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議会報告

2004年12月議会

2003年度決算議案に対する反対討論

2004年12月9日 日本共産党福岡市議団 比江嶋俊和議員

私は、日本共産党市議団を代表して、2003年度一般会計、および特別会計、ならびに企業会計決算諸議案のうち、議案第135号〜138号、140号〜151号、154号〜160号について認定しがたいことを表明し、反対討論を行います。


周知のように、2003年度政府予算は、大不況のもと、サラリーマン本人の3割負担など医療費の負担増をはじめ、年金、介護、雇用保険など社会保障分野の負担増と給付削減と、発泡酒等の税率引き上げや配偶者特別控除の廃止、消費税の免税点引き下げなど庶民増税で、合わせて4兆4000億円の負担増を国民に押し付けるとともに、銀行による貸しはがしが強まり企業倒産が激増する中、中小企業対策費を大幅に減らし、まともな雇用対策も行わない一方、税金のムダづかいと自然破壊の大型公共事業や手厚い軍事費を温存するなど、経済も財政も悪化させるものでした。また地方自治体に対しては、地方交付税の削減や借金押し付けを進めたのであります。

本市においては、人工島事業をめぐり銀行団から博多港開発株式会社への融資の打ち切り、事業の見直し要求などが出されるなど、山崎市長が推進してきた大型開発が明白な破綻に陥り、また不況によって市民生活が厳しい状況に置かれ、自然、環境、水、交通問題もいっそう深刻になっていました。さらに、ケヤキ・庭石事件が発覚し、博多港開発の10億円のムダづかい、政治家と市幹部による利権あさりが問題となっていました。

そうした中で、2003年度市政運営に強く求められていたのは、住民の安全、健康、福祉を保持するという自治体本来の責務に立ち返り、小泉内閣の構造改革路線と国民負担増の悪政から市民生活を守るとともに、不況打開と雇用拡大、暮らし・福祉・教育の充実、地場中小企業の振興などに全力を挙げ、水や自然、環境と調和した都市づくりへ転換すること、また市政をめぐる汚職腐敗を徹底解明し一掃することでありました。すなわち、開発行政から市民生活優先へ、自治体らしい自治体への根本的転換こそ強く求められていたのであります。

ところが、山崎市長の施政方針と予算は、こうした市民の願いに全く逆行するものでした。一般会計予算は、市税収入の減少など財源がいっそう苦しくなる中で、福祉や教育など生活関連は抑制・削減する一方、最大の開発である人工島へは2年続いて予算を一極集中させたもので、市長はまさに「あとは野となれ」とでも言うべき破滅型の予算編成を行ったのであります。2003年度決算は、以上のような当初予算の基調を数字ではっきり示すものとなっております。

一般会計歳入決算は、前年度比25億円、0.3%の減ですが、歳入の3割を占める市税収入は、市民生活の苦境を反映し、個人市民税が2.8%減少、固定資産税も3.7%減少しており、税財源の減少が顕著となっています。加えて、国の「三位一体改革」によって、地方交付税が86億円、12%減少する一方、臨時財政対策債が130億円増加するなど、国の財政赤字の地方への押し付けの影響も現れています。

一般会計歳出決算は、前年度比34億円、0.5%減でありますが、教育費は1997年度の698億円から536億円にまで削減され、一般会計に占める割合は過去最低の7.4%へと落ち込みました。保健福祉費は1.2%増となっていますが、生活保護は相談が増加しているにもかかわらず申請拒否、就労や辞退の強要など保護の抑制が行われてわずか5%増にとどまっており、待機者が急増する特別養護老人ホームの整備はわずか3ヶ所など、福祉分野が抑制、削減されています。また、国民健康保険は保険料の2.29%値上げを行った結果、収入率が低下しているように、高すぎて払えない事態が広がっています。市営住宅は希望者が殺到しているものの、建設費が前年度から13億円削減、新規建設はついにゼロとなりました。

中小企業対策費は一般会計のわずか0.15%に過ぎないのであります。

その一方、人工島建設には190億円もつぎ込んだうえに、博多港開発の破綻救済として、用地購入に24億円、中央公園整備に14億円を充て、さらに鉄軌道導入や市立病院移転など2000億円を超す公金投入の新事業計画を推進して、銀行とゼネコンを救済したのであります。他にも香椎駅周辺など土地区画整理6事業に117億円、都市高速道路に65億円など、大型開発事業に引き続き莫大な市費が投入され、また新福岡空港建設や九大移転を核にした学術研究都市構想など巨大開発を推し進めていますが、これは極めて異常な大型開発優先、市民不在の行財政運営と言わざるを得ません。

しかも、一般会計の決算規模が減少する中で、実質収支で64億円余の黒字決算となっておりますが、これは本来であれば福祉や教育の拡充に生かされるべきであったものが、逆に徹底して抑制、削減してきた冷たい財政運営の結果であることは明らかであります。

大型開発優先の中で、2003年度末市債現在高は前年度比2.3%増の2兆6482億円、市民一人当たり196万8000円となっており、借金財政は極めて深刻であります。起債制限比率は前年度より0.8ポイント上昇して17.6%、公債費比率も悪化し24.2%になっております。市長は人工島の直轄化による700億円起債をはじめ、借金増発路線を突き進んでいますが、こうした財政危機を理由に市民生活関連事業の削減や切り捨てをいっそう進めることは許されません。

2003年度決算は、以上述べたように、市民負担増と暮らし、福祉、医療、教育関連事業の徹底した抑制と削減、大企業・銀行・ゼネコン奉仕のムダな大型開発の継続と破綻救済、それによる借金増大と財政危機の進行が基調になっており、わが党はこのような決算諸議案を認定することはできないのであります。


次に、わが党が反対する諸議案のうち主要な問題についてその理由を明らかにしておきます。


第1は、人工島など大型開発と破綻救済についてです。

人工島事業は、市民の反対世論を押し切って進められ、総事業費4600億円のうち2003年度までに約5割が執行されましたが、必要性も採算性もないことがいよいよ明白となりました。今や人工島は、ムダな大型開発、税金のムダづかいの典型であると同時に、汚職と腐敗、利権あさりの象徴となっているのであります。市長は博多港開発工区の破綻救済のため、道路や公園の肩代わり整備など2000億円にのぼる公金投入となる「新事業計画」を策定し、事業を強行しました。ところが土地処分は進まず、本市の緊急融資は2003年度、87億円にものぼるなど、博多港開発の経営はすでに破綻しております。市長は、銀行団からの見直し要求に応じて、博多港開発2工区の市直轄化をしようとしていますが、人工島事業の継続は本市の将来に重大な悪影響を及ぼすものと言わなければなりません。こうした人工島の破綻救済を含む決算にわが党は断固反対するものです。山崎市長には事業を見直す能力も資格もないことがはっきりした今、市工区を含め埋め立てをきっぱりと凍結すべきであります。そして、埋め立て継続の是非について住民投票で市民の意思を問う必要があります。博多港開発は清算するとともに、開発型第3セクターはこの際抜本的に見直すことを要求するものです。また、都市高速道路など大型公共事業を引き続き推進し、福岡地下街開発に対して16億円の増資を行なうなど、開発破たんの救済に税金を投入していますが、こうした決算は容認できません。


第2は、深刻な借金財政についてです。

借金残高が2兆6482億円へと増え続け、本市の財政状況は明らかに悪化の一途をたどっています。市長は「財政は健全化しつつある」などと言うものの、山崎市政6年間で市債残高は4353億円増加し、とりわけ土木債や都市計画債、区画整理や港湾関連は年々膨れ上がっており、さらに新東部清掃工場建て替えなど外郭団体等が抱える長期借入金のうち市が返済すべき「隠れ借金」が706億円にものぼっています。こうした莫大な借金が市長自身の開発優先行政によってつくり出されたことは明白であります。行財政改革の名で市民に借金のツケをまわすことは許されません。ムダな大型開発をきっぱりやめ、開発優先の財政運営を根本的にあらためてこそ、暮らし、福祉、教育を充実しながら財政再建の道を切りひらく市民本位の行財政改革ができるのであります。


第3は、福祉、医療、介護、生活保護、保育など市民生活にかかわる問題です。

2003年度の国民健康保険料は、介護分とあわせて前年度比2.29%値上げされ、一人あたり8万8104円と、すでに負担能力の限度を超えており、保険料滞納が5万2037世帯、全体の11.9%へと増加しました。保険証を取り上げて交付した資格証明書は1万4532世帯、短期保険証は1万2583世帯にものぼりました。市長は、高すぎる保険料の引き下げと、保険証の原則交付、市民の医療を受ける権利を踏みにじり、まさに金の切れ目が命の切れ目という深刻な事態を生み出したのであります。老人医療費助成制度については、受診件数、扶助費とも減少しましたが、所得制限による締め出しがその一因であったことは明白です。お年寄りが安心して医療を受けられるよう、所得制限を元に戻すとともに対象年齢も拡充すべきだったのであり、ましてや制度の廃止など断じて認められないのであります。乳幼児医療費助成については、助成対象を通院についても就学前まで拡大し、初診料も無料化せよという市民の切実な願いに背を向け続けたままです。介護保険については、利用料の自己負担が重いため利用率が3割にとどまり、特別養護老人ホームは待機者が4460人となるなど、必要な人が必要な介護を受けられない深刻な事態でした。保険料減免の拡充や利用料助成の創設、特養ホーム増設などサービス基盤の整備が切実に求められていたわけですが、特養ホームの新設がわずか3ヶ所にとどまるなど、極めて不十分だったのであります。

生活保護は、相談件数が9275件と増えたにもかかわらず、その半数以上が申請さえ拒否され、保護認定が抑制されました。保護世帯への人権侵害の調査や就労の強要などによる強制的打ち切りも含め、保護廃止件数は3065件にものぼりましたが、これは法の趣旨に反する不当な保護行政の結果であり、直ちにあらためられなければなりません。また増えるホームレスの対策として、救護施設を増設すべきでした。保育行政については、働く若い世代が安心して子育てできるよう、保育所待機児の解消、高い保育料の引き下げなど、子育て支援の充実が緊急課題でしたが、保育所の新設はわずかで、定員以上のつめこみで対応してきたのであります。

このうえ、今でも少ない市立保育所を民営化するなど絶対に許されません。障害者施策については、支援費制度のスタートに伴い、予算措置の拡充と集中的な基盤整備などをおこなうべきでしたが、極めて不十分な対応にとどまったのであります。このように、山崎市長が、福祉などの市民生活関連の施策の拡充を求める市民の願いに反し、ことごとく抑制あるいは後退させてきたことは、断じて容認できないものであります。


第4は、子どもと教育の問題についてです。

子どもと教育をめぐる深刻な状況のもと、今日ほど、子どもたち一人ひとりが大切にされる教育が求められている時はありません。とくに30人学級の早期実現を求める世論が大きく高まっています。ところが本市は教育費を年々削減し、一般会計に占める割合はまたも過去最低を更新し、7.4%となりました。教育の充実を願う市民に背を向けた著しい教育行政軽視であり、また教職員には多忙化と健康被害をもたらすものとなっています。このような決算を認めることはできません。また、専門職員を配置した児童館の建設に背を向ける市長の姿勢は、子育て支援の充実が叫ばれる今日において、異常と言う他ありません。留守家庭子ども会事業は、入会希望者全員を受け入れるための施設拡充や指導員増員、土曜日開設が切実に求められていましたが、これには応えずわずかな改築にとどまったのであります。


第5は、雇用と景気対策についてです。

周知のように、2003年の失業率は5%の高水準、就職内定率が高卒で68%、大卒で82%、不況型倒産は過去最悪、勤労者世帯の年収は3年間で43万円も落ち込むなど、国民の暮らしと日本経済は深刻な危機に直面し、本市における雇用と地域経済も極めて厳しい状況でした。こうした中、景気回復のために本市に求められていたのは、経済の主役である個人消費を拡大し、中小企業を支えることでありました。具体的には、市民生活を支える施策を充実すること、中小企業に対する官公需発注の増額などの支援を抜本的に強化すること、福祉、教育、防災など公的な雇用を増やすこと、市内の企業に対してリストラ抑制と雇用拡大を要請することなど、独自の努力が求められていたのであります。 ところが市長は、こうした雇用と地域経済の再建に全く無策だったと言わざるを得ません。


第6は、汚職腐敗の一掃と清潔な市政の確立についてです。

人工島事業をめぐり一昨年発覚したケヤキ・庭石事件は、元助役の志岐眞一博多港開発前社長、大庭樹博多港開発元常務、西田藤二元市会議員が商法違反の特別背任容疑で逮捕・起訴され、3被告が共謀してケヤキと庭石の購入で4億円を超す裏金をつくり出し、選挙資金として使ったという構図が浮き彫りとなっています。港湾局汚職など相次ぐ汚職腐敗事件によって、本市の公共事業が食いものにされている実態は市民の前に明らかになっており、今や、政官業の構造癒着の一掃と企業団体献金の全面禁止が強く求められております。しかるに市長による調査は全く杜撰であり、再発防止策も実効性に乏しいものですが、これは清潔な市政を確立しようという断固たる決意が市長にないことを示しているものと言わざるを得ないのであります。


第7は、公平・公正な行政運営と、平和と市民の安全を守る問題です。

同和特別対策については、地対財特法が廃止され、国と多くの自治体が同和行政の終結を図る中、本市は、同和対策事業を継続し、2003年度も解同市協議会補助金4930万円など13億1501万円余の同和対策費を支出しましたが、これは異常であり時代逆行も甚だしいものであります。特別対策は例外なく全面的に廃止すべきであり、わが党はこのような決算を認めることはできません。

市長は2003年度から自転車駐車場に指定管理者制度を導入しましたが、公の施設の管理運営に営利目的の民間企業を参入させることは公的責任の放棄であり、認められません。市職員給与の5年連続引き下げは、職員に生活苦を強いるにとどまらず、委託業者や民間労働者の賃金にまで悪影響を広げるもので容認できないものです。

2003年7月19日の豪雨大水害は市民生活に大きな被害を及ぼしました。浸水対策の強化がいっそう求められるところです。御笠川流域や早良区脇山などでは住宅被災に対する支援策が極めて乏しいことが浮き彫りになりましたが、災害見舞金の大幅増額と住宅再建への公的補償に踏み出すことが求められております。

2003年は、無法なイラク戦争に加わった米ミサイル巡洋艦や、掃海艦2隻の博多港入港が相次ぎました。米軍に港や空港を提供することは、福岡の街と市民をテロの標的にさらすものであります。市民の命と安全を守るのが市長の最大の責務であり、板付基地の全面返還を強く要求するとともに、博多港、福岡空港の軍事利用は断固拒否すべきです。また、アメリカ占領下のイラクへの自衛隊派兵は、明白な憲法9条違反であるとともに、今やイラク特措法にも反しており、市長として即時撤退を国に要求すべきであります。


以上、2003年度決算に対するわが党の反対討論を終わります。


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