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議会報告

2007年12月議会

日本共産党の反対討論

2007年12月19日 倉元達朗議員

私は、日本共産党市議団を代表して、2006年度一般会計及び特別会計並びに企業会計決算諸議案のうち、議案第154号ないし157号、159号、161号ないし169号、172号、173号、175号、176号に反対して討論を行います。


周知のように、2006年度は、「構造改革」と称した「新自由主義」の経済路線が続けられるもとで、雇用と所得の破壊、中小零細企業の倒産が進み、貧困と社会的格差の新たな広がりが重大な社会問題となっていました。しかるに2006年度政府予算は、定率減税の半減による住民税増税や医療費値上げなど国民負担増をすすめる一方、大型開発のムダづかいや軍事費を温存するとともに、史上空前の利益をあげる大企業などへの減税を継続する、逆立ちした内容でした。また「三位一体の改革」の名による国庫補助金の不十分な税源移譲と地方交付税の削減は、地方財政に深刻な影響を与えました。

こうした中で、2006年度の市政運営に求められていたのは、国の悪政から市民を守るという自治体本来の使命を果たすことであり、そのための予算を組むことでした。ところが、2006年度本市予算は、人工島などムダな大型開発に税金をつぎこみ、その一方で福祉や教育など生活関連を抑制する、まさに市民犠牲型でした。こうした税金の使い方に市民の不満と怒りが高まり、市長交代の事態となりましたが、就任した吉田市長が根本的な補正をすることもなかったため、2006年度決算は前市長の当初予算の悪しき特徴を如実に示すものとなっております。

歳入についてみると、個人市民税が63億円増えていますが、これは国の税制改悪による住民税増税です。また留守家庭子ども会の利用料導入による負担増は半年で約1億1000万円にのぼり、国民健康保険料や介護保険料も値上げするなど、市民に重い負担が押しつけられました。

地方交付税が前年度より41億円の減収となり、国の三位一体の改革の本市への影響は3ヵ年であわせて139億円の減少となっていますが、こうした財源不足を市民に転嫁するやり方は許されません。

歳出についてみると、とりわけ高齢者に重い負担を課している国民健康保険への一般会計繰入金を前年度から減らし、国保料を4.2%引き上げたことなど、医療・介護・福祉の施策は不十分でした。保育所の新設・認可ともゼロ、公立保育所2箇所の民営化など子育ての願いに背を向けました。市営住宅の新設は1戸もありません。中小企業対策費はまたも減額しました。市民の暮らしと営業を支えるべき自治体の仕事を放棄したと言わざるを得ません。教育費は6年連続減額、一般会計の6.04%と最低水準にとどまりました。また、青年を中心とした非正規雇用を解決するための対策は極めて不十分でした。

一方、大型開発について見ると、人工島建設に84億円もの市費を投入し、土地区画整理事業5事業に60億円など、不要不急の大型開発に莫大な事業費を費やしたのであります。

このように、暮らしや教育に関わる分野で市民の願いに背を向ける一方、大型開発には湯水のように税金・公金をつぎ込んだというのが、歳出決算の最大の特徴となっています。

借金総額は3会計合計で2兆6,332億円、隠れ借金711億円を含めると市民一人あたり199万円にものぼります。これは政令市の中でも大阪市についで2番目の大借金ということになります。自治体の収入に対する実質的な借金の比率を示す実質公債費比率は2006年度23.0%となり、単独事業に係る地方債が制限される25%に近づいています。起債制限比率、公債費比率とも右肩上がりで悪化しており、借金財政が改善されているとは到底言えません。

2006年度決算は、以上のように、市民犠牲、福祉・教育の削減・抑制、大型開発のムダづかいが基調となっており、わが党はこのような決算諸議案を認定することはできないのであります。


次に、わが党が反対する諸議案のうち、主な問題について、その理由を明らかにしておきます。


第1は、人工島事業などむだな大型開発についてです。

人工島事業は、2006年度84億円にのぼり、着工以来の埋立等事業費は総額2,579億円に達しています。港湾整備事業特別会計は市工区の臨海土地整備および機能施設整備にかかる起債が毎年積み増しされ、膨大な借金を抱えておりますが、土地売却も使用料収入も見込みを大幅に下回り借金返済のあてのない泥沼に陥っています。また、博多港開発の破たん救済のために道路・公園整備に学校建設も含めて累計で380億円もの税金が投入され、さらに市立こども病院と市民病院の統合移転まで計画されたのであります。博多港開発が売り出した土地の7割以上を市と市住宅供給公社が税金・公金で買い取っている実態は、まさに博多港開発が税金丸抱えであり、大赤字の破たん会社だということを示しています。そうした破たん三セクの借金返済のために巨額の税金をつぎ込み、融資銀行の責任を免罪する本市の姿勢は、まさに異常であります。吉田市長は今回、人工島事業を検証・検討した上で、人工島推進本部を立ち上げ、人もカネも人工島につぎ込む姿勢を鮮明にされましたが、まさに前市長と瓜二つ、否、市民の期待を裏切った点でそれ以上に問題があると言わなければなりません。

また、60億円を投じた土地区画整理事業は、デベロッパーの仕事づくりと住民犠牲・追い出しを招いています。1兆円とも言われる新福岡空港建設に道を開く調査費に6,000万円、総事業費も分からない九大学研都市構想の推進と産学連携センター整備に7,000万円などが費やされました。さらに、市民不在で強行されたオリンピック招致の費用は、2006年度までに人件費含め4億6,000万円に上りましたが、これは全くの浪費となったのであります。こうした無駄な大型開発への支出が顕著であり、わが党は断じて容認できないものであります。


第2は、深刻な借金財政についてです。

開発優先の市政が2代20年間にわたって続けられてきたもとで、2006年度決算における借金総額は3会計合計で2兆6,332億円に達しており、本市の借金財政は深刻な事態に直面しています。

その根本原因は、1994年に着工した人工島事業をはじめ大型開発を推進したことによって、10年以上にわたって市債を大量に発行してきたことにあります。その借金返済である公債費が近年とくに激増し、財政の弾力性が失われ、市民生活関連に予算配分できない、あるいは財源不足を市民負担増に頼る、市民犠牲型の構図が作り出されたのであります。

こうした本市財政を引き継いだ吉田市長は先日、財政リニューアルプラン概要を発表し、借金を減らす目標を打ち上げましたが、その内容は、前市政の財政運営をおおもとから変えるものとはなっておらず、極めて問題であります。すなわち、借金財政の原因である人工島事業など大型開発には手をつけず、住民の福祉と生活を守る自治体の責任を放棄し、公共料金値上げや受益者負担と称した市民負担増、福祉や教育の切り捨てによる歳出カット、民営化や民間活力の導入など公的責任放棄、今でも少ない職員の大幅削減など、市民犠牲型の財政再建をくわだてているのであります。市民本位の財政再建こそ吉田市長に求められていることを指摘しておきます。


第3は、福祉、医療、介護など市民生活にかかわる問題です。

国民健康保険については、特別会計への一般会計繰入金を前年度から減らし、国保料を4.2%引き上げ、1人当たり保険料は介護分を含め9万5,591円となりました。一般的な加入者である所得200万円の3人世帯の国保料は47万円と、政令市で一番高くなっており、多くの市民から「高すぎて払えない」「引き下げしてほしい」と悲鳴が上がっています。国は、保険料収納率を上げるために、ペナルティとして国庫補助金カットを行い、本市においては滞納者から保険証を取り上げる資格証明書交付が推進されていますが、資格証は1万4,000世帯にのぼり、病気でも医者にかかれない事態が広がり、収納率も改善されないのが現実であります。本市の国保行政の実態がテレビで繰り返し全国放映されたように、「カネの切れ目が命の切れ目」という事態は深刻であります。市民の命と健康を脅かす冷たい国保行政は断じて認められず、ただちに保険料を引き下げるべきです。

介護保険については、2006年度、高齢者の介護保険料の基準月額を4,494円にし、25%もの引き上げを行いました。税制改定に伴い住民税非課税から課税となって介護保険料が大幅に増えた高齢者が約3万人にもなったのに、負担軽減措置が一部にとどめられたのは問題でした。特別養護老人ホームの待機者が5,600人に上る非常事態にもかかわらず新設はわずか4箇所264人分にとどまりました。国が強行した軽介護度の高齢者からの介護ベッドとりあげなどサービス切り捨てにも無策でした。余りにもお年寄りに冷たい中身であります。

生活保護については、依然として必要な人がだれでも申請できるような改善は図られず、保護費を抑制して、実態を無視した資産活用や扶養義務の強要、不当な就労指導や辞退届の強要を続けるなど、改善しようとしない姿勢は問題です。また、ホームレス対策も全く不十分なものでした。区役所保護課主査が2006年までの5年間に生活保護費3,100万円を詐取していた事件が明らかになりました。憲法25条の生存権を踏みにじる本市保護行政の抜本的改善こそ強く求められています。

障害者施策については、障害者自立支援法が施行され、応益負担と称してサービス利用の負担増が障害者とその家族に押しつけられ、「生きていけない」と悲鳴が上がり、国の負担軽減措置とあわせて市独自の軽減策が強く求められていましたが、不十分なままにとどまり、障害者がサービス利用を抑制する事態が現実のものとなっているのであります。

市営住宅については、格差や貧困が広がる中で、需要は高く、公募倍率はこの時点で20倍にもなっていましたが、2006年度は1つも新設しませんでした。

住民の福祉の増進こそ自治体の役割だとする地方自治法の主旨に照らしてみると、市民生活にかかわる本市の2006年度決算の中身は余りにお粗末と言わねばなりません。


第4に、教育と子育ての問題について述べます。

学校校舎・体育館等の改修・改築、耐震化や、少人数学級の対応など予算を伴う事業を推進することが強く求められていたのに、教育費は6年連続で減額し、金額で見てもピーク時のほぼ半分にまで減らされ、一般会計の6.04%と最低水準にとどまったことは、教育現場の困難を広げており重大です。児童数が100人程度の人工島に小学校を新設した一方で、1,000人を超して大規模化が大問題となっていた姪浜・内浜小学校区では分離新設をせず、姪北小の校舎も中学校からの改修にとどめましたが、教育に格差を持ち込むもので許されません。

保育所は、待機児が472人に上っていたのに新設・認可ともゼロで、30人の定数増のみにとどめました。保育内容の後退を心配する父母から反対の声が上がっていた公立保育所民営化も2箇所強行され、また民間保育園補助金も減額されました。留守家庭子ども会については、5万6,000筆の反対署名を無視して、2006年9月から月3,000円の利用料を導入し、保護者の負担を倍増させたのは、まさに暴挙でした。また市は、のべ30万筆を超える請願署名が寄せられている児童館の建設に背を向けてきました。子育て支援の後退は顕著であり、認められません。


第5に、雇用と景気対策についてです。

自民・公明政権のもとで失業率が悪化し、非正規雇用が急増、労働者に長時間過密労働が押しつけられる中、サービス残業の根絶と雇用拡大への対策こそが本市行政に求められていたはずです。ところが、サービス残業根絶に対しては市独自の手だてがほとんどとられなかった上に、正規雇用の拡大を促進する雇用創出支援奨励金制度の創設もせず、福祉、教育、防災などの公共サービス分野で雇用を増やすことにも消極的でした。また、中小企業対策費はまたも減額して10億円程度、一般会計のわずか0.15%にすぎません。公共事業の地場中小企業発注の増額が求められているところですが、市営住宅の建設事業費は5年間で半分以下に減額しました。景気効果の高い住宅リフォーム助成の創設にも背を向けてきました。2006年度決算において、雇用と営業を守る対策は極めて不十分だったといって過言ではありません。


第6に、清潔で公正な市政の確立についてであります。

2006年度、市職員による飲酒運転事故や、教員採用試験漏えい事件など、本市でも不正・不祥事が多発し、行政に対する市民の信頼は大きく失墜しています。市民サービス分野や窓口の職員削減が進められ、市民の声が行政に反映しないなど、市民に目を向けた行政が行われているとは言い難いのであります。本市行政をめぐっては、大型開発優先・市民犠牲の路線が続けられる中で、市幹部も絡む政官業の構造的癒着がいまだ温存され、その一掃が強く求められていましたが、ケヤキ庭石事件の教訓を生かし、企業、団体献金の禁止や、市の公共事業受注企業への政治資金パーティー券の売却禁止など、政官業の癒着を断ち切る対策が取られませんでした。

部落問題は基本的に解決しているのに、同和対策として2006年度6億3,600万円が充てられ、部落解放同盟福岡市協議会に3,114万円の補助金が出されていることはまことに異常な事態であり、市民の理解は得られないものです。

また、2006年度は、米駆逐艦フィッツジェラルドが博多港に入港しましたが、米軍に港湾や空港を提供することは市民の安全を脅かし、アメリカの危険な戦争戦略に福岡の街を巻き込むことに道を開くものであり、許されないものであります。


以上で2006年度決算に対するわが党の反対討論を終わります。


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