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2009年12月議会
2008年度決算に対する反対討論
2009年12月14日 ひえじま俊和議員
私は、日本共産党市議団を代表して、2008年度一般会計及び特別会計並びに企業会計決算諸議案のうち、議案第152号ないし156号、159号、160号、162号ないし168号、170号ないし172号、174号に反対して討論を行います。
周知のように、2008年度は、世界的な経済危機のもと、とりわけ雇用と中小企業は大打撃を受け、国民の暮らしは深刻な事態に陥りました。しかるに、自民・公明政権は、破たんした構造改革路線にしがみつき、社会保障予算を連続的に削減し、国民負担増と社会保障費削減の一方、大型開発のムダづかいや軍事費を温存し、史上空前の利益をあげてきた大企業に対する減税を継続する、まさに逆立ちした財政を続けました。
こうした中で、2008年度の市政運営に求められていたのは、住民の福祉の増進という自治体本来の責務に立ち返り、暮らし、福祉、教育の充実や中小企業振興と不況打開、雇用拡大に全力を挙げることでした。すなわち、国の悪政から市民を守るという自治体らしい自治体への転換であり、そのための予算を組むことこそ求められていたのであります。ところが、吉田市長2年目の2008年度当初予算と施政方針は、市民の願いに反して、開発優先・市民犠牲を基調とした従来型の行財政運営を変えることなく、人工島などムダな大型開発に巨額の税金をつぎこみ、福祉や教育など生活関連を抑制したのであります。2008年度決算はそうした特徴を如実に示すものとなっております。
一般会計歳入決算は、前年度比45億円、0.7%の増額となっていますが、増加要因は国の税制改定に伴う財源補てんの特例交付金11億円、商工金融資金の増などに伴う預託金元利収入123億円、臨海工場賠償金28億円、後期高齢者医療制度導入に伴う県負担金12億円などが主なものです。その一方で、市税収入はわずかに増えたものの個人市民税の増額は定率減税の廃止や国から地方への税源移譲などによるものであり、法人市民税は景気後退の影響で3.8%、約17億円減少したため、市税全体では当初予算時の見込みを下回りました。また地方交付税は増額とは言え6年前と比べて6割程度に減らされたままなど、税財源の減少が深刻であり、これは国による地方財政切り捨てと本市経済の後退、市民生活の苦境を反映したものであります。一般会計歳出決算は、増額となっていますが、教育費は一般会計の6.6%と極めて低い水準にとどめました。また、保健福祉費は前年度比2.8%増となっていますが、国庫支出金や県支出金などを除いた一般財源で見ると約12億円もの減額となっており、医療・福祉施策は抑制されました。市営住宅は、公募倍率が21倍となるなど入居希望が殺到しているのに一戸も新設しませんでした。中小企業対策費はわずか11億円で、一般会計の0.17%にすぎません。
その一方、大型開発については、人工島事業関連に特別会計を含む総額100億円も充て、埋め立て事業の推進、こども病院用地の買い取りなど博多港開発の破たん救済への税金投入が強行されました。その他、市長が「厳しく見直す」と公約した大型開発に巨額の事業費を費やしたのであります。
このように、暮らしや教育に関わる分野で市民の願いにことごとく背を向ける一方、財界が喜ぶ大型開発には湯水のように税金・公金をつぎ込んだというのが、歳出決算の最大の特徴となっています。
2008年度決算における借金総額は三会計合計で2兆5,500億円、第三セクターなどの隠れ借金553億円を含めると市民一人あたり185万円にものぼり、大阪市に次いで政令市2番目の借金財政であります。この根本原因は、歴代市長が推進してきた人工島事業をはじめムダな大型開発にあることは明白であります。市長は実質公債費比率などの数値が改善されていることを強調されていますが、一般会計の公債費は毎年1,000億円を超え2008年度は1,013億円と高止まりしており、一般会計と特別会計とを合わせた元利償還額は2,357億円と前年度比30%増、歳出決算額に占める割合が14.8%へと悪化しているように、これまでの大型開発で作り出した借金返しが本市財政に重くのしかかっています。
以上のように、2008年度決算は、厳しい財政にもかかわらず大型開発のムダづかいとその破たん救済のいっそうの推進、市民犠牲と福祉・教育分野の徹底した抑制と削減が基調となっており、わが党はこのような決算諸議案を認定することはできないのであります。
先の総選挙で国民は自民・公明政権に退場の審判を下し、民主党中心の新政権が誕生しました。新政権は国民の願いと要求運動を反映した政策を打ち出す一方、国民の利益に反した問題点や反民主主義的な要素もあり、過渡的な性格を示しています。いま多くの国民が、これまでの暮らしの苦難や平和の危機をもたらしてきた「異常な対米従属」「大企業・財界の横暴な支配」の政治から抜け出す道、新しい政治の中身が何かについて、模索と探求を続けています。こうした新しい時代において、大型開発のムダづかいや福祉切り捨ての「行革」を推進することは、まさに時代に逆行するものと言わなければなりません。わが党は、今こそ市民の願いを真摯に受けとめ、古い自民党型政治から抜け出して、市民の安心と希望を取り戻す市政へと抜本的に転換することを強く求めるものであります。
次に、わが党が反対する諸議案のうち、主な問題について、その理由を明らかにしておきます。
第1は、雇用と経済政策についてです。
労働者派遣の規制緩和など労働法制の改悪によって、不安定雇用が全労働者の3人に1人にまで広がり、年収200万円にも満たない働く貧困層が1000万人を超えるなど厳しい雇用情勢のもと、昨年夏のいわゆるリーマンショック以降の世界経済危機を口実に、製造業大企業が派遣切り、非正規切りや下請け切りに走り、また大銀行が中小企業への貸し渋り、貸しはがしを拡大させ、雇用はますます悪化しました。本市においても大量の失業者が生み出され、中小企業の倒産・廃業が相次ぎ、ホームレスも急増しました。ところが市長の経済・雇用対策は、窮地に追い込まれた市民を救済するものには程遠いものでした。
雇用については、これ以上の失業者を生まない対策が求められていましたが、市長は昨年商工会議所を訪問しただけで雇用の維持・拡大に有効な手を打ったとは言い難いものです。本市独自の雇用創出事業を行ったというものの、短期間の臨時職員採用では官製ワーキングプアを拡大するだけです。そもそも福祉や教育などの分野で市職員の増員が求められているにもかかわらず、職員減らしを続けていることは市長自ら雇用不安を生み出していることに他なりません。また、失業者支援についても、公営住宅提供や資金の無利子貸付は厳しい条件のために使いにくいものであり、改善が必要です。
中小企業・業者は、金融・経済危機のもとで下請けいじめや原油・原材料高騰に苦しんでいましたが、本市は不況対策特別資金の拡充を行ったものの、地場中小企業・業者の営業を直接支援する施策や仕事づくりは極めて乏しいものでした。そもそも本市の経済振興策は企業誘致とコンベンションに偏っており、中小企業対策は雀の涙であります。経済効果が高いとして中小・零細建設業者からの要望が強い「住宅リフォーム助成」の創設にも背を向け、わが党が要求した原材料高騰の影響を受ける業種への直接支援も行いませんでした。農漁業については、燃油高騰への直接補てん措置が求められていましたが実施されず、安全・安心な食料の安定供給や国土の保全のためにはいっそうの農林漁業予算の拡充が必要でした。
昨年度の雇用・経済対策は極めて不十分だったといって過言ではありません。
第2は、福祉、医療、介護など市民生活にかかわる問題です。
国民健康保険については、1人当たり保険料は介護分を含め9万6,800円と引き上げ、一般的な加入者である年所得233万円の3人世帯の国保料は介護分を含め46万円と、政令市で最も高く、支払能力をはるかに超えています。「高すぎて払えない」と悲鳴が上がり、引き下げを求める署名は2年間で20万人を超えました。高すぎる国保料の根本原因は国庫負担を減らしてきた国にありますが、本市においては国民健康保険事業特別会計の歳出が歳入を大幅に上回り累積赤字は69億円にのぼっているにもかかわらず、一般会計繰入金を抑制して、財源不足を保険料収入に頼っていることに問題があります。収納率向上のためと称して、滞納世帯から保険証を取り上げる資格証明書交付は約1万7,000世帯、短期保険証も3万1,000世帯にのぼり、病気になっても医者にかかれず、「カネの切れ目が命の切れ目」という事態は深刻であります。また、差押えの強化は低所得の国保世帯をいよいよ追いつめています。市民の命と健康を脅かす冷たい国保行政は断じて認められません。こうした悪循環を断ちきるために、一般会計繰入金を大幅に増額し、ただちに保険料を引き下げる必要があります。後期高齢者医療制度は、75歳以上の高齢者をこれまでの保険から切り離し、年額8万5,100円と全国一高い保険料を年金から問答無用で天引きし、受けられる医療も差別するもので、実施が強行されたものの、「まさに姥捨て山だ」と高齢者の激しい怒りを買い、廃止を求める世論が大きく広がったのであります。介護保険については、要介護度を低く認定して軽介護者の保険利用サービスが抑制されたことや、低すぎる介護報酬による労働者の劣悪な状況が放置されたことが深刻な問題でした。特別養護老人ホームは待機者が6,800人へと急増する非常事態にもかかわらず、新設はわずか3ヵ所67人分でした。高齢者に高い保険料が押し付けられる一方、必要な介護サービスが受けられない、まさに「保険あって介護なし」の深刻な事態を生み出したのであります。
生活保護については、実態を無視した資産活用や扶養義務の強要、不当な就労指導や辞退届の強要など、異常な保護抑制が改められていません。派遣切りなど住居を失った人の保護申請を認めるように改善されたことは一歩前進でしたが、住所不定の人の相談申請を博多区保護三課に限定し、また、急増する相談申請に対して不足するケースワーカーの抜本的増員が図られなかったことは、親身で迅速な保護行政には程遠いのであります。
障害者施策については、障害者自立支援法によって、応益負担と称してサービス利用の負担増が障害者とその家族に押しつけられ、「生きていけない」と悲鳴が上がっています。本市独自の負担軽減策が不十分なままにとどまっていることにより、障害者がサービス利用を抑制せざるを得なくなっています。
住民の福祉の増進こそ自治体の役割だとする地方自治法の主旨に照らしてみると、市民生活にかかわる本市の2008年度決算の中身は余りにお粗末と言わねばなりません。
第3は、教育と子育ての問題についてです。学校校舎・体育館等の改修・改築や耐震化など予算を伴う事業を推進することが強く求められていたのに、教育費は前年度からわずかに増額したもののピーク時の800億円近くから441億円へと減らされ、一般会計のわずか6.6%という状況は、教育現場の困難を広げており重大です。少人数学級を4年生以上に拡充しなかったことは、明白な市長公約違反であり、全学年での少人数学級実現を切望する関係者や保護者を裏切るものです。
保育所待機児が旧定義で738人に上る深刻な事態だったにもかかわらず、認可保育所の新設は1ヵ所90人にとどめ、既存保育園に児童詰め込みを押し付けたことは、子育てと仕事の両立を困難にし、保育現場に困難をもたらし、自治体としての保育の実施責任を放棄するものであり許されません。また、市長公約に反して公立保育所の民営化方針を復活・強行させたこと、民間保育園補助金をまたも減額したことは極めて問題であります。市長公約だった留守家庭子ども会の「無料化」は結局実現せずに保護者から利用料を徴収し続ける一方、100人を超すなど留守家庭子ども会の大規模化を解消するための施設増設と指導員体制強化は不十分でした。市長が全区に設置すると公約した児童館について、「公約ではない」などと開き直った市長の態度にわが党は断固抗議するものであります。
第4は、人工島事業などムダな大型開発の問題について述べます。2008年度の人工島関係決算は、埋め立ての推進やコンテナヤード整備に48億円、道路整備や企業誘致の他、こども病院用地の買い取り44億円を含めて総額101億円にのぼっています。着工以来2,800億円もの事業費が注ぎ込まれましたが、造った土地が売れずに、「税金は使わない」との約束にもかかわらず破たん救済への税金投入は合計533億円に達しているのであります。
吉田市長は見直し公約に反して人工島事業を推進するための「新事業計画」を打ち出しましたが、売れない土地を処分するため、こども病院や青果市場など公共施設を人工島に集中させ、都市高速道路の延伸など不要不急の公共事業を推進し、また1社最大10億円の税金ばらまきの企業立地交付金制度まで創設しています。また、「新事業計画」に示された土地処分計画と資金計画を見ると、分譲単価を大幅に引き下げていますが、これはそもそも港湾用地も住宅用地も産業用地も必要性がなかったことを自ら認めるものに他なりません。それでもなお計画通りに分譲が進む見通しは何らなく、赤字に転じる危険性は極めて高いと言わねばなりません。そうなれば、果てしない借金と税金投入の泥沼に突き進むことになるのであります。その他、土地区画整理事業5事業に109億円、都市高速道路に32億円、五ヶ山ダム建設関係36億円、九州新幹線博多駅整備事業負担金11億円など巨額の事業費を充て、さらに福岡空港の滑走路増設も進めようとしており、こうした大型開発推進は認められません。
第5は、「行財政改革」の問題です。市長は大型開発推進路線を改めることなく、借金のツケを市民に押し付けようとしています。すなわち、市税や国保料、介護保険料など重い負担を市民に課し、収納対策の強化と称して払えない低所得者へのペナルティと厳しい差押えで追いつめ、また受益者負担の適正化などと称して福祉や市民サービスを切り捨てようとしています。市民の命と健康を守る重要な役割を果たしてきた市立病院を「経営改革」と称して地方独立行政法人化しようとしていますが、病院事業会計決算を見ると、医業収支比率が連続して改善され、一般会計からの繰入金は13億7,000万円と6年前から10億円も減少するなど、こども病院と市民病院の経営努力が現われており、地域医療・不採算の専門医療の切り捨て、公的責任放棄につながる独法化は経営面から見ても理由のないことは明らかです。障害者施設や市民体育館・プールなどの「指定管理者制度の拡大・公募化」は、公的責任を放棄し、利用者に負担を押し付け、民間営利企業の儲け口をつくるものです。さらに、貴重な市有地の売却が進められようとしていますが、これでは保育所や特養ホーム、公園や児童館の設置など地域住民の要望に応えられません。人件費の削減として、今でも政令市一少ない職員をさらに825人も減らす計画ですが、これは市職員にさらなる労働強化と過重負担を強いて、今でも増加傾向にある職員の心の病や健康悪化をさらに深刻にし、ひいては市民サービスを低下させるものに他なりません。正規職員を派遣や臨時に置き換えるやり方は「官製ワーキングプア」を生み出すものです。こうした責任放棄と市民犠牲の「行財政改革」はわが党の認めがたいところであります。
第6に、清潔で公正な市政の確立等についてであります。本市行政をめぐっては、開発優先の市政のもとで政官業の構造的癒着がいまだ温存されていると言わねばなりません。博多港国際ターミナルの指定管理者選定や新病院計画にかかわって、行政と大企業、ゼネコンとが日常的に接触するなど不正常な関係にあることが露呈しました。市政を歪め、税金を食い物にする談合や利権あさりは断じて許されません。
こども病院の人工島移転をめぐっては昨年度、不正常な行政運営の問題が浮き彫りになりました。すなわち、こども病院の現地建て替え費用の試算を勝手に水増しし、その証拠となる公文書を破棄したことが発覚し、経過について議会で事実に反する説明をしたのであります。さらに、市長は計20万に達したこども病院の人工島移転の反対署名を無視し、住民投票の実施さえ拒否しました。市長が市民の声を聞かず非民主的な市政運営を行っていることは重大問題であります。「聞きたかけん」が議会請願を行った団体を除外していることや、市民団体が面会を求めても拒否されることに批判の声があがっています。
同和対策関係決算は前年度から減額したものの1億4,444万円が充てられ、部落解放同盟福岡市協議会に2,253万円の補助金が出されています。部落問題は基本的に解決しており、こうした特別扱いは市民の理解を得られないものです。市民の安全を脅かし、福岡の街を戦争に巻き込む港湾・空港の軍事利用は断じて許されません。しかしながら、2008年度は米イージスミサイル駆逐艦グリッドレイ、カーチスウィルバー、プレブルが立て続けに博多港に入港しました。吉田市長が許可した米軍艦の博多港入港はこれまで5回を数えますが、佐世保基地と一体にした博多港の軍港化の企てに屈する、まさに米軍いいなりの卑屈で異常な姿勢であります。市長は米軍板付基地の即時返還を強く要求すべきです。
以上で2008年度決算に対するわが党の反対討論を終わります。