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2005年12月議会
2004年度決算に対する日本共産党の反対討論
2005年12月8日 日本共産党 倉元達朗議員
私は、日本共産党市議団を代表して、2004年度一般会計および特別会計ならびに企業会計決算諸議案のうち、議案第236号〜239号、242号、244号、246号〜252号、255号〜259号ならびに261号について認定しがたいことを表明し、反対討論を行います。
周知のように、長期にわたる不況のもと、2004年度の国民生活は、勤労者世帯の実収入も消費支出も減少傾向で依然厳しく、完全失業率は4.7%、有効求人倍率0.86倍、企業倒産が1万3000件など日本経済は低迷していました。また合計特殊出生率が1.29となるなど少子化が進行していました。
しかるに2004年度政府予算は、国民に痛みを押し付ける小泉「構造改革」のもとで、年金大改悪による保険料値上げと給付引き下げ、所得税の老年者控除の廃止など、社会保障改悪と庶民増税による4兆円の負担増を国民に押し付ける一方で、大企業奉仕や公共事業の浪費の仕組み、5兆円もの軍事費などを温存し、経済も財政も悪化させるものでした。また、大企業のリストラ応援で高い失業率にもかかわらずまともな雇用対策を行わず、貸し渋り・貸しはがしに苦しむ中小企業への対策も全く不十分でした。さらに「三位一体改革」と称して、地方交付税と国庫補助負担金を削減して住民サービスの低下を招き、地方自治体に借金を押し付けたのであります。
こうした不況と「構造改革」によって市民生活は厳しい状況に置かれ、本市においては山崎市長が推進してきた人工島開発が明白な破綻に陥り、自然、環境、水、交通問題も一層深刻になりました。さらに、ケヤキ・庭石事件で明らかになった政治家と市幹部による不正腐敗と利権あさりが深刻でした。
そうしたなかで、2004年度市政運営に強く求められていたのは、住民の安全、健康、福祉を保持するという自治体本来の責務に立ち返り、小泉内閣の構造改革路線と国民負担増の悪政から市民生活を守るとともに、不況打開と雇用拡大、暮らし・福祉・教育の充実、地場中小企業の振興などに全力を挙げ、水や自然、環境と調和し、災害に強い都市づくりへ転換すること、また市政をめぐる汚職腐敗を徹底解明し一掃することでありました。すなわち、開発行政から市民生活優先へ、自治体らしい自治体への根本的転換こそ強く求められていたのであります。
ところが、山崎市長の施政方針と予算は、こうした市民の願いに全く逆行するものでした。すなわち、一般会計予算は、福祉や教育など生活関連は抑制・削減し、「効率化」「適正化」の名で暮らしに関わる補助金カットや職員削減、自治協など地域住民への仕事押し付けを強行する一方、最大の開発である人工島へ予算を一極集中させたもので、市長はまさに「あとは野となれ」とでも言うべき破滅型の予算編成を行ったのであります。2004年度決算は、以上のような当初予算の基調を数字ではっきり示すものとなっております。
一般会計歳入決算は、前年度比118億円、1.6%の増ですが、歳入の3割を占める市税収入は、市民生活の苦境を反映して、個人市民税が1.6%減少するなど、市民税の長期的減少傾向による税財源の減少は顕著となっています。加えて、国の「三位一体改革」によって、地方交付税が75億円、臨時財政対策債が85億円、あわせて160億円減少するなど、国の財政赤字の地方への押し付けの影響も深刻です。
一般会計歳出決算は、前年度比106億円、1.5%増でありますが、教育費は連続削減され、一般会計に占める割合は史上最低の7.1%となりました。保健福祉費は前年度比5.4%増となっていますが、生活保護は相談が増加しているにもかかわらず申請拒否、就労や辞退の強要など保護の抑制が行われており、待機者が急増する特別養護老人ホームの整備はわずか4ヶ所、保育所は540人分を整備・認可したものの765人にのぼる待機児の解消にはほど遠いものであるなど、福祉分野が抑制、削減されています。また、国民健康保険は保険料の2.25%値上げを行い、高すぎて払えない事態が広がっており、保険証取り上げの資格証明書発行は約1万8000件へ急増しています。市営住宅は応募倍率が21倍と希望者が殺到しているにもかかわらず、建設費を前年度から13億円、3割も削減し、新規建設はほとんどありません。中小企業対策費は一般会計のわずか0.15%に過ぎないのであります。
その一方、人工島事業には、直轄化を含めて554億円もつぎ込んでおります。すなわち、鉄軌道導入や市立病院移転など2000億円を超す公金投入の新事業計画を推進して博多港開発の破綻救済を進め、さらに399億円を港湾事業特別会計で起債して2工区を譲り受けて市の直轄とし、銀行とゼネコンを救済したのであります。他にも香椎駅周辺など土地区画整理6事業に164億円、都市高速道路に49億円、新天神地下街に26億円など、大型開発事業に引き続き莫大な市費が投入され、また新福岡空港建設や九大移転を核にした学術研究都市構想など巨大開発を推し進めていますが、これは極めて異常な大型開発優先、市民不在の行財政運営と言わざるを得ません。
こうしたなかで、一般会計が実質収支で92億円余の黒字決算となっておりますが、これは本来であれば福祉や教育の拡充に生かされるべきであったものが、逆に徹底して抑制、削減してきた市民に冷たい財政運営の結果であることは明らかであります。
2004年度末市債現在高は前年度比2.3%増の2兆7092億円、市民一人当たり199万8000円となっており、借金財政は深刻化を極めております。こうした財政危機の原因と責任は、人工島事業などムダな大型開発を推進した山崎市長にあることは明白であります。ところが市長が04年6月に決定した「財政健全化プラン」は、開発行政を見直すどころか、市民生活関連事業の削減や切り捨てと市民負担増を強行しているのであります。このような財政破綻の責任を市民に押し付けるやり方は許せません。
以上述べたように、2004年度決算は、国の地方財政切り捨てによる厳しい財政にもかかわらず、大企業・銀行・ゼネコン奉仕のムダな大型開発とその破綻救済、それによる借金増大と財政危機の進行、市民負担増と暮らし、福祉、医療、教育関連事業の徹底した抑制と削減が基調になっており、わが党はこのような決算諸議案を認定することはできないのであります。
次に、わが党が反対する諸議案のうち主要な問題についてその理由を明らかにしておきます。
第1は、人工島など大型開発と破綻救済についてです。
人工島事業は、市民の反対世論を押し切って進められ、10年が経過しましたが、総事業費4600億円のうち約5割が執行されました。市長は市民が求めた人工島事業継続の是非を問う住民投票の実施を拒否しましたが、今や人工島は、ムダな大型開発、税金のムダづかいの典型であると同時に、汚職と腐敗、利権あさりの象徴となっております。市長は博多港開発の破綻救済のため、銀行いいなりで事実上の債務保証となる協定を結び、その具体化として道路や公園の肩代わり整備など2000億円にのぼる公金投入となる「新事業計画」を策定しました。これに基づき、2004年度、博多港開発工区の土地を税金によって購入し、2工区の直轄化まで強行したのであります。さらに市立病院の統合移転計画や二十一世紀中華街構想など次々と破綻救済策を打ち上げ、人工島事業に果てしない税金投入のレールを敷いて、本市の将来に重大な悪影響を及ぼす市長のやり方は断じて認められません。こうした人工島の破綻救済を含む決算にわが党は断固反対するものです。市工区を含め埋め立てを凍結し、抜本的に見直すべきであります。
また、新空港建設や九大学研都市構想など、ムダな大型開発を推進していますが、こうした決算は容認できません。
第2は、深刻な借金財政についてです。
市債残高は2兆7092億円へとまたも増え、起債制限比率は前年度より0.3ポイント上昇して17.9%、公債費比率も悪化し24.5%になっております。本市の財政状況は明らかに悪化の一途をたどっています。市長は「財政は健全化しつつある」などと言うものの、山崎市政6年間で市債残高は4807億円増加し、とりわけ土木債や都市計画債、区画整理や港湾関連は年々膨れ上がっており、さらに新東部清掃工場建て替えなど外郭団体等が抱える借入金のうち市が返済すべき「隠れ借金」が729億円にのぼっております。こうした莫大な借金が市長自身の開発優先行政によってつくり出されたことは明白であります。市長は「選択と集中」として人工島、新空港、学研都市など大型プロジェクトを一層推進する一方で、財政健全化の名で「行政のスリム化」「負担の公平性」などと称して、市民負担増と福祉きりすてを押し付けていますが、このような市民犠牲は許されません。財政再建というなら、ムダな大型開発をきっぱりやめ、開発優先の財政運営を根本的にあらためることこそ求められているのであります。
第3は、福祉、医療、介護、生活保護、保育など市民生活にかかわる問題です。
2004年度の国民健康保険料は、前年度比2.25%値上げされ、一人あたり8万8461円と、すでに負担能力の限度を超えております。保険料が高すぎるため滞納が5万7991世帯、全体の23.2%へと増加しました。保険証を取り上げて交付した資格証明書は1万7954世帯、短期保険証は1万4194世帯にものぼりました。市長は、保険証の原則交付と市民の医療を受ける権利を踏みにじり、まさに金の切れ目が命の切れ目という深刻な事態を生み出したのであります。老人医療費助成制度については、受診件数、扶助費とも減少しましたが、拡充を行わなかったばかりか、来年度廃止を決定したことは断じて認められません。介護保険については、利用料の自己負担が重いため利用率が3割にとどまり、特別養護老人ホームは待機者が4901人となるなど、必要な人が必要な介護を受けられない深刻な事態でした。保険料減免の拡充や利用料助成の創設、特養ホーム増設などサービス基盤の整備が切実に求められていたわけですが、特養ホームの新設がわずか4ヶ所、315人分にとどまるなど、極めて不十分だったのであります。生活保護は、相談件数が9050件にもかかわらず、その半数以上が申請さえ拒否され、保護認定が抑制されました。保護世帯への人権侵害の調査や就労の強要などによる強制的打ち切りも含め、保護廃止件数は3268件にものぼりましたが、これは法の趣旨に反する不当な保護行政の結果であり、直ちにあらためなければなりません。同時にホームレス対策も不十分でした。保育行政については、働く若い世代が安心して子育てできるよう、保育所待機児の解消、高い保育料の引き下げなどが緊急課題でしたが、保育所の新設はわずかで、定員以上のつめこみで対応してきたのであります。このうえ、市立保育所の民営化を保護者の声を無視して強行し、民間保育園補助金も削減しましたが、これらは子育て支援に反するものと言わなければなりません。障害者施策については、予算措置の拡充と集中的な基盤整備などをおこなうべきでしたが、極めて不十分な対応にとどまったのであります。このように、山崎市長が、福祉などの市民生活関連の施策の拡充を求める市民の願いに反し、ことごとく抑制あるいは後退させてきたことは、断じて容認できないものであります。
第4は、子どもと教育の問題についてです。
子どもと教育をめぐる深刻な状況のもと、今日ほど、子どもたち一人ひとりが大切にされる教育が求められている時はありません。すべての学年の30人学級の早期実現を求める世論が大きく高まっています。ところが本市は教育費を年々削減し、一般会計に占める割合はまたも過去最低を更新し、7.4%となりました。教育の充実を願う市民に背を向けた著しい教育行政軽視であり、また教職員には多忙化と健康被害をもたらすものとなっており、このような決算を認めることはできません。また、専門職員のいる児童館の建設に背を向ける市長の姿勢はまさに異常であります。留守家庭子ども会事業は、入会希望者全員を受け入れるための施設拡充や指導員増員、土曜日開設が切実に求められていましたが、市長は冷たく背を向けたのであります。
第5は、雇用と景気対策についてです。
2004年、福岡県の完全失業率は6.3%、福岡市の有効求人倍率は全国平均を下回る0.79倍、企業倒産は185件、負債総額1226億円で増えるなど、本市における雇用と地域経済は極めて厳しい状況でした。こうした中、景気回復と地域経済の活性化のために本市に求められていたのは、経済の主役である個人消費を拡大し、また中小企業を支え、独自の雇用対策を講じることでした。具体的には、中小企業に対する官公需発注の増額などの支援を抜本的に強化すること、住宅リフォーム助成制度のような中小業者の仕事づくりの促進、福祉、教育、防災など公的な雇用を増やすこと、市内の企業に対してリストラ抑制と雇用拡大を要請すること、さらに福祉や教育の経済的な負担を軽減して市民生活を応援する施策を充実することなどが求められていたのであります。ところが市長は、こうした雇用と景気対策に全く無策だったと言わざるを得ません。
第6は、汚職腐敗の一掃と清潔な市政の確立についてです。
人工島事業をめぐるケヤキ・庭石事件は、2004年ついに元助役の志岐眞一博多港開発前社長、大庭樹同社元常務、西田藤二元市議会議員が逮捕・起訴され、以来1年以上にわたって裁判が続いていますが、本市の公共事業が食いものにされ、市幹部が業界と癒着して私腹を肥やし、また政治家のファミリー企業が生み出した裏金が自民党の選挙資金となっていたことなど、深刻な実態が市民の前に明らかになっております。ムダな大型開発の裏で利権あさりと汚職腐敗が繰り返されているように、ケヤキ・庭石事件は氷山の一角であり、市政に対する市民の不信は大きくなっています。ところが、山崎市長に政官業の構造癒着の一掃にとりくむ姿勢は全く見えず、市長自身の政治資金パーティーを含む企業団体献金の全面禁止にも背を向け続けているのであります。政官業の癒着を断ち切り、清潔で公正な市政運営を確立することが強く求められております。
第7は、公平・公正な行政運営と、平和と市民の安全を守る問題です。
「行政経営改革」などとして、本来直営で行うべき清掃工場や保育所、地下鉄の駅業務などを民間委託したことや、指定管理者制度の導入によって公の施設の管理運営に営利目的の民間企業を参入させたことは、市の公的責任を放棄し、行政を営利企業化させるものであり、認められません。
住民自治については、「共働」などとして本来行政が責任を持って行うべき仕事を、補助金をテコに市民と自治協議会に押し付けるやり方は、住民自治とは相反するもので容認できないものです。
同和特別対策については、地対財特法が廃止され、国と多くの自治体が同和行政の終結を図る中、本市は、同和対策事業を継続し、2004年度も解同市協議会補助金4930万円など9億1158万円余の同和対策費を支出しましたが、これは異常であり時代逆行も甚だしいものであります。特別対策は例外なく全面的に廃止すべきであり、わが党はこのような決算を認めることはできません。
防災については、二度にわたる水害被害に続いて、福岡県西方沖地震が発生し、災害対策は本市の最重要課題となっております。早急な災害復旧、被災住宅の再建と被災者・被災業者の救済に万全を尽くすこと、学校をはじめとした公共施設の耐震化と合わせて、災害発生直後の避難・救護活動の充実など、地域防災計画の見直しが求められております。
また政府による自衛隊のイラク派兵は明白な憲法9条違反であり、市長は、政府に対し、自衛隊の即時撤退を強く要求するとともに、板付基地の全面返還を強く要求し、博多港、福岡空港の軍事利用は断固拒否すべきです。
以上、2004年度決算に対するわが党の反対討論を終わります。