2003年6月議会
意見書について
2003年6月議会で議題となった意見書を紹介します。
日本共産党市議団は、これらの意見書に賛成しました。「イラク特措法に関する意見書」は賛成少数で否決されましたが、5つの意見書が可決されました。
ヤミ金融対策の強化を求める意見書
深刻な不況の中、主に多重債務者をねらったいわゆる「ヤミ金融」、「090金融」による被害が急増し、大きな社会問題になっています。暴力的・脅迫的な取立ては、家族や勤務先、周辺住民なども巻き込み、中には監禁、財産強奪の例もあり、また、「勝手な入金」や「押し貸し」まで行われています。その結果、退職、夜逃げ、ホームレス化、家庭崩壊、自殺、一家心中に追い込まれるなど、深刻な被害が続出しています。
ヤミ金融は、出資法で定められた上限金利(年29.2%)を超えた高金利での貸付を行うもので明白な違法行為であり、また未登録営業は貸金業規制法違反です。さらに、ヤミ金融が暴力団の資金源となっていることも指摘されています。ところが、この異常な事態にもかかわらず、警察による摘発は進んでいないのが現状です。
出資法の金利規定違反と貸金業規制法の登録営業違反の罰則強化、貸金業者の取り立て行為の規制の明確化と罰則強化などの法改正が緊急に求められています。日本弁護士連合会や全国ヤミ金融対策会議などは、上限金利の引き下げや、上限金利規定違反の貸し付けの民事無効、営業保証金制度の導入などを提唱しています。ヤミ金融の摘発・根絶と被害者救済は、今日、緊急の課題となっています。
よって、福岡市議会は、国会、政府及び福岡県が、ヤミ金融根絶のための法律を早期に制定するとともに、警察による摘発・取り締まり強化と被害者対応の改善、苦情相談など消費者保護の体制整備をすすめるなど、有効なヤミ金融対策を急がれるよう強く要請します。
地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
(全会一致で可決)
税源移譲を基本とする三位一体改革に関する意見書
現下の地方財政は、バブル経済崩壊後の税の大幅な減収に加え、国が経済対策の一環として実施してきた国税・地方税をあわせた政策減税、景気対策による公共事業の追加等の経済財政運営により、財源不足が拡大し、危機的な状況にあります。
このような中、真の分権型社会を実現するためには、自己決定・自己責任に基づく地方税財政基盤の確立が喫緊の課題となっています。
政府においては、平成15年6月27日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」の中で、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲等を含む税源配分のあり方について三位一体の改革を強力に推進し、また、改革を円滑に実現するため、15年度予算における取り組みの上に立って、来年度予算の中で改革を着実に進めることとされています。
税財政の抜革を実施するに当たっては、地方分権の基本理念を踏まえ、地方分権改革の残された最大の課題である、国と地方の役割分担を踏まえた税源移譲等による地方税財源の充実強化が必要不可欠です。
よって、福岡市議会は、国会及び政府が、基幹税の再配分を基本とする税源移譲等の地方税財源の充実強化を行い、地方交付税を通じた財源保障機能と財源調整機能を堅持しつつ、国庫補助負担金の廃止・縮減は、単なる地方への財政負担の転嫁とせず、税源移譲等との一体的実施とするとともに、政令指定都市における県費負担教職員制度の見直しに当たっては、学級編制等の包括的な権限移譲と税財源移譲を同時に実施されるよう強く要請します。
地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
(全会一致で可決)
医薬品の一般小売店における販売に反対する意見書
政府の総合規制改革会議は、本年2月17日の経済財政諮問会議において、「規制改革推進のためのアクションプラン」を提示し、そのプランの中で、重点検討事項の一つとして「医薬品の一般小売店における販売」を取り上げ、医薬品が効能効果とともに副作用被害の危険性をあわせ持っているにもかかわらず、利便性や経済性の観点から医薬品販売の規制緩和を求めています。
また、このプラン等をもとに、6月27日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(骨太の方針第3弾)の中では、医薬品販売体制の拡充が具体的な規制改革の一つになっています。
薬事法に基づく医薬品製造・販売尋に係る諸規制は、過去の副作用被害事例等の反省の上に立って築き上げられたものであり、医薬品の品質、有効性及ぴ安全性を確保し、人の生命や健康を守るために不可欠な社会的規制です。
そのため、医薬品販売業者は、需要の多い医薬品だけでなく、希少な医薬品であっても、国民が安全かつ適切に入手できるよう、その責任を果たしてきているところです。
医薬品の販売体制は、国民の健康や安全をどのように支えるかという視点で考えるべき問題であり、経済ベースのみで議論されるべきものではありません。国民の健康で安全な生活を守るためには、医薬品の一般小売店における販売を認めてはならないと考えます。
よって、福岡市議会は、国会及び政府が、利便性や経済性の名のもとに、国民の健康で安全な生活が脅かされることのないよう、一般医薬品の安全性を確保するために医薬品の販売許可制度を存続されるよう強く要請します。
地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
(全会一致で可決)
郵便投票制度の改正など障害者等の選挙権保障に関する意見書
我が国の郵便投票制度は、投票等に際して自筆を条件としており、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者等で自筆ができない重度の身体障害者の方々にとって、投票権の行使が困難な状況にあります。また、寝たきりの高齢者や難病の方々は、投票所に行くことが困難であるにもかかわらず、郵便投票の対象者から外されるなど、実質的に投票権が奪われた状態にあります。
このような中、在宅療養中のALS患者が、郵便投票で代筆を認めていない現行の選挙制度は法の下の平等に反するとして国家賠償を求めた訴訟において、平成14年11月28日、東京地裁は、原告の訴えを棄却したものの、原告等が選挙権を行使できる投票制度がなかったことは憲法違反と言わざるを得ないとの判断を示しました。
この判決に関して、福田官房長官も「投票が困難な方々の投票機会を確保することは重要な課題と認識している」と発言しています。
また、対人恐怖症で投票所に行くことができない知的障害者の男性が、郵便投票制度を重度身体障害者に限った選挙制度は憲法違反であるとして国家賠償等を求めた訴訟においても、平成15年2月10日、大阪地裁は、原告の訴えを退けましたが、現行制度は投票の機会の平等を保障した憲法の趣旨に照らして必ずしも完全なものではなく、在宅投票の対象拡大などの方向で改善が図られてしかるべきものであると指摘しています。
よって、福岡市議会は、国会及び政府が、障害者や難病患者、要介護の高齢者等への郵便投票の対象者の拡大や在宅投票制度の創設などを行うとともに、ALS患者等で自筆が困難な人のために代理投票制度の導入など投票の機会を確保し、さらに障害者の方々の選挙権を保障するために現行制度の資格証明や申請手続き等を簡素化するなど、法整備を含め早急に制度の改善を図り、あわせて制度の不正利用を防止するために十分な対策を講じられるよう強く要請します。
地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
(全会一致で可決)
義務教育費国庫負担制度の堅持を求める意見書
今、学校教育は、いじめ、不登校、中途退学、子どもの荒れなど、深刻な状況にあり、これらの解決が緊急の課題となっています。
これまでの日本の教育は、一定の知識を効率よく教えるには適したシステムでしたが、現在は、一人一人の個に応じた多様な学習の展開による創造的な人材の育成が求められており、構造的な変革を迫られています。
このため、国においても2001年度から第7次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画を実施するなど教育改革に取り組んでいますが、学習・授業の効果的な展開を保障し、教職員と子どもたちとのきめ細かい触れ合いが可能な教職員数の配置増など教育に対する条件整備の拡充が、なお強く望まれているところです。
このような中、今年も例年のように、学校事務職員や栄養職員の給与費を義務教育費国庫負担制度から除外し、一般財源化するという動きが懸念されます。
もし、これが実施されるならば、地方財政が受ける影響は極めて大きく、地方自治体の財政力により教育水準に格差が生じるなど、義務教育の円滑な推進に重大な支障をもたらすことになりかねません。
よって、福岡市議会は、国会及び政府が、財政面から義務教育を支えるという義務教育費国庫負担制度の本来の趣旨にのっとり、同制度を堅持されるよう強く要請します。
地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
(全会一致で可決)
イラク特措法に関する意見書
小泉内閣は、国会を延長し、イラクに自衛隊を派遣する「イラク復興支援特別措置法」(イラク特措法)を制定しようとしています。しかしながら、「人道・復興支援活動」の名のもとに自衛隊派兵「先にありき」というこの法案の本質が、国会審議の中でも明らかになってきています。
米英軍によるイラク戦争は、国際平和のルールを定めた国連憲章をも踏みにじる無法な戦争であり、口実とされた大量破壊兵器はいまだ確認されておらず、軍事占領とあわせ世界から強い批判が上がっています。イラクは今なお戦闘が続いており、こうした中での自衛隊派兵は、我が国がイラク国民に銃を向けることにもつながりかねず、武力による威嚇や行使、交戦権を否定した日本国憲法第9条に違反するものです。
既に、国連開発計画(UNDP)、世界食糧計画(WFP)、世界保健機関(WHO)、国連児童基金(UNICEF)、赤十字国際委員会(ICRC)などが救援活動を行っており、日本を含む80カ国以上のNGO(非政府組織)も参加しています。イラクヘの人道・復興支援というならば、こうした国連を中心とした支援協力に我が国が本格的に取り組むことこそが求められています。
よって、福岡市議会は、国会及び政府が、憲法の平和原則に反する「イラク特措法」の制定をやめ、国連を中心とした真のイラク復興支援に取り組まれるよう強く要請します。
地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
日本共産党、民主・市民クラブ、社民・市政クラブ、ふくおかネットワークが賛成。
自民党、公明党、みらい福岡、平成会が反対。賛成少数で否決
イラク特措法に関する意見書 提案理由説明
2003年7月4日 比江嶋俊和
私は、民主・市民クラブ、社民・市政クラブ、ふくおかネットワーク及び日本共産党市議団を代表して、意見書案第10号「イラク特措法に関する意見書」について、提案理由の説明を行います。
いま、小泉内閣は有事法制の強行に引き続き、国会を延長し、今度は「人道・復興支援活動」の名のもと、イラクに自衛隊を派遣する新たな「イラク特別措置法」(案)を制定しようとしています。しかしながら、イラクでは、米英の軍事占領に対する国民の怒りが高まるなか、前政権残存勢力や占領に反対する武装勢力との戦闘が激しく続き死傷者が相次いでおります。現地の米軍司令官も「イラク全土が戦闘地域だ」と述べています。こうしたなかでの自衛隊派兵は、「復興支援」どころか米軍占領指揮下で我が国が「軍事支援」を余儀なくされることは火を見るより明らかであります。これは、政府みずから集団的自衛権の行使になり憲法上できないとしてきたことにほかなりません。
実際、国会審議のなかで、派遣される自衛隊は陸・海・空の約1千人規模で対戦車砲や装甲車、重機関銃などかってない重装備になることが防衛庁で検討されていることも判明しています。まさに、自衛隊派兵は、我が国がイラク国民に銃を向けることにもつながりかねず、これは、武力による威嚇や行使、交戦権を否定した日本国憲法九条に違反し、許されるものではありません。
もともと、米英軍によるイラク戦争は、世界の多くの人々の反対を押し切り、国際平和のルールを定めた国連憲章をも踏みにじる無法な戦争でした。しかも、口実とされた大量破壊兵器などは未だ見つかっておらず、この戦争に何ら正当な理由はありません。だからこそ、安保常任理事国であるフランス、ロシア、中国をはじめ国連加盟国の圧倒的多数が米英のイラク攻撃に反対し、軍事占領にも加担していないのであります。こうした軍事占領下のイラクに自衛隊を派遣することは、米軍とともに「砂漠のサソリ」掃討作戦などの軍事行動を拡大するだけであり、占領支配を長引かせて泥沼化し、イラク国民の苦難を増やす一方です。
また、自衛隊派兵は一日も早い平和的復興を求める中東諸国や世界の国々から強い批判を浴びることは必至であり、日本が国際社会で外交的にも孤立し信頼を失うだけであります。
安保理決議は「国連が人道援助・イラク復興に不可欠の役割をはたすべきだ」としています。いま求められている支援は、電力供給、飲料水、衛生、医療、教育、食料、雇用などの分野で、イラク国民の持っている能力を活用・組織する方向での専門技能・知識を伴う援助などです。したがって、イラクへの人道・復興支援というなら、自衛隊派遣ではなく、イラク国民が自ら平和的に統治する日を早急に実現できるよう、国連を中心とするこうした支援協力にこそ我が国が本格的に進むことであります。
以下、意見書案文を読み上げて提案と致します。
(案文)
以上、議員各位の賛同をお願いして私の提案理由説明を終わります。
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