2007年6月議会
2007年6月議会 意見書について
福岡市2007年6月議会では、6つの意見書案が提案され、意見書5つが全会一致で可決されました。
- 国に年金記録問題の解決を求める意見書(全会一致)
- 自衛隊による国民監視活動の中止を求める意見書案(否決)
- 光化学スモッグ及び黄砂に対する取組を求める意見書(全会一致)
- 教育予算の確保と充実を求める意見書(全会一致)
- 日豪経済連携協定(EPA)交渉に関する意見書(全会一致)
- 異常気象による災害対策及び地球温暖化対策の強化・拡充を求める意見書(全会一致)
国に年金記録問題の解決を求める意見書
5,000万件を超える年金記録が宙に浮き、国民の多くが今、最大の関心と不安を寄せています。
現在の事態は、まじめに年金保険料を納めてきた国民の責任ではありません。そこで、政府と社会保険庁が一体となって、その責任において被害者を一人も残さず一刻も早く解決する必要があります。
よって、福岡市議会は、国会及び政府が、国民がこれまで納付した保険料に見合った年金を確実に給付できるようにするため、次の事項を実施されるよう強く要請します。
1 すべての受給者及び加入者に納付履歴を送付して緊急チェックをしてもらうとともに、本人と結び付いていない納付履歴についても、工夫して情報を提供して注意を呼び掛けることによって、速やかに納付記録を是正・統合すること。
2 未納扱いになっている方々の納付記録を復元するため、全国の社会保険事務所や市町村に散在している元台帳とコンピューターデータとを照合して、コンピューターにすべての納付記録が正確に入力・管理されるように調査・訂正すること。
3 完全に納付記録が消失してしまった方々については、受給者及び加入者側の証言を最大限に尊重して補償すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
平成 年 月 日
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、総務大臣、厚生労働大臣 あて
議長名
(全会一致)
自衛隊による国民監視活動の中止を求める意見書案
自衛隊の情報保全隊が市民運動を系統的に監視し記録していた実態が明らかになったことは、市民に衝撃を与えています。
明らかになったのは、陸上自衛隊・東北方面情報保全隊が作成した文書と情報保全隊本部が作成した文書の二種類の内部文書です。いずれもイラク派兵反対などの市民運動や政党活動に関して、「関係団体」「内容」「勢力等」や個人名まで記載し、映画監督や画家、写真家、ジャーナリスト、地方議会の活動も監視対象となっています。福岡市の市民団体が天神の街頭で行った自衛隊のイラク派兵に反対する署名活動についても克明に記載されています。また消費税増税や年金改悪に反対する運動まで「反自衛隊」の活動として監視・記録されています。
政府も自衛隊による国民監視活動を否定しておらず、事実上認めています。また、同様のことが海上・航空自衛隊でも行われていると指摘されています。
自衛隊が国民の行動を系統的に監視・記録することは、集会、結社および言論、出版などの表現の自由を保障した憲法第21条、個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利を保障した憲法第13条、信教の自由を保障した憲法第20条に違反することは明白です。写真の隠し撮りなどは国民のプライバシーを侵害する明白な犯罪行為です。自衛隊の機密情報の保護と漏洩の防止という情報保全隊の任務からも逸脱するものであり、自衛隊法にも根拠がないものです。戦前の国民弾圧・暗黒政治の復活を懸念する声が上がっています。憲法を蹂躙し、違憲・違法の活動はただちにやめるべきです。
よって、福岡市議会は、政府が、自衛隊情報保全隊の活動の全容をあきらかにするとともに、国民監視活動をただちに中止するよう強く要請します。
(否決)
自衛隊による国民監視活動の中止を求める意見書案に対する賛成討論
2007年6月28日 ひえじま俊和議員
私は、日本共産党市議団を代表して、ただいま議題となっております、意見書案第9号、自衛隊による国民監視活動の中止を求める意見書案に対する賛成討論を行います。
さる6月6日、わが党の志位和夫委員長は記者会見を行い、内部文書をもとに、自衛隊が違憲・違法な国民監視活動を行っていたことを明らかにしました。
自衛隊の情報保全隊の内部文書によると、6週間の間に全国41都道府県、289団体・個人が自衛隊から監視され、その活動や発言の内容が記録されており、自衛隊が系統的、日常的に国民の行動を監視・記録していたのであります。
第1に、自衛隊の行った監視活動は、それ自体が日本国憲法で保障された国民の自由を脅かすものであります。
自衛隊という巨大な軍事組織が、身分をかくして集会に潜り込むなどまさにスパイのようにして情報収集し、個人の氏名や住所を特定して記録し、顔写真まで撮っていました。警察であっても個別具体的な犯罪行為が明確な場合をのぞいて、デモや集会などの写真を撮ることは憲法13条の保障する肖像権を侵害するものだという、最高裁大法廷の判決も確定しています。自衛隊による写真撮影がプライバシーを侵害する違法だということは明瞭であります。こうした監視活動そのものが、国民が自由に意見をのべたり、行動したりすることへの大きな圧力となり、委縮させるのは明らかです。
憲法21条には、集会、結社及び言論、出版などの表現の自由が明記されています。憲法19条には思想・信条の自由、内心の自由が明記されています。憲法13条では、個人の尊重、幸福追求権、プライバシーに対する権利などが保障されています。今回の自衛隊の国民監視活動は、憲法が保障している基本的人権を蹂躙するものです。
第2に、自衛隊が、「防衛機密」とまったく無関係の国民の活動を監視し、しかも政府と自衛隊にとって都合が悪いと仕分けした国民の活動のすべてを対象にしていることです。
監視活動の対象は、自衛隊のイラク派兵問題にとどまらず、年金問題、医療費の問題、消費税の問題、国民春闘、小林多喜二展など、およそ自衛隊と何の関係もないものまで含まれています。さらに、政党、文化人、知識人、キリスト教や仏教など宗教者、記者やジャーナリスト、国会議員、地方議員、地方議会、映画監督の山田洋次氏まで監視対象となっています。自衛隊は、自分に都合が悪いと仕分けした国民の活動を「反自衛隊活動」として監視しているのであります。久間防衛相は「国民誰でも監視対象」と開き直っていますが、これは情報保全隊の任務にも反する、明確な自衛隊法からの逸脱であります。
自衛隊の情報保全隊とは、2003年3月に、それまでの「調査隊」を再編・強化してつくられた部隊です。「陸上自衛隊情報保全隊に関する訓令」の第3条は「情報保全隊は、…部隊及び機関並びに別に定めるところにより支援する施設等機関等の情報保全業務のために必要な資料及び情報の収集整理及び配布を行うことを任務とする」とあります。
つまり、情報保全隊の任務は、自衛隊がもっている情報が流出したり漏えいしたりすることを防止することだとされているのであります。また2002年4月の衆院安全保障委員会で、「自衛隊員だけでなく、民間人も情報保全隊による情報収集の対象になるか」との質問に対して、当時の中谷防衛庁長官は「あらかじめ防衛秘密を取り扱う者として指定した関係者のみに限定する」と答弁しています。すなわち、自衛隊法のどこにも、自衛隊が一般の国民に対して、捜査したり、監視したり、調査したりする権限は与えられていません。
こうした違憲・違法の自衛隊による国民監視活動に対し、多方面から抗議と中止を求める声があがり、マスメディアも大きく扱っています。
朝日新聞は社説で「単なる情報収集とはいえない。自衛隊のイラク派遣を批判する人を頭から危険な存在とみなし、活動を監視しているかのようである」と書きました。西日本新聞も「太平洋戦争を経験した世代は、戦争遂行の邪魔になる言論や活動を弾圧した『憲兵』や『特高警察』という言葉を思い浮かべたかもしれない」との社説をかかげました。また、監視対象とされた団体は抗議声明や監視の中止を求めています。政府は、自衛隊情報保全隊の活動の全容を明らかにするとともに、国民監視活動を直ちに中止すべきであります。
しかるに、自民党、公明党、みらい福岡の3会派は、本意見書に賛同できないとの態度をとりましたが、その見識が厳しく問われるものです。
自民党は、自衛隊の国民監視が「プライバシーの侵害に当たらない」などと述べましたが、先ほど述べたように、これが憲法で定められたプライバシー権を含む基本的人権の蹂躙でなくて一体何だというのでしょうか。人権感覚の欠如も甚だしいと言わなければなりません。
公明党は、自衛隊の国民監視が「自衛隊法に則ったもので、正当な任務」だとの認識を示したものの、自衛隊法の一体どの条項に、その法的根拠があるのか、公明党は何一つ示すことができませんでした。それもそのはずで、何の法的根拠もないからであります。
自衛隊について、政府は「文民統制」「シビリアンコントロール」を大原則にしてきました。「文民統制」とは、自衛隊を国民の監視下におくという原則です。ところが、逆に自衛隊が国民を監視下においているという事態は、「文民統制」の原則を根本から崩壊させるものです。アメリカの反核平和活動家のジョセフ・ガーソン氏は「軍が国民を調査するというのは、軍国主義国家の最も重要な特質です」と述べています。まさに「軍の暴走」が始まっていると言わなければなりません。戦前の歴史を見れば、軍隊の治安機関であった憲兵組織が、やがて国民全体の監視機関となり、弾圧機関となりました。弾圧の対象となったのは社会主義者や共産主義者だけではなく、自由主義者、一般の宗教者、芸術家にも広げられたのであります。こうした暗黒政治の復活は絶対にあってはなりません。そのことは、憲兵政治によって激しい思想弾圧を受けた歴史を持つ政党や宗教団体にとってあいまいにできないのであります。
「軍の暴走」というとりかえしのつかない事態を招く前に、全容を解明し、自衛隊の国民監視活動を完全に中止させることは、まさに国民的課題であると改めて強調するものであります。
日本の過去の侵略戦争を正義の戦争だったと主張する勢力が、一方で海外で戦争できる国づくりを進め、他方で国民を監視し弾圧の準備を進める。日本の進路を誤らせるこうした危険な策動に対し、わが党は全力でたたかうことを表明して、賛成討論を終わります。