はありません。介護分を含め引き下げとなるよう手立てを講じるとともに、医療を受ける権利を奪う保険証取り上げと無理な差し押さえをやめるべきです。介護保険については、国の制度改悪によってますます利用しにくくなる中、保険料、利用料の負担軽減も、足りない特別養護老人ホームの増設も、介護職員の処遇改善も、取り組みが不十分だと言わなければなりません。
生活保護については、ケースワーカーが増員されるものの一人当たり100世帯を切る程度で、国の標準である80世帯には程遠いものです。市民の相談や申請に丁寧・迅速に対応し、保護世帯への支援を十分行えるよう、いっそうの増員を求めます。障害者施策については、小規模作業所が地域活動支援センターへの移行を求められる中、機能強化加算を受けてもなお厳しい運営を余儀なくされており、補助の拡充とあわせ職員の労働条件改善の措置が必要であります。また療育センターの増設を要求します。
こども病院の人工島移転については、西部地域の小児救急医療の空白化や、新病院の防災対策などの課題は何も解決しておらず、中止すべきです。
第4に、子どもと教育についてです。
保育所待機児の解消は喫緊の課題ですが、公立保育所を減らし、新設をまともに増やさず、既存保育所への詰め込みや家庭的保育に頼る市長のやり方では、来年4月の待機児ゼロ達成は怪しいうえに、保護者が安心できる保育の願いに反し、現場に苦労を押し付けるものと言わなければなりません。これまで福岡方式と言って社会福祉法人に無償で貸与してきた保育所用地を一律に有償化することは、経営を苦しめ、新設をも困難にするものです。関係者の運動が実り国が実施する保育士処遇改善については、単年度であり、本市独自の拡充はありません。継続・拡充を要求します。
子育て支援の柱の一つである医療費無料化については、中学3年生までを対象にしている政令市が、入院で16市、通院で6市と広がっており、本市は市長の選挙公約に反して最低水準となっています。自己負担が受診抑制につながっており、わが党は中学3年生までの無料化を要求しました。周辺市町村の動向や財源問題を理由に拒否されましたが、市長の決断次第なのであります。
児童虐待などに対応する児童相談所の拡充が求められています。新年度予算措置された児童家庭支援センターは本来公設公営で行うべきですが、児童や保護者のかけ込み寺として利用しやすい場所に設置し、相談に丁寧かつ適切に対応できるよう委託先を指導するよう求めるものです。
教育については、市長が「グローバル人材の育成」などと言って英語教育の特化を推進するなど、教育への不当な介入は許されません。一方で、教育費が減らされ、現場に困難が押し付けられています。とりわけ学校施設の老朽化によるコンクリート片などの落下事故が多発しているにもかかわらず、専門家による点検を充実させようとしないなど、市長の教育政策は容認できません。
また、学校での体罰を根絶するための教育委員会の取り組みは不十分だと言わざるを得ず、調査方法を見直すべきです。教職員が暴力に頼らない指導ができるよう、民主的な話し合いや研修を行うための時間や体制などの条件整備を進めるとともに、身近に相談できる第三者機関の常設を要求します。いじめについても早期に発見し対応できる体制づくりとして、スクールソーシャルワーカーなど専門職員のいっそうの拡充と、全学年での少人数学級の実施こそ必要であります。
小学校給食調理業務の民間委託の試行について、わが党は実際に起きている問題を示し、詳細な検証が行われているのか疑義があると指摘しましたが、教育委員会はおおむね良好などと早くも評価しており、結論ありきの検証などあり得ません。
六本松九大跡地に移転される少年科学文化会館については、文化ホールを整備しないとの方針に対し、市民から怒りの声があがり、整備を求める署名は5万人を超えています。ところが市長は、施設整備を直営でなく民間賃借方式とすることを打ち出したのであります。わが党の質疑で明らかになったように、市長が言われる「30年間で40億円の経費節減」は精査されていない仮の試算であって何の根拠もありません。賃借方式のほうが安上がりだと適当なことを言って市民をだまし、結論を押し付けるなど言語道断であります。賃借方式では行政責任が果たせず、長期的にみれば財政負担も重くなり、将来に禍根を残すことは明白です。大企業の利潤を保障するために子どもの施設を利用するなどもってのほかです。わが党は、市民の願いにこたえ、劇場型ホールを備えた少年科学文化会館を、直営で、整備するよう強く要求するものです。
第5に、安心・安全のまちづくりについてです。
南海トラフ地震の被害想定の衝撃的な内容が発表されましたが、未知の活断層を含め、本市でも大地震・大津波が起こりうることを想定して、抜本的な対策に取り組むべきです。また、早急な水害対策の強化を求めるものです。
政府が原発再稼働を強行しようとする中、市長は原発について「国の決定事項」などと言って明言を避け、老朽化が著しい玄海原発についても九電に廃炉を求めるどころか「安全の確保を求める」などと、あたかも「安全な原発」があり得るかのような、とんでもない答弁をしましたが、これは市民の願いに反するものです。福島原発事故の被災者支援については、自主避難者も含めて市独自の支援策を創設、拡充するよう求めるものです。
わが党が要求してきた再生可能エネルギーの導入拡大については、新年度予算で一定具体化されたことは一歩前進です。本市は太陽光と風力だけでも市内全世帯の電力をまかなえるだけのポテンシャルを持っており、最大限活用する方策をいっそう推進するよう要求します。
以上でわが党の反対討論を終わります。