2010年予算議会
議案に対する反対討論
2010年3月26日 星野美恵子議員
私は、日本共産党市議団を代表して、本議会に上程されている諸議案のうち、議案第28号ないし30号、32号、35号、36号、38号ないし40号、42号、44号ないし48号、55号、60号、62号、64号、67号、69号、72号、77号、78号、81号、83号、85号、86号に反対し、討論を行います。わが党の意見については、代表質疑および補足質疑、分科会審査ならびに総会における質疑で述べておりますので、ここではその基本点について述べます。
周知の通り、昨年の総選挙で自民・公明政権に退場の審判が下され、新しい時代が切り開かれました。国民は政治を変えたい、暮らしを良くしたいという願いをいっそう強めています。ところが民主党政権は、後期高齢者医療制度の廃止を4年も先延ばしにしたり、米軍普天間基地の移設先探しで迷走を続けた上に県内移設を押し付けようとしたり、肝心要の問題で国民との約束を裏切り、期待はずれとの声が広がっております。政府の新年度予算編成と財源問題でも、庶民増税に踏み出し、消費税増税のための議論をすすめています。まさに自公政治からの根本的な転換に踏み出せない新政権の実態がいよいよ浮き彫りになっています。わが党が指摘しているとおり、「大企業優先」「アメリカいいなり」の二つの聖域に切り込んでこそ、国民の願いにこたえて暮らしを守ることができるのであります。
こうしたなか吉田市長が編成した2010年度予算案は、旧来型の市政からの転換に踏み出すものとなっておらず、重大な問題があります。
人工島事業の推進に89億円もの巨費をあてるなど、大型開発の推進に相変わらず多額の予算を注ぎ込む姿勢を改めておりません。これは、税金ムダづかいをやめよという市民の願いに反し、また民主党政権が掲げる「コンクリートから人へ」に真正面から逆らうものでもあります。
また、景気対策という点から見ても、市長の経済・雇用対策には、家計と中小業者の応援など内需拡大という視点が欠けています。本市の雇用創出といっても半年間の非正規労働者を一定増やすだけであります。前政権が進めた社会保障費削減路線のもとで傷つけられた暮らしを応援することが求められていますが、市長は市民の家計を直接温める施策に背を向け、暮らしの安心の願いにこたえていません。とりわけ低所得の高齢者や障害者の経済的負担の軽減に効果的な、公共料金の福祉減免は何一つ実行しようとしていません。
深刻な経済危機に伴い、市税収入が59億円も大幅に減少する見込みで、地方交付税も微増にとどまるなか、臨時財政対策債を含め市債発行額が2年連続増額の684億円に達するなど、借金頼みの苦しい歳入予算です。借金返済が全体の14%を占める1,039億円にのぼり、ますますゆとりのない予算編成となっています。市債残高は全会計合計の2010年度末見込みで2兆5,067億円、市民一人当たり176万円と依然として深刻です。さらに外郭団体などの隠れ借金が482億円にのぼっています。市長は、「財政リニューアル」と称して、職員削減、市立病院独法化などを強行しています。こうした借金財政のツケを市民に押し付け、公的責任を放棄する「行財政改革」は認められません。
市民犠牲の行革路線ではなく、税金ムダづかいの開発行政を根本から改めることによって借金財政の立て直しを図りながら、雇用と中小企業対策、医療、福祉、介護など社会保障、子育て、教育、環境、防災、平和など市民生活を最優先することによって家計を温め、経済活性化も財政再建も図る市民本位の市政へ切り換えるべきであります。したがって、吉田市長の2010年度予算案にわが党は反対するものであります。
次に、わが党が反対する議案のうち、いくつかの問題について、その理由を明らかにしておきます。
第1に、経済・雇用対策についてです。
雇用を安定させ暮らしを応援して消費を拡大し、中小企業の仕事を増やして経済を活性化させる「内需拡大」型の経済対策が求められています。ところが市長の経済・雇用対策はこの視点が欠けています。中小業者の仕事確保に効果の大きい住宅リフォーム助成制度の創設に背を向け、大企業への雇用拡大の働きかけも弱く、深刻な人手不足に悩む福祉、介護、保育、教育、農林水産業などの分野でどう正規雇用を増やすのか、市長には何の戦略も見えません。市長は「成長戦略」ということを強調されますが、それは強い企業をもっと強くすれば経済が成長し、回り回って暮らしも良くなるというものであり、これまで構造改革路線のもとで進められてきた経済政策であります。これを10年間続けてきた結果、企業が内部留保を溜め込むばかりで、賃下げや雇い止めなどによって国民所得は落ち込み、消費も冷え込んだままで、まさに成長が止まっているのが現実であります。大企業の儲けづくりの「成長戦略」路線を改め、家計を直接温める対策こそ必要であります。
第2に、福祉と社会保障にかかわる問題です。
まず、国民健康保険についてですが、高い保険料に苦しむ市民からの引き下げを求める声はますます広がり、請願署名は3年間で累計25万8,000筆を超えています。市長の提案は、新年度一人あたり保険料が介護分で762円引き下げとなりますが、医療分と後期高齢者支援分は据え置きとされ、市民の願いとは程遠いものです。本市の国保料が高い原因の一つは保険料の未納見込み分や独自減免分を保険料に上乗せする不当なやり方にあります。国保料を抜本的に引き下げるには一般会計繰入金を大幅に増やす必要がありますが、新年度は「特例措置」として約6億円の追加にとどめています。市長は他都市にならい一般会計繰入金を大幅に増やして払える国保料へと引き下げるべきです。また、払いたくても払えない滞納世帯から保険証が取り上げられ、病気になっても病院にかかれず重症化や死亡した事例も起きるなど深刻です。資格証明書発行ゼロの自治体に学び、冷たい国保行政を改めるよう求めるものです。
姥捨て山と批判されている後期高齢者医療制度については、新年度保険料が引き上げられ、年75,401円とされようとしています。わが党は引き上げにならないよう本市独自の対策を求めましたが、拒否した市長の態度はお年寄りの悲痛な叫びに耳を傾けないもので許されません。
介護保険については、基金が14億円もあるにもかかわらず高い保険料を引き下げないのは許されません。特別養護老人ホームは新年度6ヵ所計画されていますが、待機者が6,800人を超す非常事態であり、介護が必要なお年寄りを抱える家族の切実な願いにこたえるため早急な増設が必要です。あわせて介護現場の人手不足を打開するため、市として人件費の補助を行うよう要求します。
生活保護については、厳しい雇用情勢のもと引き続き保護申請・保護世帯は増えており、憲法25条の生存権に基づく生活保護行政の改善は急務です。本市のケースワーカーの配置は国の標準数を大きく下回っており、親身な相談や対応どころか、激務に追われているのが現状です。新年度26人の増員を行うとは言え、全く足りず、ケースワーカーを抜本的に増やすべきです。
障害者施策については、障害者自立支援法の応益負担廃止が求められていますが、本市の負担軽減措置や施設運営補助は依然として不十分です。重度心身障害者福祉手当が事業仕分けで廃止と判定され、市当局が新年度は存続するもののその先については明言しておらず問題です。
第3に、教育と子ども施策についてです。
市長は新年度、教育費を509億円と一般会計のわずか6.9%に後退させました。校舎の耐震化がまもなく完了しますが、大規模改造が後回しにされています。校舎の窓サッシの落下事故が続発するなど、修繕も不十分です。にもかかわらず教育予算を抑制・削減する市長の姿勢は極めて問題であります。新年度35人以下学級が小学4年生に拡充されます。わが党の要求が反映され、教育委員会は今回初めて常勤講師の採用による少人数学級の拡充に踏み出しましたが、さらに全学年への拡充を急ぐべきです。
本市の保育所待機児は1月時点で909人と増え、保育所に入れない事態は深刻です。市長は地域を限定して2,200人分を整備する「新待機児童解消プラン」を始めますが、保育所を新設する地域をごく一部に限っており、これでは根本的解決になりません。定員を超えた入所など詰め込みを押し付けるやり方は保育現場にさらに困難をもたらすものです。待機児解消のため、市有地の無償貸与などあらゆる手を尽くして保育所の大幅新設を急ぐべきであり、あわせて劣悪な保育士の労働条件改善の手立てと、認可外保育所への支援の一層の拡充を講じるよう求めます。また、保育所の面積基準など施設整備の規制緩和や直接契約制度への変更など、保育制度改悪は許されません。学童保育については、これまで3年生までだった対象を4年生へ一部拡充しますが、大規模化が問題になっており、建替え改修が25箇所という計画では不十分です。また、幼児から中高生までの居場所づくりがますます重要な課題となっていますが、市長がいまだに児童館設置を頑なに拒否していることは極めて問題であります。
第4に、こども病院・市民病院の地方独立行政法人化と新病院基本構想の問題です。
市民の反対世論が大きく高まるなか、わが党はこれまで市立病院の独法化とこども病院人工島移転を厳しく批判し、撤回を要求してきましたが、吉田市長はこの4月から独法化するため、病院機構中期目標案など関連議案を提出し、また新病院基本構想を推進しています。独法化によって病院職員は公務員でなくなり、人事評価制度が導入され、非正規雇用も拡大するなど、労働条件が悪化することになりますが、すでに医師や看護師などの退職が相次いで増員計画の見通しもなく、患者数目標など経営目標の達成は極めて困難だと言わなければなりません。また独法化は経営基盤確立とか効率的経営のために必要だと言われますが、すでに9億円近く出資し、今後3年間で46億円余を新たに負担するなど、直営のままなら必要のなかった市費投入が膨らんでおり、深刻な矛盾に陥っているのであります。また、人工島移転の新こども病院構想については、最も基本となるはずのベッド数さえ確定しておらず、また全国の病院で破たんが相次いでいるPFIを導入することによって、毎年の市費繰り入れは倍加する懸念があります。そして民間委譲や縮小・廃止に道を開くことになりかねません。さらに小児二次医療協議会がこの1年半も会議が開かれていないことが発覚しましたが、移転による空白地対策も事実上暗礁に乗り上げているのであります。公立病院としての役割を果たし得なくなる、独法化とこども病院人工島移転にわが党は強く反対します。
第5に、大型開発推進の問題です。
吉田市長は「見直し」公約に反して人工島事業を推進し、昨年「新事業計画」を策定して、新たな埋め立てや売れない土地処分の穴埋めなど税金投入の泥沼に突き進んでいます。新年度も89億円もの推進予算を付け、4年間で累計約480億円にのぼるのであります。港湾関連用地は、今でも土地処分が計画通りに行かずに売れ残っているのに、広大な土地を造り続けることは許されません。また市5工区の住宅計画については、エコと銘打って土地単価を大幅に引き下げなければ売却できず、今日の住宅需要の動向を踏まえれば計画破たんは火を見るよりも明らかです。人工島埋め立てを直ちに凍結すべきであります。
また、五ヶ山ダム建設の21億円の負担金等ですが、国もダム建設の見直しを進めるなか、過大な水需要計画に基づいて五ヶ山ダム建設を推進することは問題があり、きっぱり凍結すべきであります。市長は福岡空港滑走路増設を推進していますが、乗降客数は10年間で2割減少し、発着回数も伸びておらず、右肩上がりの需要予測は大きく外れています。そうしたなか需要予測を受託した「運輸政策研究機構」の会長が「空港建設を進めたい国の意向に配慮し、過大な数字を出してしまう現実があった」と発言したことが報道され、波紋を広げています。それでも「福岡空港の需要予測は精査しており妥当だ」などと言って過大な予測にしがみつく市長の態度は許されません。その他、九大学研都市構想の推進や渡辺通駅北区画整理事業など、不要不急の大型開発を推進していますが、開発行政からの転換という市民の願いに背き、財界・大企業奉仕に突き進む市長の姿勢はあまりにも異常と言わなければなりません。
第6に、行革と行政のあり方についてです。
本市の借金財政は依然として深刻ですが、その最大の原因は歴代市長と推進会派のもとで大型開発が次々推進され、莫大な税金・公金投入を続けてきたことにあります。ところが市長はこれを見直すどころか、新たな大型開発に乗り出し、さらに破たん救済に果てしない税金投入を続けており、借金財政が改善する見通しはありません。一方、市税、国保料、市営住宅家賃など、払いたくても払えない市民を「悪質滞納者」と決めつけ、差押えなどいっそう強化しており、また公立保育所の民営化や、福祉や教育をカットするための「事業仕分け」、貴重な市有地の売却、球技場の有料化など、市民犠牲と行政責任放棄のやり方を推進しています。さらに、市長は今でも政令市一少ない市職員を新年度さらに104人も削減し、この5年間で504人も減らし、非正規化を進めています。こうした職員削減は市職員の長時間・過密労働をさらに深刻にさせるもので、ひいては市民サービスの低下を招くものに他ならず、認められません。市立高校の図書司書のパート化は撤回すべきです。
同和行政について、本市がいまだに1億4,000万円もの同和予算、1億2,700万円の同和教育予算を温存し、解同福岡市協議会への補助金2,530万円も継続していることは、わが党の認めがたいところです。
平和行政については、市長はこの議会中に米海軍揚陸艦ラシュモアの入港など2年で6回も米軍艦の博多港入港を許可しており、市民の再三の抗議にも改めようとしていません。核密約の存在が明らかになるなか、核持ち込みの疑いのある米軍の博多港、福岡空港の軍事利用を容認する姿勢は許されません。日本共産党は、戦争放棄を誓った憲法の平和原則を壊すあらゆるたくらみに断固反対するものであります。
第7に、市長の政治姿勢についてです。
吉田市長は人工島事業やこども病院人工島移転の「見直し」などの選挙公約を裏切り、「聞きたかけん」などと言いながら市民の声を全く聞かず、市民の激しい怒りを買っております。また、報道によれば、吉田市長は来月東京で会費2万円の政治資金パーティーを開くそうですが、政治とカネが大問題となるなか、こうした政治姿勢は市民の理解を得られないものと言わなければなりません。
次に、議案第86号、公共交通空白地等及び移動制約者に係る生活交通の確保に関する条例案についてです。
本条例案は、生活交通の確保を図るため、市民、市民団体、市及び公共交通事業者の役割を明らかにし、取り組みを促進することが目的とされております。しかるに、その内容には重大な問題が含まれているため、わが党は賛成できません。
第1に、西鉄など公共交通事業者の責任をあいまいにし、バス路線の廃止や縮小を容認するものだからです。バス会社は、とりわけ交通不便地において住民の公共交通手段を担う役割と責任があります。公共交通だからこそ様々な優遇措置を受けているわけです。ところが西鉄は近年、不採算などを理由に、早良区脇山や志賀島などの地域のバス路線の廃止を一方的に打ち出し、住民に新たな負担を押し付けており、公共交通事業者としての責任が厳しく問われています。条例案では公共交通事業者の役割について、「最大限の配慮を払うよう努めなければならない」と定めていますが、これでは事業者に責任を果たさせる効果はほとんどなく、逆に何らかの「配慮」さえすればバス路線を廃止してよいことになるのであります。
第2に、市民に対し「自助努力」を求めるものだからです。条例案では、バス会社と利用者・住民を同列に置いて、市民には「共助」「自助」を求める内容が明記されています。また、市民に対し、市の生活交通施策に「共働して推進するよう努めなければならない」と定めて、協力を強要するものとなっています。これでは、事業者がバス路線を廃止したり、市がその代替施策を行ったりする時に、住民がこれに反対したり抗議したりすることができにくくなる恐れがあります。現に、西鉄が廃止を一方的に説明するだけで、住民の要望に応じない事例が起きていますが、この条例案によって改善される保障はありません。
次に、わが党が賛成する議案について意見を述べます。
まず、議案第61号、福岡市乳幼児医療費助成条例等の一部を改正する条例案については、昨日の条例予算特別委員会総会において修正が加えられました。これは、子どもの医療費助成制度の対象を入院について小学校6年生まで拡大するものです。わが党市議団は、「入院・通院とも中学校3年生まで」に拡大することを求めておりますが、子どもの健全育成と、子育てにかかる経済的負担の軽減という観点から、子どもの医療費無料化を現行制度より前進させる本議案に賛成します。もとよりわが党は、どのような議案に対しても、市民の暮らしと権利を守るものであるかどうかを市民の視点からチェックし、良いものには賛成し、悪いものには反対するという立場であります。建設的野党として、子どもの医療費無料化をはじめ市民要求を一歩でも二歩でも前に進めるためにさらに奮闘するものです。
次に、議案第87号、福岡市住宅リフォーム助成条例案についてですが、政令市で初めての住宅リフォーム助成制度の実現として、市民が大きな期待を持って成立を待ち望んでおります。本市経済の主役である中小業者の現状は極めて深刻であり、建設業者をはじめ多岐にわたる中小業者の仕事確保と経済活性化に大きな効果がある住宅リフォーム助成制度の創設こそ、現状打開の決め手となるものです。
ところが市当局は、業種間の公平性の観点で問題があるなどと難癖を付けていますが、自らが新年度「住宅省エネ改修助成」を導入することによってその論理は完全に崩れたのであります。一方、本市制度は助成の対象を国の住宅版エコポイントの適用工事に限定しており、これでは地元中小業者の仕事確保と経済効果は限られたものになるのは明白です。中小業者の仕事確保のためには、あらゆるリフォーム工事を助成対象にすべきです。そもそも既存住宅のリフォームはそれ自体が環境に優しいものであり、だからこそ目的を限定しない住宅リフォーム助成制度の導入が全国の自治体で広がっているのであります。市民の期待を裏切ることのないよう、議員各位の決断を改めてお願いするものです。
以上でわが党の討論を終わります。