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議会報告

2009年度予算議会

2009年度予算諸議案に対する日本共産党の反対討論

2009年3月25日 倉元達朗議員

私は、日本共産党市議団を代表して、本条例予算特別委員会に付託されている諸議案のうち、議案第34号~39号、41号、42号、44号~46号、48号、50号、51号、53号、54号、56号、59号、66号~68号、73号~75号、79号~84号、89号、92号、95号、96号、98号、99号、102号、103号、105号に反対し、討論を行います。わが党の意見については、代表質疑および補足質疑、分科会審査ならびに総会における質疑で述べておりますので、ここではその基本点といくつかの問題について述べます。

周知のように、未曾有の経済危機が国民生活を直撃していますが、自民、公明の麻生政権は、大企業による大量解雇をとめる対策はなく、雇用と暮らしの危機打開、内需の回復に役立つ方策を持ち得ていません。新年度予算を見ても、社会保障予算の毎年2200億円削減という切り捨て路線に固執する一方、ムダな大型公共事業や5兆円にのぼる軍事費には手を付けず、大企業・大資産家への減税はさらに拡大するなど財界応援策は至れり尽くせりの内容となっています。他方、国民には2011年までに消費税増税を押し付けようとしています。これでは内需はますます冷え込み国民生活が一層の苦境に陥るのは明らかであります。安定雇用と失業者救済、社会保障の予算拡充、中小企業の仕事確保、農業と地域経済の支援、教育・文化の拡充など、内需拡大の経済におおもとから切り替える必要があります。

そうした中、今まさに、自治体が「住民の福祉の増進を図る」という役割を果たすことがこれまでに増して重要となっております。すなわち、医療、福祉、介護、教育、環境、防災など市民生活を最優先する「自治体らしい自治体」づくりこそ市長に求められているのであります。

しかるに、吉田市長の2009年度予算案は、人工島事業推進に107億円もの巨費をあてるなど大型開発のムダづかいと借金増発を温存しながら、福祉や教育など生活関連予算を切り捨てる極めて冷たい内容となっています。とくに急激な景気悪化から市民を守るための経済・雇用対策は不十分かつ遅いものと言わなければなりません。また、国民健康保険については、一般会計繰入金を2億7000万円減らして、一人あたり保険料をわずか1000円程度の引き下げにとどめました。入所希望が激増している保育所や特別養護老人ホーム、市営住宅の大幅増設に背を向けています。さらに、総計20万にも達した署名に反して、こども病院の人工島移転を強行しようとしています。経済状況が大きく変化し、構造改革路線が完全に破たんしたにもかかわらず、市長は市民犠牲型の「財政リニューアルプラン」を金科玉条にして、高すぎて払えない住民税や国保料の取り立てばかりを強化し、市職員の大幅削減や業務の民間委託化、貴重な市有地の売払いなど、住民サービス切り捨ての自治体リストラを進めています。他方、借金増発路線に踏み出し、年度末の市債残高は3会計合計で2兆5268億円、市民一人当たり179万円と依然として深刻であります。さらに外郭団体などの隠れ借金が635億円にのぼっています。わが党は、こうした開発優先で市民犠牲型の予算では経済危機の打開にも生活不安の解消にも役に立たないとして、抜本的組み替えを要求しましたが、市長は拒否したのであります。今こそ、不要不急の大型開発中止で財源を確保して、市民の生活と営業を直接支える施策に思い切った予算を付けるべきであります。それは家計消費の拡大と地域経済の活性化を生み出し、ひいては税収増にも寄与する、まさに内需拡大型の財政運営だと確信するものであります。

したがって、市民の願いに反する吉田市長の2009年度予算案にわが党は反対するものであります。

次に、わが党が反対する議案のうち、いくつかの問題について、その理由を明らかにしておきます。

第1は、雇用・経済対策についてです。

大企業を先頭にした非正規労働者などの大量解雇は3月末がピークで、派遣切り、雇い止めは福岡県内でも2000人以上と言われています。多くの方が職と同時に住むところも奪われ、命の危険にさらされる異常な事態が起きています。労働者派遣法の改悪によって規制緩和が進み、大企業が雇用の責任を放棄して労働者を使い捨てている、まさに「政治災害」であります。

雇用・経済対策については、的はずれな対策に終始する政府の責任は重いと言わなければなりませんが、同時に吉田市長の無策ぶりを指摘しなければなりません。

市長は新年度8億6,000万円、900人分の雇用創出事業を打ち出しましたが、これは国の緊急雇用創出事業とふるさと雇用再生特別交付金を活用したと言うものの、内示額より1億6,000万円も少ない予算にとどめました。2月補正予算分と合わせて約1,000人の雇用創出とは言え、期間は1ヵ月から最長でも1年間の短期、低賃金の雇用では今の失業者急増の事態への対応として極めて不十分です。深刻な人手不足に悩む福祉、介護、保育、教育、農林水産業などの分野で正規雇用を拡大する措置も皆無です。そもそも市長が企業に対して解雇中止の要請すらまともに行わず、さらに新年度市職員101人削減、新規採用を抑制しようとしており、市長自ら雇用不安を生み出していることは許しがたいものです。

失業者対策については、本市においても住居のない方に対して生活保護を積極的に適用するようになったことは一歩前進です。これを機に、憲法25条に則り、これまでの冷たい生活保護行政、ホームレス対策を抜本的に改善し拡充することが求められます。また、解雇された方に対する市営住宅提供や生活支援資金は、真に必要な人が対象外としており、厳しい要件を緩和するよう改めるべきです。

地元中小零細業者の仕事おこしに積極的に取り組むことが緊急に求められていますが、経済効果の大きい住宅リフォーム助成制度の実施や、市営住宅新設、学校改修、保育所、児童館の増設などの生活密着型の公共工事など思い切った対策が見えないことは市長のやる気のなさのあらわれです。中小企業・業者の営業を直接支援する助成制度の創設や、資金繰りを支える融資制度の一層の拡充を求めるものです。

第2は、こども病院の人工島移転に関わる問題です。

市長は、こども病院の人工島移転を具体化する新病院基本構想を推進するとして予算と議案を提案していますが、その前提である「検証・検討」そのものが疑惑まみれであり、市民の怒りは広がり続けております。とくに、こども病院の現地建替え試算をゼネコンから聞いたとして1.5倍にした問題では、破棄された証拠メモが市の規則で定められた公文書であること、PwCの試算にはすでにローリング費用が含まれていることが明らかになり、「更地に建設した場合の1.5倍」というこれまでの説明が崩れたことなど、新たな疑惑がわが党の質疑で浮き彫りになりました。ところが、市長と当局は事実を市民と議会に隠し続けております。市長は過去の虚偽答弁を謝罪しましたが、重大疑惑にフタをしたまま人工島移転を推進することは断じて許されません。

市長は現地建替えよりも人工島が最適とした理由について費用面だけではないなどと苦しい言い訳に終始しました。しかしながら、検証・検討報告書が費用面を重視していたことは明らかです。市長自身、現地建替えの困難性をことさら強調する一方、医療バランスが壊され西部地域が小児救急医療の空白地となり子どもの命と健康が脅かされること、救急搬送にかかる交通利便性や療養環境の問題など、人工島移転の問題点は異常に過小評価したのであります。こうした恣意的な検証にしがみつき、多数の専門医師の意見さえ無視してきた市長の姿勢は異常の極みであります。

もともとこども病院の人工島移転は、博多港開発の破たん救済に他なりません。売れない土地を税金で買い取って必要のない大規模な病院を建設し、市民病院とともに移管される地方独立行政法人は莫大な借金を押し付けられ、採算性を理由に行政責任が放棄されるのは必至です。一方、PFIの導入によって関連大企業の利益だけは半永久的に保障されるのであります。本市の病院事業をおおもとから歪め、子どもと市民の命と健康を脅かす新病院基本構想の具体化にわが党は断固反対するものであります。

第3は、暮らしと福祉、環境に関わる問題についてです。

まず、国民健康保険についてですが、全国一高い保険料に苦しむ市民からの引き下げを求める声はいよいよ全市民的に広がっています。市長の提案は、新年度一人あたり保険料が介護分で1,044円引き下げとなりますが、医療分と後期高齢者支援分は据え置きとされ、市民の願いとは程遠いものです。わが党の質疑によって、本市の国保料が高い原因の一つが、赤字分や独自減免分を保険料に上乗せする不当なやり方にあることが明らかになりました。国保料を抜本的に引き下げるには一般会計繰入金を増やす必要がありますが、新年度約3億円も削減されるのであります。市長はできない理由を探すのではなく、他都市にならい一般会計繰入金を大幅に増やして払える国保料へと引き下げるべきです。また、払いたくても払えない滞納世帯から保険証を取り上げる資格証明書発行について、当局は「やむを得ない」などと冷酷ですが、事情が把握できない人まで一律に悪質滞納と決めつけ、財産差押えに躍起になるやり方では、滞納世帯を追い込むばかりで親身な相談にのることはできません。多くの保険証取り上げゼロの自治体に学び、無慈悲な国保行政を改めるよう求めるものです。

実施開始から1年が経とうとしている後期高齢者医療制度は、75歳以上のお年寄りを差別する最悪の制度であります。とりわけこの4月からは滞納者からの保険証取り上げが強行されようとしており、制度そのものの廃止を求める声はますます高まっています。国いいなりに「必要な制度だ」と強弁する市長の態度はお年寄りの悲痛な叫びに耳を傾けないもので許されません。

介護保険は、第4期の高齢者の保険料は据え置きとされていますが、負担軽減は不十分であります。特別養護老人ホームは待機者が6,500人を超す非常事態にもかかわらず、新設と定員増でわずか120人分ではあまりにもお粗末であり、介護が必要なお年寄りを抱える家族の切実な願いにこたえるものにはなっていません。4月からの要介護認定方式の変更で、重度の人が軽度に認定されるなど、多くの高齢者が状態は変わらないのに要介護度が下げられ必要なサービスが受けられなくなる事態が懸念されていますが、国の改悪に対してものも言わない本市の対応は不十分です。

障害者施策については、障害者自立支援法の応益負担廃止を求める世論が高まる中、市長は「見直しの動向を見守る」などという消極的な態度に終始しています。本市の障害者に対する負担軽減策や、施設運営への補助は不十分です。ガイドヘルプなどのサービス利用について、他都市以上に厳しい制限を行っていることも問題です。

福岡県が改悪した医療費助成制度については、大きな批判を受けて本市は重度障害者の自己負担分を無料で継続するものの、所得制限を導入し、また、ひとり暮らしの寡婦を対象外とし、母子家庭に自己負担を導入しようとしていますが、これらは助成を必要とする人に新たな負担を強いるものであり、容認できません。

環境保全について、わが党は、温室効果ガス削減のための独自施策として、市内企業に対する二酸化炭素排出量削減の指導や、自然エネルギーへの転換促進のため住宅用太陽光発電設置に対する助成増額などを求めました。環境対策の一層の強化を求めます。

第4は、教育および子ども行政についてです。

学校施設の耐震化、過大規模校の解消、大規模改造など施設・設備改善や、少人数学級の拡充など、教育の充実を求める願いが高まっていますが、新年度の教育費は一般会計の7.25%と極めて不十分な水準にとどまっています。そのため、学校の施設整備については、耐震化が優先されるものの、その他の改修が後回しにされています。老朽化が進むプールの改築は、新年度中学校1ヵ所であり極めて不十分です。

少人数学級について、市長が公約に反して小学校4年生以上への拡充をまたも見送ったことは許されません。中学校1年生で新たに実施されるものの選択制にしたため一部の学校でしか実施されません。必要な人数の常勤講師を配置すれば全学年での少人数学級の実施は可能であり、経費を理由に中途半端な拡充にとどめた教育委員会のやり方は問題があると言わなければなりません。

保育ニーズが高まる中、本市においては保育所が大幅に不足し、待機児は1月1日現在、旧定義で1,366人と急増し、4月の入所未決定も1,250人と深刻な事態となっています。新年度400人分整備では間尺に合っていないうえ、新築わずか2ヵ所で既存保育園の定員増に頼るやり方では詰め込み保育を一層深刻にするばかりです。新待機児解消プラン策定を待たずに、公共施設を活用し臨時保育所を確保するなど緊急対策が必要です。また、保護者から強い反対の声があがっている公立保育所民営化については、当局は新年度1ヵ所実施し、さらに2ヵ所で公募を始める方針ですが、市長の公約違反にわが党は断固抗議します。

留守家庭子ども会事業について、市長公約であった無料化が実施されなかったもとで、実費分を含めた保護者負担は増しており、減免の拡充さえ検討されていないことは問題です。また、半数以上の留守家庭子ども会が70人を超えて大規模化しているにもかかわらず、5年後完了の施設整備計画ではあまりにも遅すぎます。現場の意見をよく聞きつつ、施設の新増築に係る16億円余の予算確保と指導員増員によって、大規模化解消に緊急に取り組むよう要求します。

幼児から中高生までの居場所づくりがますます重要な課題となっていますが、市長が児童館設置を頑なに拒否していることは重大です。

第5は、人工島事業など大型開発と財政再建についてです。

吉田市長は人工島事業を「大胆に見直す」と公約し「検証」を行ったと言うものの、その検証内容が始めから推進の立場に立った偽りのものであったことが明らかになりました。ところが市長は批判の声に全く耳を傾けず、自ら人工島整備事業推進本部長となり、新たな埋め立てや売れない土地の穴埋めなど、新年度107億円の予算を付け、吉田市政で累計約400億円にも達しております。これは前市政に勝るとも劣らない推進ぶりであり、市民を完全に裏切った市長の責任は重大であります。

とくに市長は新年度、水深15メートルコンテナターミナル拡張整備や臨海部物流拠点の形成などに75億円をつぎ込むとしていますが、博多港のコンテナ取扱量は減少傾向に転じ、また物流関連の土地も買い手がつかない今、巨額の公金をつぎ込む理由はありません。また今日の住宅需要の動向を踏まえれば市5工区の住宅9000戸計画の破たんは火を見るよりも明らかです。ましてや、売れない土地に今度は大型コンベンション施設を誘致するなどもってのほかであります。借金の泥沼に突き進む人工島埋め立てを直ちに凍結し、都市高速道路の延伸など税金投入をきっぱり中止すべきであります。

また、九大学研都市構想や五ヶ山ダム建設の他、渡辺通駅北など区画整理6事業に119億円が充てられるなど、不要不急の大型開発を推進することは許されません。福岡空港問題については、わが党の質問に対し市長は「滑走路増設」支持を事実上表明しました。市長選挙で「新空港は必要ないことを明言する」「新北九州・佐賀両空港との連携で対応する」と公約した立場から180度転換することに、市民の怒りがまたも沸騰するのは必至であります。

開発行政からの転換という市民の願いに背き、財界・大企業奉仕に突き進む市長の姿勢はあまりにも異常と言わなければなりません。

第6は、市長の行政姿勢についてです。

市長は財政健全化と称して「財政リニューアルプラン」「行政改革プラン」を打ち出しましたが、その中身が問題です。市民生活関連予算を圧迫しているムダな大型開発には手を付けない一方で、福祉や教育の切り捨てや市民負担増を狙っているからであります。そして、市税などの取り立て強化と差押え、公共料金の値上げ、貴重な市有地の投げ売り、「官から民へ」と称した業務の民間委託化や派遣社員の導入拡大、職員の大量削減などを強行するものです。こうした市民サービスの切り捨てと市職員の労働強化を招くやり方は改めるべきです。指定管理者制度をめぐって公共施設の公的責任が放棄され民間企業の儲け道具となっている実態が浮き彫りになっていますが、直営を基本に抜本的に改める必要があります。

同和行政について、本市がいまだに1億3,594万円もの同和予算、ならびに1億3,252万円の同和教育予算を温存し、解同福岡市協議会への補助金2,780万円も継続していることはわが党の認めがたいところです。

平和行政について、市長はこの1年間に米軍イージス艦を4回も博多港に入港させ、市民の再三の抗議にも軍事利用容認の姿勢を改めようとしていませんが、こうした態度は市民の安全を守る責任を放棄するもので許せません。日本共産党は、戦争放棄を誓った憲法の平和原則を壊すあらゆるたくらみに断固反対するものであります。

最後に市長の公約違反について述べます。吉田市長は市長選挙で「人工島事業の見直し」「新空港建設反対」「無駄な大型開発中止」「こども病院の人工島移転の見直し」「公立保育所民営化の中止」「留守家庭子ども会の無料化」「少人数学級の全学年実施」「児童館の各区設置」「高齢者・障害者の公共料金の減免」などを公約されました。ところが、これらは何一つ守られず、ことごとく市民を裏切っており、市民の怒りはかつてなく噴出しております。公約違反は民主政治を根底から揺るがす重大問題ですが、「候補者の時と今は違う」などと開き直り、追及されるとウソでごまかす市長の態度は断じて許されないのであります。吉田市長に市政を担う資格はなく、市長自ら責任を取るよう、わが党は強く要求するものであります。

以上でわが党の反対討論を終わります。

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