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議会報告

2010年12月議会

2009年度決算に対する反対討論

2010年12月14日 倉元 達朗 議員

私は、日本共産党市議団を代表して、2009年度一般会計及び特別会計並びに企業会計決算諸議案のうち、議案第119号ないし124号、126号、127号、129号ないし131号、133号、135号ないし139号、141号に反対して討論を行います。


周知のように、2009年度は、前年のリーマン・ショックに端を発し、かつてない経済危機が国民生活をおそい、「派遣切り」に遭った人々が首都でもこの福岡でも「派遣村」に集まる事態となりました。ところが当時の自民党・公明党政権はこうした大企業による大量解雇をとめる手だてをもたず、他方で社会保障予算を毎年2200億円も削減する路線に固執し、大企業や大資産家への減税は維持するという姿勢に終始してきました。このような国民のくらしも経済も破壊する政治に国民は怒り、自民党・公明党政権に総選挙で厳しい審判を下したのであります。新しく誕生した民主党政権も発足後数ヶ月のうちに財界の要求に屈し、古い自民党政治の執行者となって自民党政権と何ら変わらない姿をあらわにしました。

そうしたときに、福岡市に求められた市政運営とは、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本」とするという地方自治法第1条の定めにもとづき、国の悪政や不況から市民のくらし・福祉・地域経済を守ることであったはずです。ところが、2009年度の市政運営は、この自治体本来の仕事を投げ捨て、人工島事業をはじめとするムダな大型開発に熱中するものでしかありませんでした。2009年度決算にはそれがはっきりと示されております。

まず、一般会計の歳入をみてみると、市民税が前年度比8.4%の減少、個人市民税は1.1%、法人市民税にいたっては22.6%の大幅な減少となっています。これは不況のせいばかりではありません。大企業はこの不況の中でも内部留保を増やし続け、市内の大企業もこの10年間で利益を 1.5倍に増やしている一方で、市内勤労者の所得は14.85%、実に年額77万円も下がっています。この減少率は政令指定都市の中で最悪のものです。  税収の落ち込みは、国の政治や福岡市政が、大企業の内部留保を市民のために還元させ、市民の家計や中小業者を直接応援する手だてをとらず、くらしも経済も抑え続けてきた結果に他なりません。

一般会計の歳出については、緊急に求められていた経済・雇用対策は正規雇用の拡大など安定した雇用を求める市民の願いに背を向けた、きわめて不十分なものでした。国民健康保険については、高すぎる保険料のため滞納世帯が依然として多いにもかかわらず、保険料の抜本的引き下げは行われませんでした。入所希望者が激増している保育所や特別養護老人ホームの抜本的増設を行わず、市営住宅の新規建設はゼロを続けています。このように、2009年度決算は、市民のくらしを守り、地域経済を振興する内容にはまったくなっておらず、同時に、破たんした人工島事業に124億円もの巨費を投じるなど、ムダな大型開発を推進するものであり、認められるものではありません。

借金財政については、2009年度、3会計合計で2兆5157億円もの莫大な借金が残っており、財政再建は避けられませんが、前市長が金科玉条にした自治体リストラである「財政リニューアルプラン」は市民犠牲と住民サービス切り捨てに他ならず、きっぱり撤回すべきであります。

以上のように、2009年度決算は、市民に不況や国の悪政が襲いかかるなかで市民犠牲と大型開発優先を押し広げたものと言わなければなりません。まさに、こうした市政が、さきの市長選挙で市民から厳しい審判を受けたものであり、わが党はこのような決算諸議案を認定することはできないのであります。


次に、わが党が反対する諸議案のうち、主な問題について、その理由を明らかにしておきます。


第1は、雇用と経済政策についてです。

全国的な経済危機のもと、本市においても大量の失業者が生み出され、中小企業の倒産・廃業が相次ぎました。わが党は、暮らしを応援して消費を拡大し、中小企業の仕事を増やして地域でお金が回る「内需拡大」型の経済対策を要求してきましたが、本市の経済・雇用対策はこれに応えず、市民を救済するものには程遠いものでした。雇用創出事業は本来正規職員で対応すべき市の仕事を、短期間かつ低賃金の非正規雇用を中心にして民間に丸投げするというもので、失業対策としても市の仕事の実施という面でもとうてい自治体の役割を果たしているとは言えないものです。そもそもケースワーカーや児童福祉司など福祉分野を中心に職員増員が求められていたにもかかわらず、職員減らしを続けたことは本市自ら雇用不安を生み出したことに他なりません。

また、本市の経済振興策は企業誘致とコンベンションに偏っており、中小企業対策は雀の涙であります。中小企業に対する融資枠の拡大は行ったものの、営業を直接支援する施策や仕事づくりは乏しいものでした。経済効果が高いとして中小・零細建設業者からの要望が強い「住宅リフォーム助成」の創設にも背を向けました。公共事業を増やしたと言っても「下請けたたき」が横行して中小・零細業者には採算の合わない仕事しか回ってこないのが現実であり、この改善のために「公契約条例」の早期制定が求められています。

農漁業については、安全・安心な食料の安定供給や国土の保全のためにも、基幹産業にふさわしい農林漁業予算の拡充が必要でしたが、貧弱な対策にとどまり、農林漁業従事者の高齢化と減少に歯止めがかかっていません。

雇用・経済対策は極めて不十分だったといって過言ではありません。


第2は、福祉、医療、介護など市民生活にかかわる問題です。

国民健康保険については、2009年度の1人当たり保険料は介護分を含め9万5,756円、一般的な加入者である年所得233万円の3人世帯の国保料は介護分を含め42万円と、引き下げを求める市民の声に押されて若干の引き下げが行われたものの、依然として政令市で2番めに高く、支払能力をはるかに超えています。高すぎる国保料の根本原因は国庫負担を減らしてきた国にありますが、本市においては国民健康保険事業特別会計の歳出が歳入を大幅に上回り累積赤字は 29億円にのぼっているにもかかわらず、一般会計繰入金を抑制して、財源不足を保険料収入に頼っていることに問題があります。保険料が高すぎるため4世帯に1世帯が滞納し、滞納世帯から保険証を取り上げる資格証明書交付は1万6,450世帯、短期保険証も3万1,311世帯といずれも政令市最悪。差押えが前年度2倍の2,127件、9億円を超え、低所得の国保世帯をいよいよ追いつめています。病気になっても医者にかかれず、「カネの切れ目が命の切れ目」という事態は深刻であります。市民の命と健康を脅かす冷たい国保行政は断じて認められません。

後期高齢者医療制度は、「姥捨て山の制度だ」との世論を受けた民主党政権が「廃止」を公約したものの、いまだに継続させているもとで、本市の高齢者が全国一高い保険料を課せられていることは大問題であります。

介護保険については、要介護度を低く認定して軽介護者の保険利用サービスが抑制されたことや、低すぎる介護報酬による労働者の劣悪な状況が放置されたことが深刻な問題でした。特別養護老人ホームは待機者が7,500人へと急増する非常事態にもかかわらず、新設はわずか2ヵ所80人分でした。高齢者に高い保険料が押し付けられる一方、必要な介護サービスが受けられない、まさに「保険あって介護なし」の深刻な事態を生み出したのであります。

生活保護については、実態を無視した資産活用や扶養義務の強要、不当な就労指導や辞退届の強要など、異常な保護抑制が改められていません。派遣切りなど住居を失った人の保護申請を認めるように改善されたことは一歩前進でしたが、保護受給世帯が2万3,525世帯に増え、相談件数も急増しているにもかかわらず、ケースワーカーの増員はたった4人と抜本的対策が図られませんでした。これでは親身で迅速な保護行政には程遠いのであります。

障害者施策については、障害者自立支援法によって、応益負担と称してサービス利用の負担増が障害者とその家族に押しつけられ、「生きていけない」と悲鳴が上がっています。本市独自の負担軽減策は不十分であり、障害者がサービス利用を抑制せざるを得なくなっている事態は深刻であります。

住民の福祉の増進こそ自治体の役割だとする地方自治法の主旨に照らしてみると、市民生活にかかわる本市の2009年度決算の中身は余りにお粗末と言わなければなりません。


第3は、教育と子育ての問題についてです。

学校校舎・体育館等の改修・改築や耐震化など予算を伴う事業を推進することが強く求められていたのに、教育費は前年度からわずかに増額したもののピーク時の800億円近くから540億円へと減らされ、一般会計のわずか7.28%という状況は、学校校舎の窓サッシ落下事故が続けて起きたように、教育現場の困難を広げています。少人数学級を4年生以上に拡充しなかったことは、関係者や保護者の願いに反するものです。

保育所待機児が旧定義で473人に上る深刻な事態だったにもかかわらず、認可保育所の新設は2ヵ所210人にとどめ、既存保育園に児童詰め込みを押し付けたことは、子育てと仕事の両立を困難にし、保育現場に困難をもたらし、自治体としての保育の実施責任を放棄するものであり許されません。児童虐待の相談件数は342件から495件へ1.5倍に激増しているのに、児童福祉司はわずか2人しか増員されませんでした。また、関係者の反対を押し切って公立保育所の民営化を推進したことは極めて問題であります。留守家庭子ども会は100人を超す大規模化が深刻となっていますが、施設増設と指導員体制強化は不十分でした。児童館は結局、前市政の4年間で何一つ前進しませんでした。


第4は、人工島事業などムダな大型開発の問題について述べます。

2009 年度の人工島関係決算は、埋め立ての推進などに80億円、道路整備など総額124億円にのぼっています。着工以来2,936億円もの事業費が注ぎ込まれましたが、造った土地がさっぱり売れず、「税金は使わない」との約束に反して破たん救済のため莫大な税金が投入されてきたのであります。

本市は人工島事業を推進するための「新事業計画」を打ち出して、こども病院や青果市場など公共施設を人工島に集中させ、都市高速道路の延伸など不要不急の公共事業を推進してきました。ところが、売れるはずだった港湾関連用地は急きょキャンセルされ、進出企業に最大10億円の補助を出す立地交付金の適用が1件もなかったという現実が示すように、市長がどれだけトップセールスをしても、人工島の土地の民間需要は何もないのであります。分譲単価の引き下げが打ち出されていますが、収支計画の赤字転落は必至と言わねばなりません。それにもかかわらず今後75ヘクタールもの広大な土地を埋め立てようとしていますが、こんな無謀な計画は断じて許されません。

今回決算には、こども病院の人工島移転経費が含まれていますが、前市長が「見直す」との公約に反して、人工島移転ありきのでたらめな検証を行って強行しようとしたことに対して、総計30万人にのぼる署名が寄せられ、疑惑を追及する訴訟も起こされるなど、市民の怒りが沸き起こるなか、さきの市長選挙で審判が下りました。子どもの命を脅かす人工島移転はきっぱり中止すべきです。

その他、土地区画整理事業5事業に 108億円、都市高速道路に35億円、五ヶ山ダム建設関係35億円など巨額の事業費を充て、さらに福岡空港の滑走路増設も進めようとしており、こうした大型開発推進は認められません。大型開発推進を基調とした前市長の「2011グランドデザイン」は、この際破棄すべきであります。


第5は、「行財政改革」の問題です。

本市は「財政難」を口実に、市税や国保料、介護保険料など重い負担を市民に課し、収納対策の強化と称して払えない低所得者をペナルティと厳しい差押えで追いつめ、また受益者負担の適正化などと称して福祉や市民サービスを切り捨ててきました。本市でも導入された「事業仕分け」は、重度心身障害者福祉手当の廃止や養護老人ホーム・松濤園の民間移行を打ち出すなど、大切な福祉施策を一方的に切り捨てる手法は問題があります。市立病院の地方独立行政法人化は、市民の命と健康を守ることよりも「経営改革」を優先したものであり、公的責任放棄につながるものです。障害者施設や市民体育館・プールなどの「指定管理者制度の拡大・公募化」は、公的責任を放棄し、利用者に負担を押し付け、民間営利企業の儲け口をつくるものです。さらに、貴重な市有地の売却が進められましたが、これでは保育所や特養ホーム、公園や児童館の設置など地域住民の要望に応えられません。人件費について2009年度は前年比12億円減、一般職員数は77人減となり、人口 1000人あたりの市職員数は6.6人と、政令指定都市で最も少ない職員数になっています。これは市職員にさらなる労働強化と過重負担を強いて、今でも増加傾向にある職員の心の病や健康悪化をさらに深刻にし、ひいては市民サービスを低下させるものに他なりません。正規職員を派遣や臨時に置き換えるやり方は「官製ワーキングプア」を生み出すものです。こうした責任放棄と市民犠牲の「行財政改革」はわが党の認めがたいところであります。


第6に、清潔で公正な市政の確立等についてであります。

本市においては汚職腐敗事件が繰り返し発生していますが、ロボスクエアの不正経理が発覚し、今年度になって係長が詐欺と収賄の容疑で逮捕される事件が起きました。市民の行政不信がますます高まっており、何よりも市幹部と財界との癒着を一掃することが待ったなしの課題であります。また、博多座など外郭団体への市幹部の天下りは改めるべきです。

同和対策関係決算は前年度から減額したものの1億2,546万円が充てられ、部落解放同盟福岡市協議会に2,352万円の補助金が出されています。部落問題は基本的に解決しており、こうした特別扱いは市民の理解を得られないものです。

市民の安全を脅かし、福岡の街を戦争に巻き込む港湾・空港の軍事利用は断じて許されません。しかしながら、2009年度も米イージスミサイル駆逐艦ピンクニーが博多港に入港しました。佐世保基地と一体にした博多港の軍港化の企てに屈する、まさに米軍いいなりの卑屈で異常な姿勢は改めるべきであります。また、米軍板付基地の即時返還を強く要求すべきです。


最後に、水害対策について述べます。

2009年7月の集中豪雨によって、またも本市において水害が発生しました。被害を繰り返さず、市民の生活と財産を守るため、市街地を流れる樋井川、那珂川、周船寺川、宇美川などの護岸整備や河床掘削を進めるとともに、降った雨が一気に川に流れ込まないよう遊水池や地下貯留施設などの抜本的、総合的な雨水対策を急ぐこと、また天神地区の浸水対策を早期に整備することを強く要望するものです。


以上で2009年度決算に対するわが党の反対討論を終わります。


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