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議会報告

2005年5月臨時議会

福岡沖地震 被災者支援と復興対策について

2005年5月17日 星野美恵子議員の議案質疑(大要)

市長の基本姿勢について

星野今回の震災では、玄界島など離島・農漁村での大きな被害とともに、都市部のマンション含めた住宅被害も深刻です。また不況の中がんばってきた中小業者も被害の深刻さに耐え切れず廃業に追い込まれる事態まで起こっております。したがって、復旧・復興にかかる市長の基本姿勢として、すべての被災者が一刻も早く元の生活に戻れるよう支援することこそ求められていると思いますが、市長のご所見をお伺いいたします。

山崎市長不幸にして地震が起きた。市としては全力を挙げて復旧復興にあたっていきたい。


住宅再建支援制度と被害認定について

星野生活を立て直す上で、重要な柱となる住宅の再建にかかる支援策を、政府はいまだ持ち得ていません。そのような中で、本市が被災者やわが党の要求に応えて、いち早く被災住宅再建支援金等の市独自の支援制度を打ち出したことは、生活再建と町の復興の力となるものであり、評価するものであります。しかしながら、半壊以上となった住家は農漁村地域を除いて、5月6日現在で戸建で103戸、マンションなどが22棟約1100合計1200戸にものぼりますが、市独自の「被災住宅再建支援金」の申請はわずか7件しかありません。十分活用されないのはなぜか、お尋ねいたします。

保健福祉局長市政だよりなどで周知に努めているが、申請は7件だが相談は112件、今後増加していく。

星野申請はわずか0.6%。あまりに少なすぎませんか。一つには被災者に知らされていないという問題です。私どもが各区で制度を書いたニュースを持って被災者を訪問しても、ほとんどの方が「本当にこんな制度があるのですか」とびっくりされます。具体的に制度の中身がわかるよう、被災された方全員に周知徹底すべきだと思いますが答弁を求めます。

保健福祉局長周知に努めたい。

星野所得や年齢要件の問題です。マンションの住民の方が区に相談したら「45歳未満、年収500万円だからだめ」と言われたと落ち込んでおられました。適用は家族全体の年収が500万円未満といいますが、所得に直すとわずか350万円程度です。共働きで、多額の住宅ローンを払いながら、子育て真っ最中の40代前半のこの夫婦は最初から適用外なのです。とりわけマンションでいえば、所得と年齢の問題がネックになっています。全居住者が活用できるようにすれば、管理組合の話し合いも、復旧のための必要な補修も促進することができ、安全なまちづくりに寄与することができます。住宅再建支援策の所得要件や年齢要件は撤廃すべきだと思いますがご所見をお伺いします。

保健福祉局長所得要件等については、国の生活再建支援制度の補完ということで設けているので、国制度に準じ設定したもの。

星野支援策にかかわる被害認定について。全壊、半壊等の基準によって支援策が決まるのですから、何よりも早く、そして納得がいく認定をすることが求められます。中央区警固のAさん宅は屋根瓦が落ち家が傾く深刻な被害にあわれました「役所は2回来たけどざっと見て半壊と認定した。納得いかないので何度も頼んでやっと家の中をじっくり調査してもらった。しかし結果は変わらず納得いかん」と言われています。またある方は「一部損壊」が納得いかず区役所に行って尋ねたけれど、わかる人がいないと言われたそうです。実際、判定計算式は、本当にわかりにくいものです。長岡市では苦心して市民にわかりやすい認定表をつくっておられます。屋根や壁、柱などの状況を5段階に分けてチェックし、合計点数で全壊、半壊がわかるというものです。本市でも被災者の納得がいく、長岡市のような制度に改善すべきだと思いますが、ご所見をお伺い致します。

国も「判定を行うにあたっては、住宅の再建築や補修にも支援法が最大限活用できるよう的確な判定を」と述べ、わが党の「一部損壊も支援の対象に含めるべき」という要求に、村田防災大臣は「全壊、半壊の認定も弾力的に行うようにしたい」と述べられています。ところが、今の認定の状況はそうなっていません。宮の浦のBさんの家は屋根瓦が落ち、床も落ち、土間から床下にかけて幅10cmの亀裂が走り、ほとんどの柱が曲がって家全体が傾き横の家の軒先にくいこんでいて、大工さんからも補修しても600万ぐらいかかるといわれていますが、「半壊」の認定しかでておらず、建替えが必要なのにと悩んでおられます。被災者再建支援法施行令で、このような場合はいわゆる「みなし全壊」として全壊の支援策で救済できるようになっていますが、その説明はなされていません。被害認定にあたっては、柔軟に活用すべきであり、その内容を被災者にも伝えるべきだと思いますが、ご所見をお伺い致します。

また、西区の母子家庭で母親は病気で、まだ若い子どもの収入を頼りに生活しておられる。自宅が地震で壊れ、家はまるで割り箸の上に建っているようであり、壁が崩れているのでトイレへは瓦礫の上を靴をはいて行っている状況なのに、判定は「一部損壊」です。補修もできないと泣きながら訴えられました。さらに中央区で「一部損壊」といわれたCさんは「柱の傾きが2cm以下のときは『適用できる制度は何もない』と言われたが4cmの傾きがあった。それを訴えると今度は『平均するから関係ない』と言われた」そうです。今では余震がないときでもミシミシ音がしたり、前を車が通ると振動があったりして不安な毎日だと訴えられました。これらの方は実際に多額の改修をしなければならないのに、生活再建支援金制度からはずされているのです。鳥取県では2000年の震災のときこのような状況を勘案し、建替えるならば300万円、改修するなら150万円の補助という制度を新設されています。本市でも鳥取県のような実効ある制度にすべきだと思いますが、ご所見をお伺い致します。

保健福祉局長みなし全壊は、やむを得ない事由の場合であり、個々の対応。より一層わかりやすい周知に努め、対象世帯に適正に適用されるようにしたい。

市民局長時間がかかる、説明が不十分などと指摘されている。長岡市の例も関係局といっしょに勉強しながら、今後市民にとってわかりやすい認定となるように工夫してまいりたい。

星野阪神大震災以降、全国的に、生活・住宅再建のための個人補償施策が必要不可欠だと位置付けた取り組みが行われてきました。国もその必要性は無視できず、生活再建支援制度の弾力的運用を勧めているのであります。本市でもせっかくの住宅再建支援金制度を、必要としている多くの被災者が活用できるようにすることこそ求められており、鳥取県や長岡市のように被災者が実際に使えるよう制度を具体的に改善すべきであります。さらに周知徹底を図るべきであります。また本市の住宅再建支援金の所得や年齢要件を撤廃すべきだと思いますが、市長のご所見をお伺いいたします。

山崎市長少しでも被災者の生活の再建を支援することで復興復旧を早める狙い。これを一自治体として無制限に行うということについて限界があるので、所得制限をつけることをお許しいただきたい。融資制度の利子補給を活用してほしい。国の制度では、住宅の解体と整地費用のみが対象であり、一自治体ではあるが独自の制度をたてさせていただいた。


マンション被害について

星野マンションの被害は、壁に×状の亀裂、いわゆるせん断破壊が生じ、廊下から室内が見えるほど壁が破壊され、上の重さに耐えかねてドアが歪み開かなくなる等々深刻でした。このような中、市がマンションの被害に対して1戸1戸の被害度認定や、共有部分の支援策などを提示したことは、大きな前進だと思います。しかしながら、復旧し元どおり住めるようにするには億単位の費用が必要ですが、地震保険への加入率は2割程度というのが実態であります。このようなマンション被害に対しては特別の支援策が必要だと思いますが、ご所見をお伺いいたします。

建築局長大きな被害があり、共有部分の早急な復旧なしには居住者の生活再建は困難である。管理組合から被災状況や復興計画について聞き、支援策について検討を行った。支援策は、地震被災住宅再建支援金の支給や専有部分の補修工事に対する利子補給等の被災住宅復旧支援策に加えて、共用部分の復興資金に対する利子補給や市営住宅等の一時的な使用を行う。管理組合に個別の説明を行っている。


マンションの新耐震基準について

星野今回の地震では、震度6から7に対応するという1981年以降の新耐震基準で建築された築5年〜7年などの建物でも「せん断破壊」等の甚大な被害が発生しており、住民はもちろん専門家の間から驚きと不審の声がだされております。なぜ、このような被害が生じたのか、ご所見をお伺いいたします。

建築局長マンションの半壊は中央区に集中している。梁など建物全体を構成する主要な構造部分に重大な損傷は生じていないと考えている。しかし、外壁や出入り口ドアなど共用部分が激しく損傷するなどマンションでの生活に重大な支障を与える被害が出ていると認識している。昭和56年に改正された耐震基準は震度6相当の地震に対し、その損傷によって建物が倒壊するなど人命に関わるような崩れ方を避けることを目標として定められている。今回の震度6弱の地震に対して技術的には基準が想定している範囲内の被害だと認識しているが、なぜ中央区に集中したかなど今後技術的な分析を行う必要がある。

星野なぜ今回新耐震基準の建築物でこのような深刻な脆弱さが露呈したのか、何を改善する必要があるのかを明らかにするためにも、被災マンションの協力を得て、具体的な耐震診断含めて調査すべきだと思いますが、ご所見をお伺いいたします。

建築局長すでに日本建築学会、土木学会、日本建築構造技術者協会などで被害の調査が行われている。それらの調査結果や専門的知見を踏まえ、災害状況の把握、分析を行う必要がある。


耐震診断と補修への補助制度

星野阪神大震災で亡くなられた約6000名の9割は老朽木造住宅の倒壊によるものです。人命を守るため建物の倒壊をくいとめるために全国で取り組まれているのが、耐震診断と改修に対する補助です。横浜市では、木造住宅の耐震改修促進事業とともに、「応援します、マンションの耐震診断」として、財政措置を含めた支援事業に取り組んでおられます。1998年の制度開始以来すでに予備診断を320組合1324棟行い、そのうち47棟で本診断が行われ、改修が必要な35棟の実態も把握できています。耐震診断と改修に対する補助を制度化すべきだと思いますが、答弁を求めます。

建築局長被害の状況を分析し、東海地域などの施策も参考にしながら、耐震診断、改修の普及、啓発や促進策等について、総合的に検討していく。

星野警固断層をはじめとする活断層の存在が市民の不安を高めています。本市では共同住宅の比率は全国平均38%の倍近くの70%にもなり、13大都市でもっとも高くなっているのであります。地震によりこの高層住宅の倒壊が相次ぐ事態となれば他都市にはない大惨事となります。耐震診断や耐震補強への援助制度を創設するとともに、新耐震マンションの脆弱性の調査と対策をたてる必要があります。


玄界島の復興について

星野玄界島の復興、コミュニティの再生のためには何よりも復興策に住民の意見の反映が必要だと思いますが、ご所見をお伺いいたします。

都市整備局長復興計画の策定にあたって島の住民と十分協議を行い、連携を取りながら進めていく。

星野玄界島では応急危険度判定の「危険・要注意」が阪神大震災の34%を大きく上まわって、全家屋の80.8%にものぼっています。これだけ深刻な被災からコミュニティを再生するのですから、住民の声の反映が何より重要です。呉市の方から手紙をいただきました。玄界島同様急傾斜地の地震で苦しまれた方です。「政府・自治体は、被災宅地の復旧に関して『がけ地近接等危険住宅移転事業』と『緊急急傾斜地崩壊対策』を活用して復旧を行いましたが、これは立ち退きと宅地を市へ無償譲渡することが前提のものでした」。そして「結局、代替の住宅ももらえなかった」。これではコミュニティを再生し、元の生活を取り戻すことはできません。市は「玄界島復興プロジェクト」を発足し「玄界島復興推進会議」を立ち上げておられますが、構成委員は市と県それに国がオブザーバーとして参加するというもので、住民は一人も入っていません。島の復興計画の策定にあたっては、計画段階から島民の代表を参画させ、住民の意志が十分反映されるようにするべきであり、また復興に際しては、住民負担、住民犠牲が伴わないようにしなければならないと思いますがご所見をお伺いいたします。

都市整備局長島の住民による復興対策委員会や島民集会などを通して島民の方々の意見、要望を聞きながら進めていく。様々な手法を検討していく。

星野島の長い歴史と漁業という生業の中で築かれてきたコミュニティの復興は島の復興そのものであります。泣く泣く出て行かされるなどは許されず、復興計画の策定にあたっては、住民の声を十分反映する体制をつくるとともに、住民負担・住民犠牲を強いる計画は、絶対に許されないと思いますが、ご所見をお伺いいたします。

山崎市長住民の声を反映させながら計画し、いっしょになって復旧に取り組んでいく。


中小業者への支援について

星野厳しい経営の中で「地震保険に入っていない」中小業者が多く、また店舗の破損、営業用の「いけす」をはじめ、商品や什器備品の破損で、再開の見通しもたたない状況もあります。これに対応するため市が早々に融資制度をつくられたことは評価しますが、しかし不況の中これまでも融資を受けがんばってきている中小業者にとってこれ以上の借金は難しい状況があります。したがって、中小企業の仕事と生活の再建のためには今回の制度融資だけでは不充分ではないかと思いますが、ご所見をお伺い致します。

経済振興局長特別相談窓口を開設、相談などを実施。特別融資制度を創設、申し込みが240件。

星野業者の方々は「融資を借りても返すメドがたたない、これからどう生活していくか戸惑っている」というほど深刻なのです。ある小売店では、店のひさしの柱が折れ天井も落ち、当日は車で寝泊まりした。何とか営業を始めたが、お客に気をつかっている、こんな状況です。福岡県中小企業振興センターの調査でも、42社が営業停止に追い込まれたなど影響は深刻です。店舗や工場、事業用資産の復旧に対する直接補償制度はありません。被災した中小業者が一刻も早く立ち直れるよう、被害を受けた店舗の補修費等の一部を「補助金」として支給する制度を創設し、支援する必要があると思いますが、ご所見をお伺いいたします。

経済振興局長店舗等の補修については事業活動のリスク管理の範疇。企業の自助努力をサポートする形で支援を行っていく。

山崎市長中小企業への支援は、事業用資産の形成につながる助成は制度としてなじまないと考える。


地域防災計画、避難所について

星野本市は阪神・淡路大震災を教訓に地域防災計画・震災対策編を策定されています。今回、地震発生後、多くの避難者は同「計画」の避難所である「小・中学校」へと集まり、不安と寒さに震えながら体育館への受入を要望しました。ところがなかなか入れてもらえない所が多かったのが実態です。学校側の機敏な対応で受け入れられたところでも「自主避難だから、食事も寝具もなし」との対応でした。しかしながら、同「計画」では「災害発生後、住民が自主的に避難所へ避難をしたときは、避難施設の管理者は直ちに区災害対策本部へ連絡し、区災害対策本部要員により開設する」としており、食料や水、寝具等について、自主避難を理由に支給しないなどの規定はどこにもありません。お尋ねしますが、これらの実態をみるかぎり、地域防災計画は実際には機能しなかったということではないかと思いますがご所見をお伺い致します。

また、「地震のない街」とされていた福岡市での大地震であり、活断層の存在が改めて問題を投げかけております。警固断層が動けば、被災は今回の比ではないことは明らかです。したがって、予防を含め、本市の地域防災計画そのものを緊急に見直し、より実効性のあるものに改訂、改善すべきだと思いますが、ご所見をお伺いいたします。

市民局長大規模な地震が初めてと言うことで反省すべき点はたくさんあった。検証していかなければならない。経験を踏まえて震災後の応急対策や復旧復興活動から得られた成果、教訓を現計画とつきあわせながら短期、中期、長期のスパンの中で検討していく。避難所問題について事実を把握して、今後避難所としてしっかり機能するよう調査していく。

星野実際にさまざまな遅れや不手際が生じています。私が地震当日午後2時頃に避難所である小学校に伺ったとき、避難者の方が「自主避難だから食事や寝具はないと言われたけど、今晩ここに泊まっても良いのかだけでも教えてほしい」と切実に訴えられました。その後、私どもが中元助役や対策本部に申し入れて初めて食事や寝具の支給が具体化され始めたのです。他はもっと深刻だったようです。また城南区では避難所での食事は支給されませんでした。食料や寝具、水等の確保は行政の責任であり、早急に支給できるよう地域防災計画を具体的に見直すべきではありませんか、答弁を求めます。

山野助役職員も被災者の一人になりうる。経験を踏まえ、見直すべきところは見直す。災害予防計画も見直しを実施する。


学校の耐震化について

星野避難所である学校体育館等の安全確保について。被災した小中学校は180校、実に85%にものぼります。なかでも体育館ではコンクリート屋根材がずれた香椎小や、外壁モルタルが落下した勝馬小はいまだに閉鎖したままであり、埋立地の当仁中も床が波打って使用制限がなされています。これでは日々の子どもたちの安全な教育が保障されないと同時に、地域防災計画にある避難所の役割も果たせないのは明らかではありませんか。学校の耐震化を早急に行うべきだと思いますが、ご所見をお伺いいたします。

教育長学校校舎などの早期の耐震化について検討していく。


(3回の質問とそれに対する答弁を、テーマごとに再構成しました)


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