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政策と活動

2026年度予算要望

2026年度予算編成に関する申し入れ

2025年12月19日

福岡市長  髙島 宗一郎 殿
福岡市教育長 下川 祥二 殿

日本共産党福岡市議団
団 長 中山 郁美
幹事長 倉元 達朗
堀内 徹夫
綿貫 康代

高市自民・維新政権は、アメリカに要求されるままに軍事費増額や安保3文書改定の前倒しを進め、従来の政府見解からも逸脱した「『台湾有事』は『存立危機事態』に該当」との答弁をおこない日中関係を極度に悪化させ、日本の国是である「非核三原則」の見直しにまで踏み込もうとしているなど、日本と世界の平和を脅かしています。また、破たんしたアベノミクスの再現を狙って「責任ある積極財政」を掲げていますが、その中身は大軍拡と大企業支援を強める一方で医療や介護などの社会保障分野の削減を狙うものになっており、物価高騰に苦しむ市民の暮らしを一層痛めつけるものとなっています。さらには、企業・団体献金の禁止や裏金事件の真相解明には背を向け、議会制民主主義を弱体化させる議員定数削減を推進し、国民の思想・信条の自由の侵害につながる「スパイ防止法」制定を企てるなど、民主主義を後退させるような政治を進めようとしています。

このようなアメリカいいなり、財界・大企業中心、民主主義破壊を企てる国の政治に対して、いま市政に求められていることは、憲法の精神を生かし、住民の暮らしと福祉を良くするという自治体本来の仕事を推進し、国が進める悪政から市民を守る「防波堤」の役割を果たし、地方自治と民主主義を発展させることです。

髙島市長はこれまで、「都市の成長」を「生活の質の向上」に結び付けるという名目で、大型開発や規制緩和を推進してきましたが、このような市政では市民の暮らしの困難を打開することはできません。市民のなかに貧困が広がり、中小零細業者の廃業・倒産などが相次いでいるという市内の現状がそれを証明しています。いまこそ、市民の苦難に心を寄せ、社会保障の充実や教育費の負担軽減、給付の増額など、市としてできることを最大限にやるべきです。

よって、2026年度予算編成にあたり、以下の重点要望を実現されるよう貴職に申し入れます。

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2026年度福岡市予算編成に関する日本共産党の重点要望

1、国が進める悪政から市民を守る「防波堤」の役割果たし、市政の抜本的な転換を

(1)国の悪政から市民を守る

  • 消費税を緊急に5%に減税し、インボイス制度を廃止するよう国に求めること。大企業や富裕層への減税・優遇措置を見直して応分の負担を求め、GDPの2%という大軍拡予算の削減などムダづかい一掃で恒常的な財源をつくり、「マクロ経済スライド」などの年金実質削減をやめる-ことや高すぎる医療費窓口負担の軽減など社会保障を削減から充実へと転換するとともに、教育予算を抜本的に増やすよう国に求めること。
  • 最低賃金を速やかに全国一律時給1500円に引き上げ、時給1700円をめざすよう国に求めること。その際、500兆円を超えて積み上がっている大企業の内部留保に対して時限的に課税して10兆円の財源をつくり、中小企業の賃上げ直接支援を抜本的に強化し、内部留保課税にあたっては賃上げ分を控除することで大企業の賃上げも促進するよう国に求めること。あわせて、「1日7時間、週35時間労働制」への移行や時間外・休日労働の上限規制を設けることで労働時間の短縮を図ることや、非正規ワーカーの待遇を改善するための法律をつくって「同一価値労働同一賃金」を徹底し、不当な雇い止めや解雇を規制するよう国に求めること。
  • 新しい需要と雇用を生み出し地域循環型経済の発展を進めるために、原発ゼロや石炭火力発電からの撤退を決断し、再生可能エネルギーを抜本的に増やすよう国に求めること。また、米の価格高騰を抑えるために、減反・減産の押し付けをやめ、「市場まかせ」から安定供給に国が責任を持つ農政に転換することや価格保障・所得補償の充実を図ることとあわせて「輸入自由化」路線を転換することで食料自給率を早急に50%に引き上げる計画を持つよう国に求めること。
  • 「安全保障3文書」に基づく「敵基地攻撃能力」の保有や軍事費のGDP比3.5%への引上げといった「戦争国家」づくりをあらため、集団的自衛権行使容認の閣議決定と安保法制を廃止するとともに、対話と協力の外交に力を入れているASEANと協力して東アジア規模の平和の地域協力の枠組みを発展させるよう国に求めること。

(2)市政転換

本市はこれまで、「都市の成長」を「生活の質の向上」に結びつけるという名目で、大型開発や巨大イベントを強力に推進してきたが、その恩恵は大企業に集中しており、市民や市内中小業者にはほとんど回っておらず、これでは市民の暮らしの困難を打開することにはならない。「天神ビッグバン」などの大型開発優先や外からの「呼び込み」頼みをあらため、市民の暮らし・福祉や市内中小業者の経営を応援することで市内経済の活性化を図るという地域循環型経済を実現する方向へ市政を転換すること。

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2、医療・介護・障害福祉などケアを支える市政を

(1)マイナンバー保険証

国は昨年12月2日から紙の保険証の新たな発行を行わない運用を強行しマイナ保険証利用を推進しようとしてきたものの、国民健康保険における利用率はいまだ4割にも届いていない。窓口で本人の情報が表示されないトラブルやマイナンバーカードの有効期限切れ、さらにはスマホ保険証の運用開始による混乱などが低迷の要因であり、マイナ保険証の登録解除も1000件を超える等、制度の信頼性が失われているのが実態である。マイナ保険証利用者も含む全ての被保険者に対して資格確認書を交付するとともに国に対して、マイナ保険証の押し付けを中止し、従来の紙の保険証との併用を認めるよう強く求めること。


(2)国民健康保険

  • 本市の国保世帯の平均所得は約79万円と低い水準にとどまっており、所得200万円以下の低所得者がその約83%を占めている。おさまらない異常な物価高が被保険者の経済的負担を増大させ貧困を拡大させている中、介護分を含め史上最高額となっている一人あたり保険料を継続することは到底許されない。「収入未済」や「減免」分等を保険料に上乗せする方式を見直すとともに、当面一般会計からの法定外繰り入れを過去最高水準まで引き上げ、保険料の大幅引下げを図ること。
  • 国保においては古代につくられた人頭税のように子どもにまで均等割保険料を押し付けている。国は世論に押され未就学児のみを半額にし、本市独自には多子世帯のみの減免を実施しているもののこれでは全く不十分である。当面市独自に18歳までの子ども全てに対し全額免除とするとともに、国に対し公費1兆円規模の投入で均等割、世帯割をなくし保険料の協会けんぽ並みへの引下げを可能にするよう求めること。
  • 現在本市においては到底高額所得者と言えない世帯が年109万円もの保険料最高額を強いられている。「応益割」偏重の是正など、逆進的な国保料を生み出している算定式の見直しや累進性の強化を図るよう国に求めること。
  • 国保の構造問題を解決しないまま自治体の主体性を奪い、住民負担増や滞納制裁強化、一般会計繰入の抑制等を強制するやり方などすでに大きな影響を生み出している「都道府県単位化」は、ただちに見直すよう国に求めること。
  • 本市の保険料減免世帯比率はわずか5.2%にとどまるなど、きわめて低い水準にある。物価高騰の影響が拡大し続ける今こそ「所得が前年に比べて30%以上減少」という条件を「前年比20%以上」に改善するとともに、所得減少の場合のみにとどめず中小零細業者や低所得者層の実態に即して適用対象を広げ、広報を充実させること。また、減免申請については前年度の所得が確定する時期を待たず、保険料確定後のいずれの時期においても見込みで受理し決定すること。
  • 国民健康保険法44条に定める失業など所得減少世帯に対する窓口一部負担金減免制度について、本市では適用が13年連続0件という異常な事態となっており、改善が図られていない。「前年度比3割以上の減少」という収入要件等の厳しい条件が付されていることによって、日常的に生活が厳しい人は適用されない等の矛盾が引き起こされており、早急に要件を見直し、困窮者を救える制度へと改めること。また、制度についてチラシを作成し医療現場の窓口へ設置するなど周知を図り、ホームページ、市政だより等で広報すること。
  • 保険料の滞納で医療費の窓口10割負担となった世帯から、自己負担が困難だとの申し出があれば、自治体の判断で負担を3割にできるとする厚労省通知を踏まえ本市でも遅滞なく運用し、各区担当者や医療機関に対し周知・徹底すること
  • 本市における国保料滞納者に対する差し押さえは、わずかな預金9円を差し押さえる事例や公的手当が入る口座を狙い撃ちにしたものも含まれているなど、異常なやり方が横行している。公的手当をはじめ年金、子どもの学資保険さえも差し押さえる冷酷、異常、機械的なやり方はただちにやめること。

(3)後期高齢者医療制度

  • 福岡県の保険料は全国的に見ても高い水準のまま推移し2017年度から強行されてきた特例軽減の段階的廃止縮小並びに賦課限度額の引上げ、現役世代の負担軽減や少子化対策の財源確保のためとした被保険者の負担割合の見直し等によって、2024・2025年度の第9期保険料は一人あたり9万427円と史上最高額となっている。収まらない異常な物価高騰と年金の実質引下げによる生活困難も広がっており、第10期保険料については剰余金や各種基金を最大限活用し、保険料の大幅引下げを行うよう広域連合に求めること。また、保険料特例軽減の復活を国に求めること。
  • 後期高齢者の医療費窓口2割負担の拡大が強行実施されて以降、一人あたり年5万円以上の負担増となり「エアコンをつけず電気代を節約している」「受診回数を減らした」「食事は2回で我慢」「預貯金を切り崩している」など、受診抑制や生活困難が広がっている。3割負担への更なる拡大の検討は中止し2割負担を1割に戻すよう国に求めるとともに高齢者だけを別枠にしている現行制度を廃止し元に戻すよう国に求めること。

(4)無料低額診療

無料低額診療事業は経済的困窮者にも医療を保障する重要な役割を果たしている。本市において実施する医療機関を増やすための取り組みを県とも連携し強め、制度の広報を更に充実させること。また、国に対して薬剤費への制度適用を求めるとともに、当面他都市でも徐々に広がる独自助成を本市でも実施すること。


(5)こども病院・市民病院

  • こども病院・市民病院ともに物価高騰にみあう診療報酬の改定を国が行わない中、経営が逼迫している。また、両病院とも職員の給料が物価高騰に追いついておらず、人材が流出し医療の質が低下している。さらには、市民病院の職員配置について、本来、必要な数の8割程度の少ない人員でやりくりしており、医師、看護師等が業務量に見合った数になっておらず、職員から悲鳴があがっている。医療費4兆円削減を中止し、医師の計画的増員や診療報酬の改善を急いで進めるよう国に求めること。また、市として運営費負担金とは別に新たな補助金を両病院に出すこと。さらには、人材流出を防ぎ医療の質を維持するためにも処遇改善を図るとともに職員を正規で増員すること。
  • 独立行政法人化以降、福岡市立病院機構の一時金の支給月額が福岡市と同様ではなく、年間支給月額の累計が合計で0.8月低くなっている。病院機構に改善を指示すること。
  • 病院機構では、人員不足など職場環境の悪化によるストレスの増大により、職員間のパワーハラスメント等で疾病に追い込まれる事案が度々生じている。これまで起こった事案について、ハラスメントに至った背景など加害者・被害者双方の状況を分析し、再発防止策を強化するとともに、安心して通報できる体制をつくり、事案が起きた場合には被害者への補償を行うこと。
  • こども病院においては、小児・周産期医療の拠点としての重要な役割を果たす一方、病院機構の方針の下、採算性が優先されている。職員の勤務諸条件を改善し、職員の合意を大切にする民主的な病院運営へと転換するよう指導すること。また、バスのルートや便数を抜本的に増やすようバス事業者に強く要請するとともに、職員の駐車場利用枠を増やし、職員向け駐車代手当を創設し、通勤手当の引上げを図るよう病院機構に求めること。台風など強風時にタクシーを呼んでも断られるため、夜勤明けの職員が帰宅できなくなることがないように病院独自のバス借り上げ等の工夫によって災害時の通常業務に従事できるよう対策をとること。
  • 市民病院は施設の老朽化により水漏れが恒常化しているなど、医療の継続すら危うい状況が続いている。一方で建て替えの計画について、職員からは現状報告や説明が不足しているという声があがっている。職員と地域住民にも影響があるため随時説明を行いながら、計画を急ぐこと。

(6)介護保険

  • 2024年4月に国が行った訪問介護事業所の基本報酬引下げが大きな打撃となり異常な物価高騰も重なる中、介護事業所の撤退・廃業・倒産が本市においても広がっている。また、事業所の経営危機や人材不足からサービスの提供が減る事態も生じ、要介護者の家族の負担が重くなり「介護離職」につながるケースも増えるなど、介護の基盤崩壊は深刻である。国に引き下げた訪問介護事業所の基本報酬を元に戻し、増額するとともに、全ての介護事業所に対する継続支援を行うため、国庫負担を10%引き上げるよう求めること。あわせて、国が基本報酬を引き上げない間は市独自に介護事業所への支援を行うこと。
  • 公益財団法人九州経済調査協会の調査によると、2030年までに介護サービス分野では福岡市で1900人もの人材が不足すると言われている。また第9期計画では介護人材の確保に外国人をあげているが、同調査では、年収の高い関東への流出が想定されており、外国人労働者で賄えるというのは幻想にすぎない。介護にかかわるすべての職員の処遇改善こそが必要であり、家賃補助、奨学金返済補助、各種手当など、職員の可処分所得を増やすための手立てを市独自に講じること。介護事業所の人件費を圧迫している人材紹介業者への手数料に「上限」を設ける等、人件費が確実に職員の賃金にまわる仕組みをつくるよう国に求めること。
  • 現在2年目の第9期福岡市介護保険事業計画では、保険料の基準額は年間8万2788円と制度開始時から約2倍以上と史上最高額になり政令市で5番目、県内で2番目の高さで異常な物価高騰の下で高齢者の生活を大きく圧迫している。自治体独自の一般会計からの繰り入れによる保険料引下げについて厚労省も否定しておらず、財政調整基金の活用など、あらゆる手段を講じて保険料の緊急引下げを図ること。滞納者には機械的なペナルティを行うことなく事情を聴きとり、分割納付や納付の猶予等親身な対応を行うこと。
  • 財務省は、社会保障費削減の方策として財政制度等審議会の分科会に介護保険の利用料2割負担の範囲拡大やケアマネジメントの利用者負担の導入、要介護1・2の保険外しなどを提言した。一方、社会保障審議会の部会では「サービス利用の入り口を狭める改悪だ」との批判の声も出されており、高い保険料を払ってもサービスを受けられないという介護保険制度の矛盾を拡大させる制度見直しは行わないよう国に強く求めること。
  • 本市の特養ホーム待機者は2270人である。申込み者の数から「必要度の低い人」を除外する恣意的な判断によって実態より少ない人数に絞り込んだ上に、整備量は2022年度120床、2023年度0床、2024年度148床というきわめて不十分なものになっている。このようなやり方は許されず、希望者全員が速やかに入所できる計画へと見直し、早急に待機者解消を図ること。あわせて、小規模多機能施設やグループホーム、宅老所などの基盤整備と公的補助を抜本的に強化すること。また、「要介護1・2」の特養ホーム入所からの締め出しをやめ、入所条件を緩和するよう国に求めること。
  • いきいきセンター(地域包括支援センター)が行う総合相談支援においては、年々相談件数が増加し、職員1人が受け持つケース数が110件となっている。また専門職相談員の不足により相談業務が行えないことや、ケアマネージャーの不足により、相談員がケアプランを作成せざるを得ないなどで、利用者にもサービス開始の大幅遅延など大きな影響が出ている。低い配置基準を改め、市独自の財政支援施策を行い、人材不足を解消すること。現在59か所で中学校区に1つもない状況を改め、増やすこと。

(7)高齢者

  • 高齢者の頼みの綱である年金は「マクロ経済スライド」により13年間でマイナス8.6%の「年金実質削減」が行われてきた。今年度、国民の声におされ公的年金額は1.9%引き上げられたが、物価高騰には到底届いておらず、多くの高齢者が生活困窮に陥っている。そのうえ、自民・公明と立憲民主党が修正し成立させた年金制度改定法は、「マクロ経済スライド」を残したため、更に今後12年間で実質10%も年金額が目減りすることになる。国に対し、この仕組みを撤廃し、物価上昇にみあう年金引上げを求めるとともに、低年金の底上げや、最低保障年金制度の導入を求めること。また本市独自に高齢者の可処分所得を増やす施策を行うこと。
  • 高齢者乗車券制度は高齢者の家計を応援し、外出を促し、経済波及効果、健康づくりおよび公共交通機関の利用促進による環境負荷軽減などの面で良い影響を及ぼしている。所得に応じ8000円から1万2000円分の利用が可能だが、物価高騰の中で運賃は上がっており、この金額では間尺に合わないとの声が上がっている。上限額や所得制限を設けていない他自治体にならい、高齢者乗車券の上限額と所得制限をなくし、高齢者の生活を支援すること。
  • 加齢性難聴は高齢者の引きこもり、孤立、事故、そして認知症の大きな原因になり、その対策として補聴器は有効であると専門家も指摘している。しかし、その購入費用は数十万円におよび負担が非常に重く、購入費補助を求める声が広がっている。市は「加齢性難聴は加齢に伴って誰にでも起こり得る」と言いながら、自己責任を押し付け補助金創設にも背を向けている。しかし、誰にでも起こりうることだからこそ行政の支援が不可欠である。福岡市が手をこまねいている間にも購入費補助実施自治体は広がり、山形市は厚労省の認知症予防のための「保険者機能推進交付金」を活用し、早期発見と全額国庫負担で補聴器購入補助が実現している。全国では東京都と381自治体で購入助成がおこなわれており、東京都では自治体間の差はあるが、最低2万円から最高14万4900円の支援がある。本市でも加齢性難聴者の補聴器購入費補助制度を創設すること。

(8)原爆被害者

2024年、日本被団協がノーベル平和賞を受賞し、その活動の重要性が世界的に認知された。原爆被害者の相談事業や被爆証言活動等を僅かな補助金で福岡市原爆被害者の会に丸投げしてきた本市は、今こそ、その姿勢を見直すべきである。平均年齢が86歳となった同会は自力で事業を維持・充実させることがいよいよ困難になっており、運営費補助金を増額するとともに人的補助など必要な支援を行うこと。同会が取り組んでいる被爆体験を継承するための「語り部」養成事業については広島市や長崎市のように会と連携しながら早急に市の実施事業へと移行すること。また、被爆者や活動支援者のふくふくプラザ駐車場使用料の全額免除を指定管理業務に反映させること。


(9)アスベスト

  • 建材メーカーのアスベスト被害に対する責任を追及する訴訟において、2025年8月に東京高裁と大阪高裁で相次いで和解が成立し、いよいよ建材メーカーの責任が明確になった。しかし建材メーカーはいまだに被害者早期救済のための補償基金制度への参加には応じようとしていない。現在補償対象外となっている屋外作業員や対象期間外に被害を受けた人も含め、すべてのアスベスト被害者が救済される、建材メーカーも含めた資金拠出による「補償基金制度」を早急に創設するよう市として積極的に国に要求すること。
  • アスベスト対策を抜本的に強化するために、アスベストアナライザーをすべての解体現場で活用し、含有調査を行うこと。大規模災害時の飛散対応等のため、アスベスト使用建築物のハザードマップを公開し積極的に市民に周知すること。また、アスベスト被害に対する市民への啓発活動を強めること。アスベストを扱う建設労働者の防じんマスクの普及につとめ、市内業者への購入補助を行うこと。また国民健康保険の特定検診とあわせて、職種や経歴に応じてアスベストの影響・被害が明らかになるような市独自の問診・検査を行うこと。石綿調査の公的資格制度である「建築物石綿含有建材調査者」などの専門家を育成、職員も大幅に増やすなど総合的なアスベスト対策をすること。
  • 本市は民間建築物の所有者等が行うアスベストの分析調査及び除去等工事にかかる費用を補助しているが、2024年度の利用はゼロとなっている。これは補助を受けても費用負担が大きすぎて建築物所有者が調査や除去等工事に踏み出すことができていないためであり、実際には危険なアスベストが飛散していることが懸念される。制度活用を進めるためにも建築物所有者の負担を軽減する補助金制度の対象拡充を国に求めるとともに、他都市のように建築物の解体・除去も対象とした市独自の補助制度をつくること。

(10)生活保護

  • 政府の社会保障費抑制路線のもとで生活保護基準の連続引下げが強行された結果、保護利用世帯は苦しい生活を強いられている。1日3回の食事や毎日の入浴がかなわない等、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が奪われている状況にある。生活保護制度を憲法に規定された生存権にふさわしい水準にするために、生活扶助費・住宅扶助費等を抜本的に引き上げるよう国に求めること。
  • 2025年6月、最高裁は国が2013年から2015年にかけておこなった生活保護基準引下げが違法であったと断罪した。しかし国は原告が求めていた協議に応じず、当時の基準とは別の基準で再計算を行って新たな減額を行ったうえ、生活保護基準引下げ分の補填を一部にとどめようとしており、問題である。保護費引下げ前基準の差額をただちに全額遡及支給するよう国に求めること。また、国が全額遡及支給するまでの間、市として差額を補てんすること。
  • 保護費削減に加えて物価高騰が保護利用世帯に襲いかかっている。現在、物価高騰対策として時限的に1人あたり月額1500円という特別加算が設けられているが、物価高に追いつくものにはなっておらず不十分である。本市は「負担の適正化を図る」と言って保護世帯への下水道料金減免制度を廃止したが、多くの政令市は引き続き減免制度を続けている。制度復活を含めた市独自施策を行うこと。また、電気代等を気にして冷暖房の使用を控えるなど命を脅かす事態もうまれている。市独自の夏季見舞金および年末見舞金を復活・拡充すること。
  • 生活保護の相談に来た人に対し、申請書を渡さなかったり受理を先延ばしにしたりするなどの「水際作戦」は申請権の侵害であり問題である。「面接」「指導・助言」を口実に不当に生活保護を排除する「水際作戦」を根絶すること。
  • 生活保護の制度や利用者を攻撃するバッシングがはびこる中、「生活保護は国民の権利である」ことを自治体として広く発信することが大事になっている。市としてテレビCMやインターネット・SNSを活用した広報、公共施設などへのポスター掲示、市政だよりの1面への特集記事掲載などによる制度の周知徹底や相談の呼びかけを行うこと。また、膨大な漏給、低すぎる捕捉率の早期解決が求められており、定期的な捕捉率の調査・公表を行い、誰もが手に取れるような場所に申請用紙を置くなど捕捉率向上策を講じること。さらには「生活保護のしおり」や市ホームページの記載について、誤った情報や誤解を招く内容がないよう精査して改善し、正確に周知すること。
  • 保護申請の際、窮迫している状況であった場合に貸し付ける市社会福祉協議会の緊急小口資金について、1日500円などと機械的な対応をせず、実態に応じた金額の貸し付けを行うこと。
  • 生活保護法第60条は生活保護利用者の健康の保持や生計の把握について主体的な取り組みを求めるものであり「資産申告」強要の根拠とはなりえない。生活保護の利用者の人権を侵害する「資産申告」は一切やめること。
  • 生活保護利用者に対し、本人の意向を無視した問答無用の就労指導を行うことは真の自立を遠ざけるものである。健康状態や年齢を無視した就労の強要はやめること。
  • 保護申請する市民に対して殊更自立を強調し、保護を利用していても、居住用不動産や少額の保険、自動車、バイク等の保有が認められる余地があること等をあえて教えないなど、市民の生活保護を受ける権利を侵害するような対応は問題である。このような窓口での機械的な対応を改めること。また、バス等公共交通機関の減便が広がる中、本市でも日常生活を維持するために自動車が必要不可欠な地域が広がっている。そのような地域に居住し、自動車で定期的に通院を行う必要がある場合に限り、保護利用者でも自動車の保有が認められることがあるが、本市では徹底されておらず、保有を認めない事例が多発している。保護利用者の自動車の保有に関して誤った運用を行わないよう徹底すること。そのうえで「自動車保有を原則認めない」という制度の運用を改めるよう国に求めること。
  • 保護申請時、申請者の親族に「金銭的援助ができないか」などと問い合わせる扶養照会を行うことが、保護の申請をためらわせる原因の一つになっている。2024年度、扶養照会を行って実際に金銭的援助につながった例は2237件中わずか7件しかなく、費用対効果も薄い。扶養照会はやめること。
  • 適正受診指導などと称して入院日数や通院回数に対する不当な削減指導やジェネリック医薬品使用の強制を行わないこと。
  • 入院時、医療機関からの寝巻貸与代金については保護費に含まれず自己負担となっており、市独自に支給すること。おむつ代については医者の認定がある場合に限定せず、必要額を市独自に補助すること。
  • 本市では保護課職員の数が、厚生労働省が定める標準配置数を大きく下回っているため、ケースワーカーが担当する平均世帯数が2025年度101.4ケースとなっており、国の標準世帯数を20以上も上回っている。これでは職員の多忙化を招き、保護利用者の困難に寄り添うことができなくなる。保護課職員を正規職員として抜本的に増員すること。
  • 生活保護行政は毎年制度や運用が細かく変更されており、保護課職員にはスペシャリストが求められている。しかし本市のケースワーカーは経験年数4年未満の職員が9割、1年未満の職員が3割で、依然として経験が浅い職員が大半を占めており、それによって不適切な対応が増えている。保護課職員の経験の蓄積とスペシャリストの養成を進め、社会福祉士や精神保健福祉士、弁護士など国家資格を有する職員の採用や配置を行うこと。
  • 本市では、就労支援等事業などのケースワーク業務について民間企業等への委託を進めているが、このやり方は公的責任の放棄や、保護利用者への管理強化などの問題点がある。政府が検討しているケースワーカーそのものの民間委託も含め、これ以上の外部委託はやめること。
  • 大学生・専門学校生などの生活保護受給権を認めないやり方や、大学、専門学校等への進学者を強制的に世帯分離して保護を打ち切るやり方は進学をあきらめる子どもを生むと同時に新たな貧困を生み出している。「世帯分離なし」で子どもが大学に通えるよう国に制度の抜本見直しを求めること。また、「進学・就職準備給付金」などの一時金ではこの問題の解決にならないため、仕組みを改めるよう国に要求すること。さらには、教育扶助費や高等学校就学費用は実態に照らせばまだ不足しており、増額を国に求めること。そのうえで、保護を受けながらアルバイトをして進学準備のための貯金をすることや保護費をやりくりして学資保険を積み立てることは認められているにもかかわらず、現場では収入認定の対象とすることがあり問題である。このような対応を行わないよう徹底すること。

(11)貧困

  • 市民の貧困実態・貧困率の調査を行い、本市独自の目標・指標を定めて総合的な貧困削減計画をつくること。生活保護申請や生活困窮者相談を役所で待つのではなく、出前相談会など必要な人に支援が届くようにアウトリーチを強化すること。
  • 厚生労働省の調査によれば、9人に1人の子どもが貧困状態にある。子どもの貧困対策について、東京都世田谷区などにならって貧困対策に特化した実態調査をおこなったうえで、市内の子どもの貧困率を公表し、削減目標を立て、その達成に必要な具体的な施策に取り掛かること。
  • 生活福祉資金貸付は、生活自立支援センターによる伴走型支援を条件にしているなど、貸付に厳しい条件が課せられており、必要な人が受けられない仕組みになっている。制度を抜本的に見直して、必要な人が受けられるよう国と県に要望すること。また、各区の社会福祉協議会にも窓口を設置すること。さらに、ひとり親家庭等に対し原則無利子で貸付を行う母子父子寡婦資金貸付金制度については、利用がきわめて少ない現状がある。必要な人が利用できるよう要件の緩和などの改善を図ること。
  • 民間団体の調査によれば、「1日2食以下」の子どもが長期休みは2.5倍に増加という結果がでており、米価をはじめとした物価高騰が子どもたちの健全な成長を阻害している。行政の責任で子どもの欠食対策を行うこと。行政が本腰を入れた子どもの貧困対策に取り組まない中、行政に代わって子どもの貧困対策や居場所づくり、地域交流の場を担っている「子ども食堂」などの事業がきわめて重要だが、物価高騰によって財政的負担が増えており、運営が困難になっている。「子どもの食と居場所づくり支援事業」補助金を物価高騰に合わせて増額し、3分の2の補助から全額補助へと切り替え、書類手続きなどの簡素化を図ること。
  • 市内のホームレスは依然として多く、切れ目なく対応できるように年末年始も対応できる窓口を開設するとともに、市内の巡回を強化して、相談に応じ、支援すること。ホームレスが施設への入所を求めた場合、感染症の検査などの理由からその日に入所できない仕組みを改めるために一時宿泊所を確保すること。民間ボランティアやNPO支援団体への委託費を大幅に増額すること。ホームレス患者は、受診する時にはすでにひどい疾患を患っていることが多いため、医療機関の負担は大変重くなっている。現行の入院協力金3000円では不足しており、大幅に増額すること。ホームレスなどの利用を物理的に妨げるいわゆる排除ベンチや排除アートはやめること。

(12)民生委員

民生委員の充足率は92.7%と低い水準にとどまっており、なり手不足は引き続き深刻である。欠員の出ている地域には近隣からのフォローも行われているが、68の地域では完全に空白となっている。本市は「民生委員の活動に資するため」の施策として「地域共生推進員」の配置、地域包括支援センターの増設やスクールソーシャルワーカーの増員等を行っているとしているが、それぞれのもともとの体制が不十分な中、民生委員の抜本的な負担軽減にはつながっておらず、災害時の対応や個人情報の保護をめぐる困難さも相まって、なり手不足の根本解決には程遠い状況である。2025年度からの「協力員制度」の導入後も効果は見られていない。本来行政が行うべきことを押し付けていないか等、徹底した検証を行い業務量について抜本的に削減するとともに物価高騰に応じた活動費の更なる増額を行うこと。また、欠員が生じている地区を他地区の委員がカバーするやり方には無理があり、行政の責任において臨時の代替措置をとること。


(13)障害者施策

  • 福祉乗車券については、現下の物価高騰や公共交通機関の料金引上げの下、従前の金額のままでは実質的な切り下げとなっている。利用可能金額を引き上げるとともに、制度の対象を関係者から要望の強い療育手帳Bおよび精神障害者手帳2級まで拡充し、所得制限を廃止すること。福祉乗車証についても同様に対象を拡充すること。
  • 乗車料金について障害者が一人で手帳にもとづく割引を受けるには「100km以上」という異常な条件を付けているJRに対し、見直しを求めること。また、精神障害者に対する交通運賃割引を頑なに拒否している福岡北九州高速道路公社に対し障がい者差別解消条例が定める「合理的配慮」の趣旨を踏まえ早急に実施するよう強く申し入れ、実施されるまでの間、市として自己負担分を補填する手立てをとること。
  • 障害者が65歳になるとそれまで受けてきた障害者サービスから介護保険サービスに半ば強制的に移行させられ、自己負担が増え、サービスが継承・継続されず大きな打撃となっている。新高額障害福祉サービス等給付費が支給されるとはいえ、対象要件から外れる人も多い。対象者の範囲拡大を強く国に求めるとともに、介護保険の対象年齢でも障害者福祉制度と介護保険制度を選択できるなど、新たな自己負担なしでサービス水準が維持できるよう市独自の手立てをとること。問題の大元にある障害者総合支援法の第7条(介護保険優先)の廃止を国に求めること。
  • 「手話言語条例」は41都道府県を含む613自治体へと広がり、政令指定都市においても11自治体へと広がってきている。本年6月には手話施策推進法が施行され、東京デフリンピックも大きく成功する中、手話に対する関心も高まっている。本市においては障がい者差別解消条例に手話も言語に含むことが書き込まれていることや福岡県が制定したこと等を理由に頑なに条例制定に背を向け続けているが、当事者・関係者の願いや世論にも背を向けることはもはや許されない。早急に制定作業に入ること。
  • 手話通訳者派遣事業の範囲については、徐々に拡大されてきたとはいえいまだに「社会生活上外出が必要不可欠なとき」等とする狭い利用条件になっておりこの規定を撤廃すること。
  • 本市における登録手話通訳者数は71人と少ないままであり、担い手が不足している。その報酬は4時間未満5160円、4時間以上6370円となっているが、3時間を超える利用の場合、福岡県との格差は大きくなり問題である。人材確保の大きな要因となっている低すぎる報酬を県並みに引き上げ、市が直接正規職員として雇用するなど、専門職にふさわしい待遇へと改善すること。
  • 強度行動障害者の短期入所施設はニーズに比して絶対的に不足しており、市の責任で増設するとともに、報酬見直しを国に求めるだけでなく、民間事業者の参入が広がるよう市独自の職員加算や施設の改造費補助の底上げを図ること。
  • 障害者グループホームの設置数は増えてきたものの、ニーズからすれば大幅に不足している。市の運営費補助を重度障害者受け入れ施設だけに限定せず拡充するとともに、土地や建物の確保や新設時の改修費への補助を増額すること。また、利用者への家賃補助については、国まかせにせず、市が独自に上乗せ補助を行うこと。低すぎる報酬単価によってひとり夜勤体制となっている等の状況を解消するためにも報酬額を抜本的に引き上げるよう国に求めるとともに、当面、市独自補助を行うこと。
  • 知的障害者の地域生活移行については、必要とする支援の質・量の確保、十分な所得保障や住宅手当の充実等、知的障害者の希望と選択を最大限尊重する仕組みを構築しないまま進めることは許されない。支援策の抜本拡充を図り、入所施設については利用待機者の実態調査を行い、受け皿を増やす手立てをとるとともに、既存施設については「終の住処」として利用できるようサービス提供や支援の実態について現場で適宜確認するとともに、設備や職員体制の充実を図り「親なきあと」の不安を取り除くこと。
  • 国において行われた報酬改定は、生活介護事業の基本報酬への「時間刻み」導入やグループホームの基本報酬基準の大幅引下げが含まれ、現場の困難を広げている。障害者支援施設等労働者の賃金は全産業労働者平均までいまだ月6万円近くの隔たりがあり、現場の声を踏まえ、報酬の全体的かつ抜本的な引上げを図るよう国に求めること。また、更なる最低賃金の引上げや物価高騰の影響で必要経費が増大しているにもかかわらず、何の手立ても取られておらず経営を圧迫している。財源を手当てするよう国に求めること。また、市独自に処遇改善のための補助や家賃補助を創設すること。
  • 障害者に対する継続した就労支援には就労支援事業所職員が安心して働ける雇用の安定性が不可欠であり、NPOや社会福祉法人などA型事業所を営む法人が安心して就労支援事業を継続していくために国に報酬単価の大幅引上げを求めるとともに、市として独自に財政支援を行うこと。また、B型事業所においても月1500円という異常に低い工賃の実態もあり、その増額が図れるよう市としても財政的な直接支援を行うこと。
  • 本市の障害者雇用は、法定雇用率を超えてはいるものの、その内訳はほとんどが非正規雇用となっている。正規の採用枠を抜本的に増やすこと。民間企業に障害者の採用増を要請し促進するため、国まかせにせず、本市独自の補助制度をつくること。
  • 障害者関連施設の指定管理者を社会福祉事業団から民間団体に移行する公募の動きや指定管理料の縮減、新たな事業をトップダウンで押し付ける等は、職員の処遇やモチベーションの低下につながり、サービスの低下を引き起こすものでありやめること。
  • 障がい者基幹相談支援センターの委託料はそもそも低い中、物価等の高騰により人材確保や運営に更なる困難をきたしており、増額を図ること。

(14)ヤングケアラー

大人に代わって家族の世話や介護を担う子ども・若者であるヤングケアラーは、年齢や成長の度合い以上に重い責任を負わされ、生活や学業、進学にも大きな影響を与えている。本市でも専用相談窓口と専用相談ダイヤルが設置され、2024年度は延べ1704件の相談が寄せられているが、うち当事者は269件ほどでありきわめて少ない。当事者に情報が届くように、子どもを対象とした広報・啓発用冊子「みんなで知ろうヤングケアラー」をすべての児童・生徒に配布し、SNS等を活用した情報発信をつよめ、SNSによる電話相談受け付けだけではなく、初回相談時の敷居を低くするためにメッセージ機能を活用した相談にも取り組むこと。また、市として支援団体の方々の意見を踏まえ、教育現場や福祉現場におけるヤングケアラー問題の研修の充実、市民への啓発を進めながら、総合的なヤングケアラーの実態調査に取り組み、地域ソーシャルワーカーの配置をはじめとした支援策を構築すること。さらに、社会福祉や教育、児童心理分野等の専門家を配置し、総合的な取り組みを進めることができる専門の部署を早急につくり、各区役所にも担当者を設置すること。

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3、ムダな大型開発をあらため、市民の生活・安全優先のまちづくりを

(1)天神ビックバン・博多コネクティッド

規制緩和によるまち壊しである「天神ビッグバン」には、2024年度約24億円をはじめ巨額の税金が投入され、その結果、全国最悪の地価の上昇が起こっている。都心に大きな土地やビルを持っている一部の大企業や富裕層などは儲かっているが、家賃の高騰や固定資産税の引上げで、市民負担が増大し、住宅難民が生み出され、地域で営業している小規模店舗などの経営を圧迫している。博多駅の「空中都市構想」が破綻したように新たな大型開発に踏み込む時代は終わった。同様の問題を生んでいる「博多コネクティッド」を含め、住民や店舗の追い出しを招くこのようなまち壊しは言語道断であり中止すること。


(2)九州大学移転跡地および学研都市のまちづくり

  • 優先交渉権者が提案している「AI見守りカメラ」や「健康情報を一元管理するPHR基盤」は、企業が個人情報を握りそれをもとに商売をするものであり、情報流出を防ぐ保障もなく、住民から要求されたものでもない。優先交渉権者が提案するデジタル技術の導入については、市として個人情報を守る立場に立ち、住民への情報開示と合意形成を図ること。
  • 跡地開発では人口が5400人になると予測され、分譲住宅だけで2000戸の供給が予定されており、東箱崎小学校区では600人の児童の増加が見込まれ、急きょ校区を再編する事態となり、子どもや住民に大きな影響が出ている。また、市と九州大学は供給戸数の制限を理由に学校用地の確保は必要ないとの立場だが、これでは新たな過大規模校を生む可能性があり、九州大学に学校用地を確保させること。
  • この間、跡地利用計画について、住民は九州大学や優先交渉権者に説明を求めているが十分に応じていない。多くの市民が計画に参加できる仕組みを整え、「グランドデザイン」に沿った跡地利用に抜本的に見直すこと。
  • 優先交渉権者の提案では近隣公園と箱崎中学校を近接して配置し一体的なオープンスペースを創出し、防災性の向上を図るとしている。しかしそこでは一時的な避難場所や応急的な活動しか想定されていない。当該地は宇美断層の影響を受ける可能性が高い地域である。能登半島地震の経験からも食料や水、寝る場所、トイレなどを兼ね備えた広大な防災公園をつくること。
  • 貝塚公園の真ん中に道路を通す計画について、広大な公園を分断することになるため住民からは反対の声が上がっている。計画そのものを見直すこと。
  • 優先交渉権者の提案では「緑化率40%、樹木1万本以上による圧倒的な緑量確保」とされているが、1万本では「圧倒的な緑量」とは言えない。そもそも九州大学があったころは、100年の歴史を経て立派な樹木がたくさんあり、存続を望む住民の意見も聞かず伐採した経過がある。優先交渉権者に樹木量を抜本的に増やすよう求めること。
  • 伊都キャンパスへ通学する学生の生活実態は、引き続く物価高騰により厳しさを増している。そんな中、昭和バスの運賃がこの5年間で80円値上がりし、学生に更に大きな負担を押し付けている。九州大学は2005年から2019年まで学生のバス代支援を行っていたが、大学の予算削減にともないやめた。伊都キャンパスへの移転を決めた本市と九州大学には、学生の通学環境に対する責任がある。バス代支援の復活を九州大学に働きかけるとともに、本市も事業者に対して補助金を出すなど、バス代引下げの手立てをとること。
  • 九州大学と学研都市駅を結ぶバス路線は、朝のダイヤでは満車のため、乗れない学生が出るなど足りていない。また、夜のダイヤは1時間に1本などと少なく、研究やサークル・クラブ活動に影響がある。さらに土日祝日のバスは、平日の4割から5割ほどしかない。便数の増加をバス事業者へ働きかけること。
  • 学生の居住が最も多いといわれている元岡地区はスーパーマーケットがない。九州大学キャンパス計画室が行った学生調査でも「スーパー誘致」を希望する回答が最も高くなっている。ネットスーパーを今年10月から実証的に始めているが、間尺に合わない。採算が合わないためにスーパーマーケット誘致ができないのであれば、補助金制度をつくるなどして、早急に対応すること。

(3)人工島・港湾再編

  • 人工島の土地処分は公共施設の移転、立地交付金のばら撒きなどあの手この手で巨額の税金を投入した結果である。長年にわたり毎年100億円もの税金がつぎ込まれてきた上に、今後も約184億円の事業費を見込んでいる。このような一定の地域を特別扱いする税金の使い方はやめること。
  • 港湾計画で定める博多港の国際海上コンテナ取扱量目標値130万TEUは、現在のペースで目標達成は「厳しい」と当局も認めざるを得ない状況である。さらに、人工島への5万t級以上のコンテナ船の入港は、直近の5年間でわずか1隻である。15m水深の人工島D岸壁の整備や大型コンテナ船対応のための東航路整備事業は必要性がなく税金のムダづかいでありやめること。
  • 人工島の民間住宅や道路・下水道などに助成する「住宅市街地総合整備事業」による積水ハウスなど特定の大企業への露骨な税金投入はやめること。
  • 「中長期的な視点で検討」などとしていまだに現存している必要のない人工島への鉄軌道の導入計画はきっぱりとやめること。
  • ウォーターフロント地区再整備は大型開発など中断していた計画を復活させることは許されない。中央ふ頭地区における財政負担が伴う開発を行わないこと。中央ふ頭や須崎ふ頭の新たな埋立て、埋立費用だけで700億円と莫大な費用がかかる箱崎ふ頭地区の水面貯木場及び海面処分場の埋め立てはやめること。
  • 第3セクター・博多港開発株式会社はケヤキ・庭石事件を起こすとともに、人工島事業の土地処分ができず、経営危機に陥り、市から多額の増資を受け、会社2工区を市に399億円で譲渡するなど、巨額の税金が投入されたおかげで存続している会社である。そもそも市の外郭団体の見直しでは、廃止も含めて検討されてきたものであり、このような会社に今後の埋立事業などを担わせることは許されず、会社はただちに解散し清算すること。

(4)MICE・観光

  • インバウンドや富裕層・大企業優遇をやめ、観光立国推進基本法の理念に立ち返った観光政策へと転換すること。地域住民が望む形で観光客の受け入れができるよう、住民と自治体と観光関連業界とで検討されるサスティナブルツーリズムを推進すること。
  • 観光客の増加に伴って公共交通の混雑、生活道路での駐車や交通渋滞、私有地等への侵入、騒音やゴミ、写真撮影などのマナーに関するトラブルが多発している。地域の住民の生活と安全が脅かされないように対策を講じること。
  • 「高付加価値化」という言葉とともに、一部の富裕層向けのサービスにスポットが当たる施策はやめること。

(5)国家戦略特区

国家戦略特区は財界要求優先の規制緩和ありきで、安全・安心が脅かされる側の声が事前に聞かれず悪影響も検証されない。国民の命や暮らし、雇用を守るルールが壊されてはならず本市の「グローバル創業・雇用創出特区」指定は返上すること。


(6)住宅困窮者対策

  • 借家人への住居費軽減策はきわめて貧弱なため、生活費に占める家賃の割合がきわめて高い。昨今の物価高騰などを口実に、家賃を増額する通告がされる等、更なる家賃負担増が広がりつつある。収入が年金のみの世帯、学生を含む低所得の単身者世帯、高齢者単身女性世帯、シングル子育て世帯等に対しての家賃補助制度を創設すること。
  • 高齢のために入居を拒否される事例が各地で後をたたない。セーフティーネット住宅の実績はきわめて不十分ありもっと充実を図ること。

(7)市営住宅

  • 開発に伴う本市の地価上昇は急ピッチで進み、民間賃貸住宅の賃借料も上昇傾向となる中、「住宅に困窮する低額所得者に低廉な家賃で賃貸」する市営住宅のニーズは更に高まっている。人口も増え続けており、応募倍率は、一般枠で11.5倍、単身の高齢者・身体障害者は28.1倍など、きわめて高い水準で推移し「管理戸数は現状維持」という住宅ストック活用計画では人権としての住まいを保障することができなくなっている。本計画を見直し、髙島市長就任当初より400戸以上も減っている管理戸数を早急に元に戻し、大幅な増設を図ること。またUR賃貸住宅の空き家や、民間賃貸住宅を借り上げて市営住宅にするなど多様な供給方式の活用により、市営住宅の供給を大幅に増やすこと。
  • 未婚率の上昇、雇用の不安定化、所得の低迷は若者に過度の住宅費負担を強いている。若者も市営住宅に一般入居できるようにすれば多様な年齢層で団地コミュニティを構成することにもつながる。民間まかせでは事態の打開にはつながらず、現行の市営住宅条例を改定し基準を見直すこと。
  • 住民による市営住宅の共益費徴収や、草取り、駐車場の管理、電灯交換などの設備管理、住民トラブルの解決等を管理組合に押し付けるのではなく、市および住宅供給公社が責任を持って行うことが急がれており、一部のモデル事業にとどめず全面実施すること。
  • 市営住宅の建替えに伴う余剰地については、第一義的には市営住宅の増設を図ること。それ以外の場合でも、住生活基本計画に基づき民間売却ではなく住民要望を反映し、「高齢者福祉施設等の誘致」など公的に活用すること。また、弥永住宅の余剰地には住民要望にそって、高齢者福祉施設や児童館、図書館等を設置すること。
  • 民間営利企業に指定管理者を委ねることは市の公的責任を後退させ住民の利便性低下につながるものであり、全ての住宅の管理を市住宅供給公社に戻すこと。
  • 現在市営住宅の空き駐車場は4000区画を超えており、市営住宅の入居者の訪問介護や訪問看護およびデイサービスの送迎等の際に利用できる無料の来訪者用駐車場を増やすこと。また、敷地内有料駐車場についても住民関係者が優先して使えるような手立てを取ったうえで増やすこと。
  • 福祉のまちづくり条例には市営住宅などについて「市は…高齢者、障がい者等が安全かつ円滑に利用できるようにするために…必要な措置を講じるよう努めなければならない」と定めており、エレベーターのない市営住宅はバリアフリーの観点から重大な問題である。建替えなどで対応する現在の市の整備計画ではあまりにも遅く、片廊下型住棟に限定せず、すべての市営住宅にエレベーターを速やかに設置すること。

(8)建築紛争

中高層マンション建築紛争は後を絶たず、苦情相談件数は90件前後で推移している。住民にとっては住環境を守るうえで「頼みの綱」である「建築紛争の予防と調整に関する条例」が実効性を持たず、「役に立たない」という苦情も多数寄せられる事態となっている。「調整」にあたっては「条例解説書」の内容を踏まえ住環境の悪化・破壊につながる計画については見直しを含め厳しい指導を行うとともに、「住民」の範囲拡大、住民合意・罰則規定の導入など、営利優先の横暴な建築を許さない内容へと条例を抜本的に改定すること。また、住環境を保全する重要な手法である建築協定や地区計画の積極的な周知と適用を図ること。


(9)公共交通・生活交通

  • 1490億円もの事業費を見込んでいる福岡空港国際線への地下鉄延伸は、市民のためではなく観光客などの利便性向上と民間大企業の利益を優先させるものであり計画しないこと。
  • 「都市交通基本計画」の改定時に出された資料に掲載された、ウォーターフロントを経て人工島に抜けるモノレールのようなものや、唐人町からみずほPayPayドームへの「動く歩道」などは、どれも採算の取れないとんでもない提案ばかりであり検討をやめること。
  • 「都市交通基本計画」では今後の生活交通の支援策について、バス路線などの代替交通の確保と地域主体の取り組みへの支援強化などとし、具体的な新しいものは見受けられない。デマンド交通など不十分だった従来の施策の延長線上では取り残される住民を生み出してしまうのは明白である。地域の諸条件に応じた施策の策定と実施の責務を果たすこと。
  • 巨額の費用がかかる空港国際線ターミナルへの都市高速道路の延伸は中止すること。
  • 西鉄によるバスの減便・廃止が止まらない。通院や買い物など住民の日常生活に大きな支障をきたしており、生活交通確保への最大限の配慮を定めた公共交通条例を無視している。交通事業者としての責務を果たさせるように早急に増便を求めること。住民の移動権を保障し、公共交通に責任を持つうえでも、また、生活交通の確保を交通事業者の努力義務ではなく義務として明記することや、「自助」「共助」などとし住民に責任を押し付けるやり方を改めるなど、生活交通条例を改正すること。
  • 高低差が激しく、バス停からの距離もあり、買い物や通院など特に高齢者の移動が困難になっている地域が少なくない。区役所をはじめ地域交流センターなど主要な公共施設に公共交通機関でアクセスすることが困難な住民も多い。このような地域に安価で利用できるコミュニティバスやシャトルバスを運行させること。市は運行の条件に地域の協力を求めるが、それ自体に大きなハードルがあり、これを超えなければ生活交通が保障されないのは不公平である。住民自治会の動向によって支援に差をつけることはやめること。
  • 市営地下鉄とJR筑肥線の乗継割引については請願が全会一致で採択されており、現在の20円から東部の西鉄との乗継同様速やかに60円へ拡大するようJRに強く要請すること。また、JRが割引を実施しない場合でも、物価高騰対策および公共交通利用促進による脱炭素施策としても、本市が先行して割引額を10円から30円に引き上げること。加えて連続割引区間について、2区から3区に拡大すること。
  • JR筑肥線運休の際に、乗客は姪浜駅に足止めされ徒歩やタクシーなどで目的地に向かわざるを得ないケースが度々ある。その場合、JRに代替輸送を速やかに行うよう強く申し入れること。JRが実施しないならば市の責任で市民の交通手段を確保すること。
  • 国土交通省の調査によると、駅ホームでの接触・転落事故は2014年度からの10年間で、611件起きている。市内の西鉄天神大牟田線各駅およびJR博多駅などにホームドアを早急に設置するよう西鉄やJR九州に強く申し入れるとともに、国まかせではなく、市としても推進のための協議会を設置すること。また、ホームドアが設置されるまでの間、乗客の安全対策要員をホームに配置するとともにホーム中央に視覚障害者の道標となる線状誘導ブロックや内包線付き点状ブロックを敷設するよう事業者に申し入れること。
  • JR九州は駅無人化を撤回しない。障害当事者を含む全ての利用者が安全かつ円滑に駅を利用できるようにするためには、駅員の配置による人的サポートが基本である。駅の無人化はバリアフリーへの逆行であるとともに、本市の障がい者差別解消条例が規定する合理的配慮に欠けるものでもあり、全駅を有人に戻すよう、JR九州に求めること。
  • 一方通行なので、人にぶつからず階段より安全であるエスカレーターは、多くの視覚障害者が単独で利用している。エスカレーターへの誘導をするための点字ブロックを設置すること。

(10)道路・交通安全

  • 「道路整備アクションプラン2024」における「生活関連経路バリアフリー化された割合」は、年間整備延長が少なく、目標を達成できるペースでもないため、抜本的に予算を増額すること。また、バリアフリー化の対象を重点整備地区に限らず、緊急性や必要性を踏まえて、全ての鉄道駅周辺とその周辺道路等のバリアフリー化を推進すること。
  • 障害のある当事者との協議で、歩道に段差のない縁石の設置を始めているが、規模もスピードもあまりにも不十分である。予算も大きく確保して、急いで歩道と車道の段差解消をしていく計画を必要性のあるところに立て、実施すること。
  • 通学路および学童保育、園児等の移動経路や保育園周辺を総点検し、安全対策を講じること。さらに、「小学校周辺の歩車分離率」を引き上げること
  • 消えかかった横断歩道や停止線、道路の中央線などが非常に多い。県や国との協議を行い早急に改善すること。また、カラー舗装や路面標示は安全対策として重要であり、関連予算を増額すること。
  • 標準耐用年数を超える下水道管が多くを占めるようになる中、現状の対策のままでは道路陥没の恐れは大きくなっていく。日常パトロールや路面下空洞調査等の頻度を増やし、原因と劣化・優先度の分析を行い、道路改修・維持対策を講じること。
  • 自転車の安全を確保するためには、歩道、車道と分離された自転車通行空間を整備することが重要である。しかし、実態は進んでおらず、整備されたものも歩行者や車との混在形態のものが多い。歩道、車道と分離された自転車通行空間を整備するために、関連予算を抜本的に増額し整備を急ぐとともに自転車対歩行者事故を減らす対策を強化すること。
  • 自転車に乗る人のヘルメット着用を普及するために、他都市にならいヘルメット購入費補助制度を創設すること。

(11)水道・下水道

  • 物価高騰が市民生活を直撃している一方で、賃金や年金が物価高に追いつかず、多くの市民の暮らしや中小事業者の業況等がきわめて厳しい状況に置かれているもと、水道料金は市民に重い負担となってのしかかっている。本市は、水道料金の減免を求める市民の声に対し、インフラ整備に係る企業債残高の増大を招くなどと言い訳をし、支払期限の延長のみ対応している。しかし、2024年度は企業債残高を計画以上に約20億円も縮減しており、その額は本市の水道料金収入の基本料金2か月分に匹敵している。2025年度に、物価高対策として水道基本料金の無償化を東京都が4か月間分、大阪市が3か月間分行っており、本市も他都市にならい実施すること。
  • 本市の上下水道の減免制度は、水道料金にはそもそも全くなく、下水道料金では災害時だけであり、他都市に倣って非課税世帯や障害者世帯を対象とした減免制度をつくること。また、生活保護利用世帯への下水道使用料の減免制度については、政令市では、仙台・さいたま・静岡・浜松・名古屋・広島で実施され続けており、本市でも復活させること。
  • 水道事業は、安全・安心・安定的な水供給によって、憲法の生存権を保障するものであり、地方公共団体主体で健全な運営がなされるよう現行のまま直営を堅持し、民営化や広域化は行わないこと。
  • 能登半島地震の教訓からも、水道施設・管路等の耐震化を集中的に推進することが求められる。本市の水道配水管の耐震化率は2024年度末時点で62.5%と年間0.7%しか進んでおらず、残されている配水管の耐震改修について、現行の年間45kmの更新ペースでは完了まであと34年間もかかるため、更に早めるよう計画を見直すこと。また、一時避難所である公民館などへの配水管の耐震化は完了しておらず、この事業を急ぐこと。
  • 下水道管の未耐震は、震災時のトイレの使用などに大きな支障をきたすことが能登地震でも改めて明らかとなった。本市の下水処理場6施設中4施設が地震時における排水機能が確保されておらず、下水道管渠全体でも未耐震化率が65.4%も残されており、早急に改善すること。
  • 埼玉県八潮市の下水道管の腐食による道路陥没事故はインフラの老朽化がもたらす危険や住民への影響の大きさを見せつけた。本市では2024年度の下水道管の破損が原因で発生した道路陥没は50件あり、時と場合によっては大事故につながるものであり、陥没を起こさせない対策は待ったなしである。本市の下水道管が対象となる点検・調査費用への補助制度を国に求めるとともに、本市の下水道管整備計画を見直して予算を増やし、点検・調査の量を抜本的に増やすこと。
  • 福岡地区水道企業団の海水淡水化施設は、年間約25億円の維持管理費等の経費をかけながら、実際は、2013年以降、1日平均生産水量が5万㎥ある施設能力の半分を超えた年は2023年の2万9147㎥の1回だけである。そもそも本市の1日最大給水量46万6151㎥に対し施設能力は78万987㎥ですでに過剰であり、海淡施設を稼働する必要はない。2027年まで更に155億円をかける設備更新は中止し、海淡施設は廃止するよう企業団に強く求めること。
  • 能登半島地震でも明らかになったように、給水車と運転要員の確保は、今後の大規模災害等を考慮すれば重要な課題である。政令市では、横浜市19台、大阪市16台をはじめ6市が10台以上を保有していることと比較しても、現在の本市保有台数6台は十分ではない。必要な財政措置を国に求めるとともに、市独自でも給水車と要員を拡充すること。

(12)防災

  • 本市「地域防災計画」の基本理念には「市民、企業、NPOとの共創」などとして「自助、共助」をことさら強調しており、能登半島地震で明確となった自治体の責務の位置づけが曖昧である。「地域防災計画」において自助・共助を求めるだけでなく、市の責任で地域防災力の向上に取り組むよう「計画」を改めること。
  • 福岡県は10月31日、「地震に関する防災アセスメント調査報告書」を14年ぶりに見直した。それによると、市内全区で震度7の地震が想定され、建物被害ではこれまで約4500棟としていた全壊家屋が1万数千棟と3倍化、また人的被害では死者数はこれまで約450人が2倍の900人となるなど甚大な被害が想定されている。今回のアセスで特に注目すべきことは、最大避難者数が23万2千人と従来の10倍近い規模と想定されていることであるが、現時点での本市の想定避難者数は2万5千人に過ぎない。さらに避難所の収容可能人数は、現時点の計画に基づく指定避難所をフル稼働したとして、避難者1人当たりの必要面積でスフィア基準を満たした場合、最大12万6千人しか避難所に入れず、10万人を超える市民が避難所難民となる。あらゆる公的施設や民間施設を避難所として稼働できる体制を検討し、想定避難者23万人に対応した避難計画を確立すること。
  • 本市の現在の公的備蓄の量は、想定避難者2万5千人に自宅避難者等5千人を加えた3万人を想定してのものとなっており、きわめて不十分である。公的備蓄関係の予算と人員を抜本的に増やし、県アセスで示された想定避難者数である23万人の規模にみあう備蓄を行うこと。その際、国の支援や民間企業との災害時応援協定を当て込んだ貧弱な備蓄計画は根本的に見直すこと。
  • 本市の公的備蓄のうち、飲料水の77%、ご飯の70%、携帯トイレの93%、トイレットペーパーや生理用品、紙おむつなどの生活必需品が、博多区月隈収蔵庫に一極集中する備蓄となっている。月隈収蔵庫は、宇美断層による地震では震度7が想定されており、壊滅的になることもあり得る。本市の一極集中的なやり方は見直し、防災備蓄拠点を各行政区につくる分散備蓄に切り替え、そこから各避難所との連絡・運搬体制を計画すること。
  • 2024年12月、国は被災者が尊厳ある生活を送るための国際的な最低基準である「スフィア基準」を踏まえて自治体向け取組指針とガイドラインを改訂した。指針では市町村に対し、避難所や物資拠点に必要な備品を確保し、スフィア基準を満たすことができるようにすることを求めている。本市の避難所環境整備について、スフィア基準にもとづいて総点検を実施し、地域防災計画や「避難生活ハンドブック」にも反映させるなど、避難所環境の抜本的な改善を図ること。
  • 避難所に段ボールベッドや簡易ベッドを導入することは、避難者がエコノミークラス症候群を引き起こす血栓の発生防止のため、健康を保ち、命を守るためにも不可欠である。本市は、国の支援や企業の災害時応援協定を前提にして、運ばれてくることを当てにしているが、公的備蓄されているものはわずかしかない。段ボールベッドと簡易ベッドの備蓄目標を抜本的に見直し、各避難所にも分散備蓄すること。また、避難所における人権やプライバシーを守るために必要な間仕切りは1校区あたり10セット、避難所用テントは20台しか備蓄がないのは、スフィア基準に照らして問題である。間仕切りや避難所用テントについては、必要数の備蓄を避難所ごとに行うこと。
  • 能登半島地震では、下水道や水道が寸断されてトイレが使えない状況が発生し、トイレの必要数をいち早く確保する重要性が浮き彫りとなった。現時点で本市の備蓄は、携帯トイレが33万回分しかなく、マンホールトイレは25施設76基しかない。想定避難者23万人の規模にみあい、スフィア基準の「50人に1つ」を充たすトイレを計画的に急いで確保・整備すること。また、「災害時トイレ確保・管理計画」を策定すること。
  • 本市が設置する一時避難所197か所のうち、浸水時には10%に当たる20か所で使用できず、27%の54か所で1階を使用できない。また、262か所ある収容避難所でも、浸水時には9%に当たる24か所で使用できず、21%の55か所で1階を使用できない。さらに、エレベーターもないなど、バリアフリー化が求められる避難所も多い。災害が迫っている時、ためらわずに避難所へ行く行動を市民に求めるためにも、避難所が使えない、行っても入れないという現状を打開する防災計画が求められている。浸水時対応の避難所を抜本的に増やし、バリアフリー化を急ぐこと。
  • 防災対策や防災備蓄、避難所運営における「ジェンダーの視点」にたった取り組みは、きわめて重要な課題であるが、本市の防災会議委員のうち女性委員は12.5%であり、北九州市の31.7%と比べてもあまりにも少ない。市として防災会議委員の任命にあたっては、女性の比率を抜本的に高める手立てを取ること。また、防災計画に女性の視点がないことが、防災備蓄にも表れており、政府が奨励しているおりものシートや、女性用下着、妊婦用下着、母乳パットなどとともに、介護用品もない。女性団体などに具体的な意見を聞き、女性の視点を生かした備蓄を整えること。
  • 避難所における性的マイノリティ(LGBT/SOGI)に対する対応を抜本的に強めることは、誰もが過ごしやすい避難所生活を送るうえでも重要な課題である。避難所受付時の避難者登録の個票形式、ユニバーサルトイレの設置、1人で入浴や更衣室の使用ができる時間帯の設定、支援物資を男女別としない仕組み、洗濯物干場の区分け、性的マイノリティの相談窓口の設置などについて、当事者団体との協議を行ったうえで、避難所運営を行うとともに、防災会議委員にも加えること。
  • 一時避難所によっては、情報が入手できないところも散見される。テレビやラジオを設置し、改善すること。また、快適に過ごすことができるよう畳などを設置すること。収容避難所には、冷暖房を付けるとともに、トイレは主として洋式に改修すること。また、台風などの災害では、スーパー・コンビニなどが閉店する中での避難を余儀なくされる場合もあり、衣類やあたたかい食事が避難者にいきわたるよう備蓄の工夫をすること。
  • 福祉避難所については障害者や高齢者などの避難所としての機能を発揮できるよう万全を期すことが求められている。本市が設置する福祉避難所は、現在145か所であるが、年々減少傾向となっている。施設が被災し使用できない場合や施設職員が勤務できない場合も想定し、指定箇所を抜本的に増やすこと。また、障害者や高齢者などの要配慮者が避難所をたらいまわしにされないように、直接、福祉避難所への避難を個別避難計画で位置付けること。さらに福祉避難所においては、通信、照明、空調、換気設備及び医療機器等の確保・維持が必要であり、呼吸器機能障害者などを受け入れる場合は電源の確保が絶対に必要となる。停電に備え、福祉避難所開設予定施設や高齢者施設などに非常用自家発電設備の設置を進めるために市独自の補助制度をつくること。また、発電機等に必要な燃料の確保を市の責任で進めること。
  • 「避難行動要支援者名簿」に登録されている人のうち、個別避難計画が立てられているのは約19%に過ぎないのは大問題である。名簿登録から漏れている方も含めて、避難誘導、具体的な移動の手段の手配などについて、通常時からきめ細かい個別計画を市の責任で策定するなどして対策を強化すること。被災時に施設運営で一番の課題となる職員不足については、協定を結んでいる他都市などとの協議を進め、福祉避難所に対する受け入れ体制を事前に確立すること。
  • 市民が家族の一員としてのペットと一緒に避難行動をとる「同行避難」は、被災者を救護する観点から、災害時にも被災者がペットを適切に飼養管理できるよう支援することが重要である。これは、ペットの飼い主の早期自立を支援することであり、ペットの健康と安全の確保にも寄与することとなる。また、ペットを飼養しない多くの被災者とのトラブルを最小化させ、すべての被災者の生活環境を保全することにも繋がる。しかし、本市の「避難所運営の手引き」には、ペットとの「同行避難」の位置づけがほとんどないに等しい。環境省が策定している「人とペットの災害対策ガイドライン」に基づいて、ペットの一時預かりや避難所での飼養環境の整備などの支援体制をつくるとともに、避難所を運営する人、市の職員に周知徹底を図ること。さらに、ペットと一緒に生活できる同伴避難所が東部動物愛護管理センターで試行設置されているが、専用のテントを必要数用意するなどして、行政区ごと等に設置すること。
  • 能登半島地震では1981年の「新耐震基準」導入後の新改築住宅においても全壊家屋が多かったことから、東京都では2000年以前に建築された新耐震基準の木造住宅についても診断や改修について補助事業を開始している。福岡市内の住宅については約10万戸が耐震基準を満たしているか不明とされているが、それに加えて、新耐震基準を満たしているとされる住宅約67万戸についても大地震に対して必ずしも安全とは言えない。市内建築物の耐震化を早急に促進するために、本市として、対象を2000年以前の木造住宅に拡大して無料の簡易診断を行うとともに、改修補助額を抜本的に引き上げること。また、人命確保のための耐震シェルター・防災ベッド・耐震ドアの設置、窓や屋根の補強などの助成についても、対象を2000年以前に建築された建物とし、周知徹底を図ること。
  • 国の被災者生活再建支援金は最大でも300万円と少なく、加えて建築資材はこの10年間で1.4倍化しており、現状の支援金額では大幅な目減りとなっている。さらにこの対象は、「全壊」もしくは「大規模半壊」に限られる。国に対して住宅支援を更に充実するよう求めること。あわせて、福岡市災害見舞金は全・半壊世帯に最大6万円を支給するだけの制度となっており、抜本的に充実させること。
  • 本市の「地域防災計画」の受援体制の中に、飛べば落ちる可能性が高い「V-22オスプレイ ティルトローター機」が資器材として入っている。オスプレイは、墜落事故が相次ぎ多くの犠牲者を生んでいる欠陥機であり、本市での災害において、受援資材に入れることは認められず、撤回すること。
  • 東区香椎川で今年8月9日からの豪雨により、10数件の浸水被害が起こった。市は、「高齢者等避難」を発令すべき「避難判断水位」を何度も超えていたにもかかわらず全く避難情報を出しておらず、「避難指示」を発令すべき「氾濫危険水位」を超えた時は1時間後になってようやく「避難指示」を発令した。これは「地域防災計画」で決められた避難情報の発令の判断基準を守っていない。恣意的に基準を歪めることは許されず、本市として「地域防災計画」を厳守すること。
  • 2025年夏の豪雨では「避難指示」発令等が「地域防災計画」どおりに行われなかった。豪雨災害の最中に、災害本部の責任者である髙島市長や危機管理監が、市役所を不在にしていたことが引き起こしたことである。市長と危機管理監は、災害時に市役所にいることを基本とすること。
  • 大雨による避難指示が出ても避難する人がきわめてわずかという問題がある。市はハザードマップを配布するなどとして自宅の土砂災害のリスクの認識や、マイ・タイムラインの作成推奨で正しい避難行動の理解促進を図るといってきたが、今年の8月豪雨においても、市内の避難指示対象者17万9114人に対し、実際に避難した人は73人など、行政の正確な情報伝達と、避難誘導については、日常的な研究と実践的検討が求められている。市民の避難に関する正確な情報が速やかに伝わるよう日常的な体制強化と啓発を図ること。
  • 本市の洪水ハザードマップには、2級河川に加え準用河川の情報が付け加えられたものの、いまだに普通河川の氾濫等による内水浸水が反映されていない。ハザードマップを実際の避難行動に結びつくようにするために、内水浸水想定区域を作成して反映させるとともに、過去の浸水実績やワークショップ等で住民から出されている意見も図示に用いるなど、改定を急ぐこと。
  • 津波ハザードマップについて、避難の方向の記載はあるものの、区域内で避難できる高いビルなどが記載されていない。必要な津波避難ビルを確保し、ハザードマップに記載すること。また、避難ビルの認証シールや、震度5弱以上の揺れを感知すると開錠されるオートロック対策など、実効性ある対策を早急にとること。
  • 本市の「災害予防計画」では、パソコンやスマートフォン等を活用することが前提となっており、それができない高齢者や障害者などには災害時に自分のいる地域でどういう被害が起きるのか、正確に知ることができない。ハザードマップや揺れやすさマップについて、全区1本のものが配布されているが、具体的な危険箇所は、きわめてわかりにくい。避難経路や避難場所はどこかなどが誰にでも理解できるようにするためにも、市の責任で校区ごとのマップを作成し、全世帯に配布すること。
  • 年々集中豪雨の発生などによる危険が高まっているもとで、県が指定する市内の土石流災害にかかる特別警戒区域を含む警戒区域380件のうちハード事業が実施されているのは、わずか5件、1.3%、急傾斜地崩壊における特別警戒区域を含む警戒区域1398件 のうち、わずか6件、0.4%となっている。県に対して、ハード事業の大幅な前倒しを実施するよう求めるとともに、市としても安全確保の対策を行うこと。
  • 洪水対応が求められる必要な河川や雨水幹線については、流域からの流出の抑制量の計画を持ち、農業用ため池の治水池へ転用、公民館・学校・保育所・公園・駐車場などへの雨水貯留施設の設置、透水性舗装や地表面緑化等を行い、流出抑制に取り組むこと。また、耐越水堤防を整備し、避難する時間が確保できる対策を強めること。さらに、河床掘削、老朽化した護岸のかさ上げ・改修、バックウォーターや内水氾濫対策、バイパス雨水管整備などの氾濫防止対策を県とも協力して行うこと。
  • 市内の二級水系13のうち、河川整備計画があるのは、湊川、多々良川、御笠川、那珂川、樋井川、瑞梅寺川の6水系だけであり、室見川は、国土交通省が整備基本方針を示しているにもかかわらず、整備計画は未策定である。すべての二級水系の整備計画の策定を県に求めること。また、準用河川についても、市の責任で整備計画の策定に着手すること。
  • 本市が管理する25の準用河川のうち、七隈川については近年溢水が起きていないことをもって整備を中断しているのは問題である。未整備部分の整備を早急に行うとともに、民有地でも補助金を出して雨水貯留浸透施設の整備を進める国のグリーンインフラ支援制度を活用し、貯留施設の新設を福岡大学に促すこと。
  • 東区の若宮商店会に隣接する松崎第11雨水幹線や、南区の老司ゲートのような浸水が頻繁に起きている場所については、被害状況を丁寧に掌握したうえで、二度と家屋や商店、車両などへの浸水被害が起きないようにすること。また、流量増加、水路の形状改良、雨水流出抑制策など有効かつ具体的手立てを講じること。さらに、ゲート施設を管理する水利委員は高齢化もあり対応できない場合も起こり得ることから、市のフォローアップ体制を検討し、確立すること。
  • 人的被害を与える可能性のある防災重点ため池は市内で229か所あるが、満水状態の時に地震などの自然災害で決壊した場合に想定される浸水の範囲や深さ、避難場所などの情報をまとめた「ため池ハザードマップ」の作成は106か所に過ぎない。また、ため池の決壊等による浸水は、河川などと比べて、箇所も時間帯も知らない市民が多い。すべての防災重点ため池について、ハザードマップの策定や暫定的な避難方法の住民周知をするとともに、防災重点以外のため池についても調査点検を行うこと。
  • ため池の維持管理を担ってきた財産区などの人員減少と高齢化が進んでおり、行政の関与が求められている。そもそも豪雨時の洪水対策を水利組合にまかせることは無理がある。行政の責任体制を確立し、ため池の耐震性や豪雨による洪水の危険性などの調査や防災工事を早急に完了させるための財政措置を国に求めるとともに、市独自でも調査、工事を進めること。
  • 能登半島地震では、北陸電力が想定した地震の最大の揺れを大きく超えるものとなり、深刻なトラブルが発生した。志賀原発では冷却用の外部電源の変圧器が損傷し、非常用発電機も停止し、またモニタリングスポット116カ所の内18カ所でデータが取得できなくなった。さらに、重大事故時の避難ルート11路線のうち、7路線が土砂崩れ等により通行止めとなり、避難計画は机上の空論となった。地域防災計画の原子力災害対策編は、専門性を前提とした原子力災害対策特別措置法に基づく計画へ変更すること。また、全市民の避難行動については、従来の避難計画をゼロから見直し、新たに書き加えた複合災害への対応として、全市民の放射能被害を想定した他都市への避難を含めた計画に策定しなおすこと。さらに防災会議に、新たに区分を設け、原子力・原子力発電の専門家を入れること。
  • 地震国の日本では大地震が起きないと言える場所はなく、玄海原子力発電所をはじめとした原発はただちに廃止することが求められている。玄海原発の原子炉運転を終了させ、原発を廃止して解体するよう国と九州電力に求めること。

(13)消防

  • 2024年度の一般会計の歳出に占める消防費の予算の構成比は1.4%しかなく、政令市最低となっている。また、本市の消防本部職員1人当たりの管轄人口は1406人と政令市最高であり、京都市や大阪市のほぼ2倍という状況は異常である。本市の消防の体制は、国の指針に照らして、ポンプ車が2台足りず、警防要員も、予防要員も、充足率が足りておらず、人員は62人も不足したままである。抜本的に予算を増額し、早急に「消防力の整備指針」に基づき、消防機材も人員も100%充足させること。
  • 2024年の本市の熱中症救急搬送者数が1160人と前年比で328人増となるなど、救急隊員には更なる負担が強いられており、現場は疲弊している。国の指針に照らせば、本市の救急車台数は1台足りず、救急要員は29人も不足したままであり、これでは現場の状況に対応できない。命に関わる分野でいつまでも人員を抑制することは許されず、抜本的に予算の増額と救急隊員の増員を行うこと。
  • 2024年度の本市の消防局におけるハラスメント事例はゼロだとされているが、日頃からの署内での人権侵害、パワハラ等の根絶に向けた取り組みを更に強めること。また消防職場での暴力・パワハラ・セクハラに対応するために、弁護士など第三者が参加する機関を設置すること。
  • 消防組織に女性消防吏員を増加させることは、子どもや高齢者、災害時の要支援者など多様な住民への対応力が向上するとともに、育児・介護などそれぞれ異なる事情を持っていることを同僚が理解し支援する組織風土が醸成されることにより、組織力の強化、士気の向上が図られるとして、消防庁は2026年までに全国で女性消防吏員比率を5%に引き上げる目標をしめしている。しかし本市の女性消防吏員の割合は3.5%に過ぎず、現状のままでは達成を見込めない。女性が安心して働ける職場環境づくりに努め、女性の活躍の場が広がることによる新たな課題や問題点にも柔軟に対応するなどして、女性消防吏員を目標に照らして計画的に増やすこと

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4、気候危機打開へ、地域と地球の環境守る先頭に

2024年の世界の平均気温は1850年の気象観測開始以来もっとも高く、産業革命前に比べると1.55度上昇したと世界気象機関(WMO)は発表している。このままではパリ協定の温暖化抑制目標である「1.5度目標」を超えて、後戻りできない破局的な事態に陥る危険がある。そういう中で、猛暑による熱中症の増加、豪雨や水害の多発、農業、漁業への影響など、気候危機は市民生活を脅かす身近な重大な問題となっている。同時に、気候危機打開への省エネルギーと再生可能エネルギーの取り組みは、新たな仕事と雇用の創出の効果が地域経済にも波及し、持続可能な地域循環型経済への転換を進めるなど大切な課題であり、本市として対策が求められている。


(1)福岡市地球温暖化対策実行計画

  • 「第5次福岡市地球温暖化対策実行計画」は、政府よりも10年早い「2040年カーボンニュートラル」を掲げ、2030年までに市域の温室効果ガス排出量の50%削減目標を立てているが、その内の46%は国の施策で削減されることを前提としている。ところが、現在の国の削減量の達成は、国連環境計画(UNEP)の報告書では、「可能性は低い」とされており、これでは、本市が「2040年度カーボンニュートラル」の前提が崩れる。国が2050年実質ゼロを目指すには2030年までにCO2を50~60%削減することが必要であり、この立場で本市として計画の見直しを国に求めること。また、石炭火力から2030年までに計画的に撤退するよう国に求めること。さらに、100%国産エネルギーである再エネの利用推進と省エネの取り組みをあらゆる分野で進めるよう国に求めること。
  • 「2040年度カーボンニュートラル」の実現のために、CO2吸収量と温室効果ガス排出削減総量を明らかにし「実行計画」に反映させること。
  • 「実行計画」を確実に達成させる保障は、港湾や大規模工場・事業所、医療機関、交通・運輸事業者などとのCO2排出量削減をどのようにするかが重要であるが、本市では、民間事業者に促す程度で終わっている。環境省は、地方自治体が域内の事業者に対して温室効果ガス排出量やその抑制方策等を盛り込んだ計画書・報告書の策定と提出を求め、計画と報告を通じて、温室効果ガスの排出抑制への計画的な取り組みを促す「地球温暖化対策計画書制度」を推奨し、現在8政令市が導入しているが、本市はその検討すらしていない。本市でも、「地球温暖化対策計画書制度」を導入し事業者における排出削減活動を抜本的に強めるとともに、進捗状況を毎年報告することを義務付ける条例を制定して民間事業所のCO2削減目標に行政が一緒に責任を持つ仕組みをつくること。
  • 学校、公民館、市営住宅、市場をはじめ、大部分の市有施設には、太陽光発電の導入はされてはいるが、いまだ具体的な省エネや再エネの目標や計画がない。省エネと再エネをあらゆる市有施設や市有地に導入して、市民や事業者の参考になる情報の共有や発信を行うこと。
  • 「実行計画」の進捗状況を福岡市環境審議会などで十分な時間を取って協議・検討し、市民に報告すること。また、市民の意欲、知恵、協力が反映できるようにするため、「地球温暖化対策市民協議会」の会員を企業・団体を主とするものとせず、中高校生や大学生など若者をはじめ広く市民が参加できるものとし、市民運動の推進母体とすること。

(2)省エネルギーを推進する

  • 本市の実行計画のエネルギー消費量については、人口増加などの影響を受けないからとして原単位を成果指標にし、エネルギー消費量総量の削減目標を持たないままとなっている。これは経済活動が増えれば全体として排出量が増えても構わないという無責任な計画であり、結果として、エネルギー消費量は2021年度以降3年連続で増加の一途となっている。本市における省エネのとりくみの現状は、「2040年カーボンニュートラル」の達成を見通せず、抜本的な強化が求められる。エネルギー消費量の削減目標について総量の削減目標を明確に持った取り組みを推進すること。
  • 2025年4月1日以降、すべての新築住宅に対して断熱性能等級4以上の性能が義務化されたが、これは、国の2030年目標である温室効果ガス46%削減の実現に向け、建築物のエネルギー消費性能の向上を図るためのものであり、今後、国は更に等級を上げていく計画である。本市は国の削減目標を上回る温室効果ガス削減目標を推進しているにもかかわらず、国の基準どおりの対応でよしとし、独自断熱基準や目標値を持っていないことは問題である。鳥取県の先進例にならい、市として基準に適合する住宅を認定し、消費者向けの広報や普及啓発を行い、事業者を育成し、認定住宅建設への助成を行うなど、住宅での省エネを推進しCO2排出量の削減を図ること。
  • 学校をはじめ公共施設等での断熱改修は、子どもたちをはじめ多くの市民に断熱の大事さを体感してもらうなど、市民啓発にもつながる。さらに、地場中小企業の仕事起こしとなり、経済波及効果も期待できる。省エネを推進するための断熱を全市で取り組むためにも、今すぐ、全公共施設で予算化し、計画を立て、野心的に推進すること。

(3)再生可能エネルギーの導入拡大を進める

  • 再生可能エネルギーの2030年度の導入目標については、21年前の「福岡市環境・エネルギー戦略」で掲げていた40万kWの目標を引き上げることもなく掲げ続けていることから、抜本的な対策が打たれていない。そのことから、2024年度の市域の再エネ設備容量は27.3万kWと前年比でわずか1.2万kWの増加に過ぎず、このままでは再エネ導入の目標達成も見通せていない。再エネ導入の新たな野心的な2030年度目標を持ち、計画を推進すること。
  • 九州電力送配電(株)は、電力供給量が需要を大きく上回っているとして原発を稼働させながら太陽光発電事業者に発電停止を求める「出力制御」を2018年10月以来行ってきており、市が設置している6カ所のメガソーラーにおいても大きな損失となっている。経済産業省が定めた「優先給電ルール」では、出力制御について、原発は全くおこなわず、火力発電は不十分なまま、再エネで作った電気を捨てる仕組みが、公共でも民間でも再エネを拡大する障害となっていることを示しており、再エネの導入推進を図る本市の「地球温暖化対策実行計画」の推進が妨げられている。市は、九州電力と国に対して原発優先の「優先給電ルール」を見直し、再エネ発電の出力抑制を中止して最優先に使用するルールに転換するよう強く要求するとともに、再エネを最大限活用できる電力網などのインフラ整備を行うよう求めること。
  • 本市の建築物等での太陽光発電は、環境省によれば各種再生可能エネルギー発電可能性量の中で最も多く、導入ポテンシャルは年間3061MWとされているが、実際の発電量は158.9MWにとどまっている。市内建築物等への太陽光発電や蓄電池、HEMS(ヘムス)やBEMS(ベムス)の積極的な導入を促進するため助成事業を抜本的に拡充するとともに、再生可能エネルギー由来の電力を市民や事業者が積極的に利用するよう周知徹底を図ること。
  • 福岡市における風力発電は、風況が十分になく導入は困難と本市は否定的だが、環境省によれば、洋上における大型風力発電のポテンシャルは高いとされている。風力発電に対する位置づけを抜本的に据え直し、他都市の実践にならい、自然環境に配慮する仕組みを盛り込んだうえで、海上などで積極的に取り組むこと。
  • 市役所本庁舎をはじめ、学校、病院、ごみ焼却工場、地下鉄、上下水道などすべての公共施設で使用する電力を2030年までに100%再生可能エネルギーに転換すること。また、市有施設・市有地で太陽光や風力、小水力、地中熱、太陽熱などの発電の活用を環境保全や住民の健康に配慮したうえで抜本的に拡大すること。あわせて、本市の公用車については2030年度までにガソリンを使わない電気自動車化を進め、高速充電設備の野心的導入を図ること。
  • 本市は九州電力の玄海原子力発電所から約40~60kmに位置しているが、福島第一原発事故で50kmの距離にあった飯館村が高い放射能汚染を受け、全村避難を余儀なくされた経験は他人ごとではない。市長は九州電力と国に対して、玄海原子力発電所3・4号機の即時停止と早急な廃炉を強く要請すること。あわせて、九州電力に対してどんな微細な事故であってもすべてを直接福岡市へただちに連絡させるとともに、発電施設の新増設や原発を稼働及び延長運転をしようとするときは、事前に福岡市に丁寧に説明を行い、事前了解を得る内容に「原子力安全協定」の見直しをすること。

(4)熱中症から命と健康を守るために

  • 気象庁は、今年の夏の平均気温が観測史上最も高いと発表した。そういう中、今年の熱中症搬送者数は917人で、そのうち34%は住宅内等室内で発症しており、予防にはエアコンの使用が不可欠であるが、物価高騰の中、電気代を気にしてエアコンを使わない方が少なくない。市独自に電気代支援を行うこと。
  • 内閣府の2024年度消費動向調査によれば、エアコンを所有している世帯は91.7%である。これは、8.3%の世帯にはエアコンがないということでもあり、福岡市で言えば7万4700世帯となり、現実に市内で生活保護を利用している家庭では328世帯にエアコンが設置されていない。一方、エアコンの導入設置は10数万円かかり、低所得世帯にとって、新たな購入設置や買い替えは財政的に簡単ではない。すべてのエアコン未設置世帯への購入・設置費の助成を行うこと。また、大家や住宅管理会社のエアコン設置への助成制度を本市独自に作ること。
  • クーリングシェルターを活用した熱中症対策は、暑くなり倒れそうになって駆け込むのではなく、その前に、避難できる施設の活用が重要である。市民センターや公民館、図書館などの一定の空間のある部屋をクーリングシェルターとして位置付けた公的施設を抜本的に増やすこと。また、民間施設の協力を広げるとともに、休憩のためのイス、水分補給のための水や清涼飲料水、タオル、保冷剤など、必要な物品は予算もつけて市から提供すること。

(5)JR騒音

JR福岡貨物ターミナル駅では、フォークリフトの警告音や作業音、貨車の連結やブレーキの音などが、深夜まで鳴りやまず、周辺住民の受忍限度を超えている。市は、日本貨物鉄道株式会社に対し、貨車の運行時間を夜12時までとし、深夜の騒音を伴う作業をやめるよう、国土交通省や環境省とも連携を図って同社に実行させるとともに、防音壁を設置させ騒音被害を軽減させること。


(6)干潟保全

干潟は水の浄化など自然の恵みをもたらすものであり、温室効果ガスである二酸化炭素の吸収にも重要な役割を果たしており、保全が重視されてきている。本市の和白干潟は、日本で2か所しかない自然海岸が残る干潟であり、絶滅が心配されている渡り鳥(クロツラヘラサギ・ツクシガモなど)や、干潟の生きもの(オオミミガイ・ハクセンシオマネキ等)の渡来地・生息地であるため「国指定鳥獣保護区」にも指定されており、日本海に面した干潟では最も底生生物の種の多様性が高い。本市は、条約登録をこの20年間、「将来的な課題」と言い続け何もしていない。登録に向けた地域住民の理解を速やかに得る手立てをとること。和白干潟の「特別保護地区」指定を国に申請し、ラムサール条約登録地にされるよう積極的な取組みを推進すること。

(7)ごみ

  • 本市では、2023年度に家庭から出た可燃ごみ約25.4万tのうち、約2割に当たる約4.9万tがプラスチック類となっており、2026年度からプラスチックごみ分別収集によるリサイクルの導入を予定している。しかし、この費用を自治体や消費者が負担することには、生産者が、製品の生産・使用段階だけでなく、廃棄・リサイクル段階まで責任を負う「拡大生産者責任」の立場からみて道理がない。国は、産業界の要望で拡大生産者責任やプラごみの総量規制に手を付けず排出抑制に消極的な態度のままであり、市として、製造企業の責任による回収と再生利用を行うとともに、分別収集の費用負担等への財政措置を強く国に求めること。
  • 家庭用ごみ袋の値段は、全国の市町村では1リットル当たり0.8円程度なのに福岡市では1円と全国平均よりも高い。また、国の有料化手引きでは「住民の受容性」も勘案し負担額の住民意向調査をするよう定められているにもかかわらず、物価高騰以後、本市は調査すら行っていない。家庭用ごみ袋代の値下げを行うこと。さらに、コンビニやスーパー等のレジカウンター付近で、販売している“ふくレジ”の認知度が依然低いので、啓発すること。あわせて、高齢者や障害者などを対象にした粗大ごみの持ち出しサービスは無料にすること。
  • 本市のごみ処理量は、家庭ごみは減少傾向にあるものの、事業系ごみは2年連続で増加傾向にあり、「福岡市廃棄物の減量及び適正処理等に関する条例」第3条で「市は、あらゆる施策を通じて、廃棄物の減量を推進する」と責務が謳われていることからも許されない。市は、人口や事業所が増えれば全体としてごみが増えても構わないという原単位でのごみ減量の見方を改め、ごみ処理量の抜本的な削減を明確にした目標とするよう「第5次基本計画」を見直すこと。
  • 家庭ごみの収集運搬労働者は、人口も処理量も増え仕事も増えているにもかかわらず、その賃金は低水準に据え置かれている。夜間戸別収集を維持・継続するためには、委託労働者の雇用の安定と労働条件の改善は不可欠である。委託企業が定期昇給を実現できるよう委託費を引き上げ、労働条件の改善を図れるよう市が責任を持って委託企業を指導すること。また、FC車導入にあたっては、委託企業や現場労働者の負担増にならないよう係る委託費を引き上げること。

(8)盛土・土砂災害警戒区域の開発行為

「宅地造成及び特定盛土等規制法」の施行を受け、本市でも規制区域の指定と運用が始まった。現在の課題は、建設残土の排出量が膨大で、最終処分場は不足状態となっていることである。そのため、公共工事でも最終処分は請負業者まかせになっているなど、民間工事でも自由処分となっている事例が散見される。これでは排出された残土がどこに運ばれていくのかわからない。市は国に対し、一定規模以上の盛土等は、すべて届け出の対象とし、大規模の物は許可制とする運用を求めること。また、市として、危険な盛土の総点検と情報開示を行い、緊急な安全対策を急ぐとともに、土砂災害特別区域には盛土をさせないことや、建設発生土は建設工事の発注者などが最終処分地まで適正に処理する責任を持つことを義務づけることなど、違法な盛土造成への規制を強化すること。さらに、危険区域への新たな宅地などの開発、住宅等の建築を禁止するとともに、危険区域の管理を個人所有者まかせにせず、土地の買取りを含め、市としての管理を強めること。


(9)緑・公園

  • 市長は今年度予算において「まちに緑を」と大きく打ち出し、あたかも緑化が大きく前進するかのようにアピールしたが、「グリーンビル促進事業」では天神ビッグバン地域のビル更新時に屋外緑化を計画すれば容積率を緩和するというように、巨大開発の手段として「みどり」を悪用するものに過ぎないことが明らかになった。また、博多駅、天神駅など主要な地下鉄駅や市庁舎など、来街者の目につく施設に特化したわずかな事業にとどまり、「都心の森1万本プロジェクト」と同様に真の緑化とは程遠い実態も明らかになった。「緑化」を開発やインバウンドの道具にするやり方はやめること。
  • 改定された「新・みどりの基本計画」については、都心部の植樹本数をわずかに増やす一方で、全市域のみどりの面積については10年後まで増やさず「維持」することが目標という全くやる気のないものになっている。政府よりも10年早く温室効果ガス排出実質ゼロにするという本市の脱炭素目標に見合った形で、樹木の保全及び真の緑化を推進する計画へと抜本的に見直すこと。
  • 本市では須崎公園の樹木伐採に端を発して、都市の緑の保全は市民的な要求となっているにもかかわらず、福岡市博物館のリニューアル事業においても大量の樹木が周辺住民をはじめ市民に何の説明もなく大量に伐採され大きな問題となっている。国際的には、気候危機やヒートアイランド対策として、CO2を吸収し気温を下げる樹木の役割が注目されており、樹木の枝葉で覆われる面積である樹冠被覆率の目標を持ち、樹木を増やしているのに照らして、樹木や樹冠被覆率の重要性を全く無視するかのような本市の姿勢は異常である。このような姿勢を改め、樹木を保全しつつ着実に増やしていくこと。
  • PFI法改正で対象施設が都市公園にまで拡大されたことを受け、本市では、パークPFI事業を拡大している。これは、市民の財産である公園を民間営利企業の儲けの場に変質させると同時に周辺道路の渋滞など、住環境の悪化をもたらすものでもあり、これ以上拡大しないこと。
  • 市内各地で国道などの基幹道路沿いの街路樹等を、「歩道の整備」や「地元住民からの要望」などを理由にして伐採しているが、都市緑化に逆行しヒートアイランドに拍車をかけるものであり許されない。樹木の適切な管理・保全を徹底すること。また、周辺住民に迷惑をかけないようにするとともに、事故防止のためにも街路樹等の剪定や点検、落葉の清掃等に係る予算を抜本的に増やすこと。

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5、物価高騰とコロナの影響に苦しむ中小企業・小規模事業者、農林水産業を支援し、地域経済の立て直しを

(1)中小企業・小規模事業者支援

  • 本市が行ったアンケートでは中小企業の売り上げはコロナが流行する前と比べて6割しか回復しておらず、「第2次プラン」の目標を大きく下回った。さらに物価高騰を価格に「おおむね反映」できた業者は19%に過ぎない。倒産件数は2009年以来、過去最高となっており、コロナ・物価高騰の影響は本市中小企業・小規模事業者に重くのしかかっている。中小企業・小規模事業者を引き続きしっかりと支援するために振興予算を抜本的に増やすこと。
  • 「燃料費等高騰の影響を受けた事業者支援」について影響額の2分の1の支援では足らず、割合を引き上げるとともに、資材や食材も対象にするなど支援の範囲を広げること。
  • 「ゼロゼロ融資」の返済がままならず廃業・破産に追い込まれる業者が少なくない。「3か月毎に計画書を出せ」など金融機関が追加融資になかなか応じてくれない状況もある。保証協会や金融機関が制度融資の追加融資および措置・返済期間の延長等の条件変更に柔軟に応じるよう要請すること。
  • インボイス制度導入により新たに消費税の納税をしなければならなくなった小規模事業者、個人事業主やフリーランスは借金してまで納税するなど、その負担に苦しんでいる。直ちに廃止するように国に求めること。
  • 市長肝煎りの創業支援(スタートアップ)は雇用や税収の成果が他の経済施策に比べると上がっていない。またスタートアップというだけで「大名」という1等地に安い家賃で事務所を借りられ、場合によっては2年以上も入居できるなど優遇されている施策も散見される。歪な特別扱いはやめること。
  • 住環境の改善整備で住民に喜ばれるとともに、波及効果の大きさで地域経済対策としても大きな威力を発揮している用途制限のない住宅リフォーム助成制度を創設すること。個々の店舗の改装費や備品の費用などへの助成を行う「商店リニューアル助成事業」を新設すること。
  • 公共事業を地元中小企業、特に小規模事業者へ優先して発注すること。また、公共事業の在り方を生活密着型に改めて中小企業の仕事を増やし、分離・分割発注の拡大、地場中小企業・小規模事業者向けの発注割合を増やすこと。
  • 競争入札資格のない未登録業者に対して、自治体が建設工事や修繕工事等を発注する小規模工事登録制度を実施すること。
  • 中小企業経営の発展にとって採用と人材育成が決定的に重要である。中小企業が共同で行う求人活動や社員教育活動への支援を強めること。各分野のすぐれた技能者・職人の認定制度、報償金制度を整備・拡充し、すぐれた技術を継承すること。経営者同士が学び・交流できる場、各地の商店街や市場関係者が学び・交流できる場をつくること。同業種間、異業種間の学びと交流を応援すること。
  • 所得税法第56条は、自営業・農業において、妻など家族従業者への給与を必要経費として認めていない。これは家族一人ひとりの働きを正当に評価せず、個人の尊厳と両性の平等に反する差別的税制である。「青色申告にすれば」という議論があるが、税務署長の裁量で取り消されることがあり、家族一人ひとりの働き分を認めたものとは言えない。廃止を国に求めること。

(2)賃上げ・労働

  • 中小企業振興審議会でも、商工団体の代表の委員から「最低賃金が上がって大変だ」という意見が次々に出されており、企業の賃上げマインドも低下している。国が無為無策の中で、岩手県、徳島県、群馬県、茨城県、奈良県などで、中小企業の賃上げへの直接支援、補助金制度がスタートしている。本市でも同様な制度を創設し、中小企業の負担を減らすとともにそこで働く人たちの賃上げに寄与すること。
  • 市の公共工事等を受注した企業や下請け業者等に、市が定める賃金以上を支払うことが義務付けられる公契約条例は、川崎市、相模原市などの政令指定都市を含む全国で90の自治体に広がっている。発注する公的機関と受注者等の間で結ばれる契約(公契約)において、生活できる賃金をはじめ、人間らしく働くことのできる労働条件を保障する公契約条例を制定すること。
  • 市発注の公共事業の下請け、孫請けの賃金について、国から依頼された調査結果を準用して設計労務単価が支払われているかを調査するとともに抜き打ちでの調査も行うこと。さらに、本市の総合評価方式の評価に労務単価を守らせる項目を採用し、建設労働者に適正な賃金を支払われるようにすること。建設業における労働条件の改善や担い手確保のための「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の推進に関する法律の一部を改正する法律」いわゆる新担い手三法を公共事業において施工業者に遵守させること。
  • 過酷な労働条件、雇用環境で労働者を使い捨てにする働かせ方を強いる企業が少なくない。労働問題を県や国にまかせるだけでなく、専門職員を配置した労働相談窓口を各区につくり、街頭相談や電話やSNSを使った相談を実施すること。調査、相談、啓発を網羅した、違法・脱法的な働き方をなくすための条例をつくること。
  • 「働くあなたのリーフレット」を市内の高校、専門学校生、大学生全員に渡せるように作成部数を増やすとともに、労働者向けリーフレットを作成し広く配布すること。「働くあなたのガイドブック」の作成部数を増やすこと。

(3)農業・水産業

  • 肥料や飼料、燃料などの価格が高止まりしている。肥料、資材、燃油、飼料など高騰分を補てんする市独自の施策を実施すること。
  • わが国の食料自給率は先進諸国最低の38%に落ち込んだままである。近年の世界的な食料危機が警告するように、「食料は金さえ出せば輸入できる」時代ではなくなっている。農業を国の基幹産業に位置づけ、食料の外国依存をきっぱり転換し、早期に食料自給率50%台を回復し、引き続き60%台をめざすよう国に求めること。
  • 農業の縮小・衰退に拍車がかかっているだけに、その打開には、思い切った農業保護政策の実施が不可欠である。農林水産業の振興に必要な予算を思い切って増額すること。
  • 大多数の農業者が営農を続け、暮らしが成り立つ土台を整えるために価格保障、所得補償を抜本的に充実するよう国に求めること。
  • 高齢農業者の急速な引退が加速する中で次代の農業の担い手の確保は社会の持続に関わる喫緊の課題である。本市の農家の経営主の平均年齢は73.7歳、農家戸数及び農業従事者数についても、依然として減少傾向が続いている。農家の後継者づくりについては、生活支援や資金、技術、農地の面での総合的な支援体制を整え、農業への新規参入者を増やすこと。
  • これ以上耕作放棄地を増やさない手立てをとるとともに、活用については市民農園や体験農業、学校農園、農業ボランティアなどさまざまなチャンネルで市民の多くが農業・農村にふれ、生産にかかわる取り組みができるようにすること。
  • 有機農業は、化学肥料や化学農薬の使用禁止だけでなく外部資材の投入を極力抑え、作物の生命力や生態系に依存した循環型、低投入型でエネルギー効率のいい農業として推進し、飛躍的に拡大するよう支援すること。有機農業技術を学ぶことができる研修を市がイニシアチブをとって行ったり、技術指導できる人材を招聘したりするなど、有機農業に取り組んでもらうきっかけを作ること。有機農業に安心して取り組めるよう、収益の不安定期への手厚い補助を実施すること。学校・保育園・幼稚園の給食の食材に地元の有機農産物が採用されるように、有機にふさわしい価格で買い取り、その際の掛かり増しの経費を市が補助すること。
  • 有害鳥獣による農作物への被害額は2967万円となっており農業者の生産意欲を失わせている。被害の多くを占めるイノシシ対策のためワイヤーメッシュ、電気柵の設置など予算を増やすこと。
  • 市の漁港で漁協が無許可有料貸付を行ない、市が黙認してきた事件の徹底究明と全容解明を市がイニシアチブを発揮して行うこと。

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6、憲法と子どもの権利条約を生かし、子どもを人間として尊重する教育・文化行政の推進を

(1)福岡市教育振興基本計画

教育の主人公は子どもである。教育は子どもの人格の完成をめざし、その尊厳を尊重しながら発達を支える営みであり機会均等でなければならない。また、教育は、子どもが「社会の形成者」に育つことを通じ、人権や平和など人類の理想の実現と結びついている。ところが、改定された第3次福岡市教育振興基本計画は、特定の価値観に基づく「目指す人間像」を掲げ子どもや教職員から自由を奪い枠にはめるものとなっている。具体的には喫緊の課題である教職員の抜本増や処遇改善、遅れている校舎等の建て替えや大規模改造、過大規模校の解消の手立て、多様な学びの場の保障など、教育行政の責務が後景に追いやられる一方、ウェルビーイングやDXをことさら強調するものとなっており、指標の設定についても子どもの意識調査をもとに設定し、客観性がなく非科学的なものになっている。今、世界では戦争や環境問題、人権問題など多くの社会問題が発生する中、子どもたちは家庭の生活困難等にも直面し、葛藤と模索の中でともすれば希望を失いかねない中での学びを強いられている。教育振興基本計画においては日本国憲法が掲げる教育権や個人の尊厳を土台に、「子どもの権利条約」が掲げる一人一人の尊厳、発達の権利や意見表明権などの人権、最善の利益を保障し、教育の真の目的である「人格の完成」が土台に据えられた教育を実現するため、教育条件の抜本的改善と教育行政の責任について明確化を図るよう見直すこと。


(2)教育予算

人件費を除けば一般会計のわずか7.3%と前年度から更に低下した本市の教育予算は、校舎や体育館の建て替え、施設整備・改善、学校運営等、教育活動の基盤を揺るがしており、抜本的に増額すること。人件費についても教職員不足を打開するとともに現在会計年度任用職員とされている専門職を正規化するために大幅増額を図ること。


(3)過大規模校など適正な教育環境への改善

  • 31学級以上の過大規模校について、2025年度は小学校25校、中学校7校となり、昨年度より3校も増えた。プレハブ教室は小中合わせて52校206教室にのぼり、多くの子どもたちに不自由な学校生活を強いている。子どもたちは運動場で思いきり遊ぶこともできず、全員が参加する学校行事さえも難しくなっている。早急に過大規模校を解消するためのあらゆる手立てを尽くすこと。この問題は、今や全市的に引き起こされている無秩序な住宅開発による人口急増や、教育委員会が子どもの数についていい加減な推計を出していることが原因である。市は、開発規制は困難だとしているが、こども病院跡地の住宅戸数の制限に続き、九大箱崎キャンパス跡地の開発でも戸数制限を行うとしている。過大規模校を生まないよう開発を規制する条例を制定すること。
  • 市はことさら小規模校を問題視し、施設一体型の小中連携校の設置を進めているが、舞鶴小中学校や照葉小中学校などの開発地域周辺における連携校では過大規模校となっており、通学距離の拡大や校舎の高層化の問題などもあり、子どもたちに大きな負担を強いている。小規模校よりも施設一体型の連携校が優れているという発想を改め、推進をやめること。
  • 施設一体型で連携校計画が進められている馬出小学校と福岡中学校、千代小学校と千代中学校は、どちらも箱崎九大跡地開発地に近接している。開発地域周辺における連携校は過大規模校となる可能性があるため、統合後の学校跡地について民間活用はおこなわず、学校用地として確保したうえで、当面公共目的で有効活用を図ること。
  • 学校体育館のエアコン設置が今年度より開始されることになったが、これまで市は「体育館は断熱されていないため効果がない」という理由でエアコン設置を拒んできた。断熱化しない場合はエアコンの効果について、温度調査などを行うこと。また、断熱を施したうえで真に効果があるものにすること。さらに、学校体育館は避難所にもなるため、災害時の非常用電源を確保すること。
  • 武道場、印刷室、武道場、相談室、PTA会議室などの諸室にはいまだにエアコンが設置されていないところが残されている。また、エアコンの設置費用についてはPTAなどに負担させることは問題であり、子どもや職員、保護者が活動するところはすべて教育委員会の責任で設置すること。
  • 2026年度の学校のエレベーター設置計画はわずか1校であり、その後の設置計画は、大規模改修時などと先延ばしにしている。障害のある子どもたちが地域で学ぶ権利を奪っており許されない。一方で肢体不自由児がエレベーターのない学校に在籍するケースもあり、これらは教育委員会の怠慢の結果である。しかも全国平均3割の設置率に対し、本市では2025年で18%にすぎない。児童生徒の安全確保、教員等の負担軽減、学校のバリアフリー化によりインクルーシブ教育を促進するためにも、また避難所としての役割を果たすためにも、全ての小中学校へエレベーターを設置する計画を策定するとともに、要配慮児童生徒が在籍する学校への設置を急ぐこと。
  • 学校の従来の大規模改造工事で、築30年以上で未実施の学校が52校残されているにもかかわらず「長寿命化計画」を理由に40年経過するまで放置されようとしている。「長寿命化計画」対象の学校数は32校であり、工事数はわずか14校である。築年数が古い学校は老朽化がすすみ、危険個所も多い。大規模改造工事の改修ペースを引き上げ、未実施校については早急に終了させること。
  • 2024年度の学校施設改良等要望は774件で、対応済は214件とわずか27%にとどまっている。また今年夏の公共施設を考える会の学校施設調査でも校舎の外壁の亀裂や爆裂、ブロック塀の倒壊の恐れがある危険個所も見つかった。維持補修費を抜本的に増やし、各学校から改修要望が出された場合は速やかに対応すること。
  • 学校施設ブロック塀改修事業は、2018年から開始され、昨年度末までに危険個所が20.1km完了したが、依然として2.8kmの改修が残されている。予算を増額して速やかに改修すること。また、通学路における危険なブロック塀については、補助事業の対象を抜本的に広げ、現在の2分の1で上限15万円という補助額を増額して、積極的に周知するとともに、危険なブロック塀の除去を早急に進めること。
  • 水泳授業は、海や川に囲まれた我が国において、命を守るために必要なものである。しかし、学校プールにおいては、老朽化による怪我などの事態が生じている。学校施設整備指針で設置が推奨されている日除けの設置がないところや、小さすぎて全員が利用できない日除けも多い。さらに、プールサイドが熱すぎて危険だが、プール用ビニール床シートを貼るのは、改修時に限定されており大半は放置されたままである。早急にすべての学校プールの改修を行うこと。加えて、周りの住宅や高層マンションから、フェンスが低いため丸見えとなっているプールも多数見受けられるため、必要な予算を確保して、早急な施設整備を行うこと。
  • 水泳授業における民間プールの活用は、校外への移動を伴うため時間がとられ、危険も生じる。拙速な実施は行わないこと。すべての学校プールを維持し、教員の負担になっている水質管理の専門業者への委託や、水泳指導について教員の過度な負担にならないよう加配するなどの手立てをとること。
  • 市内に学校施設は217校あるにもかかわらず、学校用務員については拠点校方式として153人しか配置されておらず、以前の全校配置の時と比べ即応性が下がり、危険を回避し、快適な環境を整備することに支障をきたしている。学校用務員について、21校のみ配置の拠点校方式はやめ、各校最低1人、規模によっては複数配置すること。
  • 今年の学校施設調査でも、アスベスト含有が疑われる波型スレートやPタイルの破損や劣化が多数確認された。割れたアスベスト含有建材は、早急な撤去が求められているにもかかわらず、放置されているものが少なくない。市はアスベスト含有の可能性がある材料や使用箇所などを周知し、破損が見受けられる場合の応急対応や児童生徒への指導の依頼、教育委員会への報告などを通知しているというが、多くの教員や児童生徒が把握していない実態がある。アスベストの危険性や維持管理方法、処分方法について周知するとともに、アスベスト含有建材は早急に撤去すること。また市が保有するアスベストアナライザーも活用し検査を行うこと。

(4)学校給食

  • 学校給食無償化にともなって、アレルギーで給食を食べられない児童生徒には給食費を支給することとなったが、翌年度4月に一括支給となっており遅すぎる。毎月の支給に変えること。また、不登校児童生徒、宗教上の理由で給食を食べられない生徒への給食費の支給がないのは、明らかに差別であり、憲法違反であるため改善すること。さらに、夜間中学校や教育支援センターでも給食を提供すること。
  • 学校給食無償化が始まったことによって、食材の質の低下や分量を減らすことは許されない。給食の質や量の向上を行うこと。
  • 有機農産物を使った給食の実施は、子どもたちに安全で質の高い給食を提供するとともに、地元農業の振興につながる。給食に使うまでの供給量はすぐに賄えなくとも、全校一斉ではなく、一部の学校の使用や、他自治体からの供給をもってすれば実現できる。早期に実施すること。
  • 中学校の給食では、授業が長引いたり、準備に手間取ったりして喫食時間が10分以下になる場合も少なくない。子どもたちや教職員からも給食時間は短すぎるという声があがっている。中学校給食がセンター方式であること、返却時間に余裕がないことなどが主な原因である。給食センターと協議し、柔軟な対応を求めるとともに、生徒一人一人に応じた十分な個別的配慮を講じ、学校が必要と判断すれば、給食・喫食時間を長くすること。
  • 小学校の給食室へのエアコン設置は、現在70校で2025年度中に88校になる見込みだがいまだ6割である。2028年度までにすべての給食室にエアコン設置とのことだが、猛暑の中では40℃を超えるとの訴えもある環境での調理業務は過酷である。計画を前倒しして、すべての給食室へエアコンを設置すること。また、全ての給食受け所へエアコンを設置すること。
  • 本市の中学校給食はPFIのセンター方式で、1万食を超える大量調理、職員の低賃金など、食育としての給食とは程遠い実態となっている。小学校給食においては、自校方式であっても、146校中78校と半分以上が民間委託され、ここでも低賃金の職員が、子どもたちと関わりない形で業務を行っている。しかし、学校給食は子どもたちの成長を育み、食育にも資するものであり、営利を追求する民間への委託はなじまない。中学校給食のセンター方式並びに小学校給食の民間委託はやめ、顔の見える安全性の高い直営・自校方式に戻し、調理員は市の正規職員として配置すること。

(5)少人数学級

少人数学級は、学習意欲の高まりや不登校児童・欠席者の減少など、教育的効果が数字として表れ、児童生徒の自尊感情も高まることが実証されている。また有識者からも少人数学級が児童生徒と教員が接する時間を多く確保でき、学習面や生活面で一人ひとりの状況を把握しやすく教員の負担軽減にもつながると意見が出されている。国に対して法改正や予算の増額を求めるとともに、実現するまでの間、市独自に採用を増やし20人学級をめざすこと。


(6)ICT教育

  • 教育におけるICTの活用については、子どもたちの学びを補助する1つのツールとしての位置づけを明確にし、事実上の強制をやめ、教員の自主性・自立性を尊重すること。ICT支援員については各学校に月2回(1回8時間)の派遣ではニーズに対応できておらず、全校に1人ずつ常駐させること。
  • タブレットの活用により、子どもの成績、日々の生活などが「学習ログ」としてクラウド上に蓄積されている。これらの個人情報等の教育データを民間産業に提供する事は許されず、厳正に管理すること。
  • 一部導入されているデジタル教科書については、現場や有識者から学習効果への疑問や子どもの健康への懸念が出され海外では見直しの動きも起きてきている。全面的な導入には多くの懸念があり本格導入については慎重にすること。
  • ICT教育にあたっては、基本的人権を基軸とした「デジタル・シティズンシップ教育」を重視すること。
  • 今年度「端末統合」の作業が教職員に押し付けられ、想定外の作業量の多さから児童・生徒を下校させて全職員で取り組むなど教育課程にも影響を与え、教職員の負担も増大した。働き方改革にも逆行するものであり、今後は専門業者に委託する等の手立てをとること。

(7)教職員の働き方改善、採用の在り方

  • 教師不足は引き続き深刻であり、年度当初から担任不在となる異常な事態を作り出している。これは長年正規教員の採用数を抑制し、500人規模の定数内講師で穴埋めするやり方によって引き起こされてきた問題である。また産休・育休代替で運用できる講師の確保にも無策だった結果でもあり、教育委員会の責任は重大である。講師頼みの定数確保方式をやめ年度内の休暇取得見込みを正確に把握したうえで、正規教員の抜本的な増員を図ること。その際、教養・専門試験結果を主要な選考の判断材料とせず、経験や意欲等、総合的に判断し「教員は現場で実践を通じて成長する」ことを前提に人材確保を図ること。また、市立高校を含め、非常勤講師の処遇を抜本的に改善すること。国に対して、義務教育給与の国庫負担率を現状の3分の1から2分の1に戻すとともに、給特法を見直し残業代を適用するよう国に強く求めること。
  • 教員の労働時間については、6割以上が過労死ラインを超える深刻な実態は改善されておらず病気休暇者数は363名、そのうち精神の病によるものは150名と高止まりしている。教職員の長時間勤務については、学校閉庁日の設定やICTの活用、意識改革などでは、根本的な解決に程遠く、教員一人あたりの持ち時間数を小学校で週20時間、中学校で18時間程度を実現するよう現場に指導・助言すること。実効性に乏しい「改革推進プログラム」は早急に改訂すること。
  • スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等きわめて重要な役割を担っている専門職が、本市においては会計年度任用職員という非正規雇用でしかも数校かけもちの業務形態という異常な働かせ方になっている。現場のニーズに応えられるようにするためにも、国が定数化するまでの間、本市独自に正規雇用とし、まずは全校に1人以上配置すること。
  • 学校司書についてはこれまで51人の有資格者を会計年度任用職員という不安定な身分のままで4~5校かけもちさせるという配置だったが2025年度は「全校配置」を目指すことを理由に無資格で有償ボランティアの「学校図書館支援員」を104名配置し、充実させたかのように説明している。これは明らかに専門性の後退であり、このような姑息なやり方はやめ、全員を有資格者の正職員とし、全校配置すること。
  • 教員は、夏季休業期間中にも、ワックスがけや壁塗り、草刈り、会議や校内研修等に忙殺され休暇を取得しにくい状況になっている。学校閉庁日の設定ではその他の業務を学校以外の場に移すだけで何の改善にもなっておらず、本来、教員がやる必要のない環境整備等の業務は、行政の責任で他の公共施設と同様に専門の地場業者に委託するとともに、会議や研修等は夏季休業期間中には原則実施しないよう指導すること。
  • 部活動の顧問になるかならないかは任意である。顧問になることによって時間外活動を余儀なくされ、教員の大きな負担となる事態は問題であり、強制にならないよう現場を指導すること。「一部教員の負担軽減」や「生徒の活動保障」を理由に「全員顧問制」を容認している教育委員会の姿勢が現場での実質的な強制につながっており、この考え方を改め、部活動指導員や支援員の配置こそ充実させること。部活動の地域移行については、学校教育との関係整理、費用の保護者負担増や指導者確保等、未解決の問題が山積しており、拙速な移行を行わないこと。

(8)教育の在り方

  • 合理的な理由なく、子どもの表現の自由を規制し、人権侵害となっている理不尽な校則については、世論と運動を受けて、一定の見直しが行われてきたものの、いまだ髪型や服装、アンダーウェアの色、眉毛の揃え方などに関して、事実上の細かい規制が残っている。細かい校則規定は、明確なハラスメントだと捉え、学校まかせにせず、子どもの権利条約に基づき、教職員、子ども、保護者の話し合いによって絶えず見直すよう助言すること。また、「指導」という名目で「違反」した生徒を教室に入れないなど、教育を受ける権利を侵害する対応も残っている。人権侵害の「指導」については直ちに根絶させること。ジェンダーフリーに反する男女別の校則規定についても見直しを指示すること。
  • 本市で2024年度に把握されたいじめは、小学校で3753件、中学校で629件と過去最多を更新し、タブレット等による誹謗中傷等の人権侵害も後を立たない。いじめへの対応を絶対に後回しにしない命最優先の原則(安全配慮義務)を確立し、加害者にはいじめをやめるまでしっかり対応すること。そのためにも些細なことにも対応できるよう教職員・保護者の情報共有の徹底について現場を指導すること。また「重大事態」が発生した際の調査については、昨年改訂されたガイドラインを現場に徹底するとともに、速やかな対応ができるよう教育委員会として現場を援助すること。
  • 子どもたちは、インターネット社会の中、非科学的で、歪んだ情報に触れ、予期せぬ妊娠に直面したり、性暴力や性犯罪の被害者になったりするリスクの中で生活している。人の受精や妊娠の過程は取り扱わないとする学習指導要領「歯止め規定」は、国連からも改善を求められているように時代錯誤のものであり撤廃することを国に求めるとともに、国の姿勢に追随する情けない態度を改め、科学的な「包括的性教育」を徹底すること。本市作成の「性教育の手引き」については、「歯止め規定」を前提にし、国際基準に照らしても重大な内容となっており、LGBTQ+についての記載を含む科学的なものへと全面的に改訂すること。
  • 全国一斉学力テストや本市独自の「生活習慣・学習定着度調査」は現場に管理と競争を押しつける以外の何物でもなく、子どもと教職員を疲弊させ、精神的ストレスを増大させている。全国学力テストはやめるよう国に求めるとともに、参加をやめ、本市独自調査も中止すること。偏差値競争の温床であり、保護者の経済負担となるフクトをはじめとする業者テストを認めている異常な姿勢をあらため、学校現場から一掃すること。
  • 学習指導要領に基づき実施されている現行の道徳科については、特定の価値観を押し付け憲法や子どもの権利条約に反するものとなっている。道徳教育は子ども一人一人が自分の価値観を高めながら、市民道徳を身に付けられるものになるよう学校教育全体で取り組み、内心の自由を侵す「評価」はやめること。
  • 「2分の1成人式」は、親への感謝を実質強要し、様々な事情を抱えた子どもたちや保護者にとってはストレスとなっている。「起業が大事」という特定の価値観を押し付ける「アントレプレナーシップ教育」とともにやめること。
  • 憲法違反の安保法制のもとで、自衛隊と米軍の一体的な運用が加速化し、敵基地攻撃能力の強化方針によって、ミサイル発射基地が各地で建設されるなど、自衛隊が戦争の突撃部隊とされる危険が高まっている。「殺し殺される軍隊」としての性格を高めている自衛隊を他の事業所と同様に一般的な「職場」として扱うことは問題であり、職場体験先として選定しないよう学校現場に徹底すること。
  • 暴力に他ならない教師による体罰や、人権侵害である暴言は、学校現場から根絶しなければならないが、いまだに後を断たず、子どもを不登校に追いやる要因ともなっている。「体罰根絶宣誓書」への署名や唱和など形骸化した対策ではなく、子どもの権利条約や日本国憲法に対する教職員の認識を高める研修など、日常的な取り組みを充実させ、学校現場は子どもを権利主体として捉える場に変えるとともに、発生事実が判明した際は、厳正に対処すること。

(9)教育を受ける権利

  • 生活保護基準の連続引下げについて、最高裁で「違法」とする判決が確定した。この基準に連動させ、「生活保護基準の1.25倍」としている本市の就学援助基準の土台が崩れたと言わなければならない。基準を抜本的に見直し、経済困窮世帯が受けられる制度へと改善すること。
  • 就学援助の支給項目については、国が認めているクラブ活動費・生徒会費・PTA会費はもとより眼鏡購入費についても追加するとともに、物価高騰を加味し、入学準備金を含む給付額全体を増額すること。
  • 学校徴収金や修学旅行費、制服代、指定カバン等いわゆる「隠れ教育費」について保護者の大きな負担となっており、義務教育は無償と定めた憲法に基づき、これらの経費を無償とするよう国に求めるとともに、実施されるまでの間、市独自に補助制度を創設すること。就学援助を受けている世帯の保護者に、一時的に立替えを強いる後払い方式を改めること。
  • 不登校児童生徒数は年々増加し、2024年度は5770人と前年度を約600人も上回り史上最高を更新する深刻な事態となっている。学校が行き過ぎた管理や競争によって、子どもにとって息苦しい場になっていることの表れである。子どもを学校から遠ざけている要因を取り除くとともに、「学びの多様化学校」については、受入れ人数を抜本的に増やすとともに、各地に計画的に増設すること。「教育支援センター」については箇所数を更に増やし遠距離通学の負担を軽減し教職員体制を充実させること。また、「校内教育支援教室」については教員の配置を充実させること。
  • 不登校対策については学校復帰を前提とせず、教育を受ける権利、人格の完成を保障する多様な受け皿を整備すること。フリースクールは様々な理由で不登校となっている子どもたちの重要な受け皿であるにもかかわらず、公的助成がないために、運営には大きな困難があり、保護者にとっても大きな経済的負担となっている。他の政令市の動向を理由に背を向ける姿勢を改め、市として助成制度を創設するとともに、国に対し財政措置を求めること。また、フリースクールへの出席は学校の出席としてカウントするよう学校現場に徹底すること。

(10)特別支援教育

  • 特別支援学校が不足しており、プレハブで対応する等、教室不足が深刻な事態が続いている。特別支援学校高等部の2校増設だけでは抜本的な改善にはつながっておらず、校舎増築や増設など早急な対策を取り、図書室等必要な教室を整備すること。
  • 自閉症・情緒障害特別支援学級はいまだ63.7%の設置率にとどまり、9割近くになっている全国政令市水準からも大きく立ち遅れている。全校への設置を早急に実現するとともに、教員の専門性を高める手立てをとること。また多様な発達障害に対応できる指導教室を大幅に増やすこと。
  • 特別支援学級については、8人を1人の教員が受け持つという現行の学級編成基準では、一人一人に行き届く教育は困難である。市独自に2人担任体制をとり、国に対して加配の財政措置を求めること。また、基準そのものを現行の8人から6人に見直すよう国に求めること。
  • 特別支援学校や学級に配置する教員は、専門性を身に付けた人員の配置を原則とし、採用枠を抜本的に増やすこと。また、人員不足を補う方策として、学校の求めに応えられるよう、学校生活支援員や介助員を大幅に増やし、処遇を改善すること。
  • 発達教育センターにおける2024年度の就学相談人数は、2969人と史上最高を更新しており、子どもにとっての適切な進路を選びたいという保護者の願いは切実である。速やかな判断ができるよう相談体制の拡充・充実を図ること。希望する学校への就学ができるよう必要なエレベーター等、バリアフリーのための施設整備や人員配置については遅滞なく行うこと。

(11)大学・高校の学費支援

  • すでに異常に高い学費のもと、長時間のアルバイトや奨学金なしに大学に通えない学生が多数となっている。また、保護者の実質賃金は1996年から74万円も減少している。高等教育を受ける権利を保障するために学生への特別給付金を復活させ対象も拡充すること
  • 学生の8割がアルバイトに従事し、3人に1人が貸与奨学金を借りている。平均で300万円の奨学金という「借金」をかかえて社会に出ざるをえない状況で、若い世代の抱える奨学金返済額は全国で10兆円にものぼる。国立大学の学費値上げを許さず、無償化をめざす、給付奨学金の拡充、貸与奨学金の返済を国の責任で半分に減らすことや入学金制度の廃止を国に求めること。市独自の給付奨学金をつくること。市教育振興会高校奨学金は収入基準を設けず、希望者全員が借りられるようにすること。
  • 本市独自の私学助成は、1校平均約180万円で近年全く変わっていない。コロナ禍に加えて急激な物価高騰にある中で、保護者の負担軽減のためにも私学助成の拡充を図ること。

(12)図書館

  • 本市の図書購入費用は、2024年度で約6700万円と過去3年間ほぼ同額で推移しているが、本市が行った市民アンケートによると、約2割の人が本の蔵書数や種類の少なさを訴えている。また、日本図書館協会は「図書館の自由に関する宣言」の中で、「知る自由があってこそ表現の自由は成立する」とし、「図書館はまさにそのことに責任を置く機関」とし資料収集の重要性を説いている。市民の知る権利を保障し、あらゆる資料要求に応えられるよう、図書購入予算、蔵書数を抜本的に増やすこと。
  • 図書館の仕事を具体的に担うのは、専門職である司書である。司書には、資料・情報を自ら適切に選択できるよう利用者に協力、支援するなどの役割がある。にもかかわらず、本市の図書館司書は99%が会計年度任用職員となっており、正規職員はわずか1人である。またその待遇は、低賃金で、雇用継続の保証もないなど、たいへん劣悪である。専門職に相応しい待遇に改善し、希望者は正規職員にするとともに増員を図ること。さらに重要なのが、専門性の蓄積であり、加えてフルタイム勤務とすべき標準的な業務でもあるため、任期の定めのない常勤職員を基本とすること。
  • 管理運営を民間企業に「丸投げ」する指定管理者制度は、図書館を営利追求の場に変質させる。大阪市立図書館は、2025年5月に窓口業務の委託業者の交代で業務が停滞する異例の事態になった。日本図書館協会の調べでは都道府県立図書館で指定管理者制度を導入しているのはわずか8県に過ぎない。司書の専門性の蓄積、長期にわたるコレクション形成、読書の自由を保障するためにも住民参加を大切にして直営で運営すること。
  • 図書館長は、図書館事業を長期的視野に立って進める責任者であり、地域の読書鑑賞整備の中心的役割を果たすべき職務である。しかし本市の館長及び副館長には有資格者はいない。より専門性を発揮するために、司書資格を持つ館長や副館長を配置すること。

(13)社会教育施設

  • 市議会議員による市政報告会は、市民の市政参加にとって重要であり、社会教育や生涯教育の拠点である公民館の目的内利用に位置づけること。
  • 社会教育法で定められている公民館における禁止行為は、営利事業や宗教活動など、きわめて限定的なものであり、市民の社会参加や自治活動を促すことに繋がる利用については認めるのが原則である。審査基準については、社会教育施設としての役割を明確にするとともに、誤った対応が起きないように公民館職員への研修、周知を図ること。
  • 社会教育施設である公民館を単なる「貸館」にしてしまうコミネットでの申し込み受付は導入しないこと。
  • 社会教育を支援する本来の役割を果たすため、補助要員を確保するための予算を増額するとともに、公民館主事の大幅な待遇改善を行うこと。
  • 南地域交流センターについては区役所機能を備えるとともに児童館の設置など市民のニーズを反映させること。あわせて交通アクセスを整え利便性の向上に努めること。

(14)文化・芸術

  • 本市の文化振興費は2025年度の当初予算で56億円、一般会計の0.5%にすぎない。市民が文化・芸術を鑑賞し、参加し、創造することができるような環境を整備するために文化予算の抜本的な増額を行うこと。
  • 福岡市民ホールの利用料は、収容人数の増加を理由に市民会館より上がった。地元の劇団や鑑賞団体にとって大きな負担となるため市民会館の使用料と同額になるよう値下げすること。また、地元の劇団や鑑賞団体を対象にした減免制度をつくること。ただの「貸館」にさせないためにも社会包摂の場として役割を果たすよう検討を行うとともに、舞台の創造、舞台芸術をささえる人材育成など本市における文化の拠点になるようにすること。
  • 福岡市民ホール開館後も慢性的なホール不足は解消できていない。演劇等の専門性に対応できる中規模ホール建設を計画すること。
  • 音楽・演劇練習場の4施設は高い稼動率のため希望者の多くが利用できない状況となっている。すべての行政区に設置する計画をつくること。また、ぽんプラザホール同様の小劇場を増設すること。
  • 地域文化の多様性を守り、新しい芸術家を育ててきた民間の劇場やミニシアター、ライブハウスは経営が困難なところが少なくない。年間100日以上事業を行っている施設は劇場とみなして固定資産税の減免を図るなど、積極的な支援を行うこと
  • すべての小中学生が少なくとも1年に1度は文化芸術に触れる機会をもつことが求められているが、本市ではそうなっていない。子どもの経済環境や居住地域で文化享受に格差があってはならず、学校公演・芸術鑑賞教室を全校が取り組める予算を確保し推奨すること。フランスの「カルチャーパス」などを参考に、義務教育の期間だけでなく、就学前の子どもや、高校生、大学生に対する芸術鑑賞などの支援を強めること。
  • 障害者・高齢者の芸術鑑賞・創造・作品発表などの機会を増やし、支援すること。
  • 指定管理者によって「18歳未満の使用が半数を超えた場合に適用される減免制度」に差異がある。すべての市民センター・地域交流センターなどで減免制度を徹底すること。
  • 資料が残されていない模擬天守閣を建てるのは、福岡城跡という遺跡の破壊に他ならない。市長の天守閣復元に前のめりの発言を撤回し、提言書を出している経済界にも説明して、史実を尊重した福岡城跡の復元整備を行うこと。

(15)スポーツ

  • スポーツ基本法では「スポーツは人々の権利」と謳われており、そのために市内でスポーツができる環境を整備することが求められている。本市のスポーツ施設の土日祝日の応募倍率は野球場、ソフトボール場が61.9倍、テニスコートが25.8倍、体育館・運動室が9.3倍などと毎年高倍率となっており、国民のスポーツをする権利が保障されていない。そのことは、「福岡市スポーツ推進計画」で掲げている成果指標「身近なスポーツ環境に対する満足度」が60.0%と、初期値(2012年度)58.3%と同程度のままの数字にも示されている。身近なスポーツ施設を抜本的に増設すること。施設のトイレの洋式化や、空調など老朽化しているスポーツ施設は改善し、スポーツ用具については適宜、更新すること。また、競技人口が増えているスケートボード場については、雁の巣レクリエーションセンターや競艇場敷地での施設だけではニーズに応えられておらず、ボルダリング等の競技も含め、市民が身近にスポーツ活動ができる公的施設として行政区単位等で計画し、増設すること。
  • スポーツ庁の令和6年度「障害児・者のスポーツライフに関する調査研究」の調査によると、障害者の週1日以上のスポーツ実施率は20歳以上で32.8%、7~19歳では38.5%となっており、その実施者のうち「スポーツを行いたいと思うができない」では、「交通手段がない」「交通の便が良いところに施設がない」「スポーツをできる場所がない」が約18%と、施設とアクセスへの要望が強い。市内体育館など運動施設のバリアフリー化を進め、利便性とアクセスの向上を図ること。また、拠点施設である「障がい者スポーツセンター」の建て替えにあたっては、PFI手法を導入せず、利用者の意見が反映される計画をつくること。
  • 学校の施設は地域スポーツ活動の重要な拠点の一つであり、小・中学校のグランドは校庭開放によって地域のスポーツ振興に寄与しており、その必要な施設整備が求められている。その一方、防球フェンスが低すぎる学校があり、利用者や周辺住民から強い要望が出されており、スポーツ推進予算を充てて改善を行うこと。
  • 福岡市総合体育館をはじめ各区の市立体育館の駐車料金が「受益者負担」だとして有料化されているが、スポーツ基本法第6条で自治体が「スポーツへの国民の参加及び支援を促進するよう努めなければならない」との規定からみて問題である。市民負担を増やす駐車料金の有料化はやめ、無料にすること。
  • 体育館やプールの利用料金は、65~69歳が半額、70歳以上は無料となっている。高齢者の健康増進のために、65歳以上はすべて無料にすること。あわせて、福岡市内にある民間のスポーツ施設についても、市民が利用する際、利用料金の補助制度を作ること。
  • 体育館やプールなど、スポーツ施設の管理・運営に指定管理者制度が導入されている。運営会社は利益を上げるために、トレーナーなどの人件費を抑制しており、そのため職員の離職率が高く、利用者から苦情も寄せられている。また、コスト削減のために空調を入れないとか、照明を間引くなど、快適なスポーツ環境とは言い難い問題も起こっている。利用者の立場にたった運営のために、直営にもどすこと。

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7、子どもの権利が守られ、安心して子育てできる福岡市に

(1)保育

  • 2025年10月1日時点で、未入所児童は2846人と依然として希望する保育所には入れない子どもたちが多く残されている。人口減少社会において、この福岡市でも共働き世帯は増え続け、1・2歳児の保育利用率は上昇する中、隠れ待機児童数は増えているのが実態である。市長は保育の受皿確保のために国に追随して、企業主導型保育の導入や定員増の大規模化など規制緩和路線を推進して保育の質を下げてきた。市内の認可園の平均定員は147人となっており、大規模園でなく子どもの発達に見合った適正規模の認可保育所を増設すること。また、現在7園である公立保育所を増やし、せめて各行政区に設置すること。
  • 保育施設は子どもにとって安全で、差別なく適切な保育が行われる場でなければならない。しかし、全国で毎年のように子どもが亡くなったり重体になったりするなどの事故が起きている。福岡市の重大事故発生件数が10年前の2015年が8件だったのに対して2023年は59件、2024年42件と高止まりしている。重大事故を繰り返さないよう、問題点を明らかにし、是正改善を行うこと。
  • 昨年、4・5歳児の配置基準が25対1に変更されたが、現場からは「まだ不十分だ」との声が上がっている。さらに1歳児の配置基準5対1のための加算の仕組みがつくられたものの、ICT導入などが要件となっておりハードルが高いと批判が上がっている。要件を撤廃するよう国に要望するとともに、それまでは、市独自に支援すること。0・1・2歳児の基準見直しを国に求めること。市独自の配置基準を設け、0歳児は2対1、1歳児は4対1、2歳児は5対1、3歳児は10対1、4・5歳児は15対1へと改善すること
  • こども誰でも通園制度(乳児等通園支援事業)は、預けられる子どもも、在園児のどちらにも不安やストレスを与えるものであり、保育士不足の現場に新たな負担と混乱をもたらすものである。しかし、国はこの制度を来年2026年度、本格実施しようとしている。子どもたちが安心して保育される制度に抜本的に見直すために、低すぎる報酬の上乗せや、不十分な設備運営基準や人員配置の見直し、一時預かりの充実、認可にあたって不適切な事業者を排除できる仕組み、事前面談の義務づけ(アレルギーや家庭状況などの把握)や柔軟利用(保護者の都合のみで一時的に用事先近辺の事業所に預ける等の利用)の制限など、実施に当たっては、国基準に上乗せした設備運営基準条例をつくること。
  • 昨年起こった不適切保育は16件で5年前の4倍になっている。相談窓口の充実や通報システムの周知を行うとともに、虐待根絶のために通報の奨励に努めること。認可外であっても管理職は保育士を置くなど市独自の基準を設けること。保育の質的改善を図るための研修を行うこと。その際には勤務時間内に研修が受けられるよう体制を保障すること。
  • 国の面積基準は75年前から変わっておらず、生活の場である保育施設として、同じ室内で遊び、食事、睡眠が行われており、安心して過ごす環境づくりが困難である。感染症を防ぐ意味でも、面積基準を抜本的に改善することを国に求めるとともに、本市独自の基準を乳児室以外にも設定すること。
  • 幼保無償化は対象年齢をすべてに広げるよう国に要請すること。さらに国が行うまでは、子育て世帯の負担軽減のために市独自ですべての子どもを対象に保育料は無償とすること。また、制服、遠足、文房具代など「隠れ保育料」と呼ばれる実費徴収費が重い負担となっている。生活保護世帯には、費用の一部しか助成しておらず、これらの費用についても全て無料とするよう国に求め、市独自の補助制度をつくること。第3子以降に限らず、全てに対象を広げて副食費無償化の手立てをとること。
  • 保育士の賃金は、2024年の全産業の平均賃金との比較で、5万7千円も少ないうえに、2023年より格差が開いている。現場の保育士からも賃上げを求める強い要望が毎年寄せられている。国の公定価格が引き上げられるまでは市が各種手当など独自施策をつくり手取りの底上げを図ること。補助金や、格差をつける手当ではなく、保育現場で働くすべての職員の賃金の底上げにつながる改善を行うこと。また、本市における保育士の賃金の実態調査を行うこと。
  • 保育士の離職が後を立たず、入ってもすぐに辞めてしまうなどの現状がある。市独自の施策である家賃の一部助成は補助額1万円では足らず、3万円に引き上げること。奨学金返済支援の補助は返済期間の半分の期間としているが全額を支援すること。両制度とも対象範囲を保育職員全員に拡充すること。また認可外保育施設、院内保育所などにも適用すること。
  • 深刻な保育士不足の中、派遣会社に多額の紹介料を支払う園が多く、経営を圧迫している。紹介料に上限を設けるよう国に求めること。賃上げ策を講じるとともに「福岡市保育士・保育所支援センター」の低すぎるマッチング率の改善を、横浜市に倣ってインセンティブをつけるなどして、真に役立つものにすること。
  • 給食調理員は食物アレルギーの子どもや宗教食への個別対応と0歳児一人ひとりの発達に合った離乳食づくり、障害を持った園児や体調不良の園児への個別対応など、業務に関する責任や負担は保育士と変わらず、ともに保育を支える職種である。しかし、給食調理員の給与は、保育士と比べて年収で61万円もの差がある。保育士と同等の給与水準とするよう国に求めるとともに、市独自に調理業務の特殊性と専門性にみあう「特別手当」を創設するなど格差是正のための手立てを講じること。
  • 給食調理員の国の配置基準で、子どもが40人以下で1人、41人から150人以下で2人、151人以上で3人とされており、急な体調不良で欠員が出た場合に対応できる人員が確保されていない。市保育協会からも毎年、調理員配置基準の見直しが要望されている。改善を国に求めるとともに、市独自にも基準を引き上げて財政措置を講じること。
  • 子どもの発達や食歴に合わせた、安全でおいしい給食を提供するためには、職員間での園児の情報共有が不可欠である。本市が重要性を解く食育は、給食調理員と保育士が連携をとりながら行う必要があり、自園方式でなければ実施できない。給食は外部搬入や外部委託などの規制緩和ではなく、自園方式を堅持すること。
  • 保育所の開所時間は11時間だが職員の勤務時間は8時間のため、時間差勤務や臨時職員を手出しで配置するなどが行われている。早朝や夕方などの時間帯は特に忙しく、様々なトラブルが起きやすいが、保育士の人数がそろっていない時間である。事故がないようすべての保育時間で配置基準が満たされている必要があり、朝夕の保育士を実際に増やして対応するためには現在の公定価格では不十分である。実態にみあうよう財政措置をするよう国に求めるとともに、市独自に補助制度を設け、どの時間帯でも配置基準が満たされるようにすること。
  • 公的に提出する必要がある記録の作成等は、労働時間内には終わらず、休憩時間や自宅に持ち帰って書くことが常態化しており、保育士の大きな負担となっている。ICT導入という小手先のやり方だけではなく、抜本的な業務の削減を図り、提出させる書類を精選すること。必要な書類作成については労働時間であることを明確にし、残業手当が支払えるよう運営費の増額を行うこと。またクラス数に応じた実務に対応できるようパソコンの導入支援を行うこと。
  • 小規模保育事業など地域型保育事業は、園庭の設置義務がなく、配置基準について職員全員が保育士の有資格者でなくても良いという国基準に対し、本市はそれ以上の配置を条例で求めている。しかし、それでも認可保育所より基準が低いため、保育士の質の低下や保育所間での格差につながるなど問題である。すべての子どもの最善の利益と発達の権利を保障するため、条例を見直すとともに、必要な支援を強めること。
  • 本市の認可外保育施設は、24時間保育や夜間保育、一時・休日・延長保育、障害児保育、院内保育など、多様な保育要求にこたえ、地域の子育て支援に貢献し、保育行政を補完する役割を果たしている。しかし職員の健診費用など助成額の合計は約1493万円、1園につきわずか5万1692円にとどまっている。認可外保育施設への職員給与・修繕費・管理への補助を創設すること。
  • さぽーと保育(障害児保育)では、障害の軽い区分においては3人に対し1人の保育士しか雇用できず、従分な対応ができていない。発達障害やグレーゾーンの子どもは年々増加しており、必要な保育士を確保できるように補助単価を抜本的に増額すること。障害の程度が重い子どもを受け入れられるように、1対1での個別対応が可能な保育所を抜本的に増やすこと。看護師の配置を現場まかせにせず、市として保育所ごとに複数配置する基準を設け、雇用費の助成を抜本的に増やすこと。

(2)医療的ケア児、療育

  • 今年1月5日、博多区のマンションで人工呼吸器をつけていた7歳の女の子が心肺停止となりその後死亡し、母親が逮捕される痛ましい事件が起こった。この事件により、医療的ケア児を抱える家族の負担がクローズアップされた。本市は24時間人工呼吸器をつけている医療的ケア児・者にのみレスパイト事業を週1回8時間に拡充したが、それだけでは到底足らず、対象も時間も拡充すること。
  • 2025年9月1日現在における医療的ケア児の保育所での受入れは、いまだに公立と私立あわせて18か所25人にとどまっており、直近の3年間でも希望する医療的ケア児全員が入所するに至っていない。すべての保育所で医療的ケア児を受け入れることができるように看護師を配置するとともに、必要な保育士の確保と教育や研修を行うこと。そのための雇用費助成の予算を抜本的に増額し、医療的ケア児の受入れを増やすこと。公立と同じように私立にも代替看護師の派遣などの体制をとり、配置時間も公立と同等とすること。また、たとえ看護師を配置できたとしても、不測の事態に対応するためには医療機関との連携は不可欠である。常に保育所と医療機関等とが連携できる体制を市の責任で整えること。
  • 医療的ケア児を受け入れている幼稚園や保育園に看護師を派遣する幼稚園等看護師派遣事業は、幼稚園への1回あたりの看護師の派遣時間が60分、最大120分までという制度設計になっている。これでは開所時間の一部にとどまり、十分な支援とはいえず、2024年度の利用人数は幼稚園でわずか3人である。訪問看護の時間は4時間に引き上げること。
  • 2024年に「南部療育センター」が設置されたが、発達障害児等の増加にともない、現在の市内4か所の療育センター等における相談数は年々増加しており、単独通園施設の待機児童は解消されていない。また相談から診断まで約1か月かかっている。療育施設はまだまだ足りておらず、相談・診断・療育が速やかに受けられるように、療育センターや単独通園施設など療育施設を更に増設すること。言語療法士や作業療法士などの療育は少なく、専門家の指導が年間通して受けられるよう、専門職員の増員を行い、療育に欠かせないきょうだい児の託児を実施すること。
  • 本市は未就学児の療育について、障害の種別と年齢によって児童発達支援センターの利用頻度と利用時間を細かく定めており、週5日療育を受ける障害児について、センターと保育所の併用が認められないなど柔軟性に欠ける仕組みとなっている。近年、共働きで障害のある子を育てる家庭が増える中、他都市では、幼稚園・保育所との並行通園による療育の強化も進んでいる。児童発達支援センターと保育所の併用を認めるよう規定を改善し、並行通園できる施設を増やすこと。また、保育所等訪問支援制度の周知と人員などの増員を行うこと。
  • 児童発達支援センターに通う3歳以上児は、定型発達児と接する機会が少ない。保護者からは、交流保育により刺激を受けることや、早い段階での交流で、福祉の心を養い、障害を受容しやすい社会になってほしいなどの要望が高い。交流保育の実施指針を整備し、段階的に増やしていくこと。
  • 入園の申請、在園中の書類提出等の手続き書類など何度も同じことを書かなければならず、ペーパレス・WEB完結を行えるようにすること。

(3)子どもの医療費

子どもの医療費助成制度の対象は高校生世代まで拡大したが、1医療機関につき、ひと月あたりの自己負担額500円である。名古屋市、さいたま市にならい、入院・通院ともに完全無料とすること。そのうえで国に子どもの医療費無料化を求めること。


(4)放課後児童クラブ

  • 放課後児童クラブ(学童保育)の専用施設は登録人数に対して面積が狭く、人数がオーバーすれば理科室や音楽室など子どもの生活や遊びには適さない学校の特別教室を使っている。2025年4月現在で、子ども1人あたりの国の設置基準を満たしていない施設は54校となっており、子ども1人あたり1.65㎡を確実に保障するよう計画的に整備すること。また、安全、衛生上必要なトイレ、手洗い場を国の設置基準に沿って増設すること。各施設に、8㎡以上を確保した「静養するための機能を備えた区画」や、職員室、調理室、ホール(集会室)を備えること。
  • 厚生労働省令「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」では、学童保育の子ども集団の規模である「支援の単位」は「おおむね40人以下」と定められているが、子どもの安心できる居場所の確保の面からも、30人以下とするよう国に求めるとともに、その間は市独自に実施すること。
  • 幅広い年齢の子どもの成長・発達を保障する支援員は、高度な専門性を必要とする専門職であり正規雇用を基本とすべきである。市は会計年度任用職員という働き方ではなく、正規職員として大幅に増員すること。
  • 協力という言葉を借りて約2000人の補助支援員が配置されているが、現場からは「自分はアルバイトだと思っていた」「交通費が出ないのはおかしい」などの声が寄せられている。有償ボランティアだというが、労働時間に応じて報酬を受け取り、市の指揮命令に従っており、名実ともに労働者である。このような脱法行為は許されず、補助支援員と雇用関係を結び、正規化を図ること。
  • 社会福祉法人が運営する民間学童保育施設は、放課後児童クラブになじめない子どもたちや不登校児童、保護者が就労要件を満たしていない子どもたちの大事な受け皿である。しかし、昨今の物価高騰で経営危機が深刻となっており、利用料を引き上げざるを得なくなっている。国は、公立、民間どちらも学童保育施設の役割を認めており、本市の社会福祉法人が営む民間学童保育施設への財政支援を全く行なわない対応は差別的である。放課後児童クラブにしか支援しない態度を改め、保護者の選択肢を広げる役割を果たしている民間にも恒久的な独自の財政支援を行うこと。

(5)児童館

2022年の厚労省の調査でも、児童館に期待される役割として、「育てにくさを感じている乳幼児の家庭支援」「子どもの貧困問題」「中高生の居場所」などが社会的支援に早期につながる必要性が求められているとしている。にもかかわらず本市は、「子育て交流サロンやこどもプラザ、公民館、わいわい広場など地域団体とも連携しながら事業を展開しているので、児童館は1館で足りる」としているが、いずれも専門職員のいる児童館とは似て非なるものである。真に、子どもたちが自分たちの意思で自由に利用できる居場所とするためにも、早急に児童館を全ての行政区に設置するとともに、幼稚園・学校・公民館の跡地など公有地を活用して計画的に増やすこと。


(6)児童虐待

  • 昨年度の児童虐待相談対応件数は3367件と11年連続で過去最多を更新した。しかしながら、専門職の配置については、児童虐待防止対策総合体制強化プランの2024年度目標からみて、児童福祉士で12人、児童心理士で5人が不足している。早急に基準を達成できるよう採用者を増やすこと。また児童福祉士の2割近く、児童心理士の4割以上が会計年度任用職員であり、全員を正規雇用にするとともに、半数が経験年数3年未満という状況をあらためて継続性を強め、専門性を高めること。弁護士資格をもつ職員を複数名配置すること。
  • 国が定めた「児童相談所運営指針」において管轄区域内の人口は「基本としておおむね50万人以下」であることとされており、児童相談所を増やすこと。また一次保護所の定員は20名だが、定員より多い日が週に1回程度あり、医務室や相談室を利用しているが、1か所では足りていない。一時保護所も増やすこと。
  • 児童養護施設等を退所した若者への生活、進学、就労支援を強化すること。

(7)ひとり親家庭

児童扶養手当について、所得制限の緩和による第1子の拡充、第2・3子以降への加算額の大幅引上げ、毎月支給化、18歳から20歳未満までの支給延長を国に求めるとともに、市独自に加算すること。また、児童扶養手当の支給が開始から5~7年後に半減になる一部支給停止措置はやめること。さらにひとり親家庭等医療費助成制度の所得制限をやめることとあわせて、ひとり親家庭が入居できる市営住宅の枠を抜本的に増やすこと。

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8、あらゆる分野でジェンダー平等を進める

(1)男女共同参画基本計画

いわゆる「ジェンダー平等」は、男性と女性だけでなく、性自認や性的指向にかかわらず、すべての人が平等な機会を持つことであり、「男女共同参画」より幅広い意味を持つ概念である。第5次男女共同参画基本計画の策定に際し、新たに「ジェンダー平等」の項目を起こし、具体的な目標と取り組みを明記すること。


(2)市職員における男女賃金格差是正

2024年度の市職員の平均給与は女性が男性の85.9%となっており、年収で約93万円、40年働けば生涯賃金で約3700万円もの差となっている。市職員における男女賃金格差の是正を図ること。また、2025年5月現在の市職員の管理職に占める女性の割合は市全体で20.3%でありきわめて低い。計画的に女性管理職を増やす手立てをとり、意思決定の場における「男女半々」の実現をめざすこと。


(3)女性が多数を占める会計年度任用職員等の待遇改善

本市の会計年度任用職員のうち約8割は女性であり、全体の約8割が年収300万円以下となっている。このような働かせ方が女性の低賃金を生み出す要因となっており、公務職場で非正規を増やすことは市が率先して男女賃金格差を広げることであり、許されるものではない。ジェンダー格差をなくしていくためにも、会計年度任用職員をはじめとする非正規職員の待遇改善を図ること。


(4)市内民間事業所の男女賃金格差是正

ジェンダー不平等の大きな要因となっている男女間の賃金格差の解消に向け、市として市内事業所に対し、男女別の賃金を調査・公表して、その是正計画策定を義務付ける条例をつくること。


(5)男性の育児休暇取得

ジェンダー平等を進めるうえでも、男性の育児休暇取得は重要な制度である。令和6年度の育児休業では、市長部局で160人の男性職員が取得しているが、6カ月を超えて取得したのは22.5%であり、3カ月以下が54.4%、うち1カ月以下が37.5%であり、きわめて短期間となっている。安心して男性も育児休暇が取得できる体制を確立するために、代替職員を配置するとともに、職員の積極的増員を図り、余裕のある人事配置を行うこと。


(6)選択的夫婦別姓

選択的夫婦別姓について、世界で夫婦同姓を法律で義務づけている国は日本だけであり、国連の女性差別撤廃委員会も、日本政府に対して繰り返し、法律で夫婦同姓を義務付けることは女性差別であり、ただちに改正すべきだと勧告している。日本経済団体連合会や日本弁護士連合会など各界から選択的夫婦別姓を求める声は日に日に高まっており、今年度の通常国会では、衆議院法務委員会で28年ぶりに選択的夫婦別姓制度を導入する法案が審議入りした。民法を改正し、選択的夫婦別姓を法制化するよう国に求めること。


(7)同性婚・LGBT

  • 2025年1月現在、同性婚を認める国・地域は約39にのぼっており、今後も更に増える見込みとなっている。日本でも「同性カップルが結婚(法律婚)できないのは憲法違反だ」とする裁判が各地で起き、名古屋、大阪などの5高裁が同性婚を認めない現行の民法などの規定を「違憲」と判断した。本市議会においても「同性婚の法制化の議論を求める意見書」が採択されている。同性婚を認める民法改正を国に求めること。
  • LGBT理解増進法は「多数者が認める範囲」でしか性的少数者の人権・尊厳は認められないとのメッセージを含む内容になっており、逆に理解を阻害し、差別を助長しかねない。性的少数者への差別・偏見を拡大することのないよう、性的指向・性自認等を理由とした差別を禁じ、多様性を尊重する立場を市長が明確にするとともに、LGBT差別禁止条例をつくること。

(8)パートナーシップ制度

本市のパートナーシップ宣誓制度は、対象を一方又は双方が性的マイノリティの場合のみと限定しているため、受領証提示の際に意図せぬカミングアウトにつながる恐れがある。性的マイノリティではない異性間の事実婚も対象とすること。また、全ての民間事業者に是正勧告ができるパートナーシップ条例を制定すること。


(9)中高年シングル女性への支援

離婚、死別、非婚、未婚の母、別居により配偶者やパートナーと同居しておらず、親や子ども、兄弟姉妹などの同居人がいない中高年シングル女性は、社会的、経済的に脆弱であり、低所得世帯も少なくない。多くの悩みを抱えていたとしても公的相談機関につながることができていない実態がある。男女共同参画推進センター・アミカスの相談窓口など公的相談機関に中高年シングル女性の相談カテゴリを創設し、周知すること。


(10)市職員の生理休暇

本市は生理休暇の申請上の名称をウェルネス休暇に変更したが、2024年度にウェルネス休暇を取得した市職員の割合はわずか6.1%と非常に少ない。生理休暇を取得しやすい職場環境の醸成を図ること。


(11)生理の貧困

物価高騰が長引く中で、「生理の貧困」対策は女性の健康や尊厳に関わる重要な課題であり、生理用品を学校トイレに常設する自治体が広がっている。本市においては、南市民センターや博多区役所では民間企業と提携した生理用品の無料提供サービスをおこなっているが、公共施設においてはほぼ設置されておらず、学校トイレにも設置されていない。すべての学校トイレと市民センターや公民館、地下鉄の駅など公的施設に生理用品を設置すること。


(12)DV

  • 昨年、全国の警察が受理したDVの相談件数がDV防止法施行以来最多となった。相談内容も多様化・複合化し、高度な専門性と継続性をもった相談・支援体制が求められている。DVの相談員について無期雇用の常勤職員、原則異動のない専門職にすること。また、各区の子育て支援課やアミカスに保育士や学習援助者を配置し、子連れの相談者が相談しやすい体制をつくること。
  • 民間シェルターへの補助金など支援の拡充、中長期滞在できる中間的施設(ステップハウス)の開設・運営へ助成するとともに、自立に要する費用の補助を拡充すること。また、男性DV被害者が相談しやすい体制の強化を図ること。さらに、DVは夜間に起こりやすく、被害者は加害者がいない深夜や休日にしか安全に連絡できないことが多いため、受付時間を深夜まで延長し、休日の相談窓口も設けること。そのうえで、国に対して退去命令の対象に精神的暴力を含むことや緊急保護命令の導入などDV防止法を更に改正するよう求めること。

(13)ハラスメント

ハラスメントは女性をはじめとする労働者の人権と働く権利を傷つける重大な行為であり、働き続けることを阻害する大きな要因の一つになっている。国に対し、ハラスメントの防止・撤廃のための包摂的総合的な取り組みを求めているILO条約を批准し、禁止を明確にした法整備を行うよう要求すること。本市としてハラスメントが違法であることを明確にした「ハラスメント禁止条例」を制定すること。部局によっては市職員のハラスメントの相談・調査・判断を同じ部署で行うことがあることは問題であり、啓発・苦情処理・紛争解決のできる専門の窓口を設置すること。


(14)性暴力・痴漢

  • 女性や子どもにとって、最も身近な性暴力である痴漢や盗撮について、市内の被害件数さえ把握していないのは問題であり、市独自の実態調査や相談・支援センターの増設、加害根絶のための啓発や加害者更生などの対策を講じること。
  • 「性暴力被害者支援センター・ふくおか」においては電話での相談しか対応しておらず、若者がつながりづらくなっている。SNSのメッセージ機能なども使って気軽に相談ができる体制や、被害者の精神科受診の公費負担の拡充など抜本的に充実するとともに、本市独自のワンストップ支援センターや病院拠点型のセンター創設および警察を通さなくても病院で証拠保全ができる体制をつくること。
  • 性暴力規定を見直し、性的同意年齢の引下げや「不同意性交等罪」を創設した改正刑法が施行された。引き続き、すべての性暴力被害者を救済し、新たな被害者を生まないために、積極的な同意がなければ性犯罪とする「イエス・ミーンズ・イエス」規定創設や公訴時効の撤廃・延長、子どもの保護に逆行する5歳差要件の再検討など更なる改正を検討するよう国に求めること。

(15)緊急避妊薬

緊急避妊薬は日本でも10年近い議論をへてようやく処方箋がなくても薬局で購入できる「市販薬」として認められることになった。しかし、薬剤師の目の前で服用する面前服用が義務化されており、緊急に必要な人に避妊薬が届かない可能性がある。子どもを産む・産まない、いつ何人産むかを女性が自分で決めるリプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の観点から、若年者には無料に近い値段で買えるよう支援することを含め、緊急避妊薬を安心して入手しやすくする手立てを講じるよう国に求めること。


(16)離婚後共同親権

多くの反対と危惧の声を押し切って導入され、来年4月より施行予定の「離婚後共同親権」は、父母間の合意がない「共同親権」を家庭裁判所が強制すれば、適切な親権の行使ができず、子の利益を害する重大な危険がある。DV被害者を含め、不本意な「共同親権」が強制され子どもの利益が害されることがないよう民法改正を国に求めること。

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9、憲法の平和・民主主義の理念を福岡市のすみずみに

(1)市長の政治倫理

  • 自民党主要派閥の政治資金パーティーをつうじた裏金事件や日本維新の会幹部の公金還流疑惑など、政権与党による「政治とカネ」の問題は引き続き重大な争点となっている。企業・団体献金および政治資金パーティーの禁止が国政の大きな課題に浮上している中、いまだに髙島市長は政治資金パーティーを開催している。市長の2024年政治資金報告内容によれば、政治資金パーティーで約3500万円の売上、約2850万円の収益を上げており、利益率約81%にも及ぶパーティー券の購入は対価的意義の乏しい事実上の寄附である。このパーティー券の購入者として福岡市医師連盟の名前が公開されているが、この団体は急患診療センターなど市の事業を委託している福岡市医師会を実質的な母体とする政治団体であり、このような市の利害関係者から市長が事実上の寄附を受けることは利益誘導や癒着が疑われるものであり、きわめて問題である。また、この間税金の詐取事件などの問題を繰り返し起こしている造園業界が、市が推進する都市の緑化をはじめとした多数の公共事業を受注しているが、市長の政治資金パーティー券を購入しているなど不適切な関係となっている懸念がある。市長の政治資金パーティーはやめるとともに、これまで市長が販売した政治資金パーティー券の販売先をすべて公開し、高額の支出となっている組織活動費などの内訳を明らかにすること。
  • 市政における最高責任者である髙島市長の日程についてホームページで公表しているというが、詳細については市長室も把握することなく、事実上どこで何をしているのかわからない状況となっている。今年8月の豪雨災害においては、大雨のピーク時に市長はほとんど市役所に登庁しておらず、「連絡の取れる体制はとっていた」とはいうものの、どこに居たかは明らかにしていない。このような状況は異常であり、市長の日程を公開すること。また、登退庁盤については、「防犯上の理由」などとして表示しないというのは理由にならず、表示すること。

(2)統一協会問題

今年3月、東京地裁は統一協会に対して宗教法人法に基づいて解散を命じる決定をした。判決は確定していないものの、統一協会とその関連団体が「霊感商法」や多額の献金の強要、集団結婚などで多数の被害者を出してきた反社会的なカルト集団であることは明瞭である。市として統一協会とその関連団体について反社会的集団であると規定すること。また、市は統一協会とその関連団体の公共施設の使用について許可を保留しているが、今後も使用を認めず、表彰や名義後援なども行わないこと。


(3)住民参加

  • 市長はこの間、著名人や実業家などとの対談企画は旺盛に行う一方、さまざまな住民団体や要求団体との直接の対話は拒否してきた。また、市民が市との意見交換の機会を求めた際に、「働き方改革」を理由に平日の勤務時間内に限定することは、労働者等を排除することになり、問題である。市の基本計画では「市民の声を真摯に受け止め、対話を重ねる」と掲げており、市民との直接の意見交換の機会については最大限保証するとともに、市政の進め方について市議会と市民の意見をよく聞き、住民投票・住民意向調査・住民討論会などを活用して、住民参画のうえでの政策決定を基本とすること。
  • 2024年度、本市が実施したパブリックコメントは12事案であるが、意見提出件数は多いものでも409件、中には14件という事案もあり、市民の意見を広く聴取できていないのが実態である。パブリックコメントの周知方法や期間の延長など進め方を改善すること。また、市の施策への反対意見についても検討するなど少数意見を排除しないこと。あわせて、多様な市民の意見を市政に反映させるために、説明会や懇談会など行政が出かけて行き意見を聞くこと。また、各種審議会など委員の市民公募枠を新設・拡大すること。
  • 市有地や公共用地の活用などにおける民間サウンディングは、大企業に好き勝手に意見を出させ、事業者の公募中はその情報を一切公開しないまま結論だけを市民や議会に押しつけるものであり、民主主義にもとる手法である。このような住民の声を聞かない手法はやめること。

(4)「行革」・民間参入・業務委託

  • 本市は2025年度から2028年度まで「生活の質の向上と都市の成長の好循環を」として政策推進プラン、行政運営プラン、財政運営プランを推進している。その中身は、2012年策定の「福岡市基本構想」と「第9次福岡市基本計画」で打ち出された方向性を何ら変わっていない。また、「事業の選択と集中を図る」としながら、「天神ビッグバン」、「博多コネクティッド」やウォーターフロント再整備構想などの大型開発や外部からの大量の呼び込みを前提とするインバウンド事業は聖域として推進している。一方、本市は市民生活を応援する施策については充実するどころか、「個人給付施策の最適化」や「受益者負担の適正化」として、市民サービスを切り捨て、利用者負担を増やし続けている。結果、市民1人当たりの市民所得は、「第9次基本計画」の起点である2013年よりも下がっており、「好循環」は破綻している。これは、地方自治体の役割である「住民の福祉の増進を図る」責務を放棄してきた結果であり、基本計画ならびに各プランを抜本的に見直すこと。
  • 本市では、物価高騰支援や給付金業務などを、大企業に随意契約で業務委託してきている。本来ならば臨時に職員を増やしてでも対応すべきであった市役所業務を民間営利企業へ大規模業務委託したことにより、労働者に払われるべき賃金がピンハネされ、大企業の儲けづくりにも利用され、「効果的、効率的な行政運営」とは程遠い事態となった。このような民間営利企業への大規模業務委託はやめ、労働者の適切な賃金や待遇を保障する市の直接雇用に切り替えていくこと。
  • 本市でのPFI事業は、各給食センター、小・中学校等の空調、総合体育館、美術館、科学館、マリンメッセ福岡B館、早良南地域交流センター、福岡市民ホール、須崎公園、博物館などで実施されてきている。この事業は、「タラソ福岡」のような事業者の破綻のリスクがある、事故等の損失の負担が生じ得る、経費削減は必ずしも実現しない、長期間の契約による莫大な利益を巡り行政と事業者との癒着が生じる、担当事業者の下請けが安さを競わされ頻繁な交代や担い手の非正規化が生じる等の問題がある。PFI事業はやめること。
  • 指定管理者制度によって本市では387の公的施設の管理運営が民間に任されている。住民の福祉を増進するための公の施設を舞台にして、収益を上げ、その一方で、労働条件を引下げ、経費を削減するこの制度の根本矛盾は、住民サービスの低下につながる不適切な管理・運営が行われ、行政の責任放棄も顕著となる必然性をもつものである。公の施設における営利企業参入を抜本的に見直して、原則直営に戻すこと。あわせて、労働者の賃金基準を設けて遵守させること。
  • 株式会社クリーンエナジーの操業に伴う、九州電力への配当金は16億6600万円にもなっており、市財政を食い物にしている。同社を廃止し、直営に戻すこと。また、市政を財界いいなりに誘導する役割を果たしている、「福岡アジア都市研究所」は廃止すること。

(5)市職員の配置・労働条件

  • 本市の会計年度任用職員は、2025年5月時点で6825人となっており、その処遇は、2024年度年間勤務した職員のうち29.3%が年収300万円未満と劣悪なままである。また、公募によらない再度の任用の上限回数は4回までとなっており、安心して働き続けられない。これでは専門職として市民に信頼されていても不安定な雇用となっており、展望が持てない。さらには国が制度の撤廃をしているにもかかわらず、本市は更新回数の上限を撤廃していない。会計年度任用職員は正規職員として採用し、臨時・非常勤職員などの非正規労働者はただちに時給1500円以上にすること。
  • 2024度末で任期更新をせずに退職した会計年度任用職員は873人にも及ぶ。労働施策総合推進法第27条では、30人以上の離職者が発生する場合は1カ月以上前に市長はハローワークに通知する義務を負っている。しかし、市長事務部局においては、事業所単位で30人以上の離職者が発生していないとして、大量離職通知書をハローワークに提出していない。何の痛みも感じずに職員を使い捨てにする市長の対応は許されない。ハローワークに大量離職通知書を提出し、再就職支援のための措置を行うこと。
  • 本市の人口1万人当たりの職員定数は政令市最低の112.1人で、災害や、感染症などの事態では、本来の業務の遂行を止めなければならない状況も生まれ得る。しかし「他都市に先んじて民間活用を行ってきた結果」と正当化する本市の姿勢は問題である。その人事施策により2024年度の超過勤務は、労働基準法が定める残業時間の上限である「年間360時間」を超えている職員が614人、「月45時間」を超えている職員が2739人となっており、長時間・過密労働が、過労死をうみだしかねない状況をつくり、労働者の健康を阻害し、女性の仕事継続や男性の家庭参加を拒む原因ともなっている。職員定数を抜本的に増やすこと。
  • 2025年人事委員会勧告に基づいて、市職員の月例給は1万3278円、ボーナスは0.05月分、平均年間給与は24万3千円引き上げられた。しかしながら、2005年と比較すると年間で平均31万円も引き下げられており、公務員としてのモチベーションを低下させ、生活設計や地域の景気にも深刻な影響を与えている。市職員給与の大幅引上げを行なうこと。
  • 市は職員をまともに増やすことなく、「最少の経費で最大の効果」と称して、窓口業務をはじめ多方面において民間委託している。公務職場の民間委託化によって、職員が継続的に従事することで蓄積される公務に必要な専門性やノウハウ、経験が失われている。また、住民からの苦情や発生した問題が、市政運営に反映されず、信頼を損なっている。これ以上の民間委託化はやめ、正規職員を基本とすること。

(6)市有地

財政運営プランでは、「民間事業者のノウハウも活用しながら」「市有財産の有効活用に取り組(む)」としている。そもそも市有地は市民の財産であり、営利企業のもうけのために売却や貸付をすることは許されないが、実際には、各地の事業所や市有施設跡地の売却、北別館、大名小学校、簀子小学校跡地などのような長期賃貸方式での貸付が行われている。民間営利企業への売却、貸付方針はあらため、不足している保育所や特別養護老人ホームなど、市民の生活を守るために活用すること。


(7)名義後援

  • 市は2015年以降、「行政の中立性を損なう」などの理由で「平和のための戦争展」の名義後援を拒否し続けている。また、2021年には福岡県中央統一メーデーについても同様の理由で拒否した。そもそも市民の自発的な取り組み自体を応援するのが名義後援であり、その内容を行政がチェックするようなことは、思想信条の自由を掲げた憲法に違反する重大な越権行為である。このような偏狭な取り扱いのもとになっている「名義後援の承認に関する取扱い要領」を抜本的に見直し、関係団体に謝罪すること。
  • 東市民センターの「ひまわり広場・会議室」は、市民に広く貸し出されているスペースであり、事実上「公の施設」として扱われている。しかしながら、市民団体などが利用する際には名義後援がなければ認めないとしており、これは「住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない」とする地方自治法第244条の精神に反するものであり、運用を改めること。

(8)消費者

  • スマートフォンやインターネットを使った消費者被害が幅広い年齢に広がっており、未成年契約の取消権がなくなる中で、若い世代の多重債務や消費者被害が懸念されている。中学校・高等学校等での体系的な消費者教育をつよめ、特に若者などに多額の借金を背負わせる「オンラインカジノ」についての啓発活動を強化すること。そのうえで、インターネットやSNSでの情報発信や啓発をつよめ、電話やメールだけでなくSNSのメッセージ機能を活用した相談にも取り組むこと。
  • 本市の消費生活センターの相談員は会計年度任用職員である。複雑化・多様化する相談に対応できるよう相談員の体制を強化するとともに、専門職にふさわしく正規職員にすること。

(9)デジタル化

  • 本市が進めているAIの活用を含んだ行政手続きの急速なデジタル化は、対面での窓口サービスや紙による手続きの縮小・廃止が懸念され、デジタル機器を所持していない人や使いこなせない人、マイナンバーカード未所持の人が行政手続きから排除されるおそれがある。一方でデジタルを使いこなせない人への市の支援はあまりにも貧弱である。デジタルデバイド対策を更に強めると同時に、市民の多様なニーズに応えるために、デジタル手続きとともに、紙による手続きを含めた対面での窓口サービスの拡充を図ること。
  • デジタル関連法は、国や自治体がもつ膨大な個人情報のデータを企業に開放し、利活用しやすくすることが大きな目的となっており、市民のプライバシー権の侵害、利益誘導・官民癒着の拡大につながるものである。特にAIの普及により不正に個人情報が流出し、巨大企業がそれを利活用する懸念が増大している。「地域の特性等に照らし、地方公共団体は法律の範囲内で条例により必要最小限の独自の保護措置を講じることは当然可能である」とする国の答弁をふまえ、本人の知らないうちに個人情報が利活用されることがないよう、個人情報の自己コントロール権を保障するための市独自の措置を講じること。
  • マイナンバー制度は、政府が国民一人ひとりに生涯変わらない番号をつけ、多分野の個人情報を紐づけして利用できるようにするものであり、プライバシー権の侵害の危険をもっている。同時に、政府が国民の所得・資産・社会保障給付を把握することにより、徴税強化や給付削減を狙うものであり、問題である。また、マイナンバーカードは、別人の情報が閲覧できる、公金受取口座に本人ではない口座が登録されるといった重大なトラブルが次々と発覚し、多くの市民が不安に感じており、このまま推進することは許されない。マイナンバーカードの普及推進はやめ、国にマイナンバー制度そのものの廃止を求めること。

(10)人権教育・同和

「福岡市人権教育・啓発基本計画」は、人権問題のトップに「同和問題」を掲げているが、2022年度の「人権問題に関する市民意識調査」で、同和問題に関心あると回答した市民は、20の選択肢で11番目であることからみても、偏重している。しかし今、ジェンダー平等、子どもの権利、労働者の権利、外国人の権利など、日本社会のあらゆる分野で「人権後進国」の矛盾が噴き出しており、社会の不公平の拡大と分断を招いている。憲法で保障された幅広い人権を取り扱うものに「計画」を改善し、学校をはじめ社会教育活動の中での人権教育の見直しをすること。また、行政の主導による市民と企業への「人権啓発」名目での「同和」研修の押しつけはしないこと。あわせて、「同和」の特別対策に類するものの復活や、人権侵害を生み出しかねない特別な教育啓発や実態調査を実施しないこと。


(11)ヘイトスピーチ・外国人

  • 2025年の参議院選挙から、多くの政治家・政党による人種や民族差別を煽る発言が横行し、本市でもヘイトスピーチやヘイトデモが博多駅などで行われている。「多文化共生」を掲げる本市として、市長が毅然として根絶宣言を行うとともに、その立場に立った規制する条例を制定すること。また、ヘイトスピーチについて、現状を把握し、差別解消に向けた計画策定を行うこと。あわせて、デマや差別発言を認識した際には行政として迅速に対応するなど、市として踏み込んだ対策を行うこと。
  • 福岡市の外国人居住者は2025年10月末で5万7728人となっている。在留外国人が容易に相談窓口にアクセスできるよう公共施設・駅・商店街・スーパーマーケット・コンビニに協力依頼し、多言語でのポスターなどで周知し、外国人コミュニティなどのキーパーソンと連携して相談窓口の周知徹底を図るとともに、市独自のワンストップ専用相談窓口を各区役所に設置すること。また、福岡市外国人総合相談支援センターでの相談は、主として平日昼に開催されており、土日や夜間の相談日も設置するとともに、法令とともに日本の文化やルール、規範などを学んでもらう生活文化オリエンテーションを行うこと。外国人居住者の人権保障を進めていくために、市として総合的な多文化共生推進計画をつくり、企業、労働者、自治会、地域社会、諸組織がどのような努力を積み重ねているかの実態の把握を行い、連携を図ること。さらに、外国語が母語の子どもへのサポートを強め、ベトナムやネパール等の出身者による母国語教室の運営への支援を強めること。
  • 日本には119万人の永住外国人が生活している。地方自治体の運営は、本来、すべての住民の参加によって進められるのが、憲法のさだめる地方自治の根本精神である。永住外国人を地方自治体の担い手としてむかえ、日本人市民と等しく参加する政治を実現することは現状に即しており、民主主義の成熟と発展につながることとなる。永住外国人の地方参政権を保障するよう国に求めること。

(12)地域コミュニティ

「共創による地域コミュニティ活性化条例」によって、民生委員の推薦や、災害時に援護が必要な人の避難計画の作成など、本来市の責任である事業が事実上、自治会・町内会に丸投げされている。自治会・町内会を行政の下請にすることは許されず、市民の自主的活動を真に応援する施策へと転換すること。


(13)投票促進・若者の政治参加

  • 投票区について、距離や地形など総合的に判断して分割し、投票所を抜本的に増やすこと。また、在宅投票制度、郵便投票、学生に対する不在者投票、在外投票、洋上投票など、制度を周知徹底し、投票機会の保障を図ることとあわせ、対象が狭く、手続きに手間と時間がかかる郵便投票制度の条件を緩和するよう国に求めること。また、有権者の投票機会を奪わないよう投票所の閉鎖時間の繰り上げは行わないこと。
  • 期日前投票は導入以降、投票所の増設なども行われ、国政・地方選挙問わず定着が進んできた。選挙実施のたびに利用割合が増加し、国政選挙では40%を超えている。商業施設等への期日前投票所設置だけにとどまらず、さらに投票率を高めるために、市内各地に「共通投票所の設置」「大学や高等学校への期日前投票所の設置」をすること。また、すべての期日前投票所の開設日を増やし、開設時間を延長すること。さらに、期日前投票所として使用している市役所1階ならびに区役所および商業施設等を投票日当日の「共通投票所」として利用できるようにすること。そのうえで、病院や高齢者福祉施設への入院患者、入所者が施設内において不在者投票ができるよう、未指定施設等への働きかけを強めること。外出が困難な有権者の投票行動を保障するために、選挙管理委員会が立会人と一緒に、投票箱を持って車でまわり、施設や自宅など要望がある場所に行く「巡回投票」を行うこと。
  • 障害をもつ方、高齢の方が「投票所が遠い」「バリアフリー化されていない」などの理由で投票所へ行きにくいという問題がある。有権者が文字や絵を指さして困りごとを伝える「コミュニケーションボード」の活用や幅が広く堅固な記載台の設置、投票所の照度を高めるなど、すべての投票所のバリアフリー化を更に進めるとともに、外出が困難な有権者の投票行動を制約させることがないよう、移動支援を拡充するなど、投票環境の改善を図ること。
  • 選挙公報は有権者に候補者情報を届ける重要な公的媒体であるが、配布日が投票日直前だとの苦情も多い。それにもかかわらず、まともな手立てがとられていないのは問題であり、少なくとも投票日の1週間前に有権者に届くよう手立てをとること。また、不在者投票の指定施設ではない、病院や高齢者施設にも、選挙公報を配布するようにすること。さらには、すべての公共施設や地下鉄駅などにも設置し、大型商業施設など公共性の高い民間施設への設置も検討すること。
  • 2016年より18歳以上の若者も投票と選挙運動ができるようになったにもかかわらず、政府は高校生だけ政治活動を禁止・制限する通知をだしており、政治活動の自由を侵害している。高校生にも政治活動の自由があることを明確にし、「通知」を撤回するよう国に求めること。また、参政権は自ら候補者となり政治に参加する権利が含まれているにもかかわらず、被選挙権は引き下げられていない。被選挙権年齢を18歳に引き下げるよう国に要求すること。そのうえで、若い世代の投票率向上のために市として中高校生向けの主権者教育を抜本的に強めること。

(14)平和、基地

  • 昨年10月~11月に行われた日米共同統合実働演習(キーン・ソード25)や今年10月に行われた自衛隊統合演習(実働演習)において福岡空港が使用された。これらの動きはいわゆる「安全保障3文書」にもとづくアメリカいいなりの「戦争国家づくり」の一環として行われた軍事訓練であり、市民を戦争に巻き込む危険性を増大させるものである。市として市民の命と安全を守る立場に立ち、このような演習や訓練における福岡空港の使用について反対すること。また、今後「特定利用港湾」に指定された博多港も軍事訓練などに利用される可能性は否定できず、同様の演習や訓練での使用については拒否し、指定撤回を国に強く求めること。
  • 国は「台湾有事」を想定し、沖縄県の先島諸島から九州・山口各県に避難住民を受け入れる計画を立てており、福岡市にも石垣市から約2万7千人の避難住民を受け入れさせる計画をしている。市内の指定ホテルを全室空室にするなどあまりにも実現不可能で荒唐無稽な計画となっており、市民や企業、行政などを戦時体制に巻き込むこのような計画には加担せず、国に中止撤回を要求し、市として計画からの撤退を表明すること。
  • 福岡空港・米軍板付基地から1キロ以内の地域など数か所が「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」にもとづく「注視区域」に指定されている。国による住民の個人情報収集や「機能阻害行為」と判断された場合の土地・建物の利用中止勧告など、住民の基本的人権がおびやかされるものであり、「注視区域」指定撤回を国に強く求めること。あわせて今後、市が所有する保護すべき住民の個人情報については、国から要求があったとしても提供しないこと。
  • 佐賀空港にオスプレイが配備され、本市上空を含む九州北部全域を飛行する事態となっている。オスプレイは墜落事故を繰り返している欠陥機であり、市民の命と安全を脅かすものである。市として本市上空を含む日本国内での飛行中止と撤去を国と米軍に働きかけること。
  • 福岡空港内にある米軍板付基地で1972年に返還された米軍基地の跡地に残存していた燃料輸送管(パイプライン)に沿ってベンゼンなどの土壌汚染が確認され、福岡市が汚染土の除去費用を約2億200万円支払っているが、これを市が負担することは異常であり、米軍基地の原状回復費の返還を求めること。そのうえで、米軍板付基地の即時全面返還を強く求め、福岡空港の軍事利用は中止するよう国と米国に対して強く要求すること。
  • 博多港への米艦船の入港は「友好親善」などの目的であっても許されるものではなく、福岡市の「平和都市宣言に関する決議」にも「博多港港湾施設管理条例」にも反している。米軍艦及び自衛隊艦船の入港を拒否するとともに、「非核神戸方式」を導入すること。
  • 防衛省が毎年全国の自治体に依頼している自衛隊への若者名簿提供について、髙島市長は2020年からの6年間で延べ18万人近い若者の個人情報を、本人の同意もなく、多数の当事者が知らないうちに自衛隊に提供してきた。このことは、憲法の保障するプライバシー権や自己情報コントロール権を侵害するものであり、断じて許されない。また、自衛隊は憲法が禁じる集団的自衛権の行使を容認され、海外で「殺し殺される関係」に投げ込まれる危険があり、本市の青年をそのような場に送り出すことは認められず、自衛隊への対象名簿の提供をやめること。
  • ロシアがウクライナに対して公然と核兵器による威嚇を繰り返すなど核兵器使用の危険が高まり、アメリカの核先制使用政策やNATOの「核の傘」拡大、日本政府による非核三原則の見直しや「核共有」への言及など、核兵器をめぐるきわめて重大な事態が進行している。一方で史上初めて核兵器を違法と断じた核兵器禁止条約は9月26日現在、署名、批准、加盟した国が99に達し、国連加盟国の過半数を突破した。福岡市議会でも速やかな核兵器禁止条約の締結を国に求める意見書を決議している。平和首長会議に加盟する市長として、市長自ら首相に対して同条約の批准を強力に働きかけ、非核三原則を堅持するよう強く求めること。また、市長の就任以来、核兵器廃絶や非核三原則の遵守などをうたう「非核平和都市宣言」を求める議会請願が、被爆者団体や高校生など幅広い市民から、13年間に8回も出されているが、市長は「アジア太平洋都市宣言」や議会の決議を持ち出し、理由にならない理由で、頑なに拒否する異常な態度を続けている。高齢となっている被爆者をはじめ、市民の願いを無視することは許されず、ただちに宣言すること。
  • 被爆80年の今年、被爆者が高齢化するもとで原爆被害の実相や被爆体験を風化させることなく継承していくことが求められている。国連の軍縮大使や各国政府代表などが参加している原水爆禁止世界大会や、広島・長崎市の原爆資料館に、高校生をはじめ若者や親子を派遣するなどの事業について、北九州市等を見習って予算化すること。また、市として、原爆資料展を行うこと。
  • 福岡は広島、長崎に次いで居住する被爆者が多く、また日本最大の引揚げ港を持ち、犠牲者1000人を超える大空襲を受けた街である。戦後80年となり、当時の行政文書や個人の体験を記した日記などの遺品の散逸、遺構や遺跡の消滅が危惧されており、戦争の実相を後世に伝えるためにそれらを収集・保存し、広く市民に伝承できる施設が求められている。現在、戦争の史実を学ぶ公的な場は、市民福祉プラザの一角にある「引揚港・博多」常設展示施設や、空襲で大きな被害が出た地区にある博多小の平和祈念室などに限られている。冷泉小学校跡地など公共用地を活用して常設の平和資料館を設置すること。
  • 福岡市市民福祉プラザ1階に「引揚港・博多」関係資料が常設展示されているが、3年前にリニューアルオープンして以来まだ一度も展示が入れ替えられていない。定期的に入替えを行うことは当初からの約束であり、毎年入替えを行うこと。また、資料について説明する学芸員も配置し、博多港引揚げの史実を学校教育の課題に位置付け、子どもたちに戦争の悲惨さと平和の大切さを教える教材として使うこと。引揚げ記念碑「那の津往還」は記念樹とともに、ウォーターフロントの再整備の中で移転することなく、維持すること。
  • 中東地域において長年続くイスラエル・パレスチナ問題は、多くの人命を奪い、国際社会全体の平和と安定を脅かしている。イスラエルとイスラム組織ハマスとの間に停戦合意が交わされたが、いまだ不安定な状況が続いており予断を許さない。この問題を解決する唯一の道は、イスラエルとパレスチナが独立した主権国家として共存する「2国家解決」である。パレスチナの国家承認はその不可欠な要素であり、2025年9月現在、国連加盟国の8割の国が承認している。日本政府はイスラエルを支援する米国の顔色を窺い、承認を見送っているが、それは平和国家としての責務を放棄し、国際社会から孤立する道であり許されない。市として国に対し、直ちにパレスチナを国家承認し、米国に政策変更を迫るよう求めること。

(15)改憲と戦争できる国づくり

高市首相は改憲について、「改正案を発議し、少しでも早く国民投票が行われる環境をつくっていけるよう全力で取り組んでいく」などと臨時国会で答弁するなど、公務員の憲法尊重擁護義務を定めた憲法99条違反の姿勢をあらわにしている。また、「台湾有事」が発生すれば米軍の戦争に自衛隊が参戦する「『存立危機事態』になり得る」と答弁するなど、集団的自衛権を行使し、米軍とともに中国に対し武力行使を行う可能性を政府として初めて認めるなどきわめて危険な言動を繰り返している。軍事費をGDP比2%へと引き上げ、さらには米国の要求であるGDP比3.5%への軍事費増額を否定せず、暮らしも平和も壊そうとしている。この大軍拡の本質は、米国が推進する対中国軍事包囲網づくりの最前線に日本が立つということであり、「先制攻撃」を基本原則にすえる米軍の「統合防空ミサイル防衛」戦略に組み込まれることに他ならない。集団的自衛権の行使により自衛隊が米軍と融合して相手国に攻め込んだ結果、膨大な報復攻撃を呼び込み、本市も含めた日本全土に戦火が及ぶことになる重大な問題である。憲法第9条の改定はこうした米国の海外での戦争への全面参加を意味するものであり、改定をやめるよう国に求めること。

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