トップ > 議会報告 > 2007年度予算議会> 日本共産党の反対討論

議会報告

2007年度予算議会

日本共産党の反対討論

2007年3月12日 倉元たつお議員

私は、日本共産党市議団を代表して、本議会に提案されている諸議案のうち、議案第28号〜31号及び35号、37号〜43号、45号、46号、49号、53号〜56号、60号、61号、67号、69号、73号、84号、 90号、103号〜106号に反対し、議案第28号一般会計予算案については組み替えを求める動議に賛成し、討論を行います。

わが党の意見については、代表質疑、分科会審査ならびに総会における質疑で述べておりますので、ここではその基本点といつくかの問題について述べます。


周知のように、社会的貧困と格差の新たな広がりが深刻な問題となるなか、自民、公明の安倍内閣による2007年度政府予算案は、定率減税廃止による1兆7000億円の庶民増税、生活保護の母子加算の段階的廃止、雇用対策費の半減など国民の暮らしを圧迫するものです。

その一方で、大企業・大資産家には減税の大盤振る舞いを行い、道路特定財源の温存、スーパー中枢港湾など、新たなむだ使いを拡大し、また「米軍再編」経費を本格計上し「海外で戦争をする国」へとつき進み、さらに地方交付税を7000億円も削減するものです。

これは、格差と貧困をいっそう拡大し、国民の所得と消費を抑制して、日本経済の持続的な発展の道を閉ざすものと言わざるを得ません。

格差拡大に歯止めをかけ、国民の暮らしを守るためには、定率減税廃止など庶民増税の中止、最低賃金の抜本的な引き上げなど雇用対策の促進、生活保護の母子加算や児童扶養手当の削減計画の中止、生活困窮者からの国民健康保険証の取り上げ中止と減免制度の拡充、「障害者自立支援法」の応益負担の撤回をはじめ、医療、年金、介護、教育、中小企業対策、農業を充実するための予算を大幅に増やすべきです。

さらに、大企業向けの優遇税制にメスを入れ、史上空前の利益をあげている大企業に応分の負担を求めること、大型公共事業の浪費にメスを入れ、公共事業の構造を転換することなど歳入歳出の両面で税財政のゆがみを正すことこそ求められているのであります。


今まさに、自治体が「住民の福祉の増進を図る」という役割を果たすことがこれまでに増して重要となっております。

そうしたなか行われた先の市長選挙では、大型開発最優先で借金を大きく増やし、「構造改革」路線に追随し、そのツケを市民負担増と福祉切り捨てに押し付けてきた前市政に市民の厳しい審判が下されました。

吉田市長は、「大型開発をやめ、福祉・教育への重点配分を行う」「従来型の開発行政から、健全財政を取り戻す」など様々な公約をされました。

新しい市政に求められるのは、人工島など税金ムダづかいの開発行政を根本から改めて、市民犠牲と公的責任放棄を柱とする従来のやり方ではなく、福祉や教育など市民生活の充実に責任を持つ「自治体らしい自治体」づくりを進めることであります。


しかるに、吉田市長の2007年度予算案は、市民とわが党が繰り返し要求してきた乳幼児医療費の就学前完全無料化、留守家庭子ども会の無料化、少人数学級の拡充の3施策と、障害者負担軽減が盛り込まれましたが、少人数学級拡充は一学年にとどまり、市長公約である児童館整備や高齢者負担軽減策は具体化していません。

また、住民税の定率減税を廃止し、高すぎる国保料を引き下げないなど、市民に重い負担を強いるものです。

一方、「大規模開発を厳しく見直す」との公約に反して、人工島に前年度を上回る226億円もの予算を付け、土地区画整理事業など不要不急の公共事業を推進しています。

市債残高は依然として2兆6189億円、市民一人あたり189万円、隠れ借金を含む実質公債費比率は24.6%と深刻です。

以上のように、吉田市長の2007年度予算案は、ムダな大型開発を推進し、福祉や教育など暮らしの分野を抑制するなど、市長公約と市民の願いに反するものであり、わが党は賛同できません。


わが党は吉田市長の良いものには賛成し、悪いものには反対するという立場から、一般会計予算案の組み替えを求める動議を提案しました。

これは市長公約の範囲で、人工島など大型公共事業を凍結し、財政の立て直しを図りながら、公共料金の福祉減免を実現する、最低限の予算組み替えであります。

わが党は、組み替え動議に賛成するものです。


次に、わが党が反対する議案のうち、いくつかの問題について、その理由を明らかにしておきます。


第1は、人工島事業についてです。

市長は、選挙で「市がデベロッパーの役割を果たす時代は終わった」と述べ、「人工島の大胆な見直し」を公約したものの、新年度226億円もの推進予算をつけました。

その1つは15メートル水深の岸壁と背後の埋立工事などの基盤整備ですが、博多港の貨物総量は横ばいで推移している中、呼び込み式の港づくりはまさに無謀であり、破たんは必至であります。

2つは博多港開発エリアの住宅市街地総合整備事業を導入した補助金やビジネス創造センター設置ですが、これらは博多港開発の破たんを救済するための税金投入に他なりません。

すでに400億円が投入され、今後の計画を含めると560億円に膨れあがるのであります。

また、市長はこども病院・市民病院の統合移転計画を再検討すると言いながら、新年度中の予算補正に含みを持たせました。

市民はきっぱり白紙撤回することを期待しているのであり、これを裏切ることは許されません。

一方で見直しを検討しながら、一方で事業を推進するというやり方をわが党は容認できません。

市長は、選挙で市民の7割が人工島など大型開発を批判して下した審判にしたがって、建設工事を中止し、住民投票など市民参加で計画見直しを行うべきであります。


第2は、大型開発と財政再建についてです。

市長は選挙で、「無駄な公共事業・大型開発を市民合意のもとで中止」「須崎埠頭再開発、新空港などの大型開発をやめ、福祉・教育への重点配分を行う」と公約しました。

ところが市長は、人工島の他にも土地区画整理事業など不要不急の公共事業を推進するために巨額の予算を組んでいます。こうした予算編成は問題であります。

再開発事業も一体的に計画されている渡辺通駅北土地区画整理事業は、九州電力と都市未来ふくおかの土地の資産価値を引き上げ、福岡地所・キャナルシティへの道路を整備するものです。

こうした特定の企業に便宜を図る事業に「都市の活力を高めるため」などとして国と市であわせて50億円もの補助金を投入しようとしていますが、破たん救済に数百億円もの税金をつぎ込んだ下川端再開発事業の二の舞になりかねず、わが党の認めがたいところです。

また、新・福岡都心構想は、天神など都心の幹線道路整備や再開発に行政が関与する仕組みをつくるもので、こうした事業の具体化を進めることは許されません。

市長は新福岡空港建設に反対すると公約しましたが、その立場を明確にせず、新空港先にありきの調査も続ける態度は問題です。

ムダな大型開発を進めれば本市財政の危機的状況を打開することはできません。

市の借金である市債残高は減少していますが、依然深刻であり、大型開発にかかる起債をやめるべきです。

市長は「財政リニューアルプラン」を策定するとしていますが、「官から民へ」として業務の民間委託化や職員削減、公共施設の経費削減を進めるやり方は、市民サービスの後退や市職員へのしわ寄せを伴うものであり許せません。

とりわけ税務職場における派遣社員の導入は、納税者のプライバシー漏洩やトラブル多発を招く危険性があり、認められません。

財政再建は緊急の課題ですが、本来行政が責任を持って行うべきサービスに次々受益者負担と称した市民負担増を導入することや、経費削減として福祉や教育の施策を切り捨てることはすべきではありません。

ムダな開発をきっぱり中止すれば、財政を立て直しながら、福祉や教育の充実を図ることはできます。


第3は、市民の暮らしと福祉に関わる問題についてです。

国の税制改定に伴う住民税の増税が国民健康保険料や介護保険料など雪だるま式の負担増となってとりわけ高齢者に重くのしかかっていますが、こうした悪政から暮らしを守る施策は新年度も不十分と言わなければなりません。

市長は、高齢者や障害者に対して公共料金の軽減を行うことを公約していましたが、具体化がされていません。

市長が提案しなければ議会として補うことが求められます。

そこでわが党は、要介護4、5の重度の高齢者及び身体障害者手帳1、 2級所有者等を対象に、水道料金と下水道使用料の基本料等の一定額を免除し、また、オムツ給付を受ける高齢者と障害者を対象に、家庭用可燃ごみ袋を1世帯当たり年間60枚支給する「福祉減免」を創設する予算組み替えを行うよう要求したのであります。


市は新年度から、国保料と介護保険料の激変緩和措置を段階的に縮小しようとしていますが、高齢者に負担増の追い打ちをかけるものです。

本市の国保行政は、保険料が高すぎて払えない低所得者から保険証を取り上げ、資格証明書発行は全国最悪の1万4500世帯にのぼり、医療を受ける権利を奪う冷酷非情なものとなっています。

わが党は、市民が安心して医療を受けることができるよう保険証の原則交付とあわせ、市費繰り入れによる保険料引き下げを要求しましたが、市長は拒否しました。

これでは市民の命をおびやかす事態を広げることは避けられないと言わざるを得ないのであります。

また、5800人もの入所待ちのある特別養護老人ホームの新設はわずか4ヵ所、3000人に及ぶ介護ベッド等の取り上げを救済する助成措置もなく、介護が必要なお年寄りを抱える家族の切実な願いにこたえるものにはなっていません。

敬老無料パスの復活は、高齢者の社会参加を促進するために重要であり、要求しておきます。

生活保護行政について、本市が行っている申請権侵害と保護切り捨ては憲法25条の生存権を踏みにじるものであり、許されません。

障害者自立支援法による応益負担を軽減する本市独自策は、負担が増えたすべての障害者を救済するものとなっておらず、いっそうの拡充が必要です。

市営住宅は、入居希望が増えているにもかかわらず新設を1戸もしないのは公的責任を放棄するものであります。

貧困と格差を解決するためには雇用環境の改善が極めて重要であります。

わが党はサービス残業や偽装請負など違法・脱法雇用の相談窓口の設置や主要企業に対する正規雇用拡大の要請などを求めましたが、市の雇用対策は無策です。

また中小企業対策は貧弱であり、住宅リフォーム助成制度の創設にも後ろ向きです。

これでは実効ある地域経済振興策には程遠いと言わざるを得ません。


第4は、教育および子ども行政についてです。

わが党は、改悪された教育基本法の具体化と押し付けに反対し、憲法に基づいた教育を推進すべきとの立場から、全国一斉学力テストへの参加を拒否し、愛国心教育や習熟度別授業の押し付け、固定化をやめるよう求めましたが、教育委員会は改めようとしておりません。

少人数学級の実現について市長は小学校全学年を公約していたにもかかわらず、新年度3年生までにとどまったことは不十分であります。

老朽校舎の大規模改修は一定進められるものの、校舎等の耐震化完了の目途はたっていません。

その他、過大規模校の分離・新設や普通教室への冷暖房設置を頑なに拒否する教育委員会の態度は、子どもや保護者、学校関係者の願いに背くものです。

こうした教育条件の整備を進めるためには教育予算を抜本的に増やすことが不可欠ですが、市長が教育費を一般会計の6.3%という異常な低さにとどめていることは問題であります。


公立保育所について、市長は公約である民営化中止をいまだ明言しておらず、保護者は不安を募らせております。

民営化を推進してきた会派は「民営化中止は財政健全化に反する」などと批判しておりますが、財政危機をつくり出した自らの責任を棚に上げ、もともと他都市に比べ極端に少ない本市の公立保育所を経費削減を理由に実質的になくし、子どもと子育て世代にそのしわよせをすることは断じて認められません。

わが党は、公立保育所が民間も含めた本市の保育水準を維持し向上させている役割を市長が深く認識されて、今後の民営化の撤回を一刻も早く確定されるよう要望します。

児童館設置について、わが党の質問に対し、市長が自らの公約であることを否定したことは極めて重大な問題であります。

「プロフェッショナルな人材を配置した児童館などの『親子のための交流施設』を全区に整備します」という公約は、吉田市長を全面に押し出したビラに書かれたものであり、民主党のものだから関知しないという市長の態度は無責任の極みであります。

専門職員のいる児童館の校区ごとの設置は32万筆もの署名が寄せられるほど市民の大きな世論となっています。

「心耳を澄ます」というなら、児童館を拒否する態度を改め、少なくとも公約通り、まず各区に設置することに早急に着手するよう強く要求します。


第5は、公平公正な行政運営と平和行政などについてです。

わが党は公共工事を食い物にする政官業の癒着にメスを入れ、清潔な市政を確立することを求めましたが、是正策は不十分であり、公共工事における一般競争入札の拡大など抜本的な談合防止・入札改革や、市の退職幹部の天下りの禁止、内部告発制度の改善を具体化すべきであります。

同和事業の温存のもとで、部落解放同盟の無法と圧力が自治体をむしばんでいる実態が全国的に浮き彫りになっている中、本市がいまだに同和予算を計上し同和行政・同和教育行政を継続しようとしていることは問題です。

人権・同和行政基本方針は廃止すべきであります。

アメリカの戦争を支援し国民を戦争に強制動員するための国民保護法に従い戦争準備体制づくりを進める本市国民保護計画の撤回を市長が拒否したこと、また、市長が米軍艦船の博多港入港を認める姿勢を示したことは重大であります。

日本共産党は、戦争放棄を誓った憲法の平和原則を壊すあらゆるたくらみに断固反対するものであります。


次に、わが党が賛成する議案のうちいくつかの問題について意見を述べます。

まず、留守家庭子ども会条例改正案についてです。

今回市長の提案は、昨年9月に導入された利用料のうち、基本料金を減免し元に戻すものです。

これは保護者の願いに応えたものとして、わが党は賛成し、成立を願うものです。

ところが、これに自民党とみらい福岡が反対し、否決しようとしていることは重大であります。

無料化に反対する勢力の理由の一つは「財政健全化に逆行する」というものですが、本市財政をここまで危機に陥れたのは一体誰なのか問われなければなりません。

人工島をはじめ大型開発に莫大な税金を投入し、市民一人あたり200万円という途方もない借金を築き上げてきたのは、歴代自民党市政ではありませんか。

その反省は微塵もなく、子育て世代から料金を奪って借金財政を穴埋めしようなど、断じて許されません。

また「高所得者へのバラマキ行政だ」との批判ですが、留守家庭子ども会を利用する子育て世代の多くは不安定雇用にさらされ共働きでなければ家計が維持できないのが実態であり、全く的はずれであります。

高所得者へのバラマキというなら、100万円もの税金を使った議員の海外視察こそバラマキそのものではありませんか。

自民、みらいの議員にバラマキと批判する資格はありません。

「留守家庭子ども会を無料にすれば保育所の保育料も無料にするのか」との議論は、児童福祉法を踏まえない全くナンセンスなものです。

保育所は、児童福祉法56条によって保護者から家計に与える影響を考慮して保育料を徴収できると定められ、保護者の所得に応じて数段階に細分化された基準額を国が定めており、本市もそれに則った保育料を決定し徴収しています。

一方、学童保育は、児童福祉法21条で放課後児童健全育成事業として規定されていますが、その費用については何ら規定されておらず、自治体の判断で有料か無料かが決められるものです。

あたかも市民が保育所まで無料にせよと言っているかのように論じるのは言語道断であります。

「受益者負担が必要だ」との意見についてですが、保護者はおやつ代の他、教材費や水光熱費、指導員の残業代まで会費として実費負担をしており、市による利用料徴収は二重の負担に他なりません。

そもそも本市の留守家庭子ども会は児童の健全育成と安全確保を目的とした社会教育事業として始められたものであり、同じ社会教育である図書館や公民館と同様、受益者負担にはなじまないものとして長年、自民党やかつての福政会を含め超党派で発展、充実を支えてきた歴史があります。

保護者に負担を押し付けて児童をしめ出すやり方は、そうした先人達の努力を踏みにじるものではないでしょうか。

自民、みらいは、自ら推薦した前山崎市長が利用料導入を一つの争点として敗北したことを真摯に受け止めるべきであります。


2点目に、乳幼児医療費助成条例改正案についてです。

今回提案は、就学前までの子どもの医療費を完全無料にするものであり、わが党は大いに歓迎します。

乳幼児医療費助成制度は、わが党が1971年に初めて提案し、2年後に導入され、それ以来、市民運動と協力していっそうの充実を求めてきたものであります。

市長は小学生までの対象拡大を検討すると述べられましたが、国に制度の創設を求めつつ、本市として小学生、さらには中学生まで広げられるよう要望します。


3点目に、建築基準法施行条例案と建築紛争の予防と調整に関する条例改正案についてです。

本市では近年、中高層マンション建設が相次ぎ、周辺住民と建築主とのトラブルが増えております。

わが党は、住民運動と力をあわせて、平穏な住環境を破壊するような無法なマンション建築を規制するよう国や市に繰り返し要求し、一定の改善が図られてきました。

今回の条例によって、住民の住環境を守る対策がいっそう前進することを期待するものです。


以上で、わが党の討論を終わります。


>>>「2007年度予算議会」トップへ戻る

>>>「議会報告」一覧ページへ戻る

政策と活動
議員の紹介
トピックス
議会報告
市議会ニュース
リンク
お問い合せ

↑上へ