2005年9月議会
オリンピック招致決議について
福岡市2005年9月議会で、オリンピックに関する決議が自民・公明・みらい福岡・平成会によって提案され、賛成多数で可決されました。
第31回オリンピック競技大会の招致に関する決議
オリンピックは、スポーツを通じて世界の人々が相互理解と友好親善を深めるとともに、恒久的な世界平和の確立に大きく寄与する世界最大のスポーツ・文化の祭典である。
福岡市は、古来よりアジア大陸との勾留の歴史を築き、独自の伝統と文化を育むとともに、豊かな自然と近代的で活力ある都市機能が共存する快適で住みやすい都市として発展してきた。
また、これまで、ユニバーシアード大会や世界水泳選手権大会などの国際スポーツ大会を成功に収めた豊富な実績と暖かい市民のホスピタリティを有し、オリンピックが目指す「環境と調和したオリンピック」を開催するにふさわしい都市の魅力と経験を持っている。
新しい地方の時代にあって「アジアの交流拠点都市」のさらなる進展を目指す福岡市において新たな理念を掲げて、九州各都市と連携して開催する意義は大きく、福岡市を始め九州の活力を一層飛躍させるとともに、子どもたちに夢と希望を与え、世界の平和に貢献するものである。
よって、福岡市議会は、市民と一体となった活動を展開することによって、2016年第31回オリンピック競技大会の本市招致を強く要望する。
平成 年 月 日 福岡市議会
(賛成多数で可決。日本共産党は反対)
オリンピック招致決議に対する反対討論
中山いくみ議員
私は、日本共産党市議団を代表してただいま議題となっております決議案第6号「第31回オリンピック競技大会の招致に関する決議(案)」に対し反対討論を行います。
この決議案は、本市は「オリンピックが目指す『環境と調和したオリンピック』を開催するにふさわしい都市の魅力と経験をもっている」「オリンピックを開催することは、都市の活力をいっそう飛躍させるとともに、子どもたちに夢と希望を与え」る等とし、財政の裏付けは一切明らかにしないまま自民・公明・みらい福岡・平成会等が山崎市長の言うがまま、2016年のオリンピックの本市招致を強く要望するとしているものであります。
我が党は、「スポーツを通して諸民族の友好と相互理解を増進する」「平和でよりよい世界をつくることに貢献する」とのオリンピックの目的を支持するものであります。しかし今回、本市におけるオリンピック招致に関してはその経過並びに、計画の杜撰さを見ても何ら道理のないものであり、同意できないのであります。いくつかの点についてその理由を述べます。
まず、財政負担の問題であります。本議会において私は、一体いくらの財政負担になるかについて質しましたが、誘致費用並びにインフラ整備費用について、市長は一切明らかにしておりません。しかし、市の資料等に基づくわが党の試算によると、博多の森陸上競技場のオリンピックスタジアム新設で約500億、空港から博多の森競技場への地下鉄延伸で300億、屋内競技場の新設に60億、選手村は人工島内に整備するとされており、鉄軌道を引き込めば250億。これだけでも1100億円余に上るのであります。失敗した大阪では選手村の住宅整備は1101億円と試算されましたが、これらを合わせると施設整備に少なくとも2200億円を超す税金が投入されることになるのであります。オリンピックを口実に、選手村整備等で人工島を活用することが打ち出されておりますが、これは人工島の当初計画にもなかったものであり破綻救済に他なりません。市長は「開発型ではなく、ヒューマンスケールの五輪」などと述べていますが、「広域開催」となれば、他の自治体にも施設・整備など莫大な財政負担が押し付けられることになり、これこそまさに開発型に他ならないのであります。自民党は本議会で新空港の計画を急ぐことを求めましたが、オリンピック招致のために動き出せば、このような巨額で無駄な大型開発が次々と計画され、莫大な税金投入につながりかねないのであります。
さらに誘致費用についてはどうか。大阪市の場合、1996年度から2001年度までの6年間で誘致活動費として47億8800万円を支出しました。国内選考をクリアした後も、北京と勝負するために、相当の誘致活動を展開したのであります。しかし、結局開催地の選考に落選し、使われた約48億円が、まさに泡と消えたのであります。ロンドンに敗れたパリでも30億円の誘致費が使われ、無駄になったのであります。しかも市長は「広域開催を目指す」とし、「勝算はある」等と豪語していますが、前回国内選考で大阪に敗れた横浜市は「既存施設の活用」等として8都県にまたがる広域開催を打ち出し、これを明確に否定されたのであります。そもそも、オリンピックは1都市開催が原則とされており、山崎市長のオリンピック誘致構想は夢のまた夢、何の実現性もなく、誘致費用として使われる数十億円はまさに無駄になるのであります。
次に、オリンピックを福岡でという話は一体どこから出てきた話なのかという点についてであります。山崎市長は、4月15日、JOC竹田会長からオリンピックを含む国際総合スポーツ大会の開催の打診をされた等としていますが、この間市民には一切意見を求めて来ませんでした。オリンピックの招致を検討している札幌市は、市民の意向を確認する必要があるとして1万人アンケートを行うとしていますが、今回の経緯を見る限り、福岡市民は全くかやの外であります。9月14日の各紙が報じた通り、「2010年の会」なる団体がオリンピックを歓迎する「市民アンケート結果」なるものを発表しました。しかし、この「2010年の会」は、会長を務めるのが榎本一彦氏、山崎市長とはかねてからの入魂の仲である福岡地所の会長であります。地元最大手ディベロッパーが旗振り役として関係者とその家族に行ったアンケートが客観的な「市民アンケート」等と言えないものであることは明らかであります。まさに世論誘導で市長の後押しをしているものに他なりません。そして、オリンピックを誘致するとなれば、喜ぶのは財界・ゼネコン・大銀行であります。その借金のツケはまたも市民に押し付けられ、市民負担増と福祉や教育の切り捨てが一層推し進められることになるのであります。経済効果のメリットについては一過性のものに他ならず莫大な借金だけが残るのであります。実際冬季オリンピックを開催した長野市では、施設・設備等の整備の負担により借金が4倍にも膨れ上がったのであります。
今、本市は、2兆6800億円もの借金財政を抱えております。それに加え、地震被災者救済、震災に強い街づくりに早急に取り組む事が強く求められています。また、国の構造改革のもとで市民の暮らし、福祉は削られ、市民生活が犠牲にされている中、暮らしと福祉、教育の充実など「住民の命と安全を守る」自治体本来の責務を果たすことこそ求められております。このような時期に、どれだけの財政支出をともなうかも明らかにしないまま、財界の意のまま市長が打ち出したオリンピック招致計画など断じて認められないのであります。議会は本来、市長の間違った市政運営に対しては、しっかりとそのチェック機能を果たすことが求められているのであります。然るに自民・公明・みらい福岡・平成会等は、市民の意向も、また、共同開催するとしている他都市の意向も問わないまま、市長の打ち出したオリンピック招致計画をそのまま受け入れ推進しようとしており、その責任が厳しく問われるものであります。
以上のように、本市におけるオリンピック招致計画は、莫大な財政負担、招致費用、実現性の無い広域開催の問題に加え、市民の意向では無く、財界主導で持ち出された経過等、どれをとっても全く道理の無いものであります。
したがって我が党は、2016年のオリンピック招致を求める本決議案には賛同できないのであります。
以上で反対討論を終わります。