2006年予算議会
議案に対する反対討論
2006年3月28日 星野美恵子議員
私は、日本共産党市議団を代表して、本議会に提案されている諸議案のうち、議案第27号ないし30号、34号、36号 ないし42号、45号、46号、48号、49号、53号、54号、56号、58号、60号ないし63号、69号、74号ないし76号、78号ないし80号 87号、94号、95号、97号ないし99号、101号、102号に反対し、討論を行います。わが党の意見については、代表質疑および補足質疑、分科会審査ならびに総会における質疑で述べておりますので、ここではその基本点といくつかの問題について述べます。
周知のように、自民、公明によって成立した小泉内閣の2006年度政府予算は、国民の所得が落ち込み、貧富の格差の拡大が深刻な問題となるなか、定率減税の全廃による所得税・住民税の増税や医療費値上げなどによって、2兆7000億円もの負担を国民に押し付けるものであります。発足以来、小泉内閣が決めた負担増は14兆円にものぼっており、さらに消費税増税の動きも強めるなど、「大増税路線」を加速させています。その一方で、大型公共事業のムダづかいを継続し、史上最高の利益をあげている大企業などに対する優遇税制には手をつけず、また「三位一体の改革」によってこの間削減された約5兆2000億円に対し税源移譲は3兆円にとどまっており、地方交付税5兆円の削減とあわせ、地方財政に深刻な影響を与えるものです。格差拡大に歯止めをかけ、国民生活の苦境を打開するためには、社会保障の拡充、災害対策の強化、雇用、中小企業、農業の危機打開、地方税財政の拡充などのために予算を重点的に配分することこそ求められているのであります。
本市においては、山崎市長が、小泉内閣による国民犠牲の「構造改革路線」に追随し、大型開発優先の市政運営を続け、借金は2兆7000億円、市民一人当たり200万円となっているのであります。市長はこうした財政危機の元凶には、まったく手をつけず「選択と集中」と称して、負担増と福祉をねらいうちにした経費削減など市民にその犠牲を押し付けています。その上、今度はオリンピック招致を決め、それを口実に都心再開発巨大プロジェクトに突き進み、開発優先と市民無視の市政運営を続けているのであります。また、市有地の処分に関わって、市長は自らの選挙母体の代表らに便宜を図るなど、行政を私物化しています。
そうしたなか今日、市政に求められているのは、人工島やオリンピック招致、「新・都心構想」などのムダな大型開発をきっぱりと見直し、暮らしと福祉、震災・防災対策を最優先するとともに、雇用と中小企業対策を強化して、景気回復と財政再建の道を切り開くことであります。また、不正と腐敗を一掃し、清潔な市政を確立することが真剣に求められています。
しかるに、山崎市長の2006年度予算案は、福祉や教育など生活関連予算は抑制・削減する一方、人工島へ予算を一極集中させるものとなっています。税制改定に基づく庶民増税などによる個人市民税増収で59億円、留守家庭子ども会の利用料導入1億7000万円に加え、国保料、介護保険料の引き上げなど、歳入歳出の両面で市民負担増となっています。
歳出面では、教育費が最低水準を続け、待機者が増え続ける保育所や特別養護老人ホームの新設はわずかで、生活保護費をはじめ福祉予算も市営住宅建設費も抑制、中小企業対策費も減少しております。また、効率化、適正化の名で職員の削減を行っています。一方、人工島には211億円、五ヶ山ダム建設に32億円、オリンピック招致費に11億5000万円、区画整理や都市高速道路に加え、巨額の財政投資を生む「新・都心構想」の推進も盛り込むなど、大企業・銀行の儲けのための大型開発に莫大な予算が組まれているのであります。
以上のように、山崎市長の2006年度予算案は、ムダと自然破壊、大企業・銀行の儲けのための大型開発を優先し、暮らしや福祉の充実を求める市民の切実な願いに背を向け、市民犠牲をいっそう強めるものであり、わが党の賛同できないところであります。
次に、わが党が反対する議案のうち、いくつかの問題について、その理由を明らかにしておきます。
第1は、オリンピック招致問題と「新・都心構想」についてです。
オリンピック招致については、招致関連で11億5000万円が計上されており、「招致には一銭もかからない」という市長の説明が偽りであったことが明らかになりました。また、未だに具体的な計画や財政負担を市民にも議会にも明らかにしていませんが、数千億円の事業費がかかるのは避けられません。市長が市民の声も聞かないまま強行しているオリンピック招致は、本市の財政を破綻させ、市民の暮らしや福祉、教育を破壊するものでありやめるべきです。
都心部の再生関連等予算1億4500万円余は「新・都心構想」を具体化するものです。これは、財界主導で新たな都心開発や港湾開発を行うもので、市長も「都心の再生はオリンピックができなくても進めていきたい」と述べるなど、オリンピックを口実にした財界の仕事づくりに他なりません。同構想の策定はやめ、予算も削除すべきです。
第2は、人工島事業と大型開発についてです。
人工島の港づくりについては、博多港入港のコンテナ船は大型船が減少しており、大水深岸壁や航路を巨費をかけて整備する必要はなく、15メートル水深の岸壁工事のための予算13億2700万円は削除すべきです。
市長は、市民との公約を葬り去り、人工島事業を継続し博多港開発2工区の直轄化など破綻救済のために800億円を超す税金・公金を投入し、その上市立病院の統合移転や21世紀新中華街構想など、今後も巨額の税金投入を続けようとしています。新年度は、住宅市街地総合整備事業等、基盤整備を肩代わりするための予算25億5000万円余が計上されていますが、こうした博多港開発の破綻救済は許されず、211億円にのぼる人工島関連予算は削除すべきです。
博多港長期構想は、オリンピックのメインクラスターを須崎埠頭に配置することにより、物流施設等の移転で人工島の売れない土地を処分し、さらに代替施設としての埠頭づくりで新たな埋立に突き進むマリコン・ゼネコンのための仕事づくりに他ならず、同構想の策定はやめ、関連予算は削除すべきです。
福岡空港の利用者数は減少傾向にあり、新空港建設の必要性はなく、「雁の巣案」を含め、「新福岡空港構想」は白紙に戻し、既存ストックの有効活用などで問題を解決すべきです。九州大学学術研究都市構想については、バブルの発想に他ならず、巨額の市費投入を求められることになるのは必至であり、産学連携交流センターの整備のための予算6億9000万円余は削除し、あわせて、構想推進はやめ、同推進機構から撤退すべきです。
渡辺通駅北土地区画整理事業は事業費約58億円のうち市の持ち出しが26億円、さらに80億円とされる演劇専用劇場計画をはじめ、多額の事業費を必要とし、九州電力や都市みらいふくおか、福岡地所に便宜を図るものであり認められません。
第3は、真の財政再建と行財政改革についてです。
市債残高は、山崎市長の8年間で4226億円増え、2006年度末で2兆6511億円となっています。また、外郭団体が抱える隠れ借金も789億円にのぼり、報道によれば、総務省が発表した福岡市の実質公債費比率は22.8%と、日本一の「借金市長」となっているのであります。この危機的財政が市長の開発優先の市政によって作り出されたことは明白であります。財源不足を補うために市有地の資産処分に頼るなど市長の財政運営は、まさに破滅型と言わなければなりません。行財政改革の名で市民にツケを回すことをやめ、大型開発のムダづかいをきっぱりやめるとともに、歳入については、大企業、高額所得者優遇の不公平税制を是正する必要があり、この立場で新規財源を見いだすことを要求します。
第4は、震災対策等についてです。
福岡西方沖地震から一年を迎えた今も、損壊した危険家屋で困難な生活を強いられている方が多く残されており、すべての被災者が一日も早く元の生活に戻れるよう、本市の住宅再建支援金は、年齢や所得用件なしで、一部損壊まで適用できるよう改めるとともに、「農漁村特定地域再生支援金」についても、支援策の充実を図るよう求めます。
本市の都心部を貫いている警固断層は今後30年以内にマグニチュード7級の地震発生の確率が8~10%と高まり、もしも発生すれば、その被害は木造家屋など10万棟が大破すると指摘されています。また、株式会社サムシングによる耐震偽装問題も発覚し、市民は不安を募らせています。耐震診断費助成制度と改修助成制度の拡充、建築確認検査体制の抜本的強化、耐震偽装事件の徹底調査と被害者への支援策の拡充など、市民が安心して生活できるようすべきです。
第5は、市民の暮らしと福祉に関わる問題についてです。
政府の医療改悪法案は、高齢者の窓口負担を引き上げるなど、負担増をもたらし、受診抑制に拍車をかけ、国民の命と健康を脅かすものであり、市長は医療制度改革法案の撤回を国に要求すべきです。このような相次ぐ負担増は滞納者を増やし、市長は、払えない人から保険証を取り上げ、1万7000件以上もの資格証明書を発行し、市民の医療を受ける権利を奪ってきました。新年度は、国民健康保険料を前年度比4.24%増の一人当たり9万5591円に引き上げ、国の「税制改革」を口実に保険料賦課を所得比例方式に変更しようとしておりますが、低所得者や多人数世帯の負担を増やすものであり、認めることはできません。市民が安心して医療を受けることができるよう市費を大幅に繰り入れて保険料を引き下げ、低・中所得者への負担増とならないようにするとともに、保険証は原則交付し、減免制度を拡充すべきであります。
国の「税制改革」で3万4000人もの非課税高齢者が課税世帯となる中、市長は、新年度から介護保険料を25%増の基準月額4494円にしようとしていますが、低所得者に大きな負担を強いるものであり、介護保険給付費に占める国庫負担割合を引き上げるよう国に要求するとともに、本市独自の低所得者減免制度の拡充、所得に応じた保険料区分の拡充・見直しを求めるものであります。あわせて、待機者が5330人に激増しているにもかかわらず、3ヵ所150人分しか計画されていない特養ホームは、整備予算を大幅に増額して計画的に増設すべきです。
市長は、敬老無料パスや敬老金及び祝い品制度の縮小、老人医療費助成制度の廃止など約20億円もの切り捨てを強行し続けていますが、こうした「老人いじめ」は許されず、わが党は断じて認めることはできません。
生活保護については、政府が強行した老齢・母子加算の廃止・縮小など生活保護支給費の切り下げは、元に戻し、国庫負担割合の増額を要求するとともに、申請権の侵害、予告なしの訪問調査、実態を無視した扶養義務や就労の強制、資産活用や辞退届の強要など、人権侵害にも及ぶ冷たい保護行政を抜本的に改めることを強く要求するものであります。
国が強行した障害者自立支援法は、障害者の生存と生活を著しく脅かすものであり、これにもとづく条例案に、わが党は賛成できません。市長は、独自の負担軽減制度を創設し、国に対して撤回を要求すべきです。
市営住宅の公募倍率は過去最高の21倍にもなっているにもかかわらず、建て替え中心で新規建設を行わない本市の住宅政策はただちに改めるべきであります。
市長は、行政責任を放棄し、総額27億円もの重い負担を市民に押しつける家庭ごみの有料化や大野城・太宰府からのごみ受入はやめるとともに、南部工場立て替えなどを進める都市圏南部環境事業組合設置のための条例案は撤回すべきです。
市民生活と地域経済を建て直すうえで、雇用と中小企業対策の抜本的拡充が求められています。市長は、本市職員を増員して教育、福祉、防災などの公的分野の雇用拡大に努めることとあわせ、市内主要企業に対する雇用拡大と新規採用増の要請、地場中小企業などへの「青年雇用助成金制度」の創設を行うべきであります。わずか12億円程度となっている中小企業対策費を大幅に増額するとともに、中小企業向け官公需発注を大幅に拡大し仕事確保を図るとともに、公共工事の下請けまで含めた適正な賃金の支払いと建設業退職金共済が徹底されるよう改善策を講じるべきです。また、地場中小建設業者の仕事づくりと景気対策として大きな効果が期待できる住宅リフォーム助成制度の早急な創設を要求いたします。
第6は、子どもおよび教育行政についてです。
留守家庭子ども会について、市長は従来の保護者負担に加え、新たに3000円の利用料を導入しようとしていますが、その負担のために入会できない子をつくりだし、子どもを危険な状況に追いやるものです。利用料導入を強行することは許されず、撤回すべきです。健全な遊びを通して、子どもの発達を援助する児童館の設置を求める署名は、32万筆を超えており、公民館にその役割を押し付けるのではなく、小学校区ごとに早急に設置することが必要です。
少子化が深刻な本市において、乳幼児医療費助成制度の充実は不可欠であり、通院医療費は段階的でなく就学前の全児童を無料にすべきです。あわせて、初診料や往診料の無料化を求めます。
保育所の待機児数は749人と深刻な状況にあり、早急に保育所の新設を行うとともに、公立保育所の民営化はやめ、民間保育園の補助金を大幅に増額すべきです。子育て世代にとって大きな負担となっている高すぎる保育料を引き下げ、第2子以降の保育料は高い方を減免すべきです。
政府は、今日の教育の矛盾と困難を教育基本法に求め、その改悪を進めようとしていますが、異常な競争・管理主義の教育や小泉内閣の元で進められてきた人と人とを分断させる「構造改革」路線こそが、その原因を作り出しているのであります。平和で民主的な社会の実現を基調とする教育基本法を生かした教育こそ求められており、市長は、教育基本法改悪にきっぱり反対すべきです。また、本市の教育費は一般会計に占める構成比の6.2%と異常な低さに抑えられていますが、学校の耐震化やアスベスト対策など、緊急に求められる事業が山積しており、予算を大幅に増額すべきです。特に30人学級については、全ての学年で実現するとともに、教員の増員をしないままの2年生までの35人以下学級の拡充は、新たな問題を生みかねず必要な教員の増員を図るべきです。また、新年度から実施が計画されている「全市一斉学力テスト」は競争に拍車をかけるものであり、やめるべきです。
第7は、公平公正な行政運営、汚職腐敗の一掃、市民の安全と平和を守る問題についてです。
特定のものに便宜を図るなどの行政の私物化は市長たる資格が厳しく問われるものであり、断じて許されず、本市で繰り返される汚職・腐敗を断ち切るためには、市長自らがその政治姿勢を改めるべきです。
ケヤキ・庭石事件の公判で判明した志岐元助役が庁舎内で多額の「育み料」を受け取り、不正な蓄財を重ねていた問題など、業界と市幹部との癒着の実態について、市長は責任を持って徹底した調査と事実解明を行い、厳正な処分を行うべきです。また、政官業の癒着を断つための本市の政治倫理条例の改正、談合防止のための入札制度の抜本的改革を進めるよう求めます。すべての外郭団体、第3セクターの情報公開を徹底するとともに、市の退職幹部の外郭団体や利害関係のある民間企業への天下りを禁止すること、開発型3セクの廃止、縮小を進めることが必要です。
国民保護法は、憲法に反して自治体や民間企業を戦争に備えさせる体制をつくるものであり、市長は法の廃止を要求し、本市の関係条例案と国民保護計画は撤回すべきです。
同和行政については、新たな実施計画等を策定することは許されず、解同市協議会への団体補助金をはじめ、7億円余に上る同和関係予算を全額削除すべきです。また、市同研等同和団体への教員の派遣を中止するとともに、同和教育行政はやめるべきです。「米軍再編」は、日本の平和と安全を脅かすものであり、市長は国に対し撤回を要求すべきです。福岡空港の基地全面返還を要求し、博多港の軍事利用を許さず、非核神戸方式を適用すべきであります。
以上で、わが党の討論を終わります。