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2013年12月議会
2012年度決算諸議案に対する反対討論
2013年12月12日 星野美恵子議員
私は、日本共産党市議団を代表して、2012年度一般会計及び特別会計並びに企業会計決算諸議案のうち、議案第144号~147号、150号~155号、157号、159号~161号、163号~165号、168号に反対し討論を行います。
周知の通り、2012年度は、長期にわたる賃下げ、非正規雇用と貧困の広がり、家計消費の落ち込み、震災と円高の影響など、日本経済と国民生活の低迷が続くなか、本市の行財政運営に求められていたのは、市民の暮らしと福祉、命を守るという自治体本来の使命を果たし、また内需拡大のための景気対策を講じることでした。ところが、高島市長の2012年度当初予算は、「アジアのリーダー都市」「稼げる都市」を看板に、大企業の儲けづくりの道に突き進む一方で、福祉と教育分野を削減・抑制するなど、市民の願いに反する内容でした。2012年度決算は当初予算の悪しき特徴がそのまま示されております。
歳出決算をみますと、福祉、医療、介護、保育、教育など市民生活関連の施策を「行革」を口実に抑制、縮小して市民の切実な願いに背を向けた一方で、人工島事業に124億円を充てるなど、財界が喜ぶ大型開発の推進には湯水のように税金・公金をつぎ込んだというのが、最大の特徴となっております。
市債残高は3会計合計で2兆4508億円、市民一人あたり168万円と依然として高く、政令市では大阪市に次いで2番目です。一般会計の借金返済である公債費は992億円と財政を圧迫し、実質公債費比率も政令市ワースト4位となっており、外郭団体などの隠れ借金が416億円もあるなど、借金財政は引き続き深刻です。
したがって、わが党は2012年度決算諸議案を認定することはできないのであります。
次に、わが党が反対する諸議案のうち、主な問題について、その理由を明らかにしておきます。
第1は、福祉、医療、介護など市民生活に関わる問題です。
まず、国民健康保険は、一人あたり国保料が引き下げられたとは言え、所得の2割を超えるなど重い負担に市民が苦しめられています。決算を見れば、一般会計繰入金を前年度から2億円も減額し、とりわけ特別繰入を大幅に減らして、介護分を含む一人あたり保険料を引き上げた結果、収納率が悪化し、滞納世帯が引き続き5万を超えています。国保料が高すぎて払いたくても払えないため、収納率は87.21%へと落ち込み、政令市ワースト5位となっています。滞納世帯から保険証を取り上げ、資格証明書発行12,443件、全世帯に対する比率5.4%は政令市最悪です。差押は生活費を含む預貯金まで対象にして、過去最多の2,245件で、金額は6億7,200万円に達しました。まさに「カネの切れ目が命の切れ目」というべきこうした無慈悲な国保行政は抜本的に改めるべきであります。
生活保護は、雇用悪化にもかかわらず、保護開始世帯数が前年度と比べて大きく減っておりますが、窓口に相談に来た市民に申請させず追い返す間違った対応がいまだに行われており、生活保護を必要とする人が受けられない事態となっています。ケースワーカーの一人あたり持ち件数はいまだ100件であり、しかも、任期付短時間勤務職員という低賃金・不安定な職員でまかなうやり方は問題であり、正規職員の増員は急務です。保護世帯のエアコン設置に背を向けていることも問題です。
介護保険については、国の制度改悪によってますます利用しにくくなるなか、保険料も利用料も高齢者に重い負担を課し、待機者急増が深刻な特別養護老人ホームの整備もわずか402人分にとどめ、低賃金・過密労働の中でも必死に努力されている介護労働者の処遇改善も極めて不十分でした。
後期高齢者医療制度は一人あたり77,877円もの高い保険料を課し、3,396人もが滞納せざるを得ない事態です。やらないと言っていた短期証発行を行い、1,088人から正規保険証を取り上げたことは問題です。
障害者施策については、各種福祉サービスの利用制限によって使いにくく改善・拡充を求める利用者の声にこたえていません。小規模作業所などへの補助や支援も不十分だと言わなければなりません。
市長が昨年12月に強行着工したこども病院の人工島移転は、人工島ありきで進められた決定過程の不透明さに対する疑問、防災面や交通アクセスの不安の声を無視する暴挙だと言わなければなりません。市長が記者会見で表明した、こども病院現地周辺の「新たな小児科づくり」なるものもカラ約束だったことがはっきりしました。小児二次医療体制を壊す市長の無責任ぶりは断じて許されません。
低所得者の増加に伴い、市営住宅の応募倍率は高齢単身者の平均で25.4倍、一般でも16.4倍と入居希望者が殺到していたのに、新設ゼロの住宅政策を続けていることは問題であります。
第2は、子ども、子育てと教育についてです。
保育所は、2012年度始めの時点で待機児が893人となっていたにもかかわらず、新設整備を6カ所にとどめたため、今年度始めには695人、未入所児童が1664人と最悪水準となりました。「働きたいのに保育所に入れず働けない」という深刻な事態を生み出した責任は重大であります。土地の無償貸与を有償化した結果、保育所新設がますます困難になりました。その結果、適正規模をはるかに超え平均定員142人という異常なマンモス化にある既存保育所へのいっそうの詰め込み、幼稚園への1・2歳児保育の押し付け、入所申込み締切の前倒しなど、今日、現場と保護者に苦難を強いているのであります。さらに、保育の公的責任を崩す「子ども子育て支援新制度」への不安が広がるなか、ただでさえ低い面積基準や保育士配置基準のぎりぎりの状態になっている現場から悲鳴が上がっております。保育士の労働条件悪化と非正規への置き換え、保育士不足も深刻です。賃上げと過密労働解消こそ求められていましたが、本市は何の手立ても取らなかったのであります。
また、2012年度にこども未来局が不動産会社「福住」と土地売買契約協議を行った中央保育園移転計画については、移転先がラブホテルやパチンコ店に隣接し、また前面道路が交通量が多く狭隘であるなど最悪の周辺環境であることから、保護者や保育士が強く反対しております。さらに、従来方針に基づき決定された現地建て替え予算が凍結されて移転先用地探しが始まったという不可解な方針転換の経緯や、土地転がしによる1億3,300万円もの転売益の疑惑、不動産会社「福住」への元市幹部の天下りなど問題だらけで、真相究明は何一つされておりません。公金返還請求住民訴訟が提訴され、また高島市長に対する背任容疑の刑事告発が福岡地検によって受理されるという事態へと発展し、世論も高まりつつあります。にもかかわらず、移転を強行している高島市長の態度はまったく異常であり、今すぐ中止すべきであります。
留守家庭子ども会事業については、関係者の要望を受け、老朽・狭隘だった施設の建て替えやトイレ整備が進みましたが、入会希望が増えるなか、ほとんどの留守家庭子ども会が適正規模である40人を超過し、最大では160人にもなっている大規模化はますます深刻となっています。
教育費は、学校校舎・体育館等の改修・改築など予算を伴う事業が求められていましたが、前年度から23億円も減らされ、一般会計の6.31%とピーク時の半分以下、最低水準にとどめました。その結果、過大規模校、校舎の老朽化、危険箇所が放置され、全学年実施が望まれる少人数学級も拡充されず、教職員の過重労働は一向に解消されず、子どもたちが待ち望んでいる教室エアコン設置に背を向けるなど、現場に多大な困難をもたらしているのであります。一方で、財界の要請で英語教育を強調し、一部の子どもを対象にしたエリート教育を持ち込むなど、市長が教育内容に介入していることは許されません。また、学校での体罰を根絶するための教育委員会の取り組みは不十分だと言わざるを得ません。いじめ問題の解決のためのスクールソーシャルワーカーなど専門職員の拡充もさらに必要です。通学路の安全確保のための整備も遅れています。昨年9月から1年間試行された小学校給食調理業務の民間委託は、さまざまな問題が起きていますが、結論ありきの検証は許されません。給食公社のリストラと、中学校の給食センターの統合・大規模化を、関係者の不安と反対の声を無視して推進していることは問題です。
六本松に移転される少年科学文化会館については、文化ホールの存続を求める市民・子どもたちの声を無視し続ける高島市長は、子どもの芸術鑑賞の権利を奪い、文化を切り捨てるものであり許されません。民間ビル賃借の整備方式が安上がりだという根拠は乏しく、公的責任を果たす直営で、ホールを含めて整備すべきです。
第3は、雇用・中小企業対策などについてです。
非正規雇用が拡大するなか、安定した雇用の確保が求められているにもかかわらず、本市の雇用対策は短期、非正規を増やしたばかりで、あまりにも貧弱だと言わなければなりません。
地元経済の主役である中小企業対策費は25億円程度、一般会計のわずか0.34%にすぎません。中小企業・業者の仕事を確保するための施策として、住宅リフォーム助成制度の創設を求める声が高まっているにもかかわらず、いまだ実施されていません。2012年度の官公需発注率は81%にとどまっています。この10年間で市内の商店数が4割も減っているにもかかわらず、市の商店街支援策が十分活用されているとは言えません。また、いわゆる「買い物難民」対策をもっと支援すべきです。中小企業対策の拡充こそ求められております。
農林漁業については、予算の増額とともに、低迷する所得と経営を支援するための各種助成制度、販売促進の支援、後継者づくりの支援、鳥獣被害対策の強化などいっそうの拡充を求めるものです。
第4は、原発問題と防災についてです。
福島第一原発の事故は「収束」するどころか、放射能汚染水問題に見られるようにその被害はますます拡大しているなか、政府は玄海原発などの再稼働を強行しようとしておりますが、高島市長は国任せの無責任な態度に終始しているのであります。これは市民の願いに反するものです。福島原発事故の自主避難も含めた被災者支援の創設・拡充にも冷たく背を向けております。原発即時ゼロにむけて、再生可能エネルギーの導入拡大をいっそう推進すべきです。
昨年度から地域防災計画の見直しが進められていますが、人口密集地帯にある警固断層帯で直下型の大地震が起きれば甚大な被害が予想され、また未知の活断層が引き起こす大地震・大津波も想定されなければならず、抜本対策が必要です。住宅耐震化促進の助成制度をいっそう充実させるべきです。また、水害対策の強化を図るべきです。
第5は、大型開発の問題についてです。
2012年度、人工島事業の推進に、埋立や地盤改良、道路・下水道整備、マンション建設補助など約67億円、新青果市場用地買い取りを含めて124億円もの事業費がつぎ込まれました。人工島の土地は着実に売れていると市長は言われますが、みなとづくりエリアの2012年度処分計画17.6ヘクタールに対し、処分実績は9.3ヘクタールにとどまり、また、まちづくりエリアでも計画通りに売れませんでした。計画見直しの直後から破たんしているのであります。これまでの土地処分のじつに半分、51ヘクタールは公園や道路、こども病院や青果市場用地として合計483億円もの税金で買い支えてきたというのが実態であり、しかもその資金は基金積み立てには回らず、融資銀行団への償還だけは計画通りに執行されています。銀行の儲けを保障する一方で、港湾整備基金は底をつき、最終収支で最大410億円もの赤字となり、これを市民負担に押し付ける、このような人工島事業を推進してきた勢力の責任は極めて重大であります。税金は一円も使わないとしていた人工島への税金投入はすでに631億円以上にものぼっており、さらに今後120億円の拠点体育館、250億円の都市高速道路延伸が計画されておりますが、これ以上のムダづかいは許されません。
その他、土地区画整理5事業、都市高速道路3億7,000万円、五ヶ山ダム建設関係21億7,000万円など、大型開発に莫大な事業費を費やしました。
さらに市長は2012年度、25年ぶりに改定した「福岡市基本構想」と「第9次基本計画」を決め、歴代市長の「アジアの拠点都市」づくりを継承する方針を打ち上げましたが、本市の借金財政を深刻にさせ、暮らしを犠牲にしてきた大型開発路線に何の反省も総括もないばかりか、いっそう推進する姿勢であります。市長の「アジアのリーダー都市」を具体化し、「博多港長期構想」に基づく中央ふ頭や箱崎ふ頭などウオーターフロント地域の大規模な再整備や、「新都心構想」に沿った天神通線や都心再整備、観光を口実にしたインフラ整備など、まさにかつてない大型開発推進ぶりは異常だと言わなければなりません。
第6は、行財政改革の問題です。
高島市長が打ち出した113項目にわたる「行財政改革プラン」は、市立幼稚園の全廃、市営渡船志賀島航路の廃止、市民センターなど公共施設利用料の高齢者減免の廃止、文化団体への補助金カット、特別支援学校スクールバス補助員の民間委託化など、市民いじめのオンパレードであります。どの問題でも、道理のない切り捨てに対し市民は強く反発しており、市長の思惑は完全に行き詰まっています。何の責任もない市民に犠牲を押し付けることは許されません。
今回決算に反映している、市職員の平均年3万8,000円の給与引き下げにつきましては、住民奉仕の職務を担っておられる市職員のモチベーションを引き下げ、住民サービス低下につながるとともに、関連労働者と民間の賃金にも連動し、地域経済に悪影響を及ぼしたと言わなければなりません。また、公共施設の民営化や指定管理者への営利企業参入、行政業務の民間委託化が拡大されていますが、公的責任を放棄するものです。さらに、貴重な公共用地が安易に売却されていますが、市民のための活用を検討すべきです。
市長は「厳しい財政運営」などと言われますが、本市の深刻な借金財政を生み出した人工島事業をはじめとする開発優先に何の反省も示されておりません。それどころか、「ビルド・アンド・スクラップ」「成長戦略のための財源確保」と言われているように、「行革」で生み出す450億円は都心部の大規模開発や大型ハコモノ建設、観光客や企業を呼び込み、財界の儲けづくりが真の狙いであります。企業立地交付金や優遇税制の導入で企業には大盤振る舞いの一方で、市民向けサービスは次々カットされることに市民が怒るのも当然です。こうした財界奉仕・市民犠牲型の「行革」路線は認められません。
以上でわが党の反対討論を終わります。
以上