2013年9月議会
議案に対する反対討論
2013年9月25日 星野美恵子議員
私は、日本共産党市議団を代表して、本議会に提案されている諸議案のうち、議案第169号~171号、173号、180号、190号に反対し、討論を行います。
まず、議案第169号、一般会計補正予算案中香椎アイランド線及びアイランド西2号線道路整備事業、ならびに議案第171号、港湾整備事業特別会計補正予算案など、人工島事業関連についてであります。
今回議案は、人工島の市5工区の新たな道路整備のためとして、都市計画道路香椎アイランド線で約1.5ヘクタール、12億6,000万円、アイランド西2号線で1.4ヘクタール、5億7,000万円をかけて用地取得するものですが、合計18億円余は、国庫補助金と市税、市債を財源に一般会計から歳出し、港湾特会の歳入として処理したうえで港湾整備基金に積み立てるとのことであります。
人工島事業については、わが党が繰り返し指摘してきた通り、造った土地は計画通りに売れず、税金投入による破たん救済が繰り返されてきたのであります。今回問題の5工区についても、住宅用地も産業・商業用地も計画通りに売れずに、今年度予定されている79億円もの償還額の財源は目途が立っていません。そうした中、年度途中に18億円もの大型補正を組んだのは、道路用地として市が土地を買い取ることで、銀行への借金返済の財源を作ってやることに他なりません。まさに銀行奉仕であります。
こうしたやり方は今回が初めてではありません。人工島では道路や公園整備に税金がつぎ込まれ、青果市場移転では163億円もの用地費が充てられてきた結果、融資銀行は事業破たんの責任を問われることなく、毎年確実に利益を上げています。一方で市が肩代わりした借金が膨らみ、市民サービス切り捨ての口実となっているのであります。人工島事業の破たん救済を市民犠牲に押し付けるやり方は許されません。
市長は、道路は市民が利用するから税金で整備するのは当然だと一般論を持ち出して開き直られましたが、福岡市においては、埋め立て地における道路整備は既存市街地とは違い、開発者負担の原則に立って港湾特会で整備してきたのが事実であり、人工島だけ例外的に特別扱いしていることを隠そうとする姑息な言い訳は認められません。
さらに、今回市長が打ち出したソフトバンクホークスの2・3軍の本拠地誘致については、人工島市5工区の土地を港湾局が設定した価格の半分以下の借地料で貸し出すことになれば、人工島の資金計画に大穴が開く危険があることを指摘しておくものです。
また、議案第190号、市道路線の認定については、都市高速道路の人工島への延伸部分であります。わずか数分間の短縮のために2.5kmを250億円も投じて整備する計画ですが、一日あたり4600台増加するという当局の見込みが達成される根拠はなく、無駄遣いに他なりません。
したがって、わが党は、人工島事業の破たんを税金投入で穴埋めする関連議案に反対するものです。
次に、議案第169号、一般会計補正予算案のうち、生活困窮者自立促進支援モデル事業についてです。
同モデル事業は、国の補助金2,200万円を充て、生活困窮者を対象にした相談窓口の設置や就労など関係機関との調整を行うものとされていますが、いくつもの問題があります。
まず、本市は同事業を民間に委託しようとしている点です。窓口業務と言っても書類の発行だけ行うようなものとは違います。様々な理由によって生活困窮に陥っている市民の悩みを懇切丁寧に聞きとり、関係法令や制度を踏まえ、状況に応じた打開の道を一緒に考えて励ましていく、相当に専門的な知識と技術を要する業務であります。ところが、これを市職員が行うのではなく、公募による民間団体に任せるというのでは、公的責任を放棄するものであり、市民が本当に安心して相談できないばかりか、市民の所得や経歴、家族構成など重要な個人情報が漏えいする危険性も高いと言わなければなりません。
同モデル事業は、生活保護費の抑制・削減を狙った生活保護法改悪と一体の「生活困窮者自立支援法案」の具体化であります。同法案は7月の参院選前に廃案になったにも関わらず、政府が予算措置して地方自治体に先行実施させるもので、高島市長がこれに飛びついたのであります。
政府による賃金抑制と非正規拡大の雇用政策、大企業奉仕の経済・財政政策、さらに貧困な社会保障政策のもとで、国民生活は深刻です。ところが、安倍自公政権はそうした失政を反省するどころか、国民生活の最後のセーフティーネットである生活保護制度の切り捨てをたくらみ、先月から保護基準を引き下げて給付額カットを強行したのであります。これには全国でかつてない規模の不服審査請求が起こっています。日本の生活保護の捕捉率は異常に低く、本市においても数万世帯に及ぶと言われる保護基準未満の所得しかなく苦しい生活を余儀なくされている市民にもっと積極的に保護を適用していくべきであります。ところが、今回のモデル事業はそうした本来のあり方に逆行するものと言わなければなりません。区役所に生活保護の相談に訪れた市民に対し、保護の申請をさせず、モデル事業の窓口にタライ回しすることになりかねません。憲法25条の生存権を保障する生活保護制度の破壊の一つに他ならない、今回モデル事業は実施すべきではありません。
次に、同じく、一般会計補正予算案のうち、子ども・子育て支援新制度給付管理システム構築に係る業務委託費1億8,000万円の債務負担行為の補正についてです。
これは、自民、公明、民主の3党合意で強行された、子ども・子育て新システムの2015年度からの本格実施にむけた準備を始めるものです。新システムは、保育に対する国・自治体の責任を後退させ、子どもの保育に格差を持ち込み、保育を営利企業にいっそう委ねていくもので、公的保育制度の大改悪であります。しかも財源を消費税10%の実施とリンクさせているひどいものです。
中でも保護者にとって心配なのは、認定方式の導入です。これまでは保育所入所の申込みをして、保育に欠けることを証明すれば入所が決定されますが、新システムでは、保護者は利用希望の申込みの前に、「保育の必要性の認定」を申請し、市町村の認定を受けなければならず、場合によってはフルタイムではなく短時間しか認定されないこともあり得るとされ、また市町村は利用調整のうえ施設に要請するだけなのであります。「介護保険制度の保育版だ」との批判は当然です。さらに、本市のように保育所整備が全く不十分で、入所希望数に遠く及ばない状態では必要な子どもが大量に入所できなくなる、大混乱が懸念されるのであります。こうした問題を背景に、現在、国が設置した子ども・子育て会議が新制度の詳細を検討している最中であり、本市が補正予算を組んであわててシステム構築の業務委託を進める必要はないと言わなければなりません。
次に、わが党が賛成する議案のうち、議案第195号、「福岡市空き家の倒壊等による被害の防止に関する条例案」について、意見を述べます。現在、福岡市の調査では市内で適切な管理がされていない空き家は1,790件、そのうち早急に何らかの措置が必要な家屋は62件となっており、その対策は喫緊の課題です。市民の安全を守る立場から、日本共産党市議団は本条例案に賛成するものです。
わが党は、空き家問題の対応について、委員会審議の中で提案会派及び当局に質すとともに、わが党の提案も明らかにしてきました。その中心点について二つ申し上げておきます。
第一は、空き家の倒壊防止は、周辺住民と所有者など、関係者の十分な合意や納得によってこそ、効果的に進められるということです。全国で制定された空き家対策の条例の多くは、自治体が行っている助言や行政指導を、条例として体系化することで法的な根拠を明確にし、対策を推進しやすくすることに、その眼目があります。行政指導とは、強権や懲罰にもとづく法令とは違い、当事者の協力や合意によって政策の目的を達成するものです。だからこそ、多くの自治体では、条件付きの助成や支援を設けながら、所有者への粘り強い相談と説得を続けて合意をめざしています。合意形成こそ倒壊防止対策の基本である以上、合意のない氏名公表や強権措置は合意や協力を損なう恐れがあり、その発動は慎重の上にも慎重を期さねばならないのです。そのことを市長及び関係部局に求めておきます。
第二に、住宅の良好な社会的ストックを重視する観点です。これまでの日本の政治は新築の持ち家に偏重した住宅政策をすすめ、しかもそれを「個人の財産」の問題として処理してきました。「個人の財産」であることを理由に、住宅の改修には何の公的な支援もおこなって来なかったため、多くの住宅の老朽化が進み、放置された空き家が危険家屋となっているのです。適切な管理を施した空き家は「社会的資産」と位置付けるべきであり、だからこそ、住宅リフォームへの助成をはじめ、住宅の改修への適切な公的支援が不可欠です。段階に応じた様々な公的支援によって住宅の良好な社会的ストックを創出すれば、空き家問題の根本を解決できるとともに、多くの市民に、国連のイスタンブール宣言に記された「適切な住居への権利」を保障する道を開きます。本市がこうした公的支援の検討へ進むよう強く求めるものです。
以上の観点を踏まえて、わが党は本条例に対する決議案を提案致しました。本条例とともに決議案についても採択されるようお願いするものであります。
以上でわが党の討論を終わります。