2010年6月議会
2010年6月議会の反対討論
2010年6月23日 ひえじま俊和議員
私は日本共産党市議団を代表して、本議会に提案されている諸議案のうち、議案第104号及び105号、110号並びに111号に反対し、討論を行います。
まず議案第110号、国民健康保険条例一部改正の専決処分についてであります。
市長が専決処分した条例改正は、国保法施行令の改正に伴うもので、保険料の賦課限度額の引き上げなどです。これによって、本市の国保料の基礎賦課限度額は47万円から50万円に、後期高齢者支援金等賦課限度額は12万円から13万円に、合わせて4万円引き上げられ63万円となります。介護分を含めると73万円であります。
そもそも賦課限度額とは高額所得世帯に適用されるものですが、本市において、賦課限度額に到達するのは所得470万円となっており、千葉市の807万円、静岡市の802万円など他都市に比べて異常に低くなっているのであります。「高額所得」とは程遠い所得470万円の世帯に73万円もの高い保険料を課すことは余りにも酷だと言わなければなりません。
今回賦課限度額の引き上げについて、市当局は、今年1月の国保運営協議会での審議の際、「中間所得世帯の負担軽減のため」と、あたかも新年度国保料を引き下げるかのような説明をしました。今議会でのわが党の質疑に対しても、保健福祉局長は所得138万円から437万円の中間所得世帯に対して所得割料率を0.17%、3,400円引き下げたなどと答弁しました。ところが、実際の新年度の所得割料率は引き下げどころか、逆に0.73ポイントも引き上げました。賦課限度額の引き上げによる負担軽減効果を帳消しにする料率アップを強行したのであります。
この所得割料率の引き上げは、所得200万円の3人世帯の場合、介護分を含め15,900円増の大幅引き上げで、44万500円になるなど、低所得世帯を含め多くの国保世帯に大打撃を与えるものであります。この料率アップの理由について、局長は「国保加入世帯の所得総額が前年度に比べ減少したため」と答弁しました。引き続く経済危機の影響もあり平均所得が98万円から88万円へと10万円、1割以上も減ったのであります。もともと非正規労働者や失業者、低年金の高齢者など、ただでさえ低所得者の多い国保世帯に対し、「所得が減ったから保険料を上げる」と言い放つなど、市長の態度は冷酷非情極まりないと言わねばなりません。高すぎる保険料を低所得者に押し付ける仕組みを抜本的に改めなければならないのであります。一般会計から国保会計への繰入金を臨時的に増やしてでも、料率アップを避けるべきでした。今からでも補正予算を組んで、今年度の国保料が引き上げにならない措置を図るよう強く求めるものであります。
次に、議案第111号、地方独立行政法人福岡市立病院機構中期計画の認可に関する専決処分についてです。
本議案は、今年4月1日にこども病院と福岡市民病院を市直営から独法化したことに伴い、市長が同日付でその中期計画について認可したことの承認を求めるものであります。
中期計画によると、基本方針として「質の高い医療の提供」「地域・社会に貢献する病院」とともに「健全な病院経営」ということが掲げられ、直営の時にはなかった「効率性」が強調されています。
医療の質の向上にかかせない医師と看護師について中期計画では「確保に努める」とされています。わが党は、質の高い医療を担ってきた医師と看護師が、独法化に伴い非公務員とされ、労働条件が悪化するなかで、退職せざるを得なくなることを指摘してきました。市当局の説明によると、独法化後2カ月経った6月1日時点で、医師は94名の計画に対し8名も不足しており、しかもこの1年間で2割もの医師が退職しております。これでは医療の継続性が揺らぎ、質の向上に重大な障害が生じるのであります。看護師についても、独法化を前に50名も退職し、今年4月、病院機構に採用された410名のうち3分の1の135名はこれまで市立病院勤務経験がなく、そのためベテラン看護師に新人教育も含めた過剰業務が強いられているのが実態です。さらに短時間勤務・有期雇用の看護師の導入や、外来受付の職員削減によって、現場では混乱も生じ、患者サービスの低下も懸念されているのであります。その上、業績手当いわゆる一時金について、病院当局は独法化前の組合側との合意をくつがえし、年間支給月数を4.50月から4.15月に削減しようとしているのであります。
また、中期計画では「アウトソーシングの検討」も言われていますが、すでに市民病院では給食の外部委託が行われ、経費削減を強いる結果、おかずが一品減ったり、ほうれん草のおひたしが干からびていたりなど問題が起きています。
中期計画のうち「新病院に向けた取組」では、「こども病院については、PFI手法により整備を行う」とされています。PFI導入については、市は昨年12月に公募したものの、1社しか応募がなく「競争性が確保できない」として今年4月に入札を中止しました。PFI病院は全国で行き詰まりが相次いでおり、そもそも導入自体をやめるべきです。ところが、市は参加資格の緩和や内容変更を行って再度公募しようとしています。しかも1社入札でも認めるよう手続きを改変していますが、これは談合を容認するものであり断じて認められません。もともと新病院計画は、病床数が確定していません。県は233床しか認可していないにもかかわらず、市は260床を前提に公募、入札、契約を強行しようとしていますが、破たんするのは火を見るよりも明らかであり、入札をやめるべきであります。
こども病院の人工島移転をめぐっては、決定過程に重大な疑惑・瑕疵があるとして、住民監査請求がなされ、結論が出なかったため、吉田市長を被告とした住民訴訟へと進んでいます。市長が移転先を人工島に決定する根拠とした現地建て替え試算に関わる公文書破棄問題について、市情報公開審査会は「本来残されるべきであった情報が『個人的なメモ等』の形のまま破棄されてしまったことは、条例の本旨にもとる」と厳しい答申を市長に対して行いました。こども病院人工島移転に反対する世論はますます高まっており、これを無視して強行することは許されないのであります。
したがって、問題だらけの中期計画を認可した市長の専決処分に対し、わが党は同意できず、市立病院を元の直営に戻すとともに、こども病院の人工島移転を白紙に戻すよう強く求めるものであります。
以上でわが党の反対討論を終わります。