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議会報告

2003年12月議会

2002年度決算議案に対する反対討論

2003年12月9日 日本共産党福岡市議団 比江嶋俊和議員

私は、日本共産党市議団を代表して、2002年度一般会計、および特別会計、ならびに企業会計決算諸議案のうち、議案第175号〜178号、180号〜191号、194号〜200号について認定しがたいことを表明し、反対討論をおこないます。


周知のように、2002年度政府予算は、長期にわたる深刻な不況のなか、医療費を中心に社会保障費を削り国民に負担を押し付け、文教費や中小企業対策費は削減する一方、従来型公共事業を継続し、軍事費を増額、大銀行支援の70兆円枠も温存するなど、大企業・大銀行応援、暮らし冷遇を特徴とするもので、構造改革と称して経済も財政も悪化させた上に倒産と失業を増大させ景気回復に逆行するものでした。また地方自治体に対しては、地方交付税の削減や借金押し付けをすすめたのであります。

本市においては、人工島事業をめぐり新生銀行が博多港開発株式会社への融資を打ち切るなど、山崎市長が推進してきた大型開発が明白な破綻に陥り、また不況に加え福祉や教育の抑制と削減によって市民生活は厳しい状況に置かれ、自然、環境、水、交通問題もいっそう深刻になっていました。さらに、公共事業をめぐり、汚職腐敗事件が相次いで発覚していました。

そうした中で、2002年度市政運営に強く求められていたのは、住民の安全、健康、福祉を保持するという自治体本来の責務に立ち返り、小泉内閣の構造改革路線と国民負担増の悪政から市民生活を守るとともに、不況打開と雇用拡大、暮らし・福祉・教育の充実、地場中小企業の振興などに全力を挙げ、水や自然、環境と調和した都市づくりへ転換すること、また市政をめぐる汚職腐敗を徹底解明し一掃することでありました。すなわち、開発行政から市民生活優先へ、自治体らしい自治体への根本的転換こそ強く求められていたのであります。

ところが、山崎市長の施政方針と予算は、こうした市民の願いに全く逆行するものでした。一般会計予算は、前年度に比べ増額となったものの、市税の減少など限られた財源のもと、人工島など開発破綻を救済するための予算を優先する一方、多くの待機者を抱える特別養護老人ホームや保育所の整備は抑えられ、教育費の削減、市立高校等授業料値上げが強行されました。市長は、まさに「あとは野となれ」とでも言うべき破滅型の予算編成をおこなったのであります。

2002年度決算は、以上のような当初予算の基調を数字ではっきり示すものとなっております。一般会計歳入決算は、前年度比35億円、0.5%の増でありますが、増加要因は、各種基金からの繰り入れ71億円増、商工金融資金元利収入など諸収入114億円増、県から事務の委譲を受けた児童扶養手当に係る児童福祉費負担金および生活保護費負担金の増などにともなう国庫負担金32億円増などが主なものであり、その一方で、市税は法人市民税がマイナス20億円、また地方交付税マイナス55億円など、税財源の減少が顕著となっており、これは本市経済の低迷ならびに市民生活の苦境を反映したものであります。

一般会計歳出決算は、前年度比0.5%増でありますが、教育費は1997年度の698億円から573億円にまで削減され、一般会計に占める割合は過去最低の7.9%へと落ち込みました。保健福祉費は7.0%増となっていますが、これは子ども総合相談センター建設や子ども行政の一元化などによるものであり、生活保護は相談が増加しているにもかかわらず申請拒否、就労や辞退の強要など保護の抑制がおこなわれてわずか4%増にとどまっており、また待機者が急増する特別養護老人ホームの整備はわずか3ヶ所、民間保育園への補助金1.6億円カットなど保育所費6億円削減など、福祉分野が抑制、削減されています。介護保険事業特別会計は市民に重い負担を押し付け、第1期3年間で6億5000万円もの剰余金を出しております。また、市営住宅は希望者が急増しているものの管理戸数を削減しており、中小企業対策費は一般会計のうちわずか0.16%にすぎないのであります。

その一方、人工島建設に133億円、香椎駅周辺など土地区画整理6事業に126億円、都市高速道路に72億円、国際会議場建設に93億円など、大型開発事業に引き続き莫大な市費が投入されています。また、人工島の破綻救済として本来博多港開発が負担すべき道路などの肩代わり整備、下川端再開発でもエスビーシー破綻救済策として博多リバレイン地下2階の借り上げなど、公的資金投入によって開発破綻を穴埋めし、銀行とゼネコンを救済したのであります。さらに人工島開発では、公園整備や鉄軌道導入、市立病院移転など新たに2000億円を超す公金投入の新事業計画をすすめ、新福岡空港建設や、九大移転を核にした学術研究都市構想など新たな巨大開発を推し進めており、極めて異常な市民不在の行財政運営と言わざるを得ません。

一般会計は実質収支で60億円の黒字決算となっており、これは福祉や教育の徹底した抑制、削減など市民犠牲の財政運営の結果であることは明らかであります。

2002年度末市債現在高は前年度比3.1%増の2兆5889億円、市民一人当たり194万円となっており、借金財政は極めて深刻であります。山崎市長は「財政は健全化しつつある」などと言うものの、山崎市政5年間で市債残高は4928億円増加し、とりわけ土木債や都市計画債、区画整理や港湾関連は年々膨れ上がっており、莫大な借金が市長自身の開発優先行政によってつくり出されたことは明白であります。しかも、国際会議場建設や新東部清掃工場建て替えなどPFI方式等による委託金は事実上の公債費負担、隠れ借金に他ならず、「プライマリーバランスは達成した」との市長の言い分は根拠がないと言わざるを得ません。さらに、採算を度外視し大型開発推進や施設管理などをおこなう第3セクターや外郭団体の債務超過、経営破綻も本市財政にいっそう深刻な影響を与えるのは必至であります。こうしたなかで、起債制限比率は前年度より0.7ポイント上昇して16.8%、公債費比率も悪化し23.9%となるなど、本市財政はいよいよ危険な状態ですが、これを理由に、市民生活関連の抑制や削減をいっそうすすめることは許されないのであります。

2002年度決算は、以上述べたように、「行財政改革」の名による、市民負担増と暮らし、福祉、医療、教育関連事業の徹底した抑制と削減、「選択と集中」と称して大企業・銀行・ゼネコン奉仕のムダな大型開発の継続と拡大、開発破綻の救済、それによる借金増大と財政危機の進行が基調になっていること、さらに水道、下水道、地下鉄運賃を初め、各種公共料金には消費税が転嫁されており、わが党はこのような決算諸議案を認定することはできないのであります。


次に、わが党が反対する諸議案のうち主要な問題についてその理由を明らかにしておきます。

第1は、雇用と景気対策についてです。

周知のように、2002年の勤労者世帯の実収入は前年に比べ2.3%減で史上初めて5年連続減少、消費支出も5年連続減少、完全失業者は359万人で11年連続増加、完全失業率は5.4%と過去最悪を記録し、企業倒産は戦後2番目に多い1万9458件にのぼるなど、国民の暮らしと日本経済は深刻な危機に直面していました。本市においても、有効求人倍率が0.48、企業倒産が217件など、極めて厳しい状況でした。こうしたなか、景気回復のために本市に求められていたのは、経済の主役である個人消費と中小企業を支え、立て直すことでありました。具体的には、市民生活を支える施策を充実するとともに、中小企業に対する官公需発注の増額などの支援を抜本的に強化し、福祉、教育、防災など公的な雇用を増やし、市内の企業に対してリストラ抑制と雇用拡大を要請するなど、独自の努力が求められていたのであります。ところが市長は、景気回復に無策であるばかりか、行財政改革を理由にして市民の暮らし、福祉、中小企業対策を抑制、削減しました。これでは個人消費の拡大にも景気回復にも逆行するものと言わざるを得ず、わが党は容認できません。


第2は、福祉、医療、介護、生活保護、保育など市民生活にかかわる問題です。

2002年度の国民健康保険料は、またも値上げされ、介護分とあわせて前年度比1.83%増の一人あたり8万6480円と、すでに支払能力の限度を超えており、保険料滞納が4万8169世帯にものぼりました。保険証を取り上げて交付した資格証明書は819増え、1万4954世帯、短期保険証は1万1408世帯に及んでおり、まさに金の切れ目が命の切れ目という事態は、本市の冷たい国保行政の結果であります。市長は、高すぎる保険料を引き下げ、保険証を原則交付して、市民の医療を受ける権利を保障すべきです。老人医療費助成制度については、受診件数、扶助費とも減少していますが、国の医療改悪とあわせ本市の所得制限による締め出しがその一因であることは明白です。

お年寄りが安心して医療を受けられるよう、所得制限を元に戻すとともに対象年齢も拡充すべきです。乳幼児医療費助成は、助成対象を通院についても就学前まで拡大するとともに、初診料を無料化すべきであります。介護保険については、利用料の自己負担が重いため利用率が3割にとどまるなど、必要な人が必要な介護を受けられない深刻な事態です。また特別養護老人ホームは、待機者が3326人となりましたが、2002年度の整備はわずか3ヶ所145人分にとどまったことは看過できません。保険料減免制度は預貯金などの厳しい要件はやめて拡充するとともに、利用料助成の創設、特養ホーム増設などサービス基盤の整備が切実に求められています。生活保護は、相談件数が9135件と増え続けているにもかかわらず、その半数以上が申請さえ拒否され、保護開始が抑制されています。保護世帯への人権侵害の調査や就労の強要などによる強制的打ち切りも含め、保護廃止件数は4013件へと増えていますが、これは法の趣旨に反する不当な保護行政の結果であり、直ちにあらためられなければなりません。また本市でも増える一方のホームレスの対策は、極めて不十分であり、救護施設の増設などが求められます。保育行政については、急激に増え続ける保育所待機児の解消のため、保育所の新設が当然求められていたにもかかわらず、定員以上のつめこみで対応してきたことは問題です。今年度から新設が始まりましたが、引き続き必要な地域で新設をすすめるなどの早急な対応が求められています。また、高い保育料は市費繰り入れを増やして引き下げ、働く若い世代が安心して子育てできるようにすべきであります。障害者施策については、支援費制度への移行を前にして集中的な基盤整備などをおこなうべきでしたが不十分と言わざるを得ません。支援費制度のもとで予算措置と対策を一層充実させることが求められます。


第3は、子どもと教育の問題についてです。

子どもと教育をめぐる深刻な状況のもと、今日ほど、子どもたち一人ひとりが大切にされる教育が求められている時はありません。ところが本市は教育費を年々削減し、一般会計に占める割合がついに過去最低の7.9%となったのであります。教育の充実を願う市民に背を向けた著しい教育行政軽視と言わざるを得ず、このような決算を認めることはできません。教育予算を大幅に増額し、とくに実現を求める市民の世論がかつてなく大きく高まっている30人学級を早期に実現すべきであります。同時に、子どもの健全な育成のために、専門職員を配置した児童館の建設を強く求めるものです。また、留守家庭子ども会事業は、教育委員会所管に戻すとともに、入会希望者全員を受け入れるため、施設拡充や指導員増員をおこない、また土曜日開設に踏み切るべきです。


第4は、人工島など大型開発と破綻救済についてです。

人工島事業は、市民の反対世論を押し切ってすすめられ、総事業費4600億円のうち2002年度までに約5割が執行されましたが、必要性も採算性もない人工島開発にまさに人もカネも集中させて血道を上げる市長の態度は異常であります。今や人工島開発は、ムダな大型開発、税金のムダづかいの典型であると同時に、汚職と腐敗、利権あさりの象徴となっているのであります。人工島事業は、これ以上の埋め立てをやめて、全体を総点検し、市民参加で抜本的に見直すべきです。「博多港開発株式会社」は、完全に破綻状態となっているものの、市が約30億円の追加出資をおこなった上、大規模公園や鉄軌道の整備など2000億円を超す新事業計画をすすめ、2002年度も用地買収や都市計画道路整備などに多額の市費が投じられましたが、こうした破綻穴埋めは断じて認められないものです。博多港開発は現行資産の活用と管理のみの会社に整理縮小すべきであります。また、新福岡空港の事業推進は巨額の税金投入につながるものであり、認められません。現空港の活用や近隣空港との機能分担を図るべきです。あわせて、渡辺通1・3丁目再開発事業は中止し、事実上破綻している「都市未来ふくおか」は解散させるとともに、開発型第3セクターはこの際抜本的に見直すことを要求します。


第5は、汚職腐敗の一掃と清潔な市政の確立についてです。

人工島事業をめぐり発覚したケヤキ・庭石事件は、博多港開発が10億円ものムダづかいをし、西田元市議のファミリー企業が5億円もの転売益を得たことが明らかになり大問題となりました。市長は当初、調査さえ拒みましたが、事件の徹底究明を求める市民の世論の高まり、また議会に設置された百条委員会における調査等を受け、志岐前社長を特別背任罪で告発するに至りました。こうしたなかで今度は、港湾局の業務委託と高速道路公社の製品納入に絡む港湾局課長の収賄事件が起き、山崎市政の5年間だけでも、河本建設談合贈収賄事件、副議長あっせん収賄事件など、本市公共事業をめぐり、談合や汚職腐敗事件が次々と発覚し、まさに後を絶たないのであります。今ほど、政官業の構造癒着と汚職腐敗の一掃、再発防止策の確立が求められている時はありません。そのために、市長自身が、財界・業界との癒着をきっぱりと断つとともに、市幹部を先頭にした職員倫理の確立、談合を防止する真の入札制度改革、内部告発制度の確立、企業団体献金の禁止など、抜本的な対策を講ずるよう強く要求します。


第6は、行財政改革および財政再建についてです。

人工島開発の破綻救済に巨額の税金投入をすすめた結果、本市の借金は増える一方であります。外郭団体でおこなっている国際会議場や東部清掃工場の建設、さらに臨海清掃工場のPFIによる余熱施設の建設費など、市債に含まれない「隠れ借金」も420億円にのぼり、財政状況は明らかに悪化の一途をたどっています。行財政改革の名で市民に借金のツケをまわすことは許されません。ムダな大型開発をきっぱりやめ、開発優先の財政運営を根本的にあらためてこそ、暮らし、福祉、教育を充実しながら財政再建の道を切りひらく市民本位の行財政改革ができるのであります。


第7は、同和行政および同和教育についてです。

部落問題は基本的に解決したとして、国が2001年度をもって地対財特法を廃止し、一切の同和特別対策を終了しました。これが全国の流れです。ところが本市は、2002年度に103の同和対策事業のうち85事業を継続し、解同市協議会補助金4930万円など14億4200万円余の同和対策費を支出しておりますが、これは異常であり時代逆行も甚だしいと言わざるを得ません。特別対策は例外なく全面的に廃止すべきであり、わが党はこのような決算を認めることはできません。


第8は、平和と市民の安全を守る問題です。

アメリカがイラクへの無法な先制攻撃の戦争へ突き進んだ2002年度、米空母随行艦の博多港入港、米空軍輸送機の4度にわたる福岡空港飛来に続き、今年も米軍掃海艦2隻や巡洋艦の博多港入港が相次いでいます。米軍に港や空港を提供することは、福岡の街と市民をテロの標的にさらすものであります。市民の命と安全を守るのが市長の最大の責務であり、博多港、福岡空港の軍事利用は断固拒否すべきです。板付基地の全面返還を強く要求するとともに、この際、全土が戦争状態となっているイラクへの自衛隊派兵にきっぱり反対の意思表示をすべきであります。


以上、2002年度決算に対する基本点を述べてまいりましたが、最後に、深刻な不況が137万市民に襲いかかり、国が社会保障の改悪を押し付けている今こそ、本市が福祉の増進を図るという自治体本来の役割を発揮するよう、市民と共同して全力を尽くす決意を表明し、わが党の反対討論を終わります。


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