2005年6月議会
意見書について
福岡市2005年6月議会では、7つの意見書案が提案され、意見書6つが全会一致で可決されました。可決された意見書を紹介します。
地方自治制度の充実強化に関する意見書
平成5年の衆参両議員における地方分権推進決議以降、地方分権一括法の施行や市町村合併の進展など、地方議会を取り巻く環境は、大きく変化してきています。
また、税財政面で地方自治体の自己決定権が強まれば、それに伴い、地方議会も執行機関に対する監視機能を強化し、住民のための政策を自ら発信していく必要があります。
このように、二元代表制の下、地方議会の役割は一層その重要性を増していることから、議会の機能の更なる充実と活性化が強く求められており、各議会においては、自ら議会改革等を積極的に行っています。しかし、これらの状況に対応して議会の機能を十分に発揮するためには、解決すべき様々な制度的課題があります。
国においては、現在、第28次地方制度調査会が「議会のあり方」を審議項目として取り上げ、活発な審議を行っていますが、21世紀おける地方自治制度を考えるとき、地方議会が自主性・自律性を発揮して初めて「地方自治の本旨」は実現するものであり、時代のすう勢に対応した議会改革なくして地方議会改革なくして地方分権改革は完結しません。
よって、福岡市議会は、国会及び政府が、地方議会の権能強化及びその活性化のため、議長に議会招集権を付与するとともに、委員会にも議案提出権を認め、あわせて、議会に付属機関の設置を可能とすること、また、専決処分の要件の見直し、議決権の拡大など、抜本的な制度改正を図られる強く要請します。
以上、地方自治体第99条の規定により意見書を提出します。
平成 年 月 日
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣 あて
議長名
(全会一致)
台湾人旅行者に対する査証免除を求める意見書
政府は、平成15年7月、観光立国関係閣僚会議において、観光立国実現のための施策の効果的かつ総合的な推進を図るため、「観光立国行動計画」を決定し、外国人旅行者の円滑な訪日を支える環境整備の一つとして、査証取得の負担の軽減を盛り込みました。
これを受けて、平成16年4月からは、香港のパスポート保持者の90日以内の滞在について査証免除が認められ、また、同年7月の日韓首脳会議では、小泉首相が韓国人旅行者に対する恒久的な査証免除を検討する考えを表明しています。
しかしながら、台湾については、貿易・経済・技術・文化などの面で我が国との交流が深いものの、依然として査証取得が義務付けられています。
我が国を訪れる外国人旅行者のうち、台湾からの旅行者は韓国に次いで多く、本市においても、平成15年の外国人延宿泊数で台湾人は全体の18%を占め、韓国に次いで2番目の多さとなっており、今後とも台湾との交流を今まで以上に活性化していくことが求められています。
よって、福岡市議会は、国会及び政府が、台湾からの観光客を誘致するとともに台湾との交流を一層深めるため、台湾人旅行者に対する査証免除を実施されるよう強く要請します。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
平成 年 月 日
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
外務大臣
法務大臣
国土交通省 あて
議長名
(全会一致)
住民基本台帳の閲覧制度の早期見直しを求める意見書
現在、個人情報保護に関する法整備の進展とともに、行政機関のみならず民間事業者においても、より適切な個人情報の保護を図ることが喫緊の課題となっています。しかしながら、本年4月から個人情報保護法が全面施行された中にあって、市町村の窓口において、住民基本台帳法第11条により、氏名、住所、生年月日、性別の4情報が、原則として誰でも大量に閲覧できる状況にあり、この点は、早急に検討・是正すべき課題です。
住民基本台帳制度は、昭和42年制定以来、住民の利便の増進、国及び地方公共団体の行政の合理化を目的とし、居住関係を公証する唯一の公募として、広く活用されてきたところです。しかし一方、高度情報化社会の急速な進展により、住民のプライバシーに対する関心が高まるにつれて、住民基本台帳の閲覧制度に対する住民の不満や不安が高まっているいるのも事実です。
さらに、最近では、閲覧制度を悪用した悪徳商法などが発生しており、住民基本台帳法第11条による閲覧制度が現実として住民の権利を著しく侵害しつつあり、自治体独自の取組では補いきれない課題を生じさせています。住民を保護すべき自治体としては、現行の閲覧制度の下では、こうした事態への対応は、極めて困難です。
よって、福岡市議会は、国会及び政府が、住民基本台帳法に「何人でも閲覧を請求することができる」と規定されている閲覧制度について、営利を目的とする大量閲覧を制限するなど、抜本的な改革を早急に講ぜられるよう強く要請します。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
平成 年 月 日
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣 あて
議長名
(全会一致)
義務教育費国庫負担制度に関する意見書
義務教育費国庫負担制度は、「義務教育無償の原則にのっとり、国民のすべてに対しその妥当な規模と内容とを保障するため、国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ること」を目的とし、財政面から義務教育を支え、今日まで、多大な役割を果たしてきたといえます。
国は、1985年度以降、財政再建を理由として同制度の見直しを進めています。同制度をめぐっては現在も様々な議論が行われていますが、同制度の見直しは、ただでさえ厳しい地方財政に多大な影響を与えるばかりでなく、各地方自治体の財政力によって一般財源化された経費に対する財政措置に格差が生じ、教育水準にも地域間の格差が生じることが懸念されるなど、教育の機会均等等を損なうことにもつながりかねないものであることから、慎重な検討が不可欠です。
よって、福岡市議会は、国会及び政府が、義務教育制度の根幹である義務教育費国庫負担制度について慎重に協議・決定されるよう強く要請します。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
平成 年 月 日
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
財務大臣
文部科学大臣 あて
議長名
(全会一致)
日本船舶振興会への交付金の軽減等に関する意見書
地方競馬や競輪などの地方公営競技事業は、長引く景気の低迷やレジャーの多様化等の影響により、平成3年度をピークに売上げの低下が続き、必死の経営改善努力にもかかわらず、いずれの事業も厳しい経営を余儀なくされています。
競艇事業においても、平成15年度に一般会計への繰出しができない施行者は、46施行者中16施行者に及ぶほか、単年度赤字に陥っている施行者も多く、このような状況の下、平成15年度末には、桐生市、光市及び広島県西部競艇施行組合が事業から撤退するに至っています。
平成15年度決算で見ると、競艇事業46施行者の事業収益が78億4,569万円にまで減少している一方で、売上額に応じて納付が義務付けられている日本船舶振興会への交付金及び公営企業金融公庫への納付金は、交付金が351億7,075万円、納付金が112億935万円となっています。
本市においても、年々、競艇事業経営は苦しくなっており、平成16年度の一般会計への繰出金は8億円にまで減少していますが、交付金は17億5,830万円、納付金は6億1,607万円となっており、平成13年度以降、一般会計への繰出額より交付金及び納付金の合計額の方が大きいという状況が続いています。
既に地方競馬、競輪、オートレース(小型自動車競走)事業については、こうした状況を受けて、交付金の軽減・支払猶予措置が採られていますが、競艇事業においては、その不合理な制度の見直しが行われていません。
また、公営企業金融公庫納付金制度は、公営競技施行団体の売上げ・収益が急増した昭和45年に収益の均てん化を目的に時限立法として制定され、その後も更新されてきましたが、現状では根拠を失っていると言わざるを得ません。
よって、福岡市議会は、国会及び政府が、早急に日本船舶振興会への交付金の軽減措置を行うとともに、公営企業金融公庫納付金制度を廃止されるよう強く要請します。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
平成 年 月 日
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
総務大臣
国土交通大臣 あて
議長名
(賛成多数で可決)
自然災害による被災住宅への再建支援制度の確立を求める意見書
本年3月20日に発生した福岡県西方沖地震では、死者1名、負傷者900名以上の人的被害のほか、本旨全域で5,000棟を超える家屋被害が発生しました。
自然災害によって被災した住宅を再建することは、被災者個人の生活基盤回復のためだけでなく、地域コミュニティの維持や街並み復興などの「まちづくり」の観点からも重要です。1995年に発生した阪神・淡路大震災において、その重要性が認識されて以来、全国各地で自然災害が発生するたびに、被災者や関係自治体・関係団体の間から、住宅再建支援制度の確立を求める声が強く上げられてきました。
しかしながら、2004年通常国会にて改正された被災者生活再建支援方では、住宅本体への再建支援制度の創設は見送られ、「居住安定支援制度」の名の下に、解体撤去費や家賃、借入金関係経費など、いわゆる周辺経費に限定した制度創設にとどまりました。これでは、被災者の住宅再建意欲が喚起されないばかりか、地域社会の復興に役立つ真の住宅再建支援制度とはなり得ません。
本市においては、住宅復旧は生活再建の柱であることから、福岡県西方沖地震で生じた住宅被害について、国の被災者生活再建支援制度に上乗せし、半壊以上の住宅の建て替え・補修関連経費を助成する地震被災住宅再建支援金等の制度を創設するなど、独自の支援策を実施していますが、財政への負担も大きく、一刻も早い国の住宅再建支援制度の確立が強く望まれています。
よって、福岡市議会は、国会及び政府が、被災者生活再建支援法を再び改正し、被災住宅本体に係る費用を含めるなど、支援金の支給対象を拡大されるよう強く要請します。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
平成 年 月 日
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
防災担当大臣
財務大臣 あて
議長名
(賛成多数で可決)
郵政民営化関連法案に関する意見書
今、国会では、郵政民営化関連法案が審議されています。この法案は、郵政3事業を窓口ネットワーク会社、郵政事業会社、郵政貯金銀行、郵便保険会社の4社に分割して民営化するとともに、持ち株会社として日本郵政株式会社を設立した上で、政府がその株式の3分の1以上を所有して管理下に置くというものです。また、4社のうち郵便貯金銀行と郵便保険会社の2社については、株式を10年以内に完全売却することを義務付けています。
郵便局は国民にとって身近で便利な存在であり、貯金や年金の受取など国民生活に欠かせないサービスを全国あまねく提供しています。
これが、民営化され、利潤追求を優先する株式会社になれば、不採算地域からの撤退が危ぐされます。また、均一料金制など全国一律サービスが崩れ、郵便貯金・簡易保険事業が縮小・廃止されるならば、庶民が気軽に利用できる公的金融機関等としての役割が失われるとともに、利用料金に消費税が課税されるなど、そのしわ寄せが国民に及ぶのは明らかです。世論調査でも、「公社のままサービス改善をなどを進めるべきだ」「慎重に判断すべきだ」など、合わせて7割の人が民営化に批判的です。
また、法案審議の中で、完全民営化される2016年度の経営試算において、郵政公社のまま継続した場合は黒字となる一方、民営化された郵便貯金銀行では赤字となることが明らかになるなど、政府が掲げた民営化の根拠は崩れ始めています。
よって、福岡市議会は、国会及び政府が、郵政民営化関連法案を撤回されるよう強く要請します。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
平成 年 月 日
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
内閣官房長官
郵政民営化担当大臣
総務大臣
財務大臣 あて
議長名
(反対多数で否決。日本共産党立案)