2010年予算議会
2010年予算議会を終えて
2010年3月30日 日本共産党福岡市議団
福岡市2010年予算議会は3月26日閉会しました。日本共産党市議団は、吉田市長の市政運営と予算を厳しくチェックし、市民要求の実現のために奮闘しました。
暮らしの安心の願いにこたえない吉田市長の予算案
吉田市長の任期最後の年の予算案は、大型開発推進と市民犠牲の行革路線、福祉・教育・景気対策予算の抑制という従来型で、暮らしの安心を願う市民にこたえないものです。社会保障削減路線を是正する手立ても、家計を温め、中小業者を応援する対策も弱く、景気対策としても不十分です。校舎の大規模改造が遅れ、窓サッシ落下事故が続発しているのに、教育費は全体のわずか6.9%と後退させました。一方、人工島事業推進に89億円で、借金残高は2兆5067億円、市民一人当たり176万円と深刻です。借金財政のツケを市民に押し付け、公立保育所民営化や市立病院独法化、市職員大幅削減など公的責任を放棄する「行財政改革」を進めています。
日本共産党の宮本秀国団長は代表質問で、税金ムダづかいの開発行政を根本から改めることによって借金財政の立て直しを図りながら、雇用と中小企業対策、医療、福祉、介護など社会保障、子育て、教育、環境、防災、平和など市民生活を最優先することによって家計を温め、経済活性化も財政再建も図る市民本位の市政へ切り換えるよう要求しました。吉田市長の予算案は日本共産党が反対したものの、自民党、民主党、公明党などが賛成し、可決されました。
入院医療費の無料化「小6まで拡大」を可決、10ヵ月以内に実施
連日報道されているように、子どもの医療費無料化をめぐる論戦が焦点の一つでした。
子どもの医療費助成制度は、日本共産党が39年前に市議会で初めて要求し、実現・前進してきました。現在は就学前まで完全無料です。
市長の提案は、入院のみ小学3年生まで拡大するものでした。日本共産党はこれを一歩前進と評価しつつ、さらに入院・通院とも中学3年生まで(義務教育期間)に広げる修正案と、財源確保(約10億円)のため大型開発を凍結する一般会計予算案の組替え動議を提案しました。自民党も「入院のみ6年生まで」の修正案を提案しました。
与党・民主党は日本共産党の修正案に反対し「大型開発を中止すれば多大な影響が出るため削除すべきでない」と税金ムダづかいをかばいました。また自民党に対して「予算措置の見通しがない修正案は手続きに疑義がある」と、地方自治法に定められた議員の議案提出権を制限するような強権的な発言を行い、抗議を受け謝罪するという失態を演じました。
参院選を控えていることもあり、自民党と民主党が対決しあう異例の事態でしたが、大事な子どもの医療費無料化を「政争の具」にしたことは問題です。日本共産党は、子育ての経済的負担の軽減にとって無料化拡大がいかに求められているか、税金の使い方を変えれば必要な財源は確保できることなど、建設的な質問と提案を行いました。そして、現行制度から前進する内容には賛成する立場から、25日の条例予算特別委員会総会の採決で、わが党修正案が否決された後、自民党修正案に賛成しました。
採決の結果、自民党修正案が賛成多数(自民、共産、公明、ネットワークが賛成。民主、みらい、社民、福政、平成が反対)で可決され、26日の本会議でも可決されました。市長は再議権を行使しないことを表明しましたので、来年1月末までの間に、小学6年生までの入院医療費無料化が実現することになりました。
住宅リフォーム助成条例を議員提案しました
日本共産党は、議案提出権を行使して、地元中小零細建設業の仕事確保など経済対策を目的とした「住宅リフォーム助成条例案」を議員提案しました。わが党は中小建設業者の深刻な実態を示し、大きな経済効果が期待できる決め手の制度だと強調し、賛同を呼びかけました。他会派からは「趣旨は理解できる。市の事業では経済対策としては脆弱だ」などの意見が出されましたが、採決ではネットワークと社民などの賛成にとどまり、残念ながら否決されました。
一方、市当局は「住宅省エネ改修助成事業」を始めます。これは住宅版エコポイント対象の断熱化工事で市内業者に発注した場合エコポイント数の3分の2(上限10万円)を助成するもので、これ自体は前進です。
日本共産党は「住宅リフォーム助成を実現する会」のみなさんと共同し、実現するまで奮闘します。
国保料3年連続の引き下げなど、要求実現へ一歩前進
国民健康保険料の引き下げを求める請願署名が25万8千筆を超えましたが、新年度は介護分と所得割で引き下げの見込みです。わが党は「上乗せ方式」をやめるよう求め、市は国保会計への繰入金を特例として6億円追加しました。それでも国保料の高すぎる実態は解消されず、日本共産党はさらに市民と共同してがんばります。
35人学級が新年度から小学4年生にも広がります。わが党の要求が反映して常勤講師の採用で対応します。保育所待機児が認可外保育所に入所した場合の保育料一部補助が初めて実施されます。
特別養護老人ホームは前年度の3倍の6カ所が新規増設されます。生活保護の家賃代理納付制度(民間住宅でも保護世帯の家賃を市が直接大家に支払う)が始まります。水害対策では天神地区浸水対策事業が前倒し実施されます。
市民の運動と日本共産党の議会論戦が共同すれば、要求が前進します。暮らしの要求実現へ、引き続き力を合わせましょう。
市立病院の独立行政法人化とこども病院人工島移転に反対
こども病院と市民病院を4月から地方独立行政法人化する議案(病院機構中期目標案など)が自民、公明、民主などの賛成で可決されました。
独法化によって病院職員は公務員でなくなり、人事評価制度が導入され、非正規雇用も拡大するなど、労働条件が悪化することになりますが、すでに医師や看護師などの退職が相次いで増員計画の見通しもなく、患者数目標など経営目標の達成は極めて困難です。独法化にすでに9億円近く出資し、今後3年間で46億円余を新たに負担するなど、直営のままなら必要のなかった市費投入が膨らんでいます。新こども病院構想については、最も基本となるはずのベッド数さえ確定しておらず、また全国の病院で破たんが相次いでいるPFIを導入することによって、毎年の市費繰り入れは倍加する懸念があります。日本共産党は、民間委譲や縮小・廃止に道を開くことになりかねず、公立病院としての役割を果たし得なくなる、独法化とこども病院人工島移転の撤回を求め、議案に反対しました。
「県政汚職事件の徹底解明」など意見書を採択
予算議会では意見書5件が採択されました。日本共産党が立案した「県政・町村会汚職事件の徹底解明及び再発防止を求める意見書」、「子どもの医療費助成制度の創設を国に求める意見書」、官僚答弁禁止などの「『国会改革』に関する意見書」は、いずれも民主党が反対しましたが、賛成多数で可決されました。