2004年予算議会
2004年度予算案・議案に対する反対討論
2004年3月26日 日本共産党福岡市議団 中山郁美議員
私は、日本共産党市議団を代表して、本議会に提案されている諸議案のうち、議案第36号ないし39号、42号、44号、46号ないし52号、55号ないし59号、61号、66号、68号ないし71号、74号、79号、81号、83号、86号、93号、95号、98号、103号、104号、106号、107号に反対し、討論を行います。わが党の意見については、代表質疑および補足質疑、分科会審査ならびに総会における質疑で述べておりますので、ここではその基本点といくつかの問題について述べます。
周知のように、自民、公明の小泉内閣による2004年度政府予算案は、長期にわたる深刻な不況のなか、年金大改悪をはじめ庶民増税などによって、今後毎年1兆円以上の負担を増やし、これまでの4兆円とあわせて2006年度には7兆円以上となる負担増を国民に押しつけるものです。その一方で、公共事業は聖域にして巨大開発を引き続き推進し、また「三位一体の改革」の名による国庫補助負担金の1兆円削減と地方交付税の縮小など地方財政をいっそう深刻化させるものであります。日本経済の回復を実現するためには、公共事業や軍事費などの浪費を削り、年金をはじめとした社会保障や、雇用・中小企業・農業対策、国民の暮らしのために予算を重点的に配分することこそ求められているのであります。
本市においては、山崎市長が、小泉内閣による国民犠牲の「構造改革路線」に追随し、「選択と集中」と称して、人工島、九大学術研究都市構想などムダな大型開発を最優先ですすめる一方、医療、福祉、教育、住宅、中小企業対策の抑制と削減など、市民犠牲の市政を続けています。また、本市大型公共工事をめぐり、ケヤキ・庭石事件に続き、港湾局計画課長の汚職事件など、不正と腐敗も後を絶ちません。
そうしたなか今日、市政に求められているのは、人工島をはじめとするムダな大型開発をきっぱりと見直し、暮らしと福祉を最優先するとともに、雇用と中小企業対策を強化して、景気回復と財政再建の道を切り開くことであります。また、汚職・腐敗を一掃し、清潔な市政を確立することが真剣に求められています。
しかるに、山崎市長の2004年度予算案は、福祉や教育など生活関連予算は抑制・削減する一方、人工島へ予算を一極集中させるものとなっています。一般会計の歳入は、市税の3年連続減少に加え、地方交付税の縮減など税財源の減少が顕著ですが、その不足分を基金の100億円取り崩しや多額の市債発行で埋めあわせするなど、財政運営はまさに綱渡りの危機的状況に陥っています。歳出面では、教育費が、前年度より4.9%カットされ、一般会計にしめる構成比は史上最低の6.6%にまで落ち込みました。市営住宅の建設費は最高時の4割にも満たない36億円。4000人近い待機者をかかえる特別養護老人ホームの新規分はわずか3カ所で2億円、中小企業対策費は前年並みの12億円で一般会計のわずか0.17%にすぎません。生活保護費をはじめ福祉予算は抑制され、国保料は介護保険分で2.25%の値上げなど負担増が押しつけられています。また、民間保育園補助金の1億円削減を強行し、保育所は待機児が急増しているにもかかわらず新設はわずかであります。「効率化」「適正化」の名で福祉や暮らしに関わる補助金カットや職員減らしを強行し、住民に対しては「共働」などとして、清掃や防災から教育、福祉、介護まであらゆる行政サービスの肩代わりと下請けを自治会・町内会に押しつけようとしています。一方、人工島には312億円、区画整理は7事業で165億円、都市高速道路に48億円、さらに新天神地下街や高速道路公社の出資金30億円を拠出するなど、大型開発に莫大な予算が組まれているのであります。また、イベント予算も膨れ上がったままです。この結果、年度末の借金は3会計合計で2兆6849億円とまたも増加し、市民一人当たり194万円、市税収入の11年分にものぼるのであります。またPFI的手法による隠れ借金も増大しております。
以上のように、山崎市長の2004年度予算案は、ムダと自然破壊、大企業・銀行の儲けのための大型開発を優先し、暮らしや福祉の充実を求める市民の切実な願いに背を向け、市民犠牲をいっそう強めるものであり、わが党の賛同できないところであります。
次に、わが党が反対する議案のうち、いくつかの問題について、その理由を明らかにしておきます。
第1は、人工島事業と大型開発についてです。
本市最大の事業である人工島開発では、博多港開発の土地の民間売却の見通しが立たず、大赤字は避けられなくなり、市民トラスト、土地証券化など当てもない検討に奔走するばかりか、2工区を市が710億円も投じて直轄化することまで考えているのであります。博多港開発の破綻穴埋め計画を銀行と秘密裡に相談するのではなく、銀行にもきっぱりと責任を求めるべきです。大規模事業点検も新事業計画も2年ももたずに破綻しており、山崎市長には将来を見通す能力も、見直しを行う資格も、全くないことが露呈したと言わざるを得ません。また、市工区の土地処分計画についても、見通しがないにもかかわらず埋め立てを継続する姿勢は異常と言うほかありません。市民病院とこども病院の統合移転など、人工島の破綻救済のための税金投入をやめるとともに、人工島事業は、埋め立てをいったん凍結し、事業の抜本的見直しは第3者機関で行うべきであります。
九州大学学術研究都市構想は、整備推進機構の設立準備など6300万円の予算を付けて具体化しようとしていますが、莫大な公金投入を前提とする同計画の白紙撤回と予算の削減を要求します。新福岡空港については、事業化推進の立場をきっぱり放棄すべきです。
渡辺通駅北土地区画整理事業は、九電や福岡地所、都市未来ふくおか、福岡銀行などに便宜を図るものであることは明白であり、市が関与して巨額の税金を投入する理由は全くありません。葬祭場については、全面建替えをやめ、改築・改修で対応すべきであります。
第2は、真の財政再建と行財政改革についてです。
市債残高は、山崎市長の6年間だけでも4353億円増え、2004年度末で2兆6849億円、起債制限比率は18.1%といっそう悪化しておりますが、この危機的財政は市長の開発優先の市政によって作り出されたことは明白であります。財源不足を補うために基金の大幅な取り崩しに加え、市有地の資産処分にたよるなど市長の財政運営は、まさに破滅型と言わなければなりません。行財政改革の名で市民にツケを回すことをやめ、大型開発のムダづかいをきっぱりやめるとともに、政府債の繰上償還の恒久化、本格的な低利借り換え、返済期間の延長などを勝ち取ること、歳入については、大企業、高額所得者優遇の不公平税制を是正する必要があり、この立場で新規財源を見いだすことを要求します。
第3は、市民の暮らしと環境に関わる問題についてです。
市長は、国民健康保険料の値上げとあわせ、保険料の賦課割合を変更し応益割を引き上げて、低所得者の負担を増やそうとしていますが、相次ぐ負担増が滞納者を増やし、払えない人から保険証を取り上げ、1万4000件以上も資格証明書を発行して市民の医療を受ける権利を奪い、まさに「金の切れ目が命の切れ目」となっています。市費を大幅に繰り入れて保険料を引き下げるとともに、保険証は原則交付し、また減免制度を拡充して、市民が安心して医療を受けることができるようにすべきであります。
介護保険は、在宅サービスの利用者が対象者の3割、支給限度額でも30%台の利用率にとどまっているなど、介護の必要な人が必要なサービスを受けられないという深刻な事態を改善するため、国に対し介護保険の国庫負担割合を50%まで拡大するよう要求するとともに、市費も繰り入れて保険料や利用料の負担軽減を図るべきです。また、本市の低所得者のための保険料減免制度は、預貯金・資産等の厳しい要件をなくして拡充するとともに、利用料についても低所得者の利用料減免・助成制度を設けること、併せて、特別養護老人ホームの整備を大幅に増やすべきであります。
生活保護については、政府の生活保護支給費の切り下げや老齢・母子加算の廃止の撤回を要求するとともに、学資保険裁判の最高裁判決に基づき、自立・更正のための貯蓄を認め、人権侵害にも及ぶ冷たい保護行政を抜本的に改めることを強く要求するものであります。市営住宅は、公募倍率19.53倍と希望者が急増しており、新規建設を大幅に増やすべきであります。また分譲マンション居住者の不利益解消のため、助成など支援策を講ずることを求めるものです。
市民生活と地域経済を建て直すうえで、雇用と中小企業対策を強めることが重要ですが、何ら具体策が打ち出されておりません。市長は、本市職員を増員して教育、福祉、防災などの公的分野の雇用拡大に努めることとあわせ、市内主要企業に対し新規採用枠の拡大を働きかけるべきであります。中小企業対策費を大幅に増額するとともに、中小企業向け官公需発注を拡大し仕事確保を図るべきです。また、地場中小建設業者の仕事づくりと景気対策として大きな効果が期待できる住宅リフォーム助成制度の早急な創設を要求いたします。
家庭ごみ有料化は、ごみ減量に効果がないうえに、市民に重い負担を押しつけ、公的責任を放棄するものであり、やめるべきであります。
第4は、教育および子ども行政についてです。
異常な競争主義・管理主義の教育は、子どもたちの心と成長を深刻に傷つけています。教育基本法は前文で、憲法の理想の実現における教育の役割を示し、「真理と平和を希求する人間の育成」をうたっておりますが、一人ひとりが大事にされ、人格の個性的な開花を進めることが、今日ほど求められているときはありません。「人格の完成」「人間の育成」から財界の要求する「人材の育成」へと根本から覆そうとする教育基本法改悪にきっぱり反対するとともに、子どもの内心の自由をおかす愛国心教育や、差別・選別の習熟度別授業の固定化はやめるべきです。また、国の義務教育の国庫負担金の廃止・削減方針に反対するとともに、市長が年々削減してきた教育予算は大幅に増額すべきであります。
特に少人数学級は、その実施を国・県に要求するとともに、全国43道府県8政令市が独自に実施しているように、文部科学省が決定した研究指定校の活用、加配教員の配置見直し、市費による非常勤講師の増員などを行い、即時実現すべきであります。
民間保育園への補助金は、公私間格差の是正、保育園運営円滑化などのため必要不可欠であり、その削減は許されません。また、1000人に上る待機児と3815人の新規申し込み者が全て受け入れられるよう、必要な地域での早急な保育所新設を要求するものです。高過ぎる保育料は、子育て世代にとって大きな負担となっており、他都市並に市費を繰り入れて引き下げるべきです。
留守家庭子ども会事業は、入所希望の増加に対応する必要な増改築や指導員の増員、時間延長などを行うとともに、学校内設置の原則を踏み破り通園と帰宅の安全性が危惧される幼稚園での留守家庭子どもクラブは撤回することを要求するものです。
子どもたちが安心してのびのび遊び、社会性を培う児童館の設置を求める請願署名が23万筆以上に広がっており、専門職員のいる児童館を小学校区ごとに早急に設置すべきです。
第5は、汚職腐敗の徹底究明と一掃についてです。
本市の開発行政のもとで、総務企画局長が関わった河本建設談合贈収賄事件など次々と汚職腐敗事件が起き、再発防止策に取り組んできたというものの、その後も塗装談合事件、港湾局計画課長の収賄事件、港湾局理事のタクシークーポン券不正入手などが発覚し、警察等による家宅捜索は毎年という、まさに全国に例のない異常な事態となっており、汚職腐敗の一掃は緊急かつ欠くことのできない重要課題です。ケヤキ・庭石事件については、早急な処分を県警に要請するとともに、関係者に損害賠償を求めるべきです。また入札制度については、一定数の入札参加者の除外や予定価格の決定に抽選くじを導入するなど思い切った改革を進めるよう求めます。さらに、企業団体献金の禁止、少なくとも本市公共事業受企業からの献金やパーティ券購入の即時禁止を要求するものです。内部告発制度については、通報案件を三セク等も加え、告発者が調査状況や結果報告を受ける権利の明記、告発者保護の徹底、弁護士など第三者を受理・調査機関とし、守秘義務違反への罰則規定などを盛り込んだ実効あるものとし、内部要項でなく条例で制度化することを要求します。
第6は、公平公正な行政運営、市民の安全と平和を守る問題についてです。
行政経営改革などとして、本来直営で行うべき清掃工場や保育所、地下鉄の駅業務など市民生活に影響の大きい分野の民間委託は、自治体の公的責任を放棄し営利企業化させるものであり、やめるべきです。また市民と議会による行政監視を強化するため、全ての外郭団体・第三セクターの情報公開を徹底するとともに、市の退職幹部の外郭団体や利害関係のある民間企業への天下りを禁止すること、開発型の三セクについては廃止・縮小を進めることが必要です。指定管理者制度は、住民の福祉の増進を目的とした「公の施設」の管理を民間営利企業にゆだね、儲けの対象とすることに道を開くもので、個人情報漏えいの危険も伴うものであります。公的責任の保持のため、民間営利企業は「指定」の対象から除外するとともに、地方独立行政法人の適用はやめるべきであります。情報公開条例は、非公開対象を縮小し、相手先、場所など全て公開すべきです。博報堂を巻き込んだ市の広報テレビ番組業務の選定をめぐる問題は、市長自身が行政の公平公正な運営を歪めた許しがたいものであり、選定を公正にやり直すべきであります。
また「自治協議会」問題は、「住民自治」とはまったく相反し、補助金を一本化するなどをテコに、地域自治組織を市の都合に合わせた下請け組織にするものです。地域では自治協設立と補助金問題などをめぐり非民主的な動きや混乱が起きているのが実態です。自治協議会設立を強制すべきではありません。
全国の流れに逆行する本市の同和行政については、解同市協議会への団体補助金をはじめ、10億円余に上る同和関係予算は全額削除すべきであります。また市同研等同和団体への教員の派遣を中止するとともに、同和教育行政はやめるべきです。
政府が強行した自衛隊のイラク派兵は、世界中の反対世論を無視し開始された無法な戦争と不当な占領支配の一翼を担うものであり、憲法9条に真っ向から違反するものです。市長は、政府に自衛隊派兵の中止・即時撤退を強く要求すべきであります。また、福岡空港の基地全面返還を強く要求するとともに、博多港・港湾施設の軍事利用を許さず、「非核神戸方式」を適用すべきです。
次に、わが党が賛成する「福岡市男女共同参画を推進する条例案」についてですが、男女差別の一掃は市民の強い要望でもあり、条例の早期制定が望まれておりますが、より実効性あるものにするために、具体化するにあたって、母性保護の特別措置や雇用における間接差別の禁止、さらに苦情・不服を迅速に処理し、権利や利益の保護を図るために独立した「苦情処理委員会」を設置するなどの措置を講ずることを要求するものです。
以上で、わが党の討論を終わります。