2009年9月議会
議案に対する反対討論
2009年9月18日 倉元達朗議員
私は、日本共産党市議団を代表して、本議会に提案されている諸議案のうち、議案第177号、179号ないし182号、192号、193号、199号、200号、202号ないし204号、210号に反対し、討論を行います。
まず、議案第182号、病院事業会計補正予算案についてです。今回予算補正は、人工島の新こども病院の建設と管理運営にPFIを導入するため、その必要経費の上限額を約174億円と定め、19年4ヵ月間にわたって本市が債務負担するものです。
こども病院の人工島移転は、「子どもの命が守れない」と、専門医や患者家族を始め多くの市民が強く反対しています。しかしながら、吉田市長はこうした世論を無視し、昨年末に決定した「新病院基本構想」に基づいて、人工島移転とPFI導入、市立2病院の地方独立行政法人化を強行しようとしています。
市長が本年3月に策定した新病院PFI実施方針によると、建物の設計や建設、保安警備や清掃、保守管理など建物関連業務に加え、開院後の統括マネジメント業務をはじめ医療事務、総合案内、医療機器等保守管理、消毒滅菌、給食などの医療関連業務、いわゆるノンコア業務10業務を30年間にわたって、特定目的会社SPCに一括委託する計画でした。ところが今回、この計画を大幅に変更する提案がなされました。
PFI対象業務については、医療関連業務のほとんどがPFIの対象から除外されました。これは高知医療センターや近江八幡市立総合医療センターでのPFI失敗を受け、病院の経営状況に関わりなくSPC への支払いが義務付けられるリスクを回避するためだとの説明ですが、高度な専門性を必要とするこども病院の医療関連業務を何のノウハウもなく儲け優先の民間企業に丸投げするやり方そのものが間違っているのであります。
建設費用の資金調達については、当初民間資金と本市起債で折半するはずでしたが、 6月議会では全額起債という説明がされ、今回は民間資金を10%、起債を90%との提案です。保健福祉局長は「民間資金を最小限活用する」と説明していますが、そもそもPFIとは公共施設を市の借金ではなく民間資金を活用して整備する手法であり、9割も起債とするというのはもはや計画破たんに他なりません。
その結果、PFI導入によるコスト削減効果については、当初「30年間で約85億円」としていたものを「15年間で約17億円」に縮減されました。「コスト削減のため」という当局の口実は完全に崩れているのであります。
しかも、今回計画における新病院の病床数は260となっていますが、これは福岡県医療審議会に認められなかったものです。当局は「今後県と協議する」などと言いますが、新病院の病床数は計画の根幹であり、その根拠がないまま財政支出を決めることはあってはならないことです。
さらに市長は、市立病院を独立行政法人化した上でPFIを導入しようとしていますが、これではPFI業者に対する行政によるチェックは極めて曖昧となり、こども病院が大手民間企業の儲け道具になるのは避けられません。その上この仕組みは、PFIが失敗すれば独立行政法人の経営破たんに直結し、廃止や民間移譲という最悪の事態を招きかねない危険なものです。すなわち、こども病院が「病院経営改革」の実験台にされようとしているのであります。
今回PFI計画の大幅変更について、またもコンサルタント会社「PwCアドバイザリー」が関与していることが分かりました。わが党は、PFI計画と変更内容に関わる詳細な説明資料の提出を要求しましたが、委員会審査までに間に合わせることができませんでした。これは議会の審議権を侵す重大問題であります。市民と議会に隠れて、業界との癒着によって計画が秘密裏に進められているということは断じて許されないものであります。多数会派が本議案に賛成しようとしていますが、疑惑の徹底解明を求める請願が市民から出されている中、こうした異常なやり方を議会がやすやすと許していいのか、そのチェック機能が厳しく問われるのであります。
したがって、わが党は、新病院へのPFI導入のための本議案に断固反対するとともに、こども病院の人工島移転と市立病院の地方独立行政法人化をやめるよう市長に強く要求するものであります。あわせて、病院移転問題を徹底調査・審議するための特別委員会設置を改めて議長に要望します。
次に、議案第202号ないし204号、人工島5の3工区表層処理工事請負契約の締結議案3件についてです。
本議案は、人工島の市5工区のうち北半分、合わせて約31万平米の造成を、総額20億2,600万円余をかけて行うものであり、これによって市5工区の埋め立てを完成させるものであります。
人工島の市5工区は、9,000人の住宅地開発という計画が中心となっていますが、福岡市内のマンションなど民間住宅は供給過剰となっており、さらに昨今の経済金融状況のもとで今後の住宅需要は全く先が見えません。港湾局はこれまで何の見通しもないにもかかわらず「長期的な需要があり、将来のために必要」などと強弁して住宅用地を造成し、計画が破たんしては「社会経済状況の変化」などと言い訳して見直しを繰り返し、破たんの穴埋めに巨額の税金を次々投入してきました。今回埋め立て工事を進める市5工区の住宅用地の処分は15年後との説明ですが、わずか数年先の住宅需要も見通せない市当局の無責任な計画を進めれば、破たんは必至であります。総選挙で示された無駄な公共事業の中止という民意を踏まえても、人工島事業をこれ以上推進することは許されず、不要不急の埋め立て工事をきっぱり中止すべきです。
したがって、わが党は、人工島事業を推進するための契約議案に反対し、撤回を求めるものです。
次に、議案第177号、一般会計補正予算案等について述べます。
今回提案の補正予算案には、人工島の「海の中道大橋」を四車線化するための建設費など不要不急の大型公共事業の推進予算が盛り込まれているため、わが党は一般会計等補正予算案に反対します。
一方、一般会計等補正予算案には経済・雇用対策関連として、経済・雇用対策事業132億円余が計上されております。国の「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」は、将来に向けた地域の実情に応じた地域活性化のための地方単独事業に充てることができるとされているものです。本市として、深刻な経済危機に対応し、冷え込んだ市民の家計を温めるとともに、地場中小零細企業の営業を支援して、足元から地域経済を活性化していくために、この交付金を最大限有効に活用することが求められているところであります。
わが党は6月議会において、この交付金活用にふさわしい事業として、5億円規模の「住宅リフォーム助成事業」の創設を提案していました。ところが市長は、今回提案に住宅リフォーム助成を盛り込みませんでした。中小企業・業者のみなさんの切実な要望にこたえない態度は許されません。国の交付金を活用した関連事業の中には、不要不急の公共事業や地元への発注・雇用効果の低い事業など、経済対策として真にふさわしいものになっているのか疑わざるを得ないものも含まれており、交付金の活用策として抜本的な見直しが必要であります。
また、国の「地域活性化・公共投資臨時交付金」についても、真に地元中小業者の仕事おこしにつながる公共事業にこそ生かす必要があります。
わが党は、国の交付金の活用とあわせて独自の予算も組んで、住宅リフォーム助成制度の創設や、市民生活の安全・福祉・教育の充実のためになる生活密着型の公共事業への切り換えなど、地域経済の主役である中小企業・業者の仕事づくりに本腰を入れて取り組むこと、そうした視点に立って来年度予算編成を行うことを市長に強く要望するものであります。
なお、今回補正予算案には7月の九州北部豪雨被害の対策として、総額19億7,000万円余の災害復旧事業、浸水・治水対策事業が盛り込まれています。
本市においては同じ箇所での河川氾濫や浸水被害が繰り返され、住民から「人災じゃないか」との声もあがっています。市長は「想定外の記録的豪雨」などと言って行政責任を逃れようとする態度を改め、水害対策を抜本的に強化すべきです。とくに今回大きな被害を免れた御笠川における総合治水対策の教訓をふまえ、多々良川や須恵川、那珂川、樋井川、周船寺川、若久川などの早急な河川改修、貯水池や雨水幹線の整備など雨水整備緊急計画の見直しと前倒し実施、被災者への見舞金増額や資金融資の要件緩和、防災体制の強化をわが党は要求するものです。
以上でわが党の反対討論を終わります。